ウルトラ怪獣擬人化計画 怪獣王   作:超高校級の切望

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怪獣王

「ゴジゴジが攫われた!?」

「ああ。アタシとモスラで直ぐに現場に向かったが、痕跡は全部()()()()()()

 

 ピグモンが直ぐにネットを確認すると、裏路地の一部が溶け崩れた写真が載っていた。確かに怪獣娘の力は絶大だ。しかも記憶持ちは暴走の心配がない。だが、まさかここまで大それた事をする者が現れるとは。

 

「……ねぇ」

 

 ピグモンが思考していると不意にビオランテがバトラの肩に手を掛ける。

 

「つまり何?貴方、兄さんを見捨てたの……?」

「……好きなように捉えろ」

「────!」

「待ってください!今はそれよりゴジゴジの居場所を!」

「………………」

 

 ピグモンの言葉にビオランテは手を離す。

 

「兄さんの居場所は解る…………と言いたい所だけど、邪魔する何かが流れてるわね。大体の場所は解るけど居場所となると私じゃ無理……」

 

 可能性が有るとすれば、と、リトルを見る。

 

「パパ、あっち……」

 

 と、一方向を迷い無く指差すリトル。

 

「…………解りました。では救助隊を編成しましょう」

「アタシが行く。責任の一端はアタシに有るからな」

「私も騒ぎに気付けなかった責任が有ります」

「私も行くわ」

 

 バトラ、モスラ、ビオランテが志願しピグモンも頷く。

 

「向こうの狙いがゴジゴジだけとは限りません。防衛も残さなくてはなりませんので、モスらん、バトらん、ビオちゃん、ゼットンの四人で」

「ピグモンさん、ボク達も──」

「駄目です。記憶持ちの怪獣娘の強さは知っているでしょう?まあキンちゃんやカマキリンちゃんみたいな例外は居ますが…………」

「…………」

 

 志願したアギラにピグモンははっきりと言い切る。確かにそうだ。モスラもバトラもキングギドラもラドンもビオランテも、そして何よりゴジラも群を抜いた強さを持っている。そんなゴジラを捕らえる様な相手だ。

 

「ラドちゃんやアンアンには悪いですが……」

「気にするな。防衛は任せろ」

「ゴジラを捕らえた奴らにそれなりの制裁を頼む!」

 

 

 

 

 

 リトルの案内の下やってきたのは廃ビル。この中にゴジラが捕らえられているのだろう。

 すでに変身を済ませた四人は廃ビルを前にピグモンに連絡を取ろうとする。が──

 

「?ソウルライザーが、動かない?」

 

 しかしソウルライザーが全く動かない。電源すら付かない。

 

「あなた達、誰?」

「────!?」

 

 不意に聞こえた声に振り向くと、ビルの入り口の上で赤いメッシュを入れた少女が首を傾げていた。鍵爪の様になったマフラーは床に伸び、光っている。

 

「あれね、私から兄さんの気配を隠してたのは……人間が使う、電磁波に似てるけど」

「…………電磁パルス」

「ああ。あなた達ゴジラを取り返しに来たのね?駄目よ、もう私達のご飯だもん」

 

 と、少女が笑った瞬間ビオランテの蔓が少女の座っていた場所を破壊する。

 

「殺す」

「あら貴方、ゴジラと似た匂いをしてるわね。どうしよっか?」

 

 ビオランテを見た少女が笑みを浮かべる。ビオランテは目を細めると蔓で巨大な口を編む。

 

「やってみなさい……」

「させないよ」

「──!?」

 

 蔓の顎で少女を飲み込もうとした瞬間空から現れた影が顎に飛びつき電磁波を流し込まれる。

 見ると目の前の少女そっくりな小さな少女が翼を広げ降り立っていた。

 

「姉妹で怪獣?」

「ええ、前世では同族だったの」

「それも雌雄で、夫婦だった、ね……この世界じゃボクは女だけど……」

「平気よダーリン、その姿も可愛いわ」

 

 ゼットンの言葉に肯定する姉妹。そして恐らく姉の方が名乗る。

 

「私達はMUTO(ムートー)、よろしくね」

「生憎兄さんを攫った雌共と仲良くする気は無いの」

「私達の仲間を返して」

 

 ビオランテが無数に蔓を伸ばしゼットンが睨む。しかしMUTO達は慌てる事無く二人を見る。

 

「相性的にはあの子ね。残りは任せるわ」

 

 と、MUTO達はビオランテに向かう。ビオランテは直ぐ様、蔓を伸ばし巻き付けたがMUTO達は力任せに引き千切った。

 

「────!?」

「力には自信が有るのよね」

「チッ……ならこれはどう?」

 

 ビオランテが蔓の先端から消化液を吐き出すとMUTO達は一端距離を取る。ゼットンは直ぐ様MUTO達に向かって火球を飛ばそうとするが背中に何かが飛び付きエネルギーを吸い取られる。

 

「くっ!」

「おお!ゴジラ程じゃないけど良いエネルギー……」

 

 と、ゼットンの背中から針を抜き満足そうに笑う少女。ゼットンがバリアで閉じ込めようとするがその姿が消える。

 

「瞬間移動!?違う、これは……高速移動!──ッ!」

 

 背後から感じた気配にゼットンは瞬間移動を使い回避する。

 少女は驚いた様に目を見開くが次の瞬間ニヤリと笑った。

 

「強いねお姉さん。じゃあ、これ何てどうかな?」

 

 と、無数の蜻蛉を出現させる少女。一体一体がエネルギーを吸収する為の針を持っていた。

 

「モスラ、バトラ、先に行って」

「ああ!」

「任せます!」

 

 ゼットンの言葉に二人は駆け出す。が、不意にバトラが足を止めモスラも釣られて止まる。次の瞬間地面が溶け青白い光線が伸びてくる。

 

「…………お前」

「また会ったな。生憎、折角の極上の餌を返す気は無いぞ?」

「…………退いてください」

 

 出て来たのはデストロイアだ。バトラとモスラに睨まれ、しかし慌てる事なく傲慢な笑みを浮かべている。

 

「二人掛かりか?良いぞ、来るが良い」

 

 モスラとバトラが同時に迫るがデストロイアは躱し、バトラを尾で掴む。そのままエネルギーを吸い取り助けようとしたモスラに額の角を剣に変化させカウンターを食らわせようとする。

 咄嗟に躱したモスラだったがその剣は通過地点に有る全てのモノを切り裂いていた。

 

「我がヴァリアブル・スライサーはあらゆる分子を破壊し切り裂く。貴様等では勝ち目は無いぞ?」

「…………楽しそう」

「ん、シノムラか。ゴジラはどうした?」

 

 不意に現れた小学生ほどの少女にデストロイアが怪訝そうな顔を向ける。

 

「…………もう一人の私に任せた」

「ああ…それでその姿か」

 

 と、興味を失った様に言うデストロイア。シノムラと呼ばれた少女は残っている相手を捜しているのかキョロキョロ周囲を見回しリトルを見付ける。見付けて、涎を垂らす。

 

「……あれ、美味しそう」

「奴の娘だ。奴ほどの力は持ってないが……」

「…………欲しい」

「…………ま、好きにしろ」

 

 デストロイアが許可を出すとシノムラはリトルに向かって飛ぶ。

 

「不味い、リトルちゃん!」

「貴様等の相手は我だ。余所見とは嘗められたものよな」

「ぐ!」

 

 助けに行こうとしたモスラはデストロイアに地面に押さえ付けられる。ゼットンとビオランテも気付き動こうとしたがビオランテはMUTO二匹に足止めされ、ゼットンは背を向けた隙を付かれ背中に張り付かれエネルギーを吸われていく。

 

「…………逃げない?」

 

 シノムラは自分を前に逃げようとしない獲物に首を傾げる。丁度良いのだが、何故逃げないのだろうかと疑問に思ったのだ。

 

「……逃げない。だってもう直ぐ、パパ来るもん」

「?それ無理。エネルギー、常に吸い続けてる」

「来るの!」

「…………来ない」

 

 ムキになって叫ぶリトルをシノムラが捕らえようとした瞬間、地面が爆ぜる。

 

「…………私?」

 

 シノムラは地面から吹き出した炎に飲まれている自分そっくりな少女、自分の分身を見て慌てて取り込む。細胞の幾つかが死滅したのか本来の大きさには戻れなかった。

 

「………おい」

 

 デストロイアの能力とは違う、熱量によって溶けた穴からヌッとゴジラが現れる。しかし、その姿はいつもと違った。晒している胸、更にはコートやズボンの各所が赤く発光している。

 全身からは圧倒的な熱が放たれており近付くだけで焼け付きそうだ。

 

「言ったよなぁ、俺は…………そいつに手ぇ出したら、焼き尽くすって」

「ッ!この力……あの時の…………慌てるな!その力は長く続かない!」

 

 デストロイアの叫びに突然のゴジラの出現に呆然としていた一同がハッと正気を取り戻す。長く続かないならと距離を取ろうとした瞬間、赤い熱線が大きい方のMUTOを襲う。

 

「あ、がは……」

「姉さん!この、よくも!」

 

 小さい方のMUTOが激昂し突進するが頭を掴まれ溶けた地面に押し付けられる。

 

「─────!!」

 

 声にならない悲鳴を上げたMUTOを蹴り飛ばすと迫ってくるシノムラとメガギラスに目を向けた。

 メガギラスを目眩ましに大量の蜻蛉を、シノムラは分裂して霧のように襲ってくる。ゴジラは爪を自身の腕に突き立て──

 

「鬱陶しい!」

 

 引き裂く。抉り取られたゴジラの肉片、細胞は小型のドラゴンに姿を変え蜻蛉やシノムラの分裂体に襲い掛かる。

 

「な、此奴等!?」

「…………多い」

 

 シノムラは慌てて統合し、メガギラスは目眩ましが消え慌てて距離を取ろうとするがガシリと尾を灼熱の腕で掴まれる。悲鳴を上げる間も無く、シノムラに向かって振り下ろされた。

 

「…………あと一人」

「ッ!な、嘗めるな!我はあの時以上のエネルギーを────!?」

 

 角を巨大な剣に変化させ斬り掛かるがゴジラは片手で止めた。高圧のオキシジェン・デストロイヤーに耐えている。否、違う。如何なる物質もそれが分子で構成されている以上オキシジェン・デストロイヤーの影響を受けないなんて有り得ない。ならば何故止めれるのか?簡単だ。再生している。溶かされて直ぐに。溶かされるより速く。

 

「こ、こいつ!前より細胞の再生速度が上がって……!?」

 

 ゴジラの拳が腹にめり込む。その膨大な熱量で肺の中の空気が膨張、発火し口から血と黒煙を吐きながら吹き飛ぶデストロイア。

 ゴジラは周囲を見回すと大きく息を吸い、吼えた。

 

「グオオォォォォンッッ!!」

 

 それは己の存在を世界に誇示する様に、世界よ、己を畏れよと言う様に、絶対的で絶望的な力を聞く者に理解させる咆哮だった。




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