前世の記憶を持つ怪獣娘は、ピグモンの知る限りゴジラだけだった。しかし彼女達はゴジラとは前世の知り合いだと言う。
「前世からの縁、ですか……」
「そ、前世じゃコイツに殺されてね」
「まあ断片的にしか覚えてないがな。前世の記憶はあるが他人の記憶を見ている感じだし……実際に見れば思い出せるんだが」
「は?」
「へ?」
「あん?」
ゴジラの発言にバトラとモスラがキョトンと目を見開き、その反応にゴジラも首を傾げる。
「断片的に……?あなたは、全てを覚えているわけではないんですか?」
「いや。そもそも記憶自体最近取り戻したしな……」
「…………最近?」
モスラは最近と言う言葉に首を傾げ、バトラも同様に訝しんでいた。
「お前等は違うのか?」
「あ、はい。私達姉妹は物心付く頃……凡そ二歳位の頃、前世を思い出しました」
「だから直ぐにアタシはアタシだ、って思えたな。しかしなるほどなぁ……お前が前世と違って大人しいのは人間として過ごした記憶が有るからか……」
バトラは前世でのゴジラの凶暴性を思い出し納得する。テリトリーを侵した者、邪魔をした者、例外なく敵意を持ち執拗に追っていた彼が大人しいのは、見た目からして10数年の時を人の社会で過ごしたからなのだろう。親しみを持つ者を殺そうと考える者はまずいない。
「そうですか。あなたが人に歩み寄ってくれて、何よりです」
「歩み寄るも何も思い出したばっかりなんだって……それに、完全に記憶を思い出したらどうなるか俺にも分かんねーぞ?」
「その時は私が止めます」
モスラはニコリと微笑む。実際、黒星続きのゴジラはチッと舌打ちしただけで文句は言えなかった。
「でもでもモスラちゃん、ゴジラはめっちゃ強いよ?」
「大丈夫だって、モスラはゴジラに百回は勝ってるもんなあ?」
「そんなに負けてねーよ嘘ぶっこくな虫けら」
「…………」
ゴジラの言葉にバトラが顎をクイっと引き、ゴジラが頷くと肩を回しながら歩き出す。
「二人とも、喧嘩しない」
「チッ!」
「けっ……」
モスラの言葉に二人は舌打ちをして立ち止まる。
「しかし確かに。あなたが前世の記憶に目覚めたばかりなら、何れ前世の記憶に飲み込まれる可能性は十分にありますね……」
「へぇ、ならどうする?」
「近くで見守ります。どうせ、何時かはGIRLSには入るつもりでした。現状、世界の敵であるシャドウと戦うには私とバトちゃんだけでは力不足ですから」
「…………」
バトラは不満そうだが否定はしない。彼女自身、自分で出来ることは弁えているようだ。
「如何でしょう?」
モスラの提案にピグモンはにっこりと微笑んだ。
「新しい仲間が出来るのは大歓迎ですよ~。戦闘能力もゴジゴジのお墨付きなら問題なさそうですし、筆記テストは受けてもらいますけどね~」
「はい。よろしくお願いします」
モスラも笑顔を返し、右手を差し出す。ピグモンも同様に手を差し伸べお互い握り合うと微笑み合った。
「ほえ~、するとそちらの世界ではウルトラマンもいないのに怪獣の脅威に曝されていたのですか~」
ピグモンはモスラの話を興味深そうに聞きながらメモを取る。異世界から此方の世界にやってきた怪獣はいる。正確には異次元から怪獣として、だが。しかし前世の記憶として異世界の怪獣として過ごした者はゴジラやモスラ達が初めてなのだ。
「ゴジラから聞いてないのですか?と、そういえば彼は断片的にしか覚えていないのでしたね」
「はいなのです。それにしてもゴジゴジは暴れん坊さんだったですね」
「住処である海を汚された、喧嘩を売られた、エネルギーを欲した……まあいろいろありますが、確かに暴れん坊でしたね」
「モスランも大変でしたねぇ。でもでも、今のゴジゴジは良い子ですよ~」
「ええ、私も信じています。彼は時に人間の敵と戦っていたのですから……まぁ、敵の敵は味方、という考え方を出来ない子でしたが……でも、大切な者の為には頑張る子でもありました」
「フェックシ!」
破壊された車や道路の瓦礫を運ぶ作業をしていたゴジラはくしゃみをして鼻を啜る。何処かで誰かが噂でもしているのだろうか?
そして翌日、入隊の合否が発表された。全員問題なく合格。正規の職員になったわけだ。アギラ、ミクラス、ウィンダムは手を取り合い喜び、モスラもバトラを抱き締め、やったー!と叫ぶ。ゴジラは余った。
「ゴジゴジ、少し屈んでもらえます?」
「……?」
言われた通り屈むとピグモンはゴジラの頭に手を乗せる。
「良くできました~。偉い偉いですよ~♪」
「…………」
「……っぷ」
頭を撫でられ微妙な表情をしたゴジラをバトラが笑った瞬間ギロリと睨む。
「むぅ……これは……」
ピグモンはGIRLSの前に置かれていた大きなダンボールを見て眉間に皺を寄せる。
「ふぁ~、おはようピグちゃん。ん、どったの?」
と、そこへ寝起きのミクラス達がやってくる。
「い、いえ実は……」
「…………これは」
ピグモンが言い辛そうにしているとモスラはダンボールの中を覗き込み、ピグモン同様顔をしかめた。
「…………来たばかりなので解りませんが、よく有る事なのですか?」
「有りませんでした。が、世間では私達を疎む者がいるのも事実です……」
「……?……あ」
アギラも中身を覗き、声を漏らす。中には四歳ほどの子供が寝ていた。黒い髪の女の子だ。
「『この子はあなた達と同じ怪物です。怪物同士で育ててください』……?何これ!?」
「怪獣娘を良く思わない人は少なからず居ますからね。怪獣娘がその気になれば人間なんて簡単に殺せちゃいますから……」
ミクラスがダンボールに入っていた手紙を見て叫び、ピグモンが悲しそうに言う。
「まあ、だとしてもこの子の親にはそれなりの罰を受けてもらいますけどね~」
ピグモンはそう言うとダンボールの中の少女を揺する。
「……んみゅ…………ふみゃ?」
少女は目をゴシゴシ擦ると寝惚け眼で周囲を見渡す。
「…………お姉さん達、だあれ?」
「私はピグモン。貴方と同じ怪獣娘ですよ……貴方のお名前を教えてもらえます?」
「…………パパは?」
「……お父さんは、今はここには居ません」
少女は寝惚けてピグモンの言葉がまだはっきり聞けないのかボッーと虚空を見てゆらゆら揺れる。
「貴方のお父さんとお母さんはどんな人なんですか~?探しますから、教えてください」
「…………パパはゴジラ」
「そうですか。パパはゴジゴジ…………」
「………………」
「………………」
「………………」
「?」
少女が発した言葉に一同が固まる。と、そこへ丁度寝起きのゴジラが欠伸しながら現れる。
「ふあぁ…………ん?何だそのガキ」
「「「「ゴジラぁ!」」」」
「ゴジラさん!」
「ゴジゴジ!」
「え?なに?」
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