「ギドラが襲われた?」
「……はいです」
「……またシャドウミストかシャドウビースト?」
「ううん。ギドラさんの体からはシャドウの反応は無い」
キングギドラが襲われたという報告にシャドウミストかシャドウビーストの存在を疑うゴジラ。が、未希曰わく違うらしい。
「となると、他の怪獣娘か?デストロイアみたいに野生の……」
「野生の……って言い方はどうかと思いますが、私達が把握していない怪獣娘の可能性も有りますね。でもギドギドが襲われた理由が……」
「んー……此奴に襲い掛かる理由が有る奴か…………ここに居ないのとなると後はゴロサウルスかマンダとかか?」
「その二人にギドギドを倒す事は可能ですか?」
「不可能。ギドラは強いぞ、マジで……」
ゴジラは即答する。ゴジラの知るキングギドラを襲いそうな怪獣達では、単独ではまずキングギドラには勝てない。しかも統合されたキングギドラなら尚更……。
「強化した状態なら兎も角、通常時なら俺と互角だし、前世じゃタイマンで勝てたの一度だけだったしな」
「そんなギドギドをいったい誰が…………」
「…………」
ギドラを倒せる怪獣となると、思い付くのは既に所属しているモスラやゴジラ・アース、或いはギドラ種の頂点に立つ彼奴、ぐらいだろう。
この場合GIRLSのメンバーに含まれない彼奴が怪しいが…………。
「とりあえずギドラを倒せるほどとなると、警戒していた方が良いだろう。他のメンバーにも言っておいてくれ」
「はいです。ゴジゴジはこれからどうするんですか?」
「ペガッサの所に新しい細胞渡してくる」
「はい、あーん」
「……あー…………なあ、口の粘膜で本当に細胞取れんの?」
口の中を綿棒で擦るという簡単な方法に、ゴジラは首を傾げる。
「え?あ、はい……口内上皮と言って……確かに取れてますよ」
「ふーん。血液とか、髪の毛とかからの方が取れ易そうなイメージだがな」
「ゴジラさんには針が刺さりませんし、髪が命の女性にとってこんなに綺麗な髪を切るのには抵抗が……」
「俺の髪、綺麗なのか?」
「はい。とても……髪の毛の細胞って、本来は死んでるんですよ。血管から栄養も運ばれませんしね。先端に行けば完全に死滅しています。でもゴジラさんの髪の毛は多分、G細胞故なんでしょうね、全ての細胞が生きてるんですよ」
まあそんな馬鹿げた細胞だからこそ、怨霊が形を保ったりそこからシン・ゴジラが生まれたりする訳だ。
そんな訳でゴジラの髪はとても艶々している。トリートメントなど不要。ちなみにこれは娘や妹達にも言える。
「はぁ、私もこんな綺麗な黒髪欲しいなぁ」
「取り敢えず切ってやろうか?」
「い、いりません!」
机に置かれてた百円ショップで買えるような安物のハサミで髪を切ろうとするゴジラを慌てて止めるペガッサ。が、少し遅くハサミが髪に触れ…………パキンと折れた。
「………………」
「………………」
無言で落ちた刃を見るゴジラとペガッサ。
「……じゃあ、俺は帰るな」
「あ、はい……」
ピグモンから警戒するように促されるも、独断で動く者も居た。
「キングギドラが襲われたのはこの辺か……」
周囲を鋭い視線で警戒しながら、周りの人間を怖がらせてしまっている黒と銀のスーツを着た金髪の少女。と、不意にその視線を更に鋭くし振り返る。
「……随分なご挨拶だな」
少女の取り出した光剣をあっさり止めるのは黒髪の長身の男。
「…………アナタは」
「ええっと……見た事有るけど…………お前、名前何?」
「アンジェ……失礼、マグマ星人です」
ゴジラの言葉に光剣を収め敬礼を取るマグマ星人。ゴジラはふーん、と興味無さそうに返す。聞いては見たが別段返事を期待していた訳でもないのだろう。
「警戒するのは勝手だが相手を見てからにしろ。俺じゃなかったらどうする気だ?」
「寸止めをするつもりでした。ですがこれは言い訳にしかなりません聞き流してください」
真面目な性格をしているようだ。悪い言い方をすると面倒くさい性格。
「……怪獣娘達には単独で街中を出歩かないように指示が出てたと思うが?」
「貴方は?」
「俺は特例。許可が下りてる」
そう言ってソウルライザーを取り出し『お任せします』と言うピグモンのスタンプが移った画面を見せる。
「どうせギドラがやられるような相手じゃお前の出る幕はねーよ」
「私が弱いと…………仰りたいのですか」
「ああ」
「…………確かに──」
「…………」
思いの外あっさり納得したマグマ星人に多少面食らうゴジラ。
「そうかもしれません。私は、キャップを守れなかった」
「キャップ?」
「私達の元上官です。シャドウビーストとの戦闘で怪我を負い、入院しています」
「へえ、そりゃ気の毒に……まあ怪獣娘なら多少の怪我ならしばらくすりゃ──」
「キャップは人間です」
「なんだ。なら気に病む必要も無いだろ。戦う力も無いくせにシャドウビーストに近付いたそいつが悪い」
「…………は?」
ギン!とマグマ星人が怒気の籠もった瞳をゴジラに向け周りの通行人がひっ!と声を上げ離れる。
「……キャップは、何時だって正しい判断を下し、私達三人を導いてくれました」
「そうか。で、その判断力はシャドウビースト戦の役に立ったのか?人間じゃ怪獣娘達の戦闘を目で追えるとは思えないが」
「そ、それ…………は…………」
ぐ、と唸るマグマ星人。まあ当然だろう。シャドウならいざ知らず、シャドウビーストとなれば話は代わる。並の怪獣娘は勿論レッドキングやゴモラでさえ単体では挑まないシャドウビーストと、
判断を下す立場だと言うならひとまず安全な場所に隠れ、戦闘が終わった後の行動でも考えてれば良い。
「…………すまん、言い過ぎた。どうにも人間が関わるだけで否定的になる。悪いな」
「いえ、一理有ります。あの時、ネストの中でキャップと離れると危険だなどと判断する前に、キャップをネスト内に入れない事を優先するべきでした。私と、キャップの不徳です」
と、お互い非を認め剣呑な雰囲気を解く。気が付けば周囲から人がだいぶ離れていた。二人の様子を見て近付かない方が良いと判断したのだろう。
「……取り敢えず俺は探索を続ける。お前はどうする?」
「…………帰れ、とは言わないんですか?」
「俺と居ればまあ、単独じゃないだろ」
「…………感謝します」
と、マグマ星人が頭を下げたその時だった。
「あ、おとうさんだ!」
『!?』
無邪気な声が聞こえてきて、ざわ!とそちらに視線が集まる。そこには満面の笑みを浮かべた茶髪の少女が居た。
血管のようなものが張り巡らされた不気味なフードを被っている。
「…………貴方の子ですか?すごく見てますよ」
「………………」
マグマ星人の言葉にゴジラは少女をジッと見詰めていると少女がトテトテとやってくる。
「聞きました奥様?アレきっと妻子持ちなのに浮気してた男よ」
「やーねー。娘さんあんなに可愛いならきっと奥さんも美人でしょうに……」
「…………」
何時の間か周囲の人間にゴジラの浮気相手にされたマグマ星人。早いところこの場から去ろうとゴジラに声を掛けようとした瞬間、ゴジラが少女に蹴りを放った。
「は!?ちょ、いくら人間嫌いだからってそんな子供に────え?」
だが少女は吹き飛ぶ事無くゴジラの蹴りを笑顔で受け止めていた。変身していないとは言え、ゴジラの蹴りをだ…………。
「マグマ、帰ってGIRLSに伝えろ。此奴が襲撃犯だ……」
「遊ぼ♪」
直ぐ様変身するゴジラ。と、同時に少女も姿を変える。
左右の側頭部と額に生えた三本の角を持ち、肩辺りから突起物が生えた衣装を着込み長い尻尾を揺らす。そのままゴジラを地面に叩き付けた。
「────がっ!?」
「わーい!プロレスごっこ!」
そのまま道路に向かって無邪気な笑顔を浮かべたままゴジラを投げ付ける。丁度通り掛かった大型トラックごと何メートルも吹き飛ばした。
「ゴ、ゴジラ……!?」
「聞こえなかったかマグマ、足手纏いだ。それより早くGIRLSに連絡してこい……」
ペッ!と血を吐きながら立ち上がるゴジラ。少女はニコニコとゴジラを見ている。
「…………命令だ。行け」
「──っ!?は」
マグマ星人はその場から駆けていく。人混みも、先ほどの光景で蜘蛛の子を散らす様に逃げていく。
「…………久し振りだな、バガン。俺とギドラの遺伝子を持つ怪獣よ」
「ねえねえ次、何して遊ぶ?」
「…………鬼ごっこだ。追いついて見ろ」
もしもシリーズ
ゾロアークさんのリクエスト
もしもゴジラがエイリアンとプレデターに無双していたら。
「うう、さむ………」
南極大陸。政府からの要望で面倒だが来ることになったゴジラは文字通りに火に当たりながら暖をとる。
「アレが噂の……燃えてるぞ」
「常識はずれの化け物相手だ。普通の人間と思うな」
周囲から聞こえる声も何のその。ゴジラは面倒な仕事を押しつけてきた政府に対して取り敢えず百通りの罵倒を考えておく事にした。
「しかし面倒な話だ。他の連中に見つかりたくないくせに、他国に頼るなんてな」
「まあ怪獣娘の実力は、そのまま嘗て現れた怪獣と同様に思われてるんじゃないデスカネ?身内に怪獣が居ればどんな所でも安心デス」
「キングジョー、まさか俺に彼奴等の命を守れとか言わねーよな?」
「ノンノン。ここはGIRLSではありまセン。ク・ラ・ラ……リピートアフターミー」
「…………クララ。俺は彼奴等に手を貸してやる気はないぞ」
「マー。今回のこれも、日本の政治家のコネを使われての強制参加デスからネ。私とあまりやる気が出ないデス………でも、目につく人は守りたいデス」
「………勝手にしろ。俺は人間は守らねーが、人間を守ろうとする怪獣娘一人助けるぐらいはしてやる」
「……♪」
キングジョーが嬉しそうにゴジラの腕に絡みつく。と、不意にゴジラが空を見上げる。
「どうしたデスか?」
「………いや、面倒くさいことになりそうだな、と……」
「………?」
「聞いてくださいユウラ、既に穴が空いてたそうデス!しかも──」
「地球の文明じゃ不可能なんだろ?知ってるよ」
「ホワイ?もう知ってるデスか?」
「ヒャ!」
「落ち着けただの死体だ。全部顔の方に変なのがあるな……でかいが、蠍のミイラか?しかもよく見ると内蔵がない」
「内蔵?」
「ま、生け贄だし不思議でもない………か?いや、これは………ん?」
「どうしたデスユウラ」
「………下に、何か居るな。しかもこれ、増えてる?」
「たく撤退しろと言ったのに聞く耳持たずか、おまけに先に潜ってろとか彼奴等………もう帰って良いか?」
「まあまあユウラ。落ち着くデス………私はゴジラと二人っきりで遺跡デートも中々ありだと思ってるデスよ?」
「ところでさっきの機械、お前なら本当は使い方解ったんじゃねーか?」
「ただの銃デス。でも、私には聞かれませんでしたしネ♪」
「………お前もイヤイヤ参加したって事か
「にしてもすっかり閉じ込められてしまったようデス」
「出ようと思えば何時でも出れるさ。幸い飯には事欠かない。食ってみるか?クソマズいぞこの黒いの……血は何か酸味が聞いてるが」
「んー、遠慮するデス……それにしても、私の装甲を溶かすシャドウよりは全然安全な生物みたいデスね。普通の人間でも武装すれば対処できると思いマス」
「冷静な判断が下せりゃそうだろうよ」
「……何だ此奴?」
「宇宙人、ですかね…………ゴジラが上半身吹き飛ばしちゃったせいでどんな顔か解りませんけど」
「なあ、さっきの奴が持ってたこれ起動できない?」
「マッカセナサーイ………はい。どうやら地図ですね。爆弾としての機能もありマス。終わったら食べマス?」
「核燃料ならな」
「うわっぷ!?何だこの蠍!人の口ん中に何か突っ込んできやがった!」
「ゴジラ!?大丈夫ですカ!?」
「ん、特に何ともないな………何がしたかったんだ?」
その頃の胃の中。
「キー!キーー!」
何か溶けてた。
「卵だらけデス。どうしまス!?」
「周囲に人間の反応は?」
「……もう、無いデス」
「キングジョー、先に出てろ。纏めて吹き飛ばす」
「終わったぞ。後見ろ、なんかやけにでかい死体見つけた……ん?」
「……宇宙人達の、お迎えですかね?」
「その後何やかんやあってそいつ等をぶち殺しまくろうとしたんだが最終的にはキングジョーに止められてな。詫び代として色々貰った。ほらミニラ、リトル、シン。お土産の伸びる槍とか仮面とか銃だ」
「「「わーい!」」」
「廃棄♪」
「何故!?」