「…………いやいや……いやいやいや!?何だよあれ!?何だ!?」
「温度は尚も上昇中…………兄様の中のエネルギー残量が減る様子も無い。理論上、無限に温度が上昇するね」
「有り得ないだろ!あの温度、オリジナルのG細胞が焼けてるぞ!?なのに再生って……再生って言えるのかそれ……再生って言葉で済ませられるのか……それ……」
結晶の少女の言葉に帽子の少女は帽子を深く被る。
「…………
顔を青くして過去の愚行に恐怖する帽子の少女。と、不意に観察していたゴジラと目が────合った。
「────!?」
「気付かれた……どうする?」
「…………私前世じゃ
「オレ何てアニキの子虐めてたんだが……」
と、迷っているとゴジラの目が僅かに細まる。その目はまるで、さっさと来いと言っている様に見えた。
「ああ、兄さん!その姿も素敵!」
と、ゴジラを蔓で引き寄せ、抱き付こうとしたビオランテだったがゴジラに触れる前に燃える。
「…………あら?」
「おっと、悪いな」
シュウウと音を立てゴジラの全身を包む熱がゆっくり下がり始める。そして、そんなゴジラにリトルが飛び付いた。
「パパ!」
「おっと……」
ゴジラはリトルを受け止める。足元は灼熱の溶けた地面、落としたら大変な事になる。
「無事で良かった……」
「…………心配掛けたな」
「…………」
リトルの頭を撫でてやるとリトルは満足そうに微笑む。そして……
「兄さん!」
「寄るな」
「あはん♪」
リトルと同様に抱き付こうとしたビオランテはゴジラに足で顔面を受け止められそのまま灼熱の地面に押し付けられた。
ビオランテは混じり物とはいえG細胞を持っているのだ、この程度なら耐えられるだろう。焼けている間は痛みが有るかもしれないが。
「ああ!兄さん!もっと!もっと踏んで!!」
「そうかそうかじゃあマグマに上半身が埋まる程度に踏んでやる……親子の再会に水差そうとしやがって」
「ああぁん!」
ビオランテは嬌声を上げながらマグマに沈んでいく。モスラは止めるべきなのか、喜んでいるのだからそのままにしてやるべきなのか解らず、おろおろしているとゴジラが不意にある一点を見詰め始める。
しばらくして、二人の少女が現れた。
片方はゴジラに良く似た格好をした、紫の髪の少女。違いはコートの下に唯一着ているスポーツブラと肩の結晶、後は額の王冠の様な物だろう。
もう一人は大きな帽子を被った少女。大きな手袋をしており左肩の装甲に穴が開いていた。
「お、お久しぶりです兄様…………」
「よ、よおアニキ…………」
「御兄妹ですか?」
二人の言葉にモスラがゴジラを見るとゴジラは無言で頷く。するとビオランテがマグマの中から身を起こして二人を睨んだ。
「…………兄さんの、妹?」
「お前が上だ。仲良くしてやれ」
「これからよろしくね♪」
明らかに敵意を出していたのにゴジラの一言であっさり友好的な笑みを浮かべるビオランテに引きつった視線を向ける二人の少女。
ゴジラは妹?達のそんなやりとりを無視してリトルを降ろすと気絶しているMUTO二匹を抱える。
「お前等もそこで転がっている奴等運んでくれ」
「え、その為に?」
「?当たり前だろ……」
ゴジラの言葉に少女達はそれぞれシノムラとメガギラス、デストロイアを抱えたのだった。
「ゴジゴジ!大丈夫ですか?お怪我は…………」
「平気だ。それと、誘拐犯」
「誘拐犯達の方が酷い怪我!?モスらん、バトらんビオちゃんやりすぎですよ~。ゼッちゃんも止めてください!」
「…………やったの、ゴジラ」
「へ?」
「止める暇も無かった。と言うか、止められなかった」
ゼットンの言葉にゴジラを見るピグモン。あのゼットンをして止められないと言い切るなど、どんな強さだ。と言うか何で捕まったんだ。
「………ま、まあそれはこの際置いといて、そちらの子達は?また前世での妹ですかぁ?」
「前世でリトルを虐めやがったスペースゴジラと、俺の事を取り込もうとして俺の細胞に逆に取り込まれてたオルガだ」
ゴジラが遠まわしに嘗て敵対していたと言うとビクリと身体を震わせる二人の少女。
「?解りました。よろしくお願いしますね、スペゴジちゃん、オルちゃん」
「え、ああ……よろしくな」
「どうも…………」
「で、取り敢えずはその五人は医療施設に運ぶとして……」
と、ピグモンが言うとゴジラが片手を挙げる。
「此奴等は簡単に治せる……」
「ほえ?」
「エネルギーや俺の細胞を与えてやれば良いわけだからな…………行け、ゼルヴァム」
ゴジラの言葉にゴジラの背中に止まっていたのだろう、背後から五匹の小型のドラゴンが現れ五人の口の中に入って行く。
「んぐ!ぐうむ!?」
「おご!ごぇぇ!?」
「うぐぅ、むぅ!?」
「むぅ!んむぅー!?」
「ぐぉえ!おごぉ!?」
かなり大きめの物体が無理矢理口の中に入り込み苦しそうにジタバタ暴れる少女五人。
「ご、ゴジゴジ?」
「此奴等は俺のエネルギーや放射能、後は俺の細胞を取り込んだり……あれは俺の分裂体みたいなもんだからな。それら全てを補ってくれる……」
「で、でもあのサイズにした意味は…………」
「無えよ」
「……………………」
ゼルヴァムを体内で吸収出来たのか目立った外傷が消えていく。
「……う」
「よお……」
「ッ!?」
最初に起きたのはデストロイアだ。五人の中で唯一エネルギーだけでなく細胞まで取り込んでいるからか、中々頑丈らしい。目を開けた瞬間ゴジラが覗き込んできて起き上がろうとしたがダメージが抜けきっていないのかベッドから落ちる。
「…………お前、は……」
「そう睨むな。敗者の生殺与奪は勝者に有ると思わねーの?」
「…………我を殺す気か?それとも、人間同士の雌雄になったのを良い事に慰み者にでもするか……?」
「…………へぇ、それも面白そうだな。嘗て自分を殺した男に無理矢理ってのも、中々屈辱的だろう?リトルを殺そうとしたお前にゃ丁度良い罰だ……」
と、ゴジラがデストロイアの顎を持ち上げると怒りか恥辱か頬を赤く染め睨み付けてくるデストロイア。
勿論ゴジラにはそんなつもりは無いが、前世でも今世でもいろんな目に遭わされたのだ。このぐらいの意趣返しはしたくなる。
「……ま、冗談だがな。その辺はピグモンに任せる」
そう言うとゴジラはデストロイアからあっさり背を向ける。
デストロイアはピグモン?と首を傾げる。どんな怪獣娘か知らないが、ゴジラ以外に自分達を相手取れる怪獣娘が居るとでも言うのか?
「全くゴジゴジは人任せなんですから………」
と、言ったのは赤い髪の見た目は少女。まさか彼女が?こんな、何の威圧感も持たない者が?と思っているとピグモンはゆっくり振り返り笑顔を浮かべる。
「さて、それじゃあ怪獣娘の力の私的利用、さらにGIRLSの職員への暴行、それらについてお話しさせてもらいますね~♪」
ニッコリと笑みを浮かべるピグモン。
力の質が上がったわけでも、感じる威圧感が増えたわけでもない。だと言うのに、もっと別の恐ろしさを感じ、デストロイアが涙目になる。
「皆さんもそろそろ寝たふりを止めてもらえると助かりますね~」
ビクリと四人の身体が震えた。
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