「すいません。今日はアギアギとミクミク達は別行動で、ゴジゴジと行動してくれませんか~?」
「は、はひ!」
「…………?どうした、アギラ?」
ビオランテとカマキラスが来た日から、アギラ達の様子が偶々に可笑しい。何かピグモンに怯えているような……?
「しかしお前と二人きりとは珍しいな」
「そうだね…………」
アギラとゴジラは予め変身しておき街中を歩く。コスプレの様なその衣装は人目を引くが怪獣娘が認知された世界では直ぐに気にされなくなる。
「あ、そうだゴジラ。ビオランテさんが言ってたんだけど、ゴジラを狙ってくる前世からの怪獣娘が居るかもだって…………」
「ふーん?ま、大丈夫だろ。別に変わった事と言ったら彼奴等に再会したぐらいだしな……次あっち見て回ろうぜ」
「現在進行形で変わった事が!?」
ゴジラがクルリと背を向けると、ゴジラの背に夥しい数の蜻蛉が張り付いていた。
「うお、なじゃこりゃ、キモ!」
「き、気付いてなかったの……」
ゴジラは直ぐ様背鰭から発熱する。蜻蛉達は半数が焼け死に残りが逃げようとするが熱線でその半数を焼き消される。
「ふう。何だったんだ今の……」
「ゴジラって動物に懐かれ易いし、ひょっとして虫もなのかも……」
「虫もって…………つか何でこの季節に蜻蛉?…………ん、蜻蛉?」
何か前にもこんな事が有ったような気がする。何だっけ?と首を傾げるゴジラ。足元には羽が焼けて踠いている蜻蛉の生き残りが。拾い上げるとそれには尾の先端に針の様なモノが付いていた。
「ん~、やっぱりこの味よねぇ……力が内から漲って来る~!」
ビルの屋上でトンボを舌に止めながら少女はスイーツでも食べた様な反応する。蜻蛉はそのままポトリと落ち息を引き取った。
「とは言え私じゃ吸収し切れるエネルギーに限度が有るし、それに対して向こうはほぼ無限だしなぁ…………勝てる見込みって有るの?」
「ええ、私達五人なら、エネルギーを吸い切れるはず」
「ボク達が戦った個体よりエネルギー生産量が大きいみたいだけど、むしろ好都合だよ」
「ククク。殺しはしない。永遠に飼い殺してやるさ……幸い我を殺したあの時の力は使えんみたいだしな」
「………………ご飯」
「そう言えば皇帝さんは?ある意味あの子が居れば安心なんだけど」
「左の子は賛成してくれたんだけど真ん中の子が『我が貴様等と組む道理は無い』って言って右側の子が『止めときな……アタシはパスだ』ってさ」
「ふーん?じゃ、ま、ゴジラのエネルギーは私達だけで独占しちゃおっか……まあそもそもあの子は元から半端なく強いしね……あ!ちょっと!私の子達勝手に食べないでよ!」
「これは……怪獣因子ですね」
「それが怪獣娘だってのか?」
ゴジラが持ってきた蜻蛉を調べたペガッサはその蜻蛉を怪獣因子だと言う。まさかこの蜻蛉は雌で不幸にも前世の怪獣が文字通り蜻蛉の怪獣娘になったのだろうかと憐れみを込めた目で見る。
「いえ、怪獣因子そのものです。そうですね、この子に近いかと……」
『シャアアァ!』
と、ペガッサは二足歩行の肉食恐竜の様なモノを取り出す。生きて、動いている。
「…………可愛い」
「これが?」
大きさは30センチほど。アギラは目をキラキラさせてその恐竜擬きを見る。
「これはジラさんの子供です…………」
「…………は?」
「私達怪獣娘は生前の怪獣の特性を多く引き継ぎます。私ならこの銃や頭脳ですね……そして、ジラさんは繁殖能力。何と単為生殖が可能だそうです。まあ、生まれるのはこうして小型化した怪獣ですが……それとこの子には生殖能力は引き継がれていません」
「……要するにこの蜻蛉もどっかの怪獣娘の子か、ヘドラみたいな分裂体って事か?」
「は、はい……そうかと……」
蜻蛉、蜻蛉ねぇ……と顎に手を当てるゴジラ。そしてああ、と手を叩いた。
「心当たり有るな。これ、メガギラスだ」
「メカギラス?」
「メカじゃねえメガだ。何時から彼奴は機械になった…………まあ俺の力を食おうとした蜻蛉だよ。本体……つーか親玉に餌を運ぶ役目を持ったのがメガニューラ、つまりこれだな……いやぁ、懐かしい懐かしい…………ちょっくらぶっ殺してくる」
「最近ゴジラ過激すぎない?」
「怨霊共が消えてから前世の記憶と段々リンクし始めてな……」
と、肩をすくめるゴジラ。本来の記憶として定着し始めた分、様々な記憶を同時に持って逆に忘れてしまったりした事も有る。今回のメガギラスのように。まあ見れば思い出せるのだが。
「でも目的は何だろね?宣戦布告かな?」
「さてな。厄介な人間の知恵を付けたんだ。俺を捕らえて永遠の餌にする気だったりしてな……」
ギャハハと冗談の様に笑うゴジラ。割と笑い事では無い気がしたアギラとペガッサは引つった笑みを浮かべた。
感想お待ちしております