「戻った……」
「あ、おかえりおとうさん!」
(キングギドラの)部屋に帰ってくるとバガンが迎えてくれた。
「ん、この匂い……」
バガンを抱き止め奥に行こうとするとキッチンから何か匂う。行ってみると料理本片手に首を傾げるキングギドラが居た。
「て、適量……?適量とはどのぐらいだ…………大匙、これか?」
「帝王、それはスプーンです。これですよ」
「それ小匙だよ……」
三人仲良くポンコツぶりを発揮している。
「何してんだお前等」
「料理だ。見て解らんのか?」
やれやれと肩をすくめる帝王。ムカつく。
「料理か、手伝うぞ」
「そうか?…………いや。我等三人で十分だ……」
「…………?」
明らかに助かったと言いたげな顔をして撤回するキングギドラ。キングギドラらしくないその対応に首を傾げるゴジラ。隠し事だろうか?しかし悪意らしきモノは感じない。ならば放置するべきか?
「…………あやめ、と言うんだったな。お前の女」
「俺の女じゃないが……聞いたのか?」
「お前を可愛がっていた事、どの様な人物だったかはな……それ以上は、聞かんさ。聞かれたくないのだろう?」
「まあな…………」
しかしそれと料理がどう繋がるのだろうか?それについてはさっぱり解らない。
「嫉妬だ。お前にとって特別な女が居たのだぞ?嫉妬しない理由が何処に有る」
「嫉妬?お前が……?形だけの夫婦だろ、こんなの……モスラやラドンも居る……」
「────」
ズダン!と包丁がまな板を切る。
「そうだな、その通りだ。だが一つ思い違いをしている」
「思い違い?」
「大方お前は我がお前に惚れる理由など無いと思っているのだろうな。だがな、違うぞ。初めて会った時から、恋慕ではないが惹かれていた。壊す事しか知らん、我と同じお前にな」
「………………」
「まあその時は興味を持っただけだ。その後、散々痛め付けられたし…………」
「リンチは酷いと思う」
「まあ、私の時は此方が多で貴方の方が一でしたが……」
と、苦笑するキングギドラ達。
「だがこうして今世では我はお前を知った」
「ただの恨みの固まりであった貴方が、誰かを思い、大切にしている姿を見た」
「前世じゃ戦ってばかりで知る事も無かった一面をね」
そう言って笑う。今度は苦笑ではない、本物の笑みを浮かべて。
「子供には甘過ぎるお前を知っちゃった」
「人間には相変わらず冷たいけど、殺そうとしない貴方を知った」
「仲間は随分と大切にするお前を知った。中々楽しかったぞ、ここ最近のお前を見るのは」
「………………」
「ま、だからと言って惚れるかどうかと言われれば別だが、番になってやっても良いと思うぐらいには気に入った」
そう言ってゴジラの頬に手を添え顔を近づけるキングギドラ。その上からの物言いにゴジラが顔をしかめるとクククと笑う。
「なんだその顔は?混乱しているのか?」
「…………」
無表情で固まっているゴジラを見てクスクス笑うキングギドラ。ふと、キングギドラも無表情になりゴジラをジッと見詰める。
「……────」
「って、何をしているんですか!?」
「ッチ……」
呆けているゴジラに唇を近付けようとするが左手が勝手に動き止める。
「劣兵も何か言ってください…………って、貴女何か期待してません?」
「その呼び方止めてって……」
「…………そう言やお前等って名前無いのか?」
「へ?」
不意にゴジラが言った言葉に首を傾げる。
「まあ親には知られてるからそれぞれ名付けられてますが…………」
「じゃあその名前で呼んでやれよ。流石に劣兵は可哀想だろ」
「おお!言ってやれ言ってやれ!」
ゴジラの提案にヨシャー!と反応する劣兵。そうとう堪えていたらしい。
「そうは言いますが、既に長年の癖になってますし…………今更変えると言うのも」
「それにGIRLSでは怪獣名で呼び合うのだろう?我等の様な者達は前世での境遇に合わせた渾名を付けるのが一番だと思うが」
「それもそうか」
「え!?」
「おとうさん、おかあさん、ごはんまだー?」
と、バガンがやってきた。少し話し過ぎていたらしい。
「よし、じゃあ皆で作るか。良いよな、ギドラ」
「え?あ、うん……」
「戻ってきた……」
「わーい!」
「……ん」
ラドンの部屋に行くとシン・ゴジラとリトルが抱き付いてくる。
「もう良いのか?」
「ああ、バガンはもう大丈夫だろう。ま、日替わりで寝る場所変えるがな。良いか?シン、リトル」
「んー……良いよ。パパと寝たい気持ち、解るから」
「うん……」
「良い子だ。まあ、寝るのは少し待ってくれ。やる事が有る」
「やる事?」
「おはよう、おかあさん……」
クシクシと目を擦りながら起きるバガン。隣の母を見て、反対に温もりが無いのを思い出す。そこに父親が居ないと解りながらつい見てしまう。
「…………あ」
するとそこにはぬいぐるみが有った。全部壊してしまった奴だ。
よくよく見ると縫われた痕が有る。
「わぁ……!わぁ!」
言葉が思い付かずぬいぐるみを壊れぬ様に抱き止め満面の笑みを浮かべるバガン。キングギドラは薄目をあけその光景を眺めていた。
──ぬいぐるみ、同じのは買ってやらないんじゃ無かったの?──
──買ってない。直しただけだ──
「…………本当、向き合えば色んな顔見せてくれるよねゴジラは……」
もしもシリーズ
teitakuさん、グラムサイト2さんのリクエスト
もしもゴジラがガールズの誰かと幼馴染だったら part3
モスラ&バトラ√
貴蝶はルンルンと楽しそうに廊下を歩き教室に向かう。
その後ろには不機嫌そうなユウラと揚羽が居た。
「やりましたね!皆同じクラスですよ……!」
「面倒なことになりそうだ、下手にさぼったらどやされる」
「んで、アタシも手伝わされんだろうな」
喧嘩ばかりの問題児、ユウラは間違いなく絡んでくるであろう真面目な貴蝶の絡みを想像しため息を吐き、それに付き合わせれることになるであろう揚羽も面倒くさそうだ。
「大丈夫です。問題が起きる前に止めるので」
えへん、と無い胸を張るモスラ。
「さっさと帰ろ……」
ようするに問題を起こさなければ良いのだ、ユウラはこれを機に授業が終わりしだい帰ることにした。止まっても喧嘩を売られるだけだ。
そしてユウラは嘗められたら確実に買う…。
「あ、守さん、これお願いねー」
「あ、はーい」
「……なんだこれ?お前学級委員なのか?」
さっさと帰ろうと思ったが貴蝶前に置かれた紙の束を見て立ち止まり紙の束をとる。気になったのか隣にきた揚羽にも一部渡しておく。
「清掃委員の報告書、学級委員の報告書、色々混じってるけど」
「あ、はい……頼まれたので」
「……………」
ユウラは揚羽の手から残りの書類を取ると帰ろうとしてる男女のグールプの下に向かう。
「おい」
「え?あ、こ……黒慈……さん」
「返す」
「え?」
書類を渡され反射的に受け取る先頭の男。返答も聞かずに踵を返す。
「帰るぞ」
「え、ちょ……!?」
そのまま貴蝶の手首をつかみ歩き出す。揚羽ははぁ、とため息をはいて貴蝶の鞄を持つ。ユウラは去り際に振り返った。
「こいつは何頼まれようと嫌と言わない。解っててやってるだろ?次は殺すぞ」
「「「───っ!」」」
びくりと体を振るわせるグールプを見てふん、と鼻を鳴らし去っていった。
「あ、あの……ユウラ、私は別に……そろそろ腕も痛いですし」
「…………」
「………ゴジラ」
「あん?」
ズンズン歩くユウラは漸くその言葉に足を止め振り返った。その隙に腕を払う貴蝶。少し赤くなってしまった。
「全く、私は別に構いませんでしたのに……何をそんなに苛つて居るんですか?」
「甘やかすのと優しくするのは別だ。それが彼奴等ゴミどものためになると思ってんのか?」
「ゴミって……」
「何より、お前が他人に良いようにされてんのを見ると腹が立つ。お前を好きにして良いのは俺だけだからな」
「………へ」
再び手を掴み、引き寄せられる貴蝶。貴蝶の顔がボン!と音を立てて赤く染まる。と──
「何やってだエロトカゲ!」
ゲシッ!と揚羽が蹴りつける。
「何をと言われても、お前の部屋の漫画の真似だ」
「?…………っ!?」
首を傾げた揚羽だったがその意味を理解して直ぐに赤くなる。
「お、おま……!人の部屋に………!?」
「ああ、安心しろ。散らかってた下着にゃ手を着けてない。普通に漫画だけ借りた……しかしお前、ああ言うのが趣味か?」
「殺す!」
「ハッ」
キレた揚羽から逃げるように窓から飛び出すユウラ。その後を追い窓から飛び降りる揚羽。ちなみに四階だが、二人なら平気だろう。
残された貴蝶と言えば、その場で壁により掛かりへたり込んだ。
「…………の、せいだ……」
握られた腕が熱いのは、あの馬鹿力で握られたせいだ
頬が赤いのは、不躾に顔を近づけられたせいだ。
「…はぁ…………ずるい男ですね、本当に」
まあ、本当にずるいのは、一々言い訳している自分なのだろうが……。
キングギドラ√
話しかけたい者は数多くいるが殆との者が後込みし、勇気ある者も取り巻きに阻まれる。
が、その親衛隊気取りすら手が出せない存在がいる。
「またやってんなぁ、お前等の取り巻き」
「ふん。良い迷惑だ、人に仕える品云々言って我の交友を勝手に決めるしな………勝手に崇めるくせに此方にまでイメージどおりであることを求めてくる」
「ふつうに追い払えば良いだろ」
「もうやった。が、やり直させてくださいと毎度言われる」
「
ちなみに噂の二重人格と言う話、あれは嘘だ。正確には三重人格、それぞれの名は一姫、二姑、三夜だ。それを知るのは家族とこのユウラぐらいだが……。
「にしてもがらんとしているなこの図書館、お前の取り巻きのおかげで貸切だ」
「これ、後で私が怒られるんだよねぇ」
「なんだ一姫、出て来たのか。センコーの相手は三夜にやらせりゃ良いだろ」
「主人格なのに学校じゃ殆ど出てきてない件について……」
まあ、一姫はあまり役に立たないから仕方ない。連携プレーとかもクソ下手だし。
「二姑はカリスマと運動、三夜は社交性と勉強、私の特技って何だろう?」
「扱いやすさにおいてお前の右にでる者はいないな」
「誉められてる気がしない………」
「誉めてないからな」
ケラケラ笑ったユウラは寝転がっていた本棚から降りると本をしまい次巻を手に取る。自由気ままで、自分本位で、この学校で唯一支配されない存在。
彼一人居るだけで、大分気分が楽になる。
「?何だ、この本みたいのか?」
「何読んでんの?」
「芥川」
ヘドラ√
「はい、あーん……♪」
「あー……」
調子の男の膝に乗った小柄な少女は満面な笑みで差し出してくる。男は面倒くさげに口を開けてミートボールを食べる。
「腐未、いい加減に降りろ」
「えー?いいじゃぁん。ボクとユウラの仲でしょぉ?」
「どんな仲だ。自分の席に座れ」
「い・や♪」
引き剥がそうとするユウラに対しベットリくっつき離れない腐未。この学園じゃ日常的な光景で、しかし周りの者が気にしないのは慣れからではない。
「あれから一ヶ月、漸く楽になったねぇ」
ケラケラ笑う腐未の言葉に何名かがびくりと震える。それを見て腐未はますます笑う。
一ヶ月前、ユウラは暴力事件を起こした。取り押さえにきた教師も格闘技系の部活に入っている者達も纏めてのした。
当然親が抗議に来たが、腐未が笑って取り出した内容に引き下がった。
「馬鹿だよねぇ、自分で巻いた毒が自分を侵さないと思ってるだもぉん」
簡単言えばいじめの証拠。窃盗を働いた親を持つ腐未を標的にした器物破損、窃盗、名誉毀損の証拠を提示しただけ。
人は群れるのが好きで、下を作るのが大好きだ。自分は誰かよりましだと思いたいから標的を探す。その結果標的は良心が痛まない犯罪歴のある者の身内。が、あまりに応えないのでムキになってやりすぎた。
当然関与してない者も伸されたモノの中には居るが、学校ぐるみで虐めが行われていた証拠をネットに晒されればそこに在校していたという事実だけで将来に響くし、身内にも影響がでると本人達が嫌と言うほど知っている。
先に教師が折れ、実行犯達の身内が折れ、最終的には無かったことにされた。
「お前は昔からそういうのが好きだな」
「大好きだよぉ、ほら昔はボクもそうだっでしょぉ?」
「ああ………物理的な意味でそうだったな」
と、不機嫌そうに答えるユウラ。
「………れろ」
「………何のつもりだ?」
不意に頬を舐めた腐未にユウラはギロリと金色の瞳を向ける。
「他の奴らのことなんか考えちゃだぁめ。君はボクのなんだか──お?」
ユウラは腐未の襟首をひょいと掴み、窓から投げ捨てた。ちなみにここは三階だ。