ウルトラ怪獣擬人化計画 怪獣王   作:超高校級の切望

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風聞?怪獣王!?

 バトラはコーラを飲みながら暇そうに空を見上げていた。

 普段一緒に居るモスラは『同じ守護神として、貴女を鍛えます!』とキングシーサーと共に鍛錬に行ってしまった。

 

「…………ん?」

 

 暇になったなと公園を歩いていると芝生に見知った顔を見付ける。ゴジラだ。

 その背後にはリトルと……背の高い女が居る。二人は本を読んでいるゴジラのユラユラ揺れている尻尾に合わせて右に傾いたり左に傾いたりと同じ様にユラユラ揺れている。

 

「うあ」

「むぎゅ!」

「あ、倒れた」

 

 それも倒れた向きのせいで背の高い女がリトルを押し潰す感じに。

 

「二人共、大丈夫か?」

「へーき!」

「へいい……」

 

 と、ゴジラが倒れた二人を心配して振り返る。その時、バトラとも目が合った。

 

「お、ようバトラ」

「…………あれ?」

 

 発音的に、多分『誰?』と言ったのだろう、随分と舌っ足らずな…………。

 

「バトラだ。バトラ、コイツはシン・ゴジラ。俺の新しい娘だ……こんな姿だがまだ0歳でな、優しく接してくれ」

「0歳だぁ?」

 

 

 

 

 

 ゴジラから大体の事情を聞いたバトラは本当に滅茶苦茶な奴だと呆れ返る。

 細胞の欠片から新たな命が産まれるってどんだけだ。そう言えば最近セルヴァムとか言う使い魔みたいなのも出してた。

 

「しかし0歳ねぇ…………ふむ……」

「…………!?」

 

 ムニュリとバトラの指がシン・ゴジラの胸に食い込む。そして次に自分の小さくはなく、しかし大きいとも言えない胸を見る。

 

「…………まあ胸の大きさを気にするなんて人間のする事だ、うん……」

「胸?ああ、胸か……まあデカい方が後々産まれる子供の為にも良さそうだが……ん?大きさって関係あったか?まあ良いか…………子供?」

 

 と、ゴジラは顎に手を当てる。

 

「子供って事はつまりあれだよな?相手が居る…………結婚するって事だ。いやいや、何を今更……シンもリトルも何時かは結婚するんだそりゃそうだ……結婚…………」

 

 何時かはリトルもシンも相手を見付け、結ばれるのだろう。しかし相手は、必ず人間だ。怪獣娘で男はゴジラしか居ない。

 どんな男が二人の下に現れるのだろうか?

 

「シンもリトルも天使だし相手は向こうから腐肉に群がる蠅の如く寄って来るだろうしな……」

「おい、その例えだとお前の娘達は腐肉だぞ……」

「いや待て、つまり見掛けで選んでるって事じゃねーか……ふさげんな」

「聞いてねーし」

「よし、まずは二人の何処を好きになったか聞こう。まず最初に可愛い所とか当たり前の事を言う奴も居るだろうがやっぱり中身を最初に口に出来る奴じゃねーとな……」

「…………駄目だ此奴。まあ、確かに見た目で寄られるのはなぁ…………いや……なぁゴジラ、別に見た目を気にする奴なんて居ないんじゃないか?」

「あ?」

 

 バトラの言葉にゴジラは漸く顔を上げた。

 

「モスラって身内の贔屓目に見ても美少女だろ?でもよ、彼奴……中学ぐらいの頃偽善ちゃんなんて呼ばれて虐められてたんだ。ま、アタシが黙らせたけどな……」

「…………」

「モスラはよぉ、あんな性格だから、誰にだって手を貸す。好意的に受け取る奴も居れば、悪意を以て受け止める奴も居る。んで悪意ってのは感染し易い。悪者になりたくなくても、悪者を作りたがるのが人間だからな……何時の間にかモスラは媚びを売りまくる売女扱いだ。何人か病院送りにしてやった」

 

 その時の事を思い出したのかケケケと笑ったバトラはしかし直ぐにつまらなそうな顔をする。

 

「なあ、人間って守る価値あんのかね?人間になって……そりゃ良い奴が居るのも知った。けど不思議な事によ、悪意を持ってる奴等の方が群れ易い、群れればそれだけ力を持つ……絶滅させなくても、せめて文明ぐらいは破壊した方が良いんじゃないかって、何度も思ってんだよ」

「それを人間を好ましく思ってなくて、しかも最近前世の記憶と混じり始めた俺に聞くか?」

「…………だな」

 

 家族の時間を邪魔したな、と立ち上がるバトラ。リトルが手を振ってきてシン・ゴジラも真似をしたのを見て、片手を振るとその場から去った。

 

 

 

「あ、てめぇ!」

「あん?おお、噂をすれば何とやら……名前忘れたけど同級生の皆じゃねーか。元気してたか?病院生活は楽しかったか?」

 

 自販機で何か適当なジュースを買おうとしていると聞き覚えの有る声に振り返る。そこには数人の男女がいた。かつてモスラの善意に泥を塗り嘲り、貶めた連中だ。

 

「何でてめぇがここに……」

「ここは公共の場だぜ?アタシが居て何が悪い。むしろ、公共の場でゴミを捨てるてめぇ等こそ何でここにいんだ?その癖治ったのか?」

 

 敵意を向けられても挑発を返すバトラ。一同が憎々しげに顔を歪める、しかし何かに気付いたように厭らしい笑みを浮かべる。

 

「そう言やお前等姉妹、化け物だったんだってな……何だっけ、怪獣娘?」

「それが?」

「怪獣娘ってのはおっそろしいよなぁ……何もしてない俺らに平気で暴力振るうんだからよ」「…………あぁ?」

「おっと落ち着けよ……こう言う噂が広がり易いってのはお前が良く知ってるだろ?で、お前だけ地獄に落とすと思ってんの?」

「────ッ!?」

 

 その言葉にバトラが固まる。

 怪獣娘を良く思っていない者は居る。それは事実だ。リトルの様に、怪獣娘と言うだけで血の繋がった両親から突き放された例だって有る。

 人より強い力を持った者を人が畏れ、敵視するのは珍しい事ではない。

 もし此奴等に手を出し噂を流されればそう言う連中が挙って騒ぎ出す。その標的は自分だけじゃなく、他の怪獣娘にも、モスラにだって向くかもしれない。

 

「──へ、へへ…………」

 

 バトラが固まったのを見て男は更に厭らしい笑みを浮かべた。

 

「なあ俺らがさぁ、中学での噂流したらやばいって解るよなぁ?流されたくないなら、解るよな?」

「……ッ!?屑共が……」

 

 ああ、本当に苛立たしい。何で良い人間より、こういった屑の方が頭が回る。

 やはり人間なんて滅ぼした方が良いのかもしれない。良い人間だけ残して、こういう連中は………。

 でも、それをやったら昔以上に人間と関わったモスラを泣かせるのだろう。説得出来たとしても、人間が大好きな彼女から、人間を突き放す事になるのだろう。間違いなく、泣く。それは、イヤだな…………。

 

「おい、自販機使えねーだろ。どけ……」

「……へ?ぶぁ!?」

 

 ゴシャア!とバトラに向けて手を伸ばした男の後頭部が掴まれ自販機に押し付けられる。

 自販機は無事だが、自販機より丈夫でない男は大変そうだ。鼻血を流して気絶している。

 

「な、何よアンタ!?」

「んだてめぇ!その化け物の仲間か!?」

「…………化け物?ああ、怪獣娘の事か……化け物、ねぇ」

 

 ゴジラはニィ、と笑うと襟を掴んできた男の腕を掴み握り締める。

 

「化け物が風聞なんて気にすると思うか?周りがピーチクパーチク喚いて、黙って俯くと思ってんのかよ、なぁ?」

「え?あ……あれ?」

 

 ズッとその場の空気をゴジラが支配する。群れて行動し、自分達が上だと思っていた其奴等は面白いほど狼狽える。

 

「周りがうるさきゃ黙らせりゃいい。俺達にゃあそれだけの力が有るんだからよぉ……なぁ?」

「…………ま、確かにな。けど一々相手にするのも面倒だ。噂を流す奴、ぶち殺せば早くね?」

「それもそうだな。で、お前等は流したりすんのか?」

「し、しません!絶対に!」

「ご、ごめんなさい!」

「あ、おい!」

 

 ゴジラに腕を掴まれている男以外は一目散に逃げ出す。鼻血を流していた男も鼻を押さえて逃げて行った。

 

「で、お前は?」

「し、しません……」

「そりゃ良かった」

 

 ゴジラが手を放してやるとその男もヒィヒィ呻きながら逃げ出していった。

 

「やり返してやりゃ良いんだよあんな手合い。ちょっと脅せば実行する度胸があっさり失せるんだから」

「………………」

「なんだ不安か?安心しろ、丁度そこに監視カメラ有るし、後でオルガにでも編集させて少女を脅す男女のグループとしてネットに晒してやる。信用は0になるだろうさ」

「………………」

「聞いてんのか?」

「…………助かった」

「そりゃお前女だしな。守ってやるのが男の仕事だろ……その辺考える辺りは人間も評価出来るな。ほれ……」

 

 と、ゴジラは自販機から蜂蜜ジュースを買ってバトラに渡す。

 

「けど、別に放って置いてくれたって……」

「そう言うわけにもいかねーだろ。あの男、明らかにお前の事、性的に見てたし。何もしてこないお前に何するか………お前は美人の部類に入るんだし、少しは気を付けろよ」

「……………………」

「無視かよ……」

 

 ゴジラは黙って立ち去るバトラに溜め息を吐きながらコーラを三つほど買う。

 

「核燃料どっかの自販機に売ってないもんかねぇ…………」

 

 

 

 

「あ、お帰りなさい」

 

 同室のモスラは先に帰ってきて居たようだ。バトラは何も応えず脱衣場に入ると扉を閉め、扉に寄り掛かりズルズルと腰を落とす。

 

──そりゃお前女だしな。守ってやるのが男の仕事だろ──

 

 

──お前は美人の部類に入るんだし──

 

「………………」

 

 普段なら別段気にしない様な言葉が、耳から離れない。顔が熱い。

 自販機の冷蔵機能によって冷やされた缶を額に押し当てても、その熱が引く事は無かった。




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