「かー……かー……」
「んん……」
「んみゅ……」
「…………ふぁ」
リトルの要求の元、ゴジラと同室のラドンは毎朝この部屋で誰よりも早く起きる。
下の段でゴジラと共に寝るリトルとシン・ゴジラを見て微笑むと起こさないように音を立てず降り、冷蔵庫の中身を確認する。
「……鮭か……塩焼きで良いか」
冷蔵庫の中に有った鮭を人数分取り出し焼き始めるラドン。焼いている間、豆腐を切り鍋に入れていく。
GIRLSには食堂が有るが、寮の部屋にキッチンも完備されている。ラドンは元々一人暮らしなので作る事の方が多い。
「…………う~」
「ママ~、ご飯~?」
と、そこへ寝ぼけ眼の子供二人が起きてくる。
「ああ。パパを起こして来てくれるか?」
「う!」
「うん!」
と、二人はベッドに眠るゴジラの下に駆ける。
「パパー!あ~さ~!」
「あ~しゃ~?」
リトルがユサユサ揺すりシン・ゴジラはリトルの真似をしてゴジラを揺する。
「…………後五時間」
と、ゴジラは布団を深く被ってしまう。リトルはムー!と頬を膨らませると掛け布団を引っ剥がす。
「……うぅ……」
「……おいて……パパ、おいて…………」
シン・ゴジラが揺すりリトルがカーテンを開ける。日光が部屋の中を満たしゴジラは眉根を寄せて起き上がる。
「ご飯!」
「ごあん……」
「ああ、解った解った……起きた起きた」
と、ゴジラがのそのそ起き上がりながらリビングに向かう。目を閉じたまま…………。
「…………」
「やーめーろー……」
シン・ゴジラが頬を引っ張りゴジラが寝惚けたまま手を払う。と、そこへラドンが朝食を持ってきた。
「いただきます」
「いただきま~す」
「…………いただきます」
「……?」
ゴジラ達の言葉にシン・ゴジラが首を傾げるとゴジラがああ、と目を開けながら口を開く。
「植物にしろ動物にしろ、元は命だからな。命をいただくって意味でいただきますって有るんだ……」
「…………?」
「ん?まあそうだな。実際感謝してる奴はそうそう居ないだろうが」
「……………………」
「まあそう言うなって……ほら、今回はラドンが作ってくれたろ?ラドンに対してお礼を言ってやれよ」
「………………いららきます……」
と、シン・ゴジラは両手を合わせて舌っ足らずな言葉でいただきますと言ったのだった。
「…………ん?どうした、ラドン……」
「…………何て言っているのか、解るのか?」
「?まあな……」
何でそんな事を?と言いたげなゴジラを見て、親子なんだなぁ、と感心した。
ちなみに箸を持てなかったのでゴジラが食べさせてやった。
「はい、あーん……」
「あー…………」
シン・ゴジラは口をと大きく開けペガッサがライトで中を照らす。
「…………声帯があんまり発達してませんね。このままでは喋れる様になるにはそこそこの日数が必要かと……」
「まあ喋れない事が直接的な死因にはならないからな。その辺は発達しなかったんだろ」
「あくまで使われていなかったから衰えた、程度です。キチンと喋れる様になりますよ」
「う……?」
ペガッサが頭を撫でるとシン・ゴジラは首を傾げる。
「ところでこの人はどこの子ですか?」
「俺の子だ。リトルと違って、この世界で生まれたな。まだ0歳だから優しくしてくれよ?」
「…………え、子供?ゴジラさんの……この世界の?で、でも年齢が……あれ、0歳?」
「俺から分裂した子だ……」
「分裂って……ゴジラさんの細胞本当に凄いですね…………0歳?」
ペガッサは自分とは対照的なシン・ゴジラの一部分を見て、自分の控えめな部分を見比べる。
「……あの、ちょっと立ってもらえます?」
「う?」
シン・ゴジラが立ち上がると170センチを越えるスラリとした長身でペガッサを見下ろす。ペガッサも立ち上がるが擬音を付けるならチョーンだろうか。
「…………」
髪だってサラサラだ。何と言うか、女らしさで完璧に負けていた。0歳児に…………。
「…………」
「お、おいペガッサ……どうした、急に床に手を突いて」
「……そう言えば、デストロイアさんもスペースゴジラさんもオルガさんもビオランテさんも…………」
「お、おーい、聞いてるか?」
「この人達みーんなゴジラさんの細胞を取り込んだはず……ゴジラさん!」
「お、おう……?」
「貴方の細胞を分けてください!」
「え、ま、まあ……良いけど……気を付けないと危ないぞ」
「その辺は安心してください。仮にも研究者です。危険が無いと判断出来るまで使用はしませんから」
「なら安心だな」
昼飯はレストランで取る事にしたゴジラ達。
リトルはお子様ランチ。ゴジラとシン・ゴジラ。ラドンは日替わり定食だ。
「……あー…………」
シン・ゴジラは鉄板に触れるのも気にせず片手で肉を押さえ片手で引っ張り、千切って食べる。
「こらこらシン、口も手も汚れてるぞ…………ん?」
ゴジラはシン・ゴジラの口元を拭いてやると不意に振り向く。そこにはスマホを向けて笑みを浮かべる若者達が。
「ぷっ。見ろよあの女、ガキかよ」
「ガキ以下だろあれ……撮れ撮れ」
「おい……」
シャッターを押した瞬間レンズの前に手が現れ真っ暗な写真が撮られ、スマホが持ち上げられる。
「俺の娘が可愛くてつい撮っちまいたくなるのは解るけどよぉ……肖像権とか有る時代で、何ネットの晒し者にしようとしてんだ殺すぞてめぇ……」
バキン!とスマホが粉々に砕ける。
「………………」
「おっと、悪かったな。弁償する、いくらだ?」
「い、いえ……お気遣いなく……あの…………すいませんでした」
「その飲み方好きなのか?」
「う……」
ゴジラがちょっくら無礼な若者共に説教をしに席を立った間にドリンクバーでジュースを取りに行った三人。シン・ゴジラは複数のストローを使ってイチゴミルクを飲んでいた。
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