「きゃああああ!!」
「……ん?」
廊下を歩いていると黒い巨大な蜥蜴擬きがペガッサを追い掛けていた。
「た、助け────」
「よっと」
ゴジラが蹴りを放つと蜥蜴擬きはバラバラに砕け散る。
砕け散った肉片に触れるとピクピク動きゴジラに引き寄せられる。
「これは、俺の細胞か?何か混じってるけど」
「あうう……ご、ごめんなさいゴジラさん。天井からヤモリが落ちてきて、吃驚してる間にゴジラさんの細胞を浸してた溶液を飲んじゃったらしくて」
それで怪獣化してたのか。これも何時か怪獣娘になるのだろうか?
「気を付けて扱えよ。俺の細胞ガチで危険なんだから」
現地の人間が知ったら間違いなくGIRLSを襲いに来るほど。
実際、ゴジラが知る由も無いが前世の世界に於いてゴジラの細胞を盗みに来た者達がビオランテのご飯になった。
「気を付けます」
「ん、気を付けろよ」
そう言って頭を撫でるゴジラ。
『…………ん?』と手を離し自分の手を見る。最近娘や妹が増えたせいで撫で癖がついてきてしまったらしい。
「あ、あのゴジラさん…………」
「ん?」
と、ペガッサがもじもじと話し掛ける。
「その、何かお詫びがしたいんですが…………明日時間は有りますか?」
「や、別に詫びなんて良いけど」
「私が良くありません!」
「ん、んー…………そこまで言うなら…………明日は暇だよ」
「は、はい!では、明日の九時に…………!」
ペガッサがルンルンと嬉しそうに町中を歩く。待ち合わせの駅の場所はもう直ぐそこ。と、何やら待ち合わせ場所に人が集まっているのが見えた。
「あ、あの……通してください」
人を掻き分けながらなんとか進んでいると、人垣が無くなり、人が飛んでくる。
「…………へ?」
「く、くそ!覚えてやがれ!」
「ふん」
ゴジラが居た。コキリと首を鳴らす。
「あ、あのゴジラさん……」
「ん?ああ、ペガッサか」
「何してたんですか?」
「知らん女が軟派してきたから無視してやったらそいつの恋人っぽい奴とその友人みてーのがやってきてな。美人局だったんだろ」
ペガッサは改めてゴジラの格好を見る。ゴジラ自身服装に拘りは無いので、彼の服は妹達が選んでいるらしい。完全にブランド物だ。確かに金を持っていると思われるだろう。
しかしゴジラが軟派に引っ掛かると思ったのだろうか?
「んじゃ、行こーぜ。何処に行くんだ?」
「あ、はい。実は美味しいレストランを見付けたんです…………ですけどその、遊園地の中に有って」
「へえ、ならついでに遊ぼうぜ。ミニラ達も連れてくりゃ良かった」
「あ、ごめんなさい。昨日の内に言っておけば……」
「まあ良いって。今から誘ってもな…………」
遊園地に移動したゴジラ達。
「…………デカイな」
「?ああ、観覧車ですね。ここのは日本でもベスト20に入る大きさですから」
「それってデカいのか?」
「はい。天辺から見た景色はきっと綺麗でしょうね……はぁ、見てみたいなぁ」
「ふーん。なら乗るか」
と、ゴジラが観覧車に向かって歩き出す。
「って、ゴジラさん!?綺麗な景色が見れるのは夜です」
「そうか」
ペガッサの言葉に立ち止まったゴジラは『なら何に乗るか』と辺りを見回す。
「…………お、ペガッサ!あれなんだ」
「あ、あれはフリーホールですね。上級者向けです、行きましょう」
ゴジラの手を掴み歩き出そうとしたペガッサだったが電柱でも掴んでしまったかの様にガックンと仰け反る。
「あれ乗ろう」
「い──」
「いいやああああ!」
「はははは!」
下から吹く猛烈な風、上へと上っていく景色、体重が無くなる浮遊感。流した涙は宙を舞う。
「楽しいなこれ、気に入った!」
「………………」
そんな涙も隣で笑うゴジラの顔を眺めていたら不思議と引っ込んだが…………。
「お、確かに美味い。混ぜられた香辛料が肉の味引き立ててんな」
「気に入ってくれて何よりです」
モグモグと肉を食うゴジラを見て微笑ましげに笑うペガッサ。そんなペガッサの笑みを見て、ゴジラはふと訪ねる。
「なあペガッサ、お前…………俺と誰を重ねて見てんだ?」
「…………へ?」
「お前、俺を見る時俺じゃない誰かも同時に見てるよな?誰だ?」
「え……あ、へ?」
ゴジラの言葉にペガッサは持っていたカップをカシャンと落とす。その音に周囲の視線が集まり、ペガッサは顔を蒼白にさせ、立ち上がり駆け出した。
「あ、おい!ペガッサ!?」
後ろから聞こえる声を無視して、全力で走る。この場から離れたくて、ゴジラの顔を見続けられなくて……。
気が付くと人気の無い場所に来ていた。
遊園地にもこんな場所が有るのかと思えばシーツにくるまれたアトラクションも有った。何時の間にか開発中の場所にまで来てしまっていたらしい。
「…………はぁ」
何しているんだろうか自分は。
ゴジラの言葉に、ようやく理解した。前にピグモンにも指摘されていたと言うのに。
甘えていた。あの優しさに、怪獣娘や家族にだけ向けられるゴジラの優しさに。
ペガッサが好きだった男、恋していた男。多岐沢マコト、ひょろりとした青年で、物腰も穏やかで誰に対しても敬語を使うゴジラとは似ても似つかぬ男。
ただ、良く誉めてくれた。ゴジラも初めて会った時、誉めてくれた。そこから勝手に多岐沢に重ねてしまい、その後の言葉一つ一つに惹かれていてしまった。
「……私はヒロミさんじゃないんだから、ヒロミさんにはなれない」
そう言われて嬉しかった。他人と比べて勝手に落ち込んでいた自分だが、その言葉に救われた。なのに、自分はゴジラを多岐沢と同じ様に見ていた。
「…………戻らなきゃ、お金、払ってなかった」
と、立ち上がった時────
「ここに居たか」
「え?わわ!ゴジラさん……!ど、どうして……?」
「俺は怪獣の気配を追えんだよ…………」
「そ、そうなんですか……あ、そう言えばお金…………もしかして、払わせちゃいました?」
「いや、他の客達が『自分達が払っておくからさっさと追い掛けろ』と……」
どうやら色んな人に迷惑を掛けてしまったらしい。
「ごめんなさいゴジラさん。私…………ひゃあ!?」
「動くな、じっとしてろ」
不意にゴジラはペガッサは肩に担ぐと歩き出した。ゴジラの力ならペガッサがどれだけ暴れようと無駄なので抵抗は直ぐに諦めた。周りの視線が痛い。
「着いたぞ」
「え?あ、観覧車……?」
ゴジラはペガッサを下ろすと向かいの席に座り頬杖を付き外を眺めだした。ゴンドラはゆっくり上り始める。お互い無言。その沈黙をゴジラが破る。
「ん……」
くい、と顎で外を見るように促す。外に目を向ければ日が繰れ、アトラクションを飾るイルミネーションや街の灯りがよく見えた。
「…………はぁ」
思わず吐息が漏れる。星の海を眺めている様な、そんな光景。
「あれが見たかったんだろ?」
「え?あ、はい…………一応」
「確かにまあ、綺麗だな」
「…………はい」
「じゃあ笑え、その涙の跡もさっさと拭いて」
「あ……」
もうしかして元気付けようとしてくれたのだろうか?
「悪かったな。どうも無神経な事を言ったらしい。俺は、そう言うのは良く解らん。中目ぐ……トトに言われてる事は覚えてるが、教わってない事に関してはからっきしだ」
「そんな、悪いのは私です…………私が、博士の事が諦めきれなくて」
「ああ、辞めた奴だったか?別に良いんじゃねーの?」
「結婚してるんです。その人」
「そうか…………で、お前は何かアプローチしてたのか?」
「…………いえ」
「ならそれはお前が悪い」
「………………」
ここで多岐沢なら、きっと『気付けなくてすいません』と言ってくるのだろう。やはり、彼とゴジラは違う。そんな事やっと気付き、自嘲する様に笑う。
「お、やっと笑ったな」
「え?」
「それで良い。そうしてくれた方が、気が楽だし、何よりお前の顔は笑顔の方が、俺は好きだ」
「………………」
たぶん、このお前と言うのは怪獣娘全体を指しているのだろう。決して自分の事ではない筈だ。それは解ってる。解っているが、頬が熱くなる。ゴジラをまともに見ていられず外を見る。冷たく冷えたガラスに額を押し付ける。
全然違う、多岐沢とは、最早重なりもしない。なのに、それなのに……あれほど愛しかった重なる優しさより、重ならない部分の方が気になって仕方ない。
頂点を越え降りていくゴンドラが酷く恨めしくて、時間が止まれば良いのにと願った。
「聞きましたよペガちゃん。ゴジゴジとデートしたんですってね~」
『ぷー』とむくれたピグモンの言葉にペガッサはタラタラと汗を流す。
「でもその後帰り、別れたみたいですね~?帰り遅かったし、何処行ってたんですか~?」
「博士に告白して振られてきました」
「…………へ?」
「何にもせず、しないまま振られてお終い、じゃ……何か違う気がして。きちんと告白して、きちんと振られてきました」
「…………その割には清々しそうな顔してますね?」
「え、そ、そう……ですかね?」
頬を赤くしてもじもじするペガッサを見てピグモンは頭を抱えた。
「何時の間にかペガちゃん本気になってますね~。これ、ピグモンむしろ出遅れてる?」
もしもシリーズ番外編
その後シリーズ(化するかは未定)
HUNTER×HUNTER
「メルエム様、お城捨てちまってよろしかったんだすか?」
「あそこに居続ければ、いずれ余の命を狙う者が再び訪れるからな。あの時、お前は死なずにすんだが、またあの様な事が起こると思うと………コムギ、お主こそ良かったのか?何も持っていない余と共に来て」
メルエムは何処か不安そうにコムギの顔を見る。それに対してコムギは微笑み、目が見えないため手をさ迷わせメルエムの頬に触れる。
「言っだ筈です。お側にいますよ、ずっと……これから先も………」
「………そうか」
コムギの言葉にメルエムは安堵したように微笑んだ。
「しかし、奴には感謝しなくてはな」
「ゴジラさんのごとですか?」
「覚えているのか?」
「あい。ゴジラさんとメルエム様の軍儀は見事なものでした。ありゃあ見てるだけでこっちも頭良ぐなれそうだっだぁ」
「そうか。奴がお主の腕を上げてくれたなら、さらに感謝することが増えた」
「ほがにどんなごとしてくださったんです?」
「余は間接的に奴の血を引いている。とはいえ、母上の中でかなり変質してしまったがな………だが、そのおかげであの兵器に耐えられ、むしろ力が増した」
「?兄弟だったですか?」
コムギの言葉にメルエムは兄弟、か……と顎に手を当てる。
「いや、それはないな………」
このスバ
「ゴジラさ~ん!」
「ん?」
ゴジラがモスラとバトラと歩いていると後ろからゴジラを呼ぶ声が聞こえた。振り返るとローブ姿の豊満な胸を持った女性が目尻に涙を浮かべながら走ってきた。
「やっと会えましたー!」
「………ウィズ?」
ゴジラはしばし呆然とした後、その女性の名を呼ぶ。女性は両手をつきだして突っ込んできた。普段のゴジラなら間違いなくよけるか、あるいは顔面に蹴りを放つであろうがゴジラはその女性を抱き止めた。
「夢じゃ、なかったのか………けどお前、何でこっちに?昔の仲間を待つためにアクセルに残ってるんじゃ無かったのか?」
「はい。ですから、神様達にゴジラさんの世界と私の世界を行き来する力を貰ったんです」
ぎゅっと抱き付くウィズ。ムニュリと胸が潰れモスラとバトラが己の胸を見る。バトラはモスラよりからあるが、彼女程はない。
「あ、ゴジラさんのお知り合いですか?よろしくお願いしま───痛!?」
モスラとバトラに気づき握手しようとしたウィズだが二人と手を繋いだ瞬間シュウ!と白い湯気が立ち上り慌てて手を離した。
「ああ、そういやお前ら神だもんな」
「ふー、ふー………か、神様?言われてみれば神聖な気配が………」
ウィズは赤くなった手を冷やしながら二人を見つめた。
「あ、そうだゴジラさん。そろそろキャベツ収穫の時期ですし、一緒にきません?腕によりをかけて料理しますよ!」
「お、向こうのキャベツでしかもウィズの料理か。いいね、行けるのか?」
「はい!私に触れてくれれば」
「じゃ、いこうぜ。お前等はどうする?」
「「…………」」
後二人の感想を聞くと
モスラ「それはもう、凄かったですよ。何が凄いって自分のお嫁さんを盾にした揚げ句、安全なところからキャベツを捕まえてるんです。しかもお嫁さん自身も何故か喜んでて……さすがに異世界、変わった愛の形もあるんですね」
バトラ「向こうでゴジラは何やったんだって話だよ。変な眼帯小娘に破壊神とか師匠とか呼ばれて………一番驚いたこと?キャベツが飛んでることと意外と行けるって事。後、嫁三人持ってる奴の嫁の一人が宴会芸の神じゃなくて水の神って事」