「さて、取り敢えず飯にするか。ゴジラ、お前等苦手なものあるか?」
「特にないな。手伝おう」
「お?料理出来んのか?」
「元々一人暮らしでな。GIRLSに就職する前は色んなバイト転々としてたし、多才だと自負してる」
マガオロチが台所に向かうとゴジラも続く。ここ最近ラドンに料理を任せていたから少し鈍っているかもしれないが手伝いぐらいなら出来るだろう。
「ん?そういや飯の時間だってのにオロチ来ねぇな……誰か知らねー?」
「ああ、オロチ姉様なら腹押さえて蹲ってましたよ」
「それを早く言え!」
と、マガオロチは慌てて奥へと消えていく。
暫くして顔を青くしたオロチを連れてきた。
「どうしようゴジラ!オロチが腹痛いって!」
「「「!?」」」
腹痛如きで大袈裟な、と思いもしたが周りの反応からするにただ事では無いらしい。
「うそ!?オロチちゃんが……?あの、何時も何でも食べちゃうオロチちゃんが……そんな……」
むしろ何でも食べるからこうして腹を壊したのでは?と思いながらゴジラはふと出会った時の事を思い出す。あの時オロチはシン・ゴジラと喧嘩していた。そして、何でも食べる……
「…………──マガオロチ、ちょっと診せてくれ」
「あ、ああ…………」
オロオロするマガオロチからオロチを受け取り腹に手を当てる。中で何かが微かに動いた。反応してる。
「……よっと」
「うっ!?」
ゴジラがオロチの背を叩くとオロチは口を押さえ顔を青くする。そして────
「うぇぇぇぇ!」
と黒い何かを吐き出した。
「……何だこれ?」
「シンの一部……」
「………………」
シン・ゴジラは黒い固まりの前に膝を突くと尻尾の先端を付ける。すると黒い固まりは形を変えながらシン・ゴジラの尻尾と融合した。
「……どう言う事だ?」
「そいつ何でも食うんだろ?シンと喧嘩してたのもそれが理由なら、此奴の腹ん中にシンの一部が有ったんだ。俺らの細胞は切り離されても生き続けて、一つに戻ろうとする」
「……う?」
ゴジラは跡も残さず完全に融合したシン・ゴジラの尾を撫でるとシン・ゴジラは不思議そうに首を傾げるが気持ち良いのか目を細め尻尾をゴジラの腕に巻き付けた、
「一つに戻ろうとする?」
「ああ。周囲のエネルギーを吸い込んで増殖して身体を手に入れたり、自身を取り込んだ生物の体を乗っ取ったりして俺の元に来る。んで、俺を食おうとしてくる。ビオランテやオルガ見たいな例だな。逆に進化の過程に変化を取り込むのも居る……メガギラスやデストロイアがこの例だ」
と言ってもマガ一家には誰の事なのかさっぱりだろうが。
「まあ取り敢えず、もう大丈夫だと思ってくれて良い」
「そ、そうか……なら良いんだ」
「ジャッパちゃんとおっ風呂~♪」
「リトルちゃんとおっ風呂~♪」
リトルとジャッパは仲良く風呂に向かって行った。ゴジラはその間に食器を洗う事にした。
「すいません、ウチ大家族なので量が多いでしょう?手伝います」
「ん?そうか、助かる」
赤い癖っ毛の……パンドンと言う少女が手伝いを申し出てくれたので洗い終わった食器を拭いて貰う。
「よし、これで最後……ほいっと………」
ゴジラが少し体温を上げると食器に付いていた水分が蒸発していく。と、不意に視線を感じた。
「……ゴジラさんは火属性なんですか?」
「属性?まあ、熱が得意ではあるな……後は電気吸収して磁場を発生させたりエネルギーを体内で暴発させたり出来るけど…………」
「た、多才ですね……私なんて炎出す事しか出来ないので羨ましいです。って、あ……すいません私暑苦しいですよね?」
「ん?別にそんな事無いが……」
「……へ?」←出現した街の気温を40℃以上にする魔王獣。
「……ん?」←暴走すると地球を体温だけで焼き尽くす怪獣王。
同じ火属性でもお互いの性能は天と地ほどの差がある。最も、今まで魔王獣として最強の炎属性として君臨していたパンドンにはそんな事想像も付かないが。
「お風呂上がったよ~!」
「上がった~♪」
「あ、こらジャッパ!風呂は最後に入れって言ったろ!」
「…………賑やかだな」
「はい。みんな元気で仲の良い自慢の家族です」
「そうか……それは、羨ましいな…………」
パンドンの言葉にゴジラが笑みを浮かべると何かを察したのか、シン・ゴジラがやってきてゴジラに抱き付いてきた。
「……ん。大丈夫だ、お前も自慢の家族だよ」
「……♪」
「さて、俺達も風呂入るか」
「う……」
「え?一緒に入るんですか?」
「ん?まあシンはまだ一人じゃ体洗えないしな」
「え?あ、そっか……シンちゃんってその見た目でまだ0才なんでしたね……」
一瞬ポカンとするパンドンだったが直ぐに納得する。
「早く自分でも洗えるようになれよ?」
「………………や」
「や、って……お前な」
「覚え、たら……パパ、もう入って、くれない……」
「別に洗えるようになっても入ってやるって……行くぞ」
風呂から上がりドライヤーでシン・ゴジラの髪を乾かすゴジラ。乾かすと手櫛で解し、マガ一家から借りた櫛で髪を梳かしていく。
「…………♪」
シン・ゴジラは艶々になった髪を満足そうに撫でるとゴジラから離れる。今度はリトルがやってきたので同じ様に髪を梳かす。
「…………ん?」
不意にゴジラが顔を上げると列が出来ていた。
「ジャッパも~」
「わらわの髪も綺麗にするが良いぞ!」
「はいはい。押さずに列べ……ゼットン、お前もか」
結局全員やる事になった。だが自分で頼んでおきながらからかってきたゼッパンドンだけはめり込ませておいた。
そして最後……
「あ、あたしは別に良いって……」
「んー、ここまで来たらコンプリートしたいからなぁ……俺の我が儘で悪いがやらせてくれないか?」
「お、おう……」
マガオロチの髪を梳かしていくゴジラ。
男に髪を触られるなどオロチを作った時以来で少しくすぐったい。
「若い奴らの後にあたし見たいな婆で悪いな」
「お前もまだまだ若いだろ。それに、俺は好きだぜこの髪。燃えてる火みたいで、人間達の街を燃やした時を思い出す……」
「あんま誉められてる気がしないな」
「ならお前の髪が好き、だけで良いか」
「…………でもこの髪近々また切られるんだよなぁ………………」