ゴジラ達はシャドウを相手にするが中々減る様子がない。発生率の高さと言い、巣でも近くに有るのだろう。GIRLS沖縄支部の職員は捜索に向かった。
そして数分後にシャドウの巣を殲滅したという報告が来た。
「よーやくか…………」
と、ゴジラ達が肩の力を抜いたその時──
「おまたせー!わんが来たからもう安心さー!シャドウなんてたっぴらかすヨ!」
と、褐色肌の少女が現れた。
額には王冠のような物が有り、動き易そうなエイサーを改造したような服を着ており足は裸足。ふわふわとしていそうな金髪が茂った頭には大きな犬のような耳が二つ揃っている。
「お前がキングシーサーか?」
「むん?誰だ?わんはなーみたいな奴は知らないぞ。それよりシャドウは?」
「遅刻だバカが。たく、前回と言い中々起きねーし、役に立たねーし、使えねー守り神だな」
「な!?誰が使えないか!わんはここ最近ずっとシャドウを…………アンギラスにたっぴらかせてたさー!」
「おい待て、アンギラスはお前のパシリじゃねー。俺のパシリだ」
「え?」
ゴジラの言葉にアンギラスがゴジラを見る。しかし思い返せば否定出来ない気もする。
「で、シャドウは何処ダ?」
「もう終わ──」
った、と言おうとした瞬間ソウルライザーが震える。またシャドウ反応。しかも、シャドウビーストだ。
「あー!?」
そして地面から現れたシャドウビーストに吹き飛ばされるキングシーサー。今回のシャドウビーストは二本の角が前方に突き出した牛の顔を持つミノタウロスのようなシャドウビーストだ。
見た目完全にパワータイプのシャドウビーストは、角の先端から雷を放つ。
「効くか!」
しかしゴジラは前世に於て落雷を吸収し体質改変をした過去を持つ怪獣。この程度の電気なら逆に吸収してしまう。そして今のゴジラには、人の知恵も存在する。
周囲の砂鉄を磁力で引き寄せると拳に纏いより堅く、より重く拳を作り変えていく。嘗ての皮膚にも重さにも到底及ばぬ、しかし強力な一撃はシャドウビーストの腹部を文字通り吹き飛ばした。
記憶持ちの怪獣娘は一度本部で保護すると言う事らしいので、アンギラスと気絶したままのキングシーサーを連れ飛行機に乗ったゴジラ。未だ体質は変わっているままだ。変身していないからか、ネットに載る磁石人間程度だが。
「なあ、なんかピリピリすんだが……」
「我慢してくれ。もうちょいこのままにしておきたい」
と、ゴジラが言うとバトラは不服そうに席に座り直す。
「……お前、何を警戒している?」
バトラの言葉にモスラとアンギラスもゴジラを見る。バレていたようなので、ゴジラは肩をすくめて口を開こうとした時、周囲が騒がしくなったのに気が付く。
どうやら窓の外を見ているようだ。
「やっぱ来たか……彼奴が最後に受けた命令、間違いなく俺と役立たずの打倒だもんな」
と、ゴジラはキングシーサーの首根っこを掴むと引き摺りながら歩き出す。
「アンギラス、ちょっとドア開けるがすぐ閉めろ。お前の力なら余裕だろ?」
「え?あ、OK」
戸惑いながらも頷くアンギラス。ゴジラは客を落ち着かせようとしている職員の間をすり抜け電子機器を磁力で狂わせ扉を開ける。轟々と吹き荒れる風に吹き飛ばされるように外に投げ出されるゴジラ。アンギラスは急いで扉を閉めレバーを引く。
さて外で何が起きているのだろうか?席に戻り窓の外を見たアンギラス。モスラとバトラも外を見て、銀髪の少女が飛んでいるのを見付ける。
金属製の、ゴジラの背鰭に似た背鰭を持ち金属製の尻尾を持ち、金属製のグローブを嵌め金属製のブーツから炎を吹きだし空飛ぶ少女。アンギラスは頭と頬を押さえて気絶した。
「よお、久し振り?」
変身し、磁力を使い飛行機の側面に張り付くゴジラに、銀髪の少女は感情を感じさせない瞳を向けてくる。
その目はゴジラ、キングシーサーを一別すると口を開く。
「ゴジラ、キングシーサー、エネルギーパターンから同個体と確定。任務を遂行する」
「やって見ろ鉄くず」
と、ゴジラが言った瞬間少女の口からレーザーが放たれる。
「出番だ、いい加減起きろ」
「うご!?」
ゴジラのチョップに目を覚ましたキングシーサーは迫ってくるレーザーを見て慌てて右手を突き出す。そこには眼のような模様があり、レーザーを吸い込むと左手の目の模様から倍にして跳ね返した。
「どういう状況さ!?ちょっ!放し───うにげえさびら!」
「やだね」
レーザーが効かないと見ると今度はグローブを突き出す。グローブの先端と、さらに身を守る装甲が開き大量のミサイルが飛んでくる。が、磁力で全て引き寄せキングシーサーを振り回し誘爆させる。
「よし!」
前世で盾にされた借りはきっちり返した。しかしこれ以上は流石にまずいだろう。ゴジラは少女に向かって跳ぶ。
「──!?」
慌てて距離を取ろうとした少女だが不意にゴジラと少女が慣性を無視したかのような不規則な動きで引かれ合いくっ付く。
「海は俺の縄張りだ。鯨の取り方でも教えてやるよ」
「わんは関係ない!はな、放せー!」
せー!せー!せー……せー……せー…………。
虚しい木霊も風に流され消えていき。3人分の体重を支えられないのか必死にジェットを吹かす少女と共にゴジラに連れられ落下していった。
二日後。GIRLS本部近くの川でザバリと影が現れる。その影は二つの人影を引き摺りながらGIRLS本部に向かう。
「戻ったぞ」
「戻ったぞじゃありません!」
それは果たして、ゴジラであった。本部に入った瞬間ピグモンが叫んできた。
「皆に心配かけて於て、ついさっきすぐ戻るって連絡して!何考えてるんですか!ピグモン怒っちゃいますよ!もー!もー!」
ピョンピョン跳ねながら両手振り回すピグモン。ぶっちゃけ全然怖くない。
「悪い。実は近くの島で半日ほど戦って、無力化した後に説得したんだが時間が掛かって……」
「…………とにかく、無事で何よりです。後でリトルちゃん達に顔を見せてあげてくださいね」
ピグモンははぁ、と溜め息を吐くと気絶している二人を見る。
「取り敢えずちゃんと持って医務室に運んでください」
「ああ……」
二人は多少水を飲んでしまっていたが大事にはならなかったようだ。早速リトルに顔を見せに行こうとしたゴジラだったがガシリとピグモンに腕を掴まれる。
「ピグモン?」
「後ではまだなのですよ。まずは、説教と反省文のお時間で~す。今夜は寝れると思わないでくださいね」
ニッコリと笑顔で言うピグモンに、ゴジラは怒らせないように気を付けたつもりだった人を怒らせてしまったことに気付く。解放されたのは翌日の午後五時。しかしその後、モスラからも説教をいただいたのだった。
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