ゴジラは一人の少女と歩いていた。
少女の名は三枝未希という。
「それにしてもびっくり。ゴジラも転生してるなんて。ゴジラってこっちの世界の怪獣じゃないのよね?」
「向こうの怪獣も何体も来てたぜ?そっちこそ、実は怪獣だったのか?」
「うーん、どうだろ?ゴジラを兵器として扱おうとした人間にはゴジラを操る道具扱いされたし…………」
「…………わりぃ」
未希の言葉にゴジラが気まずそうな顔をすると未希が手を伸ばす。が、届かない。
「……同じ人間になってもゴジラはおっきいね」
「186だ」
「んー、大きい」
「お前は相変わらずチビだな」
「ゴジラが大きいの!」
ゴジラの言葉に未希はむ、とむくれる。
「てかお前、前よりチビになってないか?」
「若返ってるからね。ゴジラに会った時ぐらいかな?」
「ああ、そういやこんな顔だったな。人間の顔なんてあの頃はあんま見分けがつかなかったからな」
と、ゴジラは未希の頬を指でつつく。
未希は手で払うが嫌そうな顔はしていない。
「つーかお前以外の人間なんて大嫌いだったしな」
「あれ、じゃあ私は好きなの?」
「まあな」
「…………うーん。何か改めて恥ずかしいね」
「未希姉照れてる?」
「…………この子がジュニア…………ううん。リトルか……可愛くなったね~。うりうり」
「やー♪」
未希がリトルの頬をムニムニ弄るとリトルは嬉しそうに笑みを浮かべて暴れていた。
「ま、まずい……このままではゴジラの妻という今の立場が危ぶまれる」
それを影からこっそり覗くラドンは二人の仲の良さに戦慄していた。基本的に怪獣娘以外の、普通の人間には興味を示さないゴジラがあんなに楽しそうに。リトルも懐いているし。
「ううむ。まさか人間を敵だったというゴジゴジが心を許した人間が居たなんて~。これは強敵ですよ~」
「……むぅ……」
同じく覗いていたピグモンやアギラ達もどことなく不服そうな顔をしている。
かなり目立っていたが本人達は全く気にしていない。
「ああ、兄さんがあんなに楽しそうに…………」
「アニキの隣に居る女、どっかで見た気が……」
「【発覚】彼女は前世において当機を操縦していた女性に間違いありません。骨格が一致します」
「スーの?て事は敵対してたの?」
スーパーメカゴジラの言葉にアンギラスが反応する。かつて敵対していたと言うには随分仲がいいようだが……。
「………………」
「あ!ちょっとシン!?」
と、隠れて見ていたシン・ゴジラはスタスタと未希に近付いていく。
「ん?どうしたの?」
「…………う」
「え?え?ゴ、ゴジラ……何この子?」
そして何を感じたのか未希にそのまま抱き付いた。
「俺の娘だ。しかし懐かれてんな……俺の分身とも言えるし、それが関係してるのかもな」
未希の膝ですやすやと寝息を立て始めたシン・ゴジラの頭をゴジラが撫でると未希も習って撫でる。
「まずい!本当に家族みたいだ!私の立場が…………」
「ラドン、落ち着け……ゴジラだよ?流石に、ねえ……」
「しかし楽しそうだよ?まあお姉ちゃんだって人間の良い所は知ってるけどさ~」
「ところで、あそこで覗いている娘達はゴジラの友達?」
「まあな。仕事仲間だ……」
「言い方…………友達なんでしょ?」
「…………嫌いな奴らではないな」
「……そっか、良かった」