『明日はいよいよバレンタイン!皆、どんなチョコをあげるか決まったかな?』
この季節になると何時もこんなCMが流れるな、とバトラは嘆息した。
好きな奴に好きな時に告白する勇気も無いなら最初っから引っ込んでれば良いんだ。くだらない行事、後押しされなきゃ何も言えないなら、それは所詮その程度と言う事だろう。
『そこの街行くおねーさん、アナタはチョコをあげる人いますか?』
『取り敢えず会社の同僚達に。今は友チョコとかも流行ってますし……』
「………………」
チョコと言うのはどうしてこう、種類が多いのだろう。
砂糖の量だの隠し味だので変わる味など微々たる物だろうに、おまけに大きさや形まで変えると来たものだ。
「お客様、どの様なチョコをお探しですか?」
「え……あ……その、ゴジ……や、仕事場の同僚に。ああ、ただの同僚。友チョコです」
「ではこのハート型チョコなど如何でしょう?」
「義理だっつってんだろ!?」
「はい。最近では義理でもハート型は珍しくないですよ?」
そうなのか、と首を傾げるバトラ。生憎彼女は世情に疎い。店員はニコニコと微笑みを浮かべ続けている。
「じゃ、じゃあコレ一────」
「あれ、バトちゃん?」
「────っ!?」
ギクリと身を竦ませ振り返るとモスラが居た。
「あれ、バトちゃん……それ、チョコ?」
「ちちちち違う!こ、これは……そう、自分用だ!」
店員はニコニコ笑っている。
「自分用?でもバトちゃん、甘いの苦手じゃ……」
「……あ?…………あっ」
そういえば誕生日、クリスマス、バレンタイン、その行事になると必ず現れる謎の存在Xから逃れる為にそんな事を言った記憶が有る。
「さ、最近食べれるようになったんだよ」
「そうなの?良かった、じゃあ今年はバトちゃんの分も作るわね!」
「止め──……待て、アタシの分……
「うん。ピグモンさんにレッドキングさん、エレキングさんにアギラちゃん、ミクちゃん……取り敢えず今日は参考にしに……」
ああ、そうか。友チョコなんて珍しくもないもんな、と安心するバトラ。が、直ぐに固まる。
「モスラ!」
「はい?」
「皆で作ろう」
「そうですね。全員でなら意識してる事がバレませんからね」
この店員は何を言っているのだろうか?取り敢えず今は無視だ。
「はいみなさ~ん、第一回、バレンタインのチョコ作りを始めますよ~♪」
ピグモンはにこやかに笑いホワイトボードにチョコの作り方を書く。
「良いですか皆さん、チョコに体液や媚薬等を入れてはいけませんよ?特にビオビオ。それとメカキンちゃん、自分にチョコを塗ってプレゼントするのもダメです」
「ホワイトチョコは?」
「もっと駄目です!」
ピグモンはもお、と溜め息を吐いて次にスーパーメカゴジラをじろりと見る。
「自分にリボンを巻いてプレゼント、何てのも駄目ですからね」
「【心外】当機はその様な事をしない」
「目を合わせて言いましょうね~」
アギラは溶かしたチョコに牛乳を混ぜる。ゴジラは苦い方が好きだろうか?
でもどういう形にしよう?ここはシンプルにハート型?
「アギちゃん鳩型とか変わってるね~」
「…………?」
何故かシンプルなハート型にするつもりがわざわざ削って鳩型にしてまった。理由は不明だ。
「ククク、これさえ食えば奴も一溜まりもあるまい……」
デストロイアはチョコの中にオキシジェンドストロイアーを混ぜる。
「後はうまそうな形に固めれば…………」
オキシジェンデストロイヤー。何でも溶かす薬品だ。つまり……
「……固まらない!?」
「ガアァァァァァォ!」
「「──!?」」
ゴジラの叫び声にシャドウミストが散り散りに散っていく。
「今日はやけにシャドウミストが多いな。特に男…………」
気絶した男達を見てゴキリと首を鳴らす。
「あの、ごめんなさい。下駄箱を間違えました」
「うおおおおお!」
「またか……」
シャドウミストは心の傷に取り憑くと言うが、今日は心に傷を負った者が多すぎる。何が原因なんだろうか?
「あー疲れた疲れた」
ゴジラはコキコキ首を鳴らしながらGIRLS本部に戻り、先程ピグモンからメールで来るように言われた部屋に向かう。
「おいピグモン、用事っていったい…………」
「「「HAPPY VALENTINE!!!!」」」
ドアを開けた瞬間少女達がラッピングされた箱を渡してくる。
「ゴジラ、これ……」
「ほーい、私達からチョコだよー」
「どうぞ受け取ってください」
と、カプセルガールズの面子がゴジラにチョコを渡す。ミクラスは笑顔で、ウィンダムは微笑を浮かべアギラは箱で顔を隠しながら渡してきた。
「ほいゴジラ、これあーげる」
「渡せる男なんてGIRLSじゃお前ぐらいだしな」
「義理よ」
ゴモラ、レッドキング、エレキングからも受け取る。
「…………食うが良い」
「飲めの間違いだろ……」
デストロイアがチョコドリンクを渡してくる。取り敢えず持って帰るのも大変そうなのでこの場で飲む事にする。
「……何か舌がピリピリして激しい胸焼けがするんだが」
「ッチ、その程度か……」
「…………何入れた」
「さあな……」
「……ほう?」
ゴジラとデストロイアの間に不穏な空気が流れているとモスラとバトラが寄ってくる。
「ほれ、義理だ」
「はいゴジラ。何時もお疲れさまです。早く食べてくださいね?時間が経つと溶けて逃げるので」
「………………」
「監視はしてた。してたんだ…………」
ゴジラに見られグッと悔しそうな顔をするバトラ。監視付きでマトモな料理が出来ないというのはある意味才能な気がしてきた。
その後女子達は女子達でチョコ交換をしてゴジラは貰ったチョコを抱えながら歩く。ものすごい量だ。食べきれるか?
「パパ、一緒に食べよ!」
「そう、すれば……すぐ食べれる」
「んー、そうだな…………」
と、二人の提案に乗ろうとしたゴジラだったが不意に先程のアギラ達の顔を思い出す。
「…………いや」
「「……?」」
ゴジラの言葉に二人は首を傾げた。
「これは、俺が彼奴等から貰ったものだ、あげられない……」
「…………ふふ」
後をこっそり付けていた未希はその光景を見て満足そうに微笑んだ。