「逃げろ!おいどけよ!」
「押すな!こっちが先だ!」
「お母さ~ん!」
大混乱だ。突然の爆音に加え、赤く光るマグマの津波を見れば仕方ない事とは言え我先に逃げ出そうとして逆に足を引っ張り合ってる。
「ちょっとちょっと!皆落ち着いてー!」
「慌てて避難するな!怪我人が出てる!」
一般人達より落ち着いている怪獣娘達が叫ぶが聞く耳持たず。人並みに飲まれまともに声を上げる事すら難しくなってきた。と、その時……
「クアアァァァァァァッ!!」
「「「────!?」」」
突如聞こえた咆哮にビクリと身を固める人々。音の発生源を見ると巨大な亀の甲羅を背負い胸から腹にかけて刺青をした少年が立っていた。
「落ち着いて避難してください。それと、足元……」
その言葉に何名かが漸く気付いたかの様に踏み付けていた者を見る。幸いまだ息はしている。
「老人、子供、怪我人を運んでください。人を突き飛ばす元気が有るなら出来るはずです」
その言葉に罪悪感を消す為動き出す。先程よりゆっくりと、しかしスムーズに避難を再開した。
少年、トトはその光景を眺めた後
「……駄目、なの?」
と、今にも泣きそうな顔になるデスギドラだが生憎ゴジラの良心はその程度では罪悪感を覚えない。
が、不意に違和感に気付く。
見捨てられた子犬の様な目と同時に、困惑の色を浮かべモスラを見ていた。
「………………」
取り敢えず、モスラを守る様に移動すると困惑の色が強くなる。
「……何で、守るの?」
「あ?」
「可笑しい、だって……貴方は違う。そんなんじゃ……独りで、寂しそうで、仲間なんて居るはずない……」
覚束ない足取りでゴジラから距離をとるデスギドラ。目の前の光景から逃げるように、信じられないというように後ずさる。
「独り?寂しい?ああ、成る程……確かに俺はその感情を知ってる。けど、もう寂しくない。俺には仲間が居るからな」
「仲、間……?そいつ等は、貴方を理解してくれるの?貴方の孤独を知って、解って、接してくれるの?」
「…………成る程確かに。スペゴジやオルガは少しなら解ってくれるだろうけどスペゴジは直ぐに俺と言う同族が居るのを知っていたし、オルガは元々宇宙の何処かに仲間が居るのを知っていた。ヘドラやシノムラ、デストロイアは群体だしな……ミニラやリトルは直ぐに俺が居た。アンギラスは出会った当初は本能のまま動く獣だったし、知能が付いた頃には舎弟だったからなぁ……確かに俺の思いを理解してくれる奴なんて居ないな」
「でも!でも私なら、その思いを理解出来る……貴方の事を、誰よりも解ってあげられるよ……?だから、こっちに来てよ……」
縋る様に再びゴジラに歩み寄るデスギドラ。が、ゴジラの応えは変わらない。
「断る。確かに、まあ理解してくれねーだろうけど別に理解を求めた覚えは無いしな。此奴等はもう俺の仲間で、お前はそれを傷付けた。それだけだ」
「やだ!」
「……はぁ?」
子供の癇癪の様な言葉にゴジラが顔をしかめる。
「イヤだ、イヤだ!何で私だけ……同じなのに、貴方も、私も、孤独だった。独りだった!理解し合えるのはお互いしか居ないのに……」
「………………」
「何で?貴方は生命だったから?私も生命になったのに、どうして私だけ愛されないの……?ずるい、そんなのずるい!一人だけ愛されるなんてずるい!」
「おま────ッチィ!」
ゴジラが何か言い掛けるがそれより早くマグマの海が脈動し火柱がゴジラを飲み込む。ただのマグマなどゴジラにとっては目隠しにしかならないが言葉を中断されるには十分だ。
「私のモノにならないなら、お前なんて消えてしまえ!」
「こ、の……駄々捏ねてんじゃねーぞクソガキがぁ!」
ガチン!と歯を噛み合わせる音が響くと同時にゴジラの体からエネルギーが溢れ出し周囲のマグマが吹き飛ばされ赤く黒く変色した地面が曝される。
「──!?」
足場にしていた粘度の高いマグマが吹き飛びバランスを崩すデスギドラ。ゴジラは地面を尾で弾きデスギドラに向かって飛ぶ。
「頭冷やせ!」
「ぐ!?」
そう言って地面の裂け目にデスギドラを叩き落とす。『其処に入れては逆に熱くなるだけでは?』と思ったモスラは悪くない。
「どうして、どうして私を受け入れてくれないの!?何時も、何時もそう!皆私を否定する、私はただ同じになりたいだけなのに!」
マグマが蠢き蛇の様な形のなってゴジラを飲み込む。デスギドラの前世では使われなかった、使えなかった技。人の知能を手に入れ行われた攻撃。
濁流の様な流れに飲まれ地面に何度もぶつけられるゴジラだが地面に手を突き刺し流れから解放される。
「じゃあ、俺とお前は違うな。俺は孤独だった時、理解を求めようなんてしなかった……」
「………………」
ゴジラの言葉に出会った当初を思い出したのか悲しそうな顔をするモスラ。ゴジラは地面を蹴り砕くと瓦礫をデスギドラに向かって投げ付ける。
「嘘を、つくな!」
「嘘じゃねーよ」
デスギドラは拳を爆発させて岩を砕き、ゴジラに迫る。ゴジラとデスギドラの両掌が互いに掴み合い、デスギドラは龍の顎をゴジラの首と脇腹に噛み付かせる。
「あれが、あの孤独が……独りで耐えられる訳ない!寂しくて、苦しくて……理解者が欲しくて堪らなかったはずだ……!」
暗い暗い空間で、ソレは意志を持った。
自分が何者か解らず、何を求めているのか解らずさ迷い続けた。初めて意志を持つ者に出会うと、何かをする前に攻撃された。やり返すとあっさり死んだ。同じ力で返したのに。
相手は死があって、ソレには死がなかった。
永い時の中ソレは思考し続けた。自分が何者なのか、ソレ以外が何なのか。
自分以外は何時も傍に何かをおいていた。同族であったり異種族であったり、果ては機械であったり。同じ様に独りかと思えば遠くに同族が居る奴も居た。
それを見て同族を探した。見付からず、ならば彼等に混じりたいと姿を真似た。それでもなお、恐れられた。姿の元にした種族にも拒絶された。
彼等と自分は違うから、彼等の様になりたいと願った。
なり方が解らず、彼等から彼等をそうたらしめる力を奪い続けた。何時かそうなれると信じて。
「生憎、俺は寂しさと無縁でな!」
暗い冷たい海の底で、そいつは目を覚ました。
自分が何になったのか解らず、仲間を求めて彷徨った。同族の大人達より巨大になった体、面影を僅かに残しただけの本来成長すべき姿とは違った形。
仲間は死に絶え、そいつが生き残った。
自分がそうなった原因を考えた。仲間を殺した奴らを捜して、見付けた。
そいつ等は自分が失ったモノを持っていた。家族を、友を、群を持っていた。
だから殺した。
だから壊した。
だから奪った。
二つの存在は繰り返す果てに奇しくも同じ事を思った。
虚しいと。
その後、片方は孤独のまま、止まる事も出来ずに繰り返した。
その後、片方は同族ではないが仲間を手に入れ、後に同族に出会った。
ゴジラは思う。『自分もこうなっていたかもしれないと』
デスギドラは思う。『自分もこうなりたかったと』
「私だって、欲しかったのに……私の方が永く苦しんだのに。たった一人でも傍に居てくれる人が居れば良かったのに、どうして私には何も無い!どうしてお前に有る!?」
ゴジラに噛み付いた龍の顎が爆ぜ首と脇腹の一部を炭化させ砕く。死滅した細胞が邪魔をして再生を阻害するので引き千切り無事な細胞で再生する。
「あの戦い方では、いけない……」
モスラはフラフラと立ち上がり、しかしバランスを崩しへたり込む。
「どう言う事?」
ゼットンの問い掛けにモスラはゴジラとデスギドラを見る。
「一つ、違和感が有りました。デスギドラが、明らかに前回より力を増している。嘗て圧倒したはずの私が追い込まれている…………ですが、半分間違いでした。デスギドラが強くなっているだけでなく、私が弱くなっている。力を吸われて…………」
デスギドラが植物の生命エネルギーを好むのは効率が良いから。別に動物から吸えない訳ではないのだ。動物からも吸えるし、怪獣からでも。
「持久戦になれば、有利なのはデスギドラです……如何にゴジラと言えど────」
と、その時ゼットンが張った壁にデスギドラが激突した。直ぐ様翼を広げるデスギドラ。入れ替わる様にゴジラが壁に飛び付き、蹴り付け空中のデスギドラに迫る。
「っぅ────!」
「────ッ!?」
デスギドラが涙を流し、ゴジラを睨む。幼い子供が約束を破られ悲しんでいる様な顔。ゴジラの動きが、初めて止まる。
「がぁ!」
「ぐっ!」
デスギドラが口から放った火炎弾を諸に食らい落下するゴジラ。押し退けられたマグマは既に戻っておりマグマの海に沈む。
欲しい……欲しい。
何かが欲しい。満たしてくれる何かが。
家族は満たしてくれなかった。理想の子供を演じたはずだ。我が儘を言わず、言われる前にやり、いじめにも荷担せず愛されようとした。なのに愛してくれなかった。捨てていった。
それでも、漸く見つけた気がした。自分と同じ目をした彼を見つけて、彼となら孤独を癒し合えると思った。それなのに、どうしてこんなにも虚しい。
「う、あ……あぁ……──!」
涙が止まらない。嗚咽が口から勝手に漏れる。
何がいけない?自分が不死だからか?それは家族にバレていないはずだ。彼もまだ知らないはず。
彼の仲間を傷付けたから?それなら彼は仕方ない。でも家族は?家族の前で、誰かを傷付けたりなんてしてない。
「何で、どうして……皆私を遠ざけ…………愛されたいだけなのに、傍に居て欲しいだけなのに…………────?」
と、不意に違和感に気付く。
下はマグマの海、故に上空もかなりの高熱。熱に強いが熱は感じる、筈なのにその熱が消えた。いや、弱くなった。
見ればマグマが固まって岩になっていく。『雨でもないのに、急速に冷えた様に』と、固まった岩を蹴破りゴジラが出てきた。
「ぷは……ああ、くそ。全然足りねー…………」
背鰭を赤く発光させたゴジラが言う。ゴジラは周囲のエネルギーを吸収する事が出来る。だから千年竜王の力を奪い利用したし、別の世界線に於いても放射能を発さないプラズマ発電所を態々襲った。
今回は溢れ出たマグマの熱エネルギーを吸い尽くしたらしい。
「────!?」
ゾクリとデスギドラは覚えの無い何かを感じる。と、同時にゴジラの口からマグマの様に赤い熱線が放たれ、デスギドラの横を通過した。
「──────」
空へと消えていき雲を凪払った光景を見る事なく、デスギドラは地面に降りペタリと地面に腰を落とす。
全身から球の様な汗を流し、焦点の定まらない瞳で何処かを見詰める。
不死と不滅は違う。デスギドラに死と言う概念は無いが、器が有って初めて存在出来る。今の攻撃は、その器を完全に破壊しかねない威力だったのだ。
初めて覚える恐怖に、デスギドラの思考と体は止まった。
「…………」
「ゴジラ…………」
そんなデスギドラに近付いてくゴジラを見てモスラは思わず声を掛ける。まだ、ゴジラにはデスギドラを消滅させるだけの力が残っている。そんな事をするとは思いたくないが……と、背鰭から赤い光りが失われていく。
取り込んだ過剰なエネルギーを排出しているのを見て、モスラはホッと息を吐いた。
「おい……」
「ヒッ!」
デスギドラは初めて感じる恐怖に、恐怖を与えたゴジラに怯えきり後退ろうとするも腰が抜けて動けない。
「最初に言っておく。俺は、お前を愛する事が出来るかどうか解らん」
「…………へ?」
「ただ、お前が俺を愛したいと言うなら止めはしない」
「…………」
「一つ教えてやろう。お前が愛されなかったのは、孤独だったのは、誰も愛そうとしなかったからだ」
ゴジラは思い出す。前世を、孤独だった時を。
心の中には誰も住んでいなかった。空っぽだった。
「世界線の一つで俺は愛する家族を見付けた。最初は怯えられたがな……だから一度引いた。その子が俺を愛さなくても、その子が居ると言うだけで俺は満足だった」
「その子が…………貴方を愛さなくても?」
「ああ…………だから、お前も誰かを愛してみろ。求めてばかりじゃなく、受け入れてみろ。それで世界はガラリと変わる」
「私は……独占欲が強い。きっと嫉妬する」
「そうか」
「ひょっとしたら、またこうやって暴れるかもしれない」
「ならまたこうやって止める」
「私は、貴方を愛して良いの……?」
「応えられるかは解らねーけど、それで良いならな」
「……身勝手」
「知ってる。まあ俺みたいな男なんてきっと直ぐに飽きるさ。愛し方が解ったらまた誰かを愛せば良い。それまで、気が済むまで付き合ってやるから」
その言葉にデスギドラは再び涙を流す。頬を濡らす涙は、不思議と暖かく感じた。
「その後モスモスが自然を復活させたんですか。すごい力ですね~……で、何時までそうしてるんですか~?」
と、報告書を読み終えたピグモンはゴジラの膝に座り、抱き付き頬擦りするデスギドラを見て黒い笑みを浮かべていて。
「私の気が済むまで」
「ゴジゴジも迷惑がってますよ~?は・な・れ・る・です!」
「私は別にゴジラに嫌われても構わない。嘘、それは辛いけど、ゴジラを愛するのは変わらないしそれでも満足。もっと欲しくはなるだろうけど、今も十分満ちている」
「…………」
「それに私は想いを告げている。想いを告げた女の前で好き勝手やられたら、文句を言う資格は有ると思うけど、何もしてない奴にはとやかく言う資格は無い」
「………………」
デスギドラの言葉に気圧されるピグモン。そして、はぁ……と溜め息を吐いた。
「兎に角、GIRLSへの入隊、歓迎します。よろしくですデスギちゃん」
オカタヌキさんのリクエスト
もしもゴジラがケロロ小隊と遭遇して、宇宙でも超絶危険生物として警戒されてたら。
「クックック~……怪獣娘、なかなか面白いじゃねーか」
コンピューターだらけの部屋の中、黄色い小さな影は楽しそうに笑った。
「GIRLSのコンピューターが民間人にハッキングされた?三式機龍やオルガ、メカギドラ達のおかげでかなり強化されたんじゃないのか?」
「強化された状態で、ハッキングされたんです……調査に行ってもらえますか?」
「りょーかい」
「ここか……」
ゴジラは日向という標札が立てかけられた家の前に立つ。傍目から見たら普通の家だが、本当にここからなのだろうか?まあオルガ達が逆探知に失敗するとは思えない。失敗したとしたら相手が悪すぎたと諦めるしかない。
と、扉を開けようとした時
「このボケガエルー!!」
「ゲロー!?」
「…………」
「ゲロンパ!?」
廊下の向こうから何かが飛び出してきたので地面に叩きつける。ベチン!と床で潰れボンボン跳ね回る緑色の何か。
ドチャ!と床に転がったそれを見るとカエルみたいな何かだった。
「何すんじゃコラー!」
「………」
ギュムと踏みつけるゴジラ。何だろうこの珍妙な生物。
「あ、ごめんなさい!って、誰……?」
「ゲロ……夏美殿、この男我が輩が見えてるであります!?」
「………え?」
「ん?」
「あんたまたなんか悪さしたのねボケガエル!すいません、きつく言い聞かせておくので」
「我が輩知らぬでありますよー!」
「じゃあ誰がやんのよ!」
「俺だぜ。ククク」
「此奴はX星人つー絶滅種族の能力をコピーした怪獣の意志など知ったこと
「操って、何だ?」
「クク!?」
「此奴は持ってくぞ。処断はピグモンに任せる……まあ、光りの戦士とやらに習ってぶち殺すのも手っ取り早いんだろうが」
「ん?何だ、ここ……お前の仕業か?」
「ここは仮想世フィールドだよ。どうやら来てくれたみたいだぜぇ、クックック~」
「ペコポン人、クルルをおいていって貰おうか」
「…………」
「ぬおおお!」
「タママインパクトー!」
「ミサイルに、小粒みたいなエネルギー弾。なめられたもんだなぁおい」
「零次元斬!」
「ん?まだ居たのか……」
「ッ!?拙者の脇差しが………」
「取り敢えず攻撃の際に叫ぶのか。俺もお前等の流儀に従ってやる。体内放射!」
「やばくねー!超矢べーって!どーするどーする!?」
「おじさま、ここは私が!ハルマゲドン!1分の1!」
「!?」
「どわっつ!?」
ケロロ小隊最大火力を誇るモアが本気の攻撃を放った瞬間、ゴジラの体が赤く発光し右手に捕まれていたクルルが燃え上がりゴジラの口から赤い熱線が放たれる。
「く、う……!?」
最初は押していたが徐々に威力が増していき、勢いを失ったモアは段々と押されていく。
「きゃあああ!」
「モア殿ー!?」
「ぐ、くそ……一気に威力底上げしすぎた、身体が……」
「………あり?これは大チャンス?ゲロゲロリ!覚悟ー!」
「少ししか動かねー」
「ゲロ!?」
「と言うわけで地球侵略をもくろむ宇宙人を捕まえてきた」
「宇宙人って、まだ地球に残ってたんですねー」
「やばくないー?見逃してもらったけどやばいってー……ペコポン侵略始めたらまた彼奴等と戦うんだよ。しかもあのギドラ族の力持ってる奴やケロン星でも名前が残ってるデスギドラまで居るんだよー。勝てる訳ないじゃん!もう諦めてさ、ガンプラでも付くってよーよー」
「貴様さぼりたいだけだろう!」
ハルマゲドン、映画じゃメールに押し負ける程度の威力だし無限に威力が上昇するバーニングモードならたぶん勝てる