ビオランテの蔓は地面に潜り襲い掛かってくる。先端にはハエトリグサの様な器官が有り、アレで攻撃してくるのだろう。
しかしゴモラは元々地中を移動する怪獣。僅かな振動でも地面の中でどの様に蔓が動いているのか手に取るように解る。
「よ、ほ!は!」
「中々すばしっこいのね、蜥蜴さん」
「ふふん!怪獣ファイトの期待の新人を嘗めないでよね!」
ビオランテは蔓を地面から掘り起こすと今度は鞭の様に振るった。土を押し退けなくて済む分速度は上がっているが躱せないほどではない。
「でもそれじゃあ近づけないわよ?」
「近付けなくたって…………はぁ!」
ゴモラの三日月状の角が光ると、額の角から衝撃波が飛んでくる。岩をも砂塵に変え地面に潜る為のゴモラの必殺技だ。しかし……
「近付けなくても、何かしら?」
「な!?」
ビオランテはそれを片手で弾く。僅かに擦り傷の様なモノが出来ていたがそれも直ぐに再生した。
「ふふ。私って結構硬いのよ?兄さんの熱線にも耐えられるんだから…………」
ニコリと笑顔でとんでもない事を言う。まずい、想像以上に強敵だ。
「リトルちゃん逃げて!ここは私が────ッ!?」
「気付いたみたいね。でも遅いわよ……」
「きゃ!?」
ボコッ!と地面が盛り上がり無数の蔓が現れ────斬られる。
「…………誰、貴方?」
「…………友達」
ビオランテが不機嫌そうに突然現れた少女を睨む。籠手と一体化した槍とトンファーの様な大鎌を持った少女。
「昨日のお姉ちゃん!」
「べ、別にあんたを助けようとしたわけじゃないんだからね!ただ、彼奴に恩を売っておけばあの大蜘蛛が出て来た時助けてもらえるかもしれないし……」
「大蜘蛛?」
「まあ流石にこの姿で食べられる事はないでしょうけど」
「じゃあ何できたの?」
「ね、念の為よ────っ!」
と顔を逸らす少女に再び蔓が迫る。
「何度来たって!」
「さっきのが最高硬度だとでも思っているの?」
「────え?」
迎え撃とうとしたが、次の瞬間鎌が弾き飛ばされる。少女は直ぐに反撃を止めリトルを抱えるとその姿が消えていく。
「……へぇ…………面白い力を持ってるの……ね!?」
ビオランテが感心していると腹に衝撃が走る。ゴモラだ。
「0距離なら、どうだ!」
「────!」
腹部から全身の内臓を揺らす衝撃にビオランテは目を見開く。効いている。やはり内部は──
「こ、の!がぁ!」
ビオランテは口から液体を吐き出す。内臓を揺さぶられたのだ、別段不思議ではない。ゴモラは距離を取らず振動を送り続け、全身に激しい熱が走る。
「あぐ!?あ、あぁ……!」
「油断したわね。それは兄さんの強固な皮膚すら僅かに溶かせる消化液よ…………さて……」
ビオランテがツイッと指を動かすと蔓の一本が空に絡み付く。
「残念ね。その子、私の親戚みたいなものだから、居場所が分かるの。さ、渡して……?」
「い、いやだ……」
「そう。じゃあ仕方ないわね…………」
ビオランテがゆっくり近付いて、リトルに手を伸ばす。と、その時手がピタリと止まった。リトルの目が赤く染まっている事に気付いたからだ。
「……?何が──」
ふと耳を澄ませば、何やら地鳴りが聞こえてきた。振り向いたビオランテは、満面の笑みを浮かべる。
「うちの娘を虐めてんのはてめーかゴラァ!」
「あぁん!」
怒り心頭な様子でやってきたゴジラに腹を殴り付けられ吹き飛ぶビオランテ。ゴジラはビオランテを放ってリトルに駆け寄る。
「リトル、無事か!?ん、お前…………カマキラスか?」
「ど、ども……」
「バカといじめっ子は死んでも治らねーのか!?あぁん!?」
「待ってパパ!この人は私を守ろうとしてくれたの!それに、ゴモゴモも……」
リトルの視線の先を見れば全身に火傷の様な傷を負ったゴモラが居た。仮にも怪獣娘だ。傷はキチンと治るだろうが…………ゴジラはギロリと土煙の中を見る。その土煙は無数の蔓に吹き飛ばされ、ビオランテが現れる。
「ああ、兄さん!兄さん!会いたかった、会いたかったわ!」
「その気配、その姿……ビオランテか」
「ええ、覚えててくれたのね。嬉しい…………前世では一つになれなかったけど、今生でも一つになれそうにないけど、やっぱり会いたくて…………ねえ、兄さん…………私のモノになって?」
無数の蔓が伸びてきたがゴジラはそれら全てを引き千切る。
「嘗めんなよ、あん時は人間共に妙な薬飲まされてたんだ……今回は端から全力。降参するなら早めにしとけ…………壊しちまうかもしれねーからな」
ゴキゴキと指を鳴らしたゴジラにビオランテはうっとりとした表情を浮かべる。
「そんな……壊れるまで激しくなんて…………素敵よ兄さん。始めましょう!」
ザワザワとビオランテの蔓が蠢き針金アートの様に何かを形造る。それは、巨大な口だった。それは鰐の様にも見え、そしてゴジラと何処か似ていた。
ゴジラを丸飲みしようと迫る顎、ゴジラは拳で吹き飛ばす。と、蔓が解けビオランテが向かってくる。
迎え撃とうとしたが蔓が絡み付き、ビオランテの牙がゴジラの首筋の肉を抉った。
「──!?この!」
背鰭が発光し蔓を焼き切るとゴジラはビオランテを蹴り飛ばす。蔓を器用に使い衝撃を殺して降りたビオランテはゴクンと喉を鳴らした。
「…………っ……はぁ…………解る?今、兄さんの一部が私の中で溶けていったわ。これで漸く一つになれた……」
「…………上等だてめー。拳骨で済ませて貰えると思うなよ」
ゴジラが黄金のオーラを発し睨み付けると、途端にビオランテが不機嫌な顔になる。
「ちょっと兄さん!いきなり他の女の気配を放つとか何考えてるのよ!」
「…………は?」
「今は私と居るのに他の女の匂いや気配出すなんて信じられない!」
「………………」
何を言っているんだろうかコイツ。駄目だ。訳が分からない。
「フフ。まあ良いわ。兄さんと一つになる目的はこれで果たせたんだし。ああ、兄さんのお友達を傷付けたのが許せないなら、気が済むまで好きにして良いわ。出来れば噛み付きが一番嬉しいのだけど…………」
「急げ!お前等!」
丁度付近を見回っていたレッドキングはアギラ達と共にゴモラから救援信号が発信された公園に向かう。
「あれぇ、アギラ達じゃないかぁ、どうしたのぉ?」
「ヘドラ!救援信号見てないのか?」
「救援……?ああ、ゴジラが走り去った後流れたアレねぇ……ゴジラが向かったから大丈夫だよぉ」
と、あくまで落ち着いているヘドラ。レッドキング達はそれでも急ぎ公園に向かい、見た光景は………
「何でよ!?何で何もしてくれないの!殴っても良いのに、蹴っても良いのに!昔みたいに兄さんの熱いもの(熱線)を私の中にぶちまければ良いじゃない!」
「黙れ変態!近付くな!」
「そんな、変態だなんて…………困っちゃう」
「「「「………………」」」」
しばし呆然と固まる一同。が、倒れているゴモラに気付き慌てて駆け寄る。
「無事か、ゴモラ!」
「……う、レッドちゃん…………私……」
「喋るな。今は安静に……」
「あんなのに負けたなんて、一生の恥…………」
ビオランテの属性 ヤンデレ
ドM(new!)
やっちまった………
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