「えっと……聞く?姉さんについて……」
ただの人間でありながらゴジラにとって特別だった存在、あやめ。気にならない者はここには居ないだろう。
「ううん……そう言うのは、ゴジラから聞きたい」
と、アギラはその場から去ってしまう。逃げる様に……。
「我は聞くぞ。夫の昔の女について知っておくのは今後の為にもなろう」
「いや、ですから夫じゃなくて……」
「言っても無駄ですよ」
「…………面白いね」
一人ではあるが三人でもあるキングギドラを見てトトは目を白黒させた。
「まあ、今のゴジラを形成した人には興味有りますね。しかし本人の許可無く……」
真面目なモスラはゴジラを変えてくれた人物に興味を持つがゴジラの様子から聞くのには気後れしてしまう。
「ふむ……一理有るな。よし、ではそのあやめとやらがどの様な人物かだけ話せ。どの様な関係だったかは聞かん」
と、キングギドラが言うとトトは「そっか」と笑う。
「姉さんはね。変わった人だったよ……懐が広いと言うか広すぎて、当時目が合った、そこに居たってだけで人を殴ってたユウラに笑顔で近付いてくんだもん」
「へえ……じゃあアギの言う様にゴジラは優しい方だったんだ。少なくとも昔に比べれば」
と言うかそんな凶暴なゴジラによく近付けたものだ、そのあやめと言う人物は。
「それと、相手が何考えるのか直ぐ解る人だったよ」
「?ミキミキみたいな超能力者ですか?」
ピグモンは首をコテンと傾げる。
GIRLS所属の三枝美希のように超能力の持ち主なら、ゴジラが引かれた理由はそれだろうか?と考えたがトトはいやいやと手を振る。
「超能力なんてご大層なもんじゃないよ。姉さん曰わく単なる技術、他人の顔色を伺っている内に覚えたんだって……それで、嘘とか下心とか隠し事が直ぐ解っちゃうからそう言うのが無いユウラを可愛がってた」
懐かしそうな顔をするトト。そ
「可愛がり方も変わってたね。由来は解んないけど、あのユウラを『子猫ちゃん』って呼んでは怒られてた」
「子猫ちゃん……?」
ゴジラに大凡似合わぬ渾名に引きつるラドン。子猫ちゃんと呼ばれた頃のゴジラが気になる。と言うか随分とキザな女性なのだろうか?
「ちなみにこれが当時のボクとユウラの写真」
「あ、可愛い……」
千年竜王が思わず呟く。その写真には黒髪を持つ少年が茶髪の小柄な少年を蹴り付けている姿が写っていた。
「そしてこれが孤児院に僕が来た時の集合写真。僕はユウラより後に入ってて、ちなみにこれがユウラ」
トトが指差したそこには先程の写真より幼い黒髪の少年が一人離れた場所で写っていた。とても暗い金色の瞳。世界の全てを憎んでいる様な、そんな瞳。
「初めて会った時のゴジラと同じ目ですね。周り全てを敵と思っている目です……」
「ああ、こんな目をしていたな」
「懐かしい。ギドラと戦った時もこうだったな」
と、ゴジラの前世からの知り合い組は懐かしそうな顔をする。逆に知らないガッツとピグモンはそんな一同を見て「うぬぬ」と唸る。
「………………!?」
その様子を見てトトは『はっ』と気が付く。
「彼奴、何時の間にかハーレムを?人間嫌いだから一生、番に恵まれないと思ってたのに……良かったなぁ」
『よよよ』と態とらしく泣くトト。確かにこの写真のゴジラを見る限り人間関係を構築出来そうにない。こんな警戒心の強い野良猫どころか牙を剥き出しの恐竜の渾名が『子猫ちゃん』ますますそのあやめと言う人物が気になる。
「まあ、話はここまでで良い」
「え?良いの……」
「これ以降は奴が話す気になったら聞く。話す気が無ければ、我は奴にとって全てを曝け出すには至らなかったと言うだけだ」
キングギドラはやけに男前な台詞を言ってその場から去った。
「何やってんだかなぁ、俺……」
自分が人間相手に複雑な思いを抱いていた事を思い出し、苛立って周りに当たって、本当に何をしているんだろう。
あやめへの思いは恋愛ではない。近いのは親愛だろう。だが、人間に親しみを覚えると言うのがそもそもゴジラからすれば冗談の様な話だ。
何故あやめに敵意を向け続けられなかったかと言えば、あやめがあまりに人間らしくない人間だったからだろう。
自分と同じ様に、経緯は違えど世界全てを憎んでも、壊してもおかしくない目に遭いながら笑っていた。
『不幸なものか、この先が幸せじゃないなんて決まってないじゃん』そう常に笑っていた。
そして何より、恐れてこなかった。
あの未希でさえ、リトルを保護するその時まで、嫌々ながらも此方を殺そうとしてきた。それは偏にゴジラを恐れていたから。
当時、前世程の力は無いとは言え大人でも手が付けられず警察すら敬遠したゴジラに本心からの笑みを浮かべ近付き、抱き付き、頭を撫でてくるあやめ。
最期の最期まで、態度が変わらず最初は諦めて、何時しか居るのが楽しくなった。
まあ子猫ちゃん呼びは本気で止めて欲しかったが……。
──子猫ちゃんは嘘も下心も隠し事もしない良い子だね。あんま人らしくないけど、そう言うの好きだよ。ま、だからと言って他の子達より理解出来る訳じゃないけどさ。嘘じゃないのは解るのに本心は少しも見えてこない。
いっつも怒って、叫んで……泣いてばかりだからね。何にも教えてくれなきゃお巡りさん困っちゃう──
「…………迷子の迷子の子猫ちゃん、貴方のお家はどこですか…………か……」
少なくともあの孤児院を家と思った事は無い。今は、寮に帰れば子供達が居る、仲間が居る。
「会いたいなぁ……せっかくお家も、名前も、答えられるようになったのに」
もしもシリーズ
大日小進さんのリクエスト
もしもゴジラがヘルシングに出たら
「よお、久し振りだなワラキアの王。随分寝て、起きれば今度はその女がお前の主か?」
「久しいな。ああ、そうだとも。この少女こそ我が主、手出しは無用だ人嫌い」
「……ふん。一々殺すのには飽きてるんだ。俺は、俺の細胞を盗んだバカを追ってきただけだ。クソ野郎はお前に殺されたあげく、すでに何処かに売っぱらわれたようだがな」
「ほう、またか………では解りしだい連絡しよう。お前の細胞を取り込んだ者など、私如きでは手に余りすぎる」
「謙遜はよせ。お前なら、今の魂の九割と道ずれに何とか勝てるさ……なんなら血を吸ったらどうだ?」
「遠慮する。同族が欲しいなら番を探したまえよ破壊の王」
「お前がアーカードの新しい眷属のフケイとか言う奴か?たかが神父一人に何てこずってんだ」
「…………何だ、お前は……」
「何だとはご挨拶だな。その昔、
「……そうか、お前か……欲をかいたバカ共が手を出した怪物は………!」
「
「ああそうだ!大切なお仲間なんだろ?殺せるのか?」
「仲間?笑わせるな、この世界のどこにも、俺の仲間はいない」
「おい神父に蝙蝠、お前等だ
「やってみやがれ化け物が」
「私を殺すには博物館を巻き添えにするだけの作業が待ってるぞ?やる気がないならうるさいとだけでも言ったおけ」
「ようし、お前等が俺を馬鹿にしてるのは解った。殺す」
「はーい皆様~!此方が絵のホールですよ~」
「「「……………」」」
「よおアーカード、嬉しそうだな。ミレニアムとか言う奴は満足行く相手だったのか?」
「ああ。未だあれほどのバカ共がいたなんて思わなかった」
「ふーん。ま、どうでも良いか」
「ついては、余計な手出しは無用だぞゴジラ」
「そいつ等が俺に手を出してこなきゃな」
「戦争が手段じゃなく目的。意味もない戦争をするか、吠えたなガキ共。面白い、喜べ。今からお前等は俺の敵だ。俺に殺される獲物だ」
『ほう、彼の破壊の王か。君も我々の戦争に参加してくれるのかね?』
「………喜べ戦争で死にたい死にたがり。俺へ向かうことを戦争と思えるおめでたい頭なら、お前等は漏れなく戦争で死ねる」
「来たか……アーカードは遅刻か?まあ良い、よく来たな自殺志願者共。ここがお前等の死に場所だ」
「どうしたほら、笑えよ………」
無数の黒い小竜達が、逃がさぬように徘徊する。閉じ込められた檻の中、獲物を前に獣は笑う。
「知っているぞ、
笑える者など居はしない。彼等は戦争の果ての死を求めているのであって、災害に巻き込まれた死など望んでいない。
戦いになどなるわけがない。肉を噛み切る顎を持たぬ赤蟻が、束になったところで竜に叶うはずがない。
「そら、戦争は始まったばかりだ。呆れさせるな獲物共」
「なんだウォルター、そんな姿になってまで、俺の力を使ってまで彼奴に勝ちたかったのか?」
『AAAAAAAAAAA!!!!』
「なら特別だ。譲ってやろう、お前の獲物に。だから、アーカードが戻ってくるおとなしくしていろ」
「残念だ。せっかくアーカードまでなら殺せる手段を思いついたのに、曖昧な存在すら焼き殺すか」
「そんな奴もいたのか?どれもこれも有象無象でどれがどれだかさっぱりだ」
「はは。悔しいなぁ、たった一つの災禍を前に、私の戦争は潰れるのか。消化不良だ、認められない……!」
「認める認めないなんて知るか。さっさと死ねよナチス」