リトルがママと呼んだ女性を見て、ゴジラは前世の記憶を探る。赤い髪……リトルが親扱いする…………。
「…………ラドンか?」
「──ッ!?貴様…………何者だ?」
ラドンと呼ばれた女性は警戒した様子でゴジラを睨む。この反応から察するに彼女は前世の記憶を持っているのだろう。
「…………ゴジラだ」
「……ゴジラ……?ゴジラ!?ゴジラか!」
ゴジラの言葉に首を傾げた女性だったが次の瞬間には満面の笑みを浮かべる。そして次に腰に飛び付いてきたリトルを抱き上げる。
「じゃあお前は……えっと……そういえばこの子に名前を付けているのか?」
「リトルだ。未希がそう呼んでいた……」
「リトル……リトルか……そうかそうか」
キャッキャッと笑うリトルに優しい笑みを向ける女性。なるほど確かに母親に見える。リトルも良く懐いている。彼女もまた前世からの因縁なのだろう。
「ラドン、お前怪獣娘なのか?」
「怪獣娘……?ああ、まあ世間一般にそう呼ばれている存在ではあるな……しかし、お前も来ていたとはな。念のため聞くが、あの後死んだ訳じゃないだろうな」
「俺にゃ色々な世界の記憶があるが、あれに殺された記憶はないな……」
「そうか。ちゃんとこの子を守れたのか……」
「俺の唯一の同族だからな」
「ん。そして私の家族だ……」
ゴジラ、正確にはゴジラザウルスは托卵というカッコウのような生態を取る。ラドンは卵を託された存在。彼女に取ってリトルは育てるべき、守るべき仲間であり、家族だ。
「俺は今GIRLSに所属して、リトルとそこの寮に住んでる。お前はどうする?」
「むぅ……GIRLSか。別段人間を守りたいという意識はないが、世話になっていた両親に恩返しはしたいからな……」
「へえ、そんな風に考えられるのか」
「生前私は天涯孤独だったのだぞ、家族と言ってくれる者達に、思い入れが出来ないはずがない」
「へえ、そりゃ……家族に恵まれたな。こちとら捨て子だってのに……」
と何でもないことのように自身の過去を一つ教えるゴジラに、四人は目を見開く。確かに、彼が家族と連絡を取った所を見た事がないが、まさか家族が居なかったとは。
「おまけに人嫌いだ。施設でも友人なんて出来るはずもない」
「……そうか。まあ、安心しろ。今日から私が貴様の今世初めての友人になってやる」
「いや、友人ならもうアギラ達が居る。今世では十分恵まれてるさ」
と、打算も裏もない素直な感想にアギラ達が照れ臭そうに頬を掻く。
「そうか。それは何より。で、私はそのGIRLSにはどう所属すればいい?」
「怪獣娘なら入隊条件は満たしてる。しばらくは実習、んで試験を受けて正職員って流れだ」
「話は分かりましたよ~。よろしくお願いしますねラドラド」
「ら、ラドラド?ま、まあよろしく……」
ピグモンの名付けた名に困惑しながらも手を握るラドン。
やはり彼の世界の出身の怪獣娘には前世の記憶があるようだ。
「ゴジゴジは世界が嫌って追い出した代わり、此方の世界に侘びとしてゴジゴジと嘗て戦った、抵抗出来る戦力を送ってくれた、と推理してましたが」
「なら違うな。確かに私はゴジラと敵対した事もあるが、基本的には奴と共闘していた事の方が多い。奴と争えばリトルが悲しむし、何より私個人、奴を嫌ってはいない」
その言葉にピグモンを気付かず笑みを浮かべていた。前世の自分は世界に嫌われ、拒絶されるような奴と言いながらモスラは彼の行く末を案じていたし、リトルは彼を慕い、そして目の前の女性も彼を快く思っていた。何だ、彼にもきちんと、向こうに居場所があったのだ。その事に、何より安堵した。
「まあ強いて言うなら、彼奴への前世の怒りは合体した時か……」
「…………んん?」
「本当は私が主導権を握るつもりだったというのに、奴め中々どうして強すぎて、逆にな…………」
恥ずかしいのかはたまた別の理由か、ラドンは頬を赤く染める。
「いやまあ、嫌ではなかった。むしろ、その……あの暴力的な力に振り回されるのは中々心地良かったのだが……」
「そ、そそそ、そうですか……」
カタカタと紙コップを持つ手が震え中身がチャプチャプ掻き混ぜられる。
何という生々しい感想なのだろうか。いや、そもそも前世ではお互い種が違っていたはずでは?そういうのも越えた関係だとでも言うのか。
「まあ、その後すぐに意識を失ってしまったのだが」
「は、激しかったんですね……」
「全くだ。彼奴は加減と言うもの知らん……」
と、その時、背後からピポポポという音が聞こえてきた。振り返ればそこには顔を赤くしたゼットンとアギラ、ミクラス、ウィンダムの三人。
「……………………」
後日ゴジラが女性陣に謎の説教があったとかなかったとか。