ゴジラはビルからビルの上を飛んで下を見回す。今は深夜。しかし明朝が近付いてきたのか空は白みを帯びてきた。
「……収穫無し」
『お疲れ様ですゴジゴジ。今日はもう休んでください。絶対ですよ?絶対ですからね?』
「…………それはフリか?」
『怒りますよ?』
通話相手であるピグモンの言葉にゴジラは悪い悪いと肩を竦めた。
夜通し偽ガッツを探しに町を出歩くゴジラ。眠さで閉じ掛けた目を擦りながら歩く。
幾らG細胞を持っていると言ってもゴジラは人間に転生している。前世の力を持っていても変身しなければG細胞の効力も格段に劣る。
要するに疲れた。変身すれば体力は回復するだろうがそうなると気力を消費する。
今から部屋に向かうとリトル達を早い時間に起こすかもしれない、どこか適当な場所で一旦仮眠を取ろうとゴジラは休憩所に向かった。
「…………ん」
「あ、起きた?」
目を覚ますと目の前にガッツの顔が横向に存在した。
後頭部の下には何か柔らかいモノが…………恐らくはガッツの脚だろう。
「何してんだ?とか聞かないの?」
「膝枕だろ?」
「むぅ……じゃあ何でこんな事を、とか聞かないの?」
「俺が最近夜遅くお前の偽物を探してるのピグモンから聞いたとか?」
「…………つまんないな~」
ゴジラが全く照れた様子も慌てる様子も見せなくて、容姿にはそこそこ自身があったガッツは頬を膨らませてむくれる。
まあ確かに怪獣娘は何故か綺麗揃いだし、その中では平均的になってしまうのは自覚してるが…………。
「ゴジラって女の子に興味無いの?」
「基本人間には興味の欠片も無い」
「だよねー……」
ゴジラの少し硬い髪を撫でながらはぁ、と呆れるガッツ。自分で言っといてなんだが、ゴジラが色恋にうつつを抜かす姿が想像出来ない。
「その辺の知識は無くはないが」
「そうなの?」
「自称俺の親友の中目黒がモテる奴でな、そいつから色々聞かされた」
と、疲れた様に言うゴジラ。自称親友とは何者なのだろうか。
「ただの孤児院の同期だよ。人に優しくとか、兎に角反りが合わねーくせによってくるうぜー奴」
と言う割はそれほどまでの敵意を感じない。好きではないが嫌いでもないのだろう。
珍しい。
「そいつから女性の扱いがどうのって言われて無理矢理学ばされた…………」
「…………話を聞いてあげるぐらいには仲が良いんだ」
「黙れ。しつこかっただけだ……」
顔を歪めるゴジラ。ゴジラの意外な弄りネタにガッツはニヤニヤ笑いゴジラの頭を撫で回す。
「じゃあゴジラはどんな事を学んだの?」
「傷付けたら責任取れとか、そういうの……」
「ああ、そういえばゴジラって最初、ウィンダムやミクラスに責任取って『俺が結婚してやんよ』とか言ったんだっけ?」
随分と懐かしい事を言う。確かにそんな事も有った。
「後は女性の接した方とかも教えられたな」
「へえ、何でまた……」
「中目黒曰わく『知っておいて損はない』って毎日毎日…………『黒慈は顔は良いし、何時かは人間を受け入れて子を残す必要も出てくるから』ってな……」
「……結果は?」
「俺はここに来るまでの友人は0」
「中目黒さんは違うの?」
「違うね」
即答である。良くその人物はゴジラの親友など名乗れたものだ。可愛気が全く無いではないか。
「可愛気が無くて悪かったな。つか、男にんなもん求めんな」
「あれ、声に出てた?」
「顔に出てた」
「そんなに解り易い?」
ムニムニと自分の頬を触ってみるが、生憎それで表情が解ったりはしない。
「でもさ、何でわざわざゴジラがこんな事してくれるの?」
「困った時は助けるって約束だからな。お前、最近ちゃんと寝てないだろ?」
「う……」
「……そういや俺が困ってたら助けてくれるって約束だったな……このまま寝てたいからしばらく枕になっててくれ。その間、ここから動かなきゃ何してても良いぞ……ふぁ」
と、ゴジラは欠伸をして目を閉じる。暫くすると寝息が聞こえてきた。
気持ち良さそうに眠るゴジラを見ているとガッツも眠くなってきたのか目を擦り、背中を壁に預け眠り始めた。
「…………ん」
ガッツが目を覚ますと横になっており、ゴジラの姿はない。代わりに毛布が一枚ガッツに掛けられていた。
「…………ありがと、ゴジラ」