ウルトラ怪獣擬人化計画 怪獣王   作:超高校級の切望

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成仏?怪獣王!?

 腹を殴ったゴジラ。異変はその奇行だけでは終わらなかった。

 現在ゴジラの中には二つの人格が存在する。怨念の集合体と、その怨念を知識として知っているが他にも幾つもの記憶を持つ、しかしそれはあくまで知識として捉えている人格。

 二つの人格が同時に存在する。ゴジラの細胞、G細胞はその状態を良しとしなかった。

 

「ぐう!?」

「うお!?」

 

 ベリベリと軍服が剥がれゴジラそっくりな男が現れる。ゴジラも何時の間にか何時ものコート姿に戻っていた。

 

「増えた!?」

「ブラックホールに飲まれても機能を停止させない所か進化する俺の細胞だからな。人格さえ有れば増えても可笑しくねーよ」

 

 とは言え、やはり不完全なのかもう一人のゴジラ、怨霊の身は溶ける様に崩れる。

 どうも完全にゴジラの機能、永久機関と言っても差し支えない原子炉までは再現出来なかったらしい。まあそんな物が大量に作られても困るのだが。

 事実ゴジラの世界線の一つでもゴジラの死後放たれた膨大なエネルギーをゴジラの同族たるリトルが死に掛けの状態で取り込む事で新しく生まれたような機関だ。怨念如きで、その力を賄える筈がない。或いは何かと融合すれば話は別だがそんな事ゴジラがさせるはずもない。

 

「体、寄越せぇ!」

「身体!?」

「ウィンちゃん、こんな時ぐらい空気読もうよ……」

 

 ゴジラと怨霊がぶつかり合う。拳がぶつかり怨霊の腕が潰れる。が、飛び散った腕がゴジラの腕に纏わり付く。

 

「────ッ!?」

 

 頭の中に自分のではない記憶が流れ込む。

 

「ッチィ!」

 

 近接戦を止め熱線を放つゴジラ。怨霊も同様に放つがやはりエネルギー差で押し負ける。

 

「くそ!何故逆らう、恐竜!貴様とて憎いだろう、世界が、この國が!」

 

 上半身だけになりながらもG細胞と怨讐だけでこの世にしがみ付く怨霊。

 が、下半身を再生させようとしてエネルギーが尽きたのか溶け出し、ゴジラを忌々しげに睨む。

 

「…………ま、否定はしねーよ。知識記憶の中とは言え、あれだけ有れば思う所も有る」

「ならば──!」

「けどなぁ、喚き散らして、暴れまくって、そんな俺でも家族が出来たんだ。こっちじゃ仲間だって出来た。てめーと暴れて、その大切なもんをぶち壊しちまうなら、お断りだ」

 

 ドチャリと音を立て怨霊の腕が崩れ落ちる。

 

「くそ!何か、生物、何でも良い!誰でも良い!嫌だ、消えるのは嫌だ……忘れられるのは嫌だ……!」

 

 怨霊は周囲を見回し取り込めそうな生物を探す。しかし、先程まで戦闘が有ったのだ、この辺りの生物は皆逃げ出している。

 

「……嫌だ……何で、我等が忘却の彼方に送られなければならない、忘れられるのなら我等は何の為に……」

「忘れないよ」

「アギラ?」

 

 崩れていく怨霊に、アギラはそういった。

 

「おばあちゃんが言ってた。ボク達が平和に生きていけるのは、国の為に戦った兵隊さん達が居たからだって。おじいちゃんが言ってた。国の為に戦い、しかし国は敗北を受け入れてしまったけど、守れたんだから良かったって」

「………………」

「今の平和が有るのは、兵隊さん達のお陰です。ボク達の国を守ってくれて、ありがとうございました。お疲れ様です」

「………………そうか……我等は、無駄死にでは無かったのか」

「はい……」

「……そうか……そう、か…………」

 

 満足そうに笑った怨霊の身体は完全に崩れ落ちる。アギラはその前で手を合わせ、ミクラスとウィンダムも顔を見合わせ頷くと手を合わせた。

 ゴジラとモスラもそれに続いた。

 

 

 

 

「さて、じゃあ早速回収するか」

「何を?」

「俺の細胞。動物とかが摂取したら高確率でモノホンの怪獣になって本能のまま暴れまくるぞ」

 

 と、ゴジラは怨霊の残骸を集めていく。細胞を統合させる脳が無い状態なら精々研究対象として役に立つ程度だろうが脳を持つ動物か脳は無いが思考をしていると言う植物と混じり合えば急速に遺伝子を食い荒らすだろう。

 単細胞生物であるバクテリアなら核物質を食らう程度で済むが…………いや、時間が経てば進化し群体になるかもしれない。ヘドラと言う前例があり進化速度の速いG細胞なら有り得ない話しではない。そういう意味ではあそこで全部打ち込まれて良かった。

 

「──!?」

 

 と、ゴジラがG細胞を集めていると雷撃が飛んでくる。見ればギドラが睨んできていた。

 

「まだ終わっておらんぞ!」

「…………はぁ、仕方ねぇな……」

 

 ゴジラはそう言うと、ゴキゴキ首を鳴らす。そして、ゴジラの身体から黄金の光が溢れる。

 

「なんだそれは?」

「ラドンと合体した時の力だ。まあ、形態変化とでも思ってくれ……」

「ふん。面白い……誰が王に相応しいか、全力を持って決めようではないか!」

 

 ゴジラとキングギドラがぶつかり合おうとした瞬間、二人の頭上からレーザーが降ってきた。放ったのは何時の間にか空へと移動していたモスラだ。

 

「止めてください。ね?」

「…………りょーかい。ここで三つ巴で戦ったら被害が半端ないしな」

「ま、千年竜王が嘗て世話になったようだしの。主の言葉を聞くのも借りを返すと思えば良いだろう」

 

 

 

 

「それで、お体に異常はありませんか?」

 

 宿に戻り、モスラはゴジラにそう尋ねる。乗っ取られたり分裂したりと今日は色々有ったのだ。どんな異常が起きているか……

 

「…………特に無いな、強いて言うなら」

「……?」

 

 肩をグルグル回し体の調子を確認したゴジラは唇をペロリと舐める。

 

「口の中に妙な味が……甘酸っぱい?」

「ああ、それは恐らく原爆ドームで貴方と合流する前に食べてたはっさく大福の味ですね」

「?何で俺の口からお前の食ってた物の味がすんだ?」

「口付けしましたもの、私達……」

「……………………」

 

 そしてゴジラは顎に手を当て、そのまま頭を抱えああ、と手を打つ。

 

「熱線を口の中に突っ込もうとしたのか」

「はい」

「…………はぁ」

 

 重い溜め息を吐くゴジラ。アギラ達も何と声を掛けるべきかと迷う。

 

「そんなお気になさらず。そう、あれは戦闘行為。攻撃です。どのような攻撃を食らおうとも乗っ取られていたあなたに責任を問うつもりはありません」

「…………そう言ってもらえると助かる。今度何か詫びさせてくれ。俺に出来る範囲なら手伝う」

「はい。ではその時に…………では、私はピグモンさんに連絡を……」

 

 と言ってモスラは部屋から去っていった。

 

「……いや~、流石モスラ。同い年なのに大人の女って感じだね」

「うん」

「お前等にも迷惑掛けたな。何か出来る事が有ったら言ってくれ」

「私は?」

 

 と、両目を開けたギドラが尋ねてくる。

 

「…………まあ、迷惑は掛けたな」

 

 

 

 モスラは部屋から出て、部屋の中にも外線に繋がる電話が有ったのを思い出す。

 

「いけませんね。ボーッとしてては……」

 

 首を左右に振り、このままロビーの電話でも借りようかと歩きだし、すぐに止まる。

 

「…………」

 

 桜色の唇を撫で、次の瞬間耳まで真っ赤になる。

 

「あれは戦闘行為あれは戦闘行為…………そもそも口付けは人間同士の行為であって怪獣だった頃の記憶を持つ私やゴジラには関係ない…………はず…………うぅ…………」

 

 

 

 

 

 

 ゴジラがラドンと合体した時、膨大なエネルギーは身から溢れオーラとなった。また、ギドラの放つ雷撃も高エネルギーの塊だ。

 そしてその二つが合わされば、回収されずに残っていた僅かなG細胞の活動を再開させるには十分なエネルギーとなった。




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