アギラはゴジラの横を歩きながら時折ゴジラに振り返る。
元旦の日、ゴジラと話していた少女は未希と言うらしく、前世からの知り合いらしい。
ゴジラの前世からの知り合いは既に数多くいるが彼女は他の怪獣娘達とは違った。敵対者や相棒とも違う。リトルみたいに、守ろうとする存在、だろうか?
少なくともゴジラが彼女を特別視している。
「……いいな」
「ん?」
思わず出た言葉にゴジラが振り向き慌てて顔を逸らす。
ゴジラはアギラの知り合った男性の中で一番近い人物だと思う。小学校では男女関係なく遊ぶものだが生憎アギラは趣味が年寄り臭い。友達はそこまでいた訳じゃない。
「ゴジラ……ゴジラって、友達居た?」
「いきなりなんだ?生憎いない」
「……そっか」
ゴジラは人間嫌いだし、まあそうか。
いやそうじゃないだろ。もっとこう、何か話題を……。
「にゃ……」
「わ……」
と、その時塀から一匹の猫がアギラに肩に飛び降りてくる。
「……あれ、キミは…………」
「にゃん」
その猫はゴジラと出会った時に、恐らくゴジラに助けられていた猫だった。
猫はスリスリとアギラの頬に頬を擦り付けそしてゴジラの背に飛び付いた。
「お、何だこの猫?」
ゴジラは背中に引っ付いた猫の襟首を掴み、顔の前に持って行くと猫の肉球がゴジラの顔を叩く。
「な~」
「その子、ゴジラが前に助けてた子だよ。お礼したいんじゃない?」
「……そうなのか」
「にゃん」
アギラの言葉にゴジラが猫に訪ねると言葉の意味を理解したのかは不明だが一鳴きした。
ゴジラはふと公園の入り口を見付ける。
「少し休んでいくか?」
「……うん」
そういえばこの公園は前にゴジラがメカキングギドラと寝てた場所だ。チラリと猫の両前脚を掴み二足で立たせているゴジラを見る。
猫ばかりに構っている。
良いなぁ。ゴジラに構ってもらって、羨ましい。
「……あれ?」
そういえば何でそう思うんだろう。前も、ゴジラと寝ていたリトルやシン・ゴジラを羨ましいと思った。
再びゴジラを見る。猫の腹を撫でていた。確かに猫はかわいいが、構い過ぎではないだろうか?
……猫。
「…………にゃあ」
「……ん?」
「…………────!?」
気付けばアギラは指を曲げ猫の手を作りゴジラの背中を叩いていた。ゴジラが不思議そうに振り向いたがアギラ自身混乱して固まっていた。
「…………ね……」
「ね?」
「猫ばかりと構ってるのは……その……ふぁ!?」
ポスンとゴジラの手がアギラの頭に乗る。顔が炎を吹き出しそうなほど熱くなる。
「そうだな。そろそろ仕事に戻らねーとな。ありがと」
「ちが……あ、いや……うん」
もう少し休んでても良かったのに、と思いながらゴジラの後に続くアギラ。
大きな背中だ。強くて、大きい背中。
男の背中だな、とアギラは思った。
「ねえ、ゴジラ」
「ん?」
「ボクってゴジラにとって、特別かな?」
「?まあ、他の人間よりは特別だな。そう言っちまったらGIRLS全員が特別になるが」
「……そっか」
ゴジラの言葉に嬉しいような物足りないような複雑な感情を抱く。しかしまあ、悪い気はしないなとゴジラの横を歩いたのだった。