「ソウルライザー?」
ゴジラはピグモンから渡されたスマホのような機械を見詰める。
「はい~。これがカイジューソウルから正しい形で力を引き出すための機械ですよ~。これでゴジゴジも怪獣の力を使いこなせますよー」
「ゴジゴジ?しかし、怪獣の力か……」
覚えてないが不良を伸すのに使っていたらしい。
ゴジラ自身自覚はないが、アギラ曰わく無意識に傷付け過ぎないように手加減していたとか。
「ゴジゴジは暴走状態とはいえ変身してましたから直ぐに出来ると思いますよ~。ソウルライドと叫ぶだけです!」
「ソウルライド……ゴジラ」
と、ゴジラがソウルライザーをスライドするとどす黒いオーラが全身から溢れ出す。
そして──
──憎イ壊セ殺セ破壊シロ消セ滅ボセ壊セ壊セ壊セ破壊破壊破壊破壊破壊破壊破壊破壊破壊破壊──
「────!?」
光が霧散して変身していないゴジラが居た。
「…………?」
「……あれ?」
「声、ですか~?」
「ああ、破壊しろとか、滅ぼせとかな……」
ゴジラの言葉にピグモンはんー、と考え込む。
「ひょっとしたら、防衛本能かもしれませんね」
「ボエーほんのー?ジャイアンの歌?」
「ミクさん、防衛本能です」
ピグモン曰わく、ゴジラのカイジューソウルは前世の記憶を引き継ぐ程濃い(という表現が正しいのかは解らないが)ので、暴走時と同じスイッチでは前世の人格に呑まれる可能性があり、身体がそれを恐れているのかもしれないとのこと。
「どうすれば?」
「うーん……また別の切っ掛けによる変身をすることですかね~」
やはり前例がないので確定は出来ないらしい。
しかし別の切っ掛けとは。カイジューソウルは本人の性質もそうだが中には前世の性質が影響する者も居るらしい。人間の味方だったピグモンは人間が大好き、ウルトラセブンという地球の味方は人を守る、といった具合に。
「俺の変身方法ねぇ……」
アギラ達が遠征で札幌に向かっている間する事も無く暇なので町をぶらついている。
寄って来る犬猫を撫でながら肩に止まってくる鳥の頭を指で擦する。この辺りの動物は虐められていたところを助けた者達だ。
彼等を虐める者達を見て、ゴジラは怒りを覚え変身した。結果理性を失っていたわけだが。
ソウルライザーが最初からあったわけではないだろうし、ソウルライザー無しでも暴走しない変身だってきっと出来るのだろう。
「悩み事?」
「ん?なんだ、ゼットンか」
「ん……」
ピポポポと独特の音を響かせるゼットンはそのままゴジラの横に座る。
「変身の事?」
「まーな。確かに思い返せば俺って、結構力に呑まれてた節があるし」
「でも貴方は、殺そうとまではしなかった。前世の貴方に勝った証拠。きっと直ぐに操れるようになる」
「…………かねぇ?」
ゴジラは背を曲げ頬杖を突きながら呟く。いざ自分の意志で変身しようとした時、今まで変身していた時の感覚を思い出した。前世での力の使い方もだ。どういう時に使っていたのかも覚えている。
怪獣娘が戦闘を行えるのもそうやって己の力の使い方が分かるからだろう。
「俺は何時も気に入らないモノを壊すために力を振るってた」
「私だって、そう……」
「?お前、覚えてるのか?」
「前世の記憶はない。でも初めて力を振るった時にどんな事に使ってたか感覚で思い出せた。私達の前世は、怪獣。凶暴な怪物。貴方は前世の記憶を覚えてるだけ。それ以外は私達と同じ」
「…………慰めてんのか?」
「そのつもり」
ゴジラも資料で見たがゼットンの前世は宇宙恐竜と呼ばれており、光弾を飛ばしたり火球を放ったりと結構暴れていた。レッドキングやエレキングもだ。
アギラ達三人組は人間の味方だったが。
「にゃん!」
「お?」
と、考え事をしているとゴジラの膝の上に何かがピョンと飛び乗ってくる。猫だ。他の猫達が不満そうな声を上げる。
「よしよし。喧嘩するな。順番な……なんなら、そっちの女に撫でてもらえ」
「え?」
「にゃ!」
ゴジラの言葉に猫達がゼットンに向かって跳ぶ。ゼットンとて女の子だ。可愛いモノは大好きだし、温い猫ともなれば尚更。はわわ……と頬を紅潮させ猫に恐る恐る手を伸ばすゼットン。
「にゃぅ」
「ほわぁ」
猫に頬摺りしながら破顔するゼットン。こういう一面もあるのか。意外だ。
「はっ!」
「…………」
ゴジラの視線に気付いたゼットンは猫を離し赤くなり俯く。
「良いんじゃねーの?女の子らしくて……」
「……女の子、らしい?」
ゼットンはキョトンと首を傾げる。怪獣娘は変身していない時でもうっかりドアノブを破壊することもある程、人間離れしている存在だ。力に目覚めてから、女の子扱いされたことなど同じ怪獣娘内でしかなく、男の子に女の子扱いされたのは何時以来だろうか。
「ん?おう、女の子だろ?」
「………………」
「あれ、もしかして照れてる?」
赤くなったゼットンにゴジラがそんなことを言うがゼットンは反応出来ない。
「ゴジラは、動物を守ってたのよね?好きなの?」
「多分前世の影響なんだろうな。俺は人間を汚い部分から見る癖がある。逆説的に動物の方がまあ、好きだ。あと子供」
「…………」
「子供、か……そういえば俺は、前にも何かを守っていたような……大切な、何かを……」
「…………ッ!?ゴジラ!」
「ん?」
ゼットンの叫び声に反応して正気に戻るとゴジラは自分の身体が青白く光っているのに気が付く。
「…………ソウルライド!」
ソウルライザーをスライドしながら叫ぶと『SOUL RIED』という文字が浮かび上がり、ゴジラの体を眩い光が包み込む。
それは徐々に形を為していき、黒いコートにロングパンツ、長い尾に顔の下半分を覆う口元が開いた牙を模したハーフマスクへと変貌した。
「…………出来た」
「おめでとう」
ゴジラが呆然と自分の姿を見詰めているとゼットンがパチパチ拍手をする。足元の動物達もお祝いするように吠えた。
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