「はぁ~、帰る場所が解らない、ねぇ……大変だな」
「検索しても出て来ないしな」
「ふーん。ブルトン使われて異世界にでも迷い込んだか?」
「…………」
そんな簡単に異世界に来れるのなら先程難しく考える必要は無かったな、と頭を押さえるゴジラ。
「じゃあそのブルトンって奴を使えば帰れるのか?」
「ああ、以前ブルトン使った別世界のアタシの同族も居たしな。でも在庫少ないし結構高いぞ?」
「ネット通販かよ……どれどれ?」
ゴジラは0の数を数えていき、はぁ、と頭を抱えた。手持ちでは全然足らない。仕事探すか。
「なあ、仕事行ってる間子供達の世話頼んで良いか?」
「ん、仕事?異世界に来て働くのか?」
「元の世界に帰って銀行に行けば金は有るがまた此処に来れるとも限らねーしな。返せねーかもしれないのに借りるわけにゃいかんだろ」
「ふーん、何処ぞの風来坊とは大違いだな。良いぜ、気に入った。金が貯まるまでここに住めよ」
「ああ、助かる。金が貯まればホテルなんかに……」
「ん?いや、別に住んでてくれても構わんぞ。金は払ってくれるんだろ?ブルトンは高いし、余計な事に金使えんの?」
「う、それは……すまん、何から何まで世話になる」
「と言うわけで今日から家にホームステイするゴジラだ。みんな仲良くするように」
と、ゴジラ達を娘達に紹介するねオロチ。女ばかりだな、とゴジラ。普通の男なら肩身が狭い思いをする所だろうがそこはゴジラ。
怪獣娘達に囲まれた唯一の男のカイジューソウル持ちは伊達ではない。特に気にする事なくよろしくな、と簡単な挨拶をした。
「わーい!リトルちゃん一緒に住めるの?」
「うん!いっぱい遊べるよ!」
と、マガジャッパとリトルはお互いの手を取り嬉しそうにピョンピョン跳ねる。
「うわー、背高ーい。髪きれー」
「大きい……と言う事はボクより重い?」
「……?」
シン・ゴジラは青い髪の鳥の様な格好をした少女と硬そうな装甲に身を包んだ無表情な少女に眺められ首を傾げていた。
「あ、と……そうだ。その子、ゾーアやオロチ入れてもこの中じゃ最年少だから優しくするように」
「え、最年少……?」
装甲の少女はシン・ゴジラと自分の身長、そしてある部分を見比べる。
「…………世界は不公平だ。全て土に返してやりたい」
「お、落ち着いてグラキちゃん。グラキちゃんも直ぐに成長するよ…………」
と、赤毛の跳ねっ毛の少女が装甲少女を慰める。
「ほ、ほら……きっと体重はグラキちゃんより有るよ……」
「シンの体重はごじゅ……と、そう言やこっちじゃ何故か怪獣姿の時の体重になるんだったな。シンは9万2千トンだ」
「ボクより軽いのか~、そうか~」
と、少女はどんよりと黒いオーラを放つ。どうやら体重が重いのを気にしているらしい。済まない事をしたな、と少し反省するゴジラ。
「うわ~、グラキ姉様完全にいじけてますね~www誰かさんのせいでwwww」
と、ニヤニヤ笑った少女が話し掛けてきた。何故だかこの少女を見ていると以前シャドウミストで暴走していたキングジョーのファンを思い出す。
「あ、どうも私、ゼッパンドンと申します」
「絶版ドン……?そりゃまた、売れそうな名だな」
「ええそりゃもうなかなか人気ですからね私」
「そうなのか……所であれは俺のせいか?」
「ですねwwww」
ゴジラははぁ、と頭を掻き落ち込む少女に近付く。
「あー……グラキだったか?その、元気出せよ。家の妹にはすんげー重い奴居るし、そいつより軽いって」
「……ホント?」
「ああ、何たって彼奴20万トンも有るんだぜ」
結構重いだろ?と、心の中でビオランテに謝りながら励まそうとするゴジラ。いや、あの妹なら重いと言われても喜びそうだが……
「………………」
「あちゃー……やっちゃったー」
と、ゴジラはグラキがプルプル震えているのに気付き戸惑っているとゼッパンドンがニヤニヤしながら肩をすくめる。
「グラキ姉様の体重はなんと……おっと、これ以上は私の口からはとてもとても……」
そう言うとスススとゴジラから距離を取る。
「…………に……せん……だよ」
「ん?」
「こちとら21万5千トンだよ!文句あるかぁぁぁ!」
と、胸辺りから赤いレーザーを放って来たので正面から受け止める。強靭なゴジラの体に傷こそ付けたが直ぐに治った。
「えっと…………」
「うぅぅぅっ!!」
ゴジラはヒョイとグラキを持ち上げてみる。
「……!?」
「あー、確かに重いな。けど……うん、気にする程じゃないと思うぞ」
ソッと降ろそうとしたがズシーンと大きな音を立てる。確かに重いが持てない程じゃ無い。ゴジラが今まで投げ飛ばしたどの怪獣より重くとも持てない程では無かった。
「…………ボク、持てるの?」
「ん?ああ……」
実際持ち上げた訳だが。と、続くはずだった言葉はパアァと輝く様な少女の顔を見て喉に引っ込んだ。
「良かったねグラキちゃん」
「うん!」
「…………よ、良かったな」
取り敢えず誉めていると視線を感じた。振り向くとリトルとシン・ゴジラがジッと此方を見ていた。
「……抱っこ」
「私も!」
「はいはい……」
ゴジラは二人の娘もキチンと抱っこしてあげた。