「と、言う訳で……此奴等が俺の同族達だ」
G細胞を持つ者達を前にゴジラ・アースはほう、と呟き眺める。
厳密に言えばG細胞を取り込んだ者としてはデストロイアが居るがあれは進化の方法として取り込んだので除外。
「こうして見ると中々奇妙な感覚だな。覚えの無い娘達が居ると言うのは…………これが不倫ばかりして子持ちに心当たりが有り過ぎる父親の心境か?」
「どういう心境だよ…………」
「ワシはこの世界で、二歳の頃前世の記憶を思い出した。母が昼ドラ好きでな、その頃には見せられていた」
「そういや、何であんた富士の樹海に居たんだ?俺と違って、別段人間が嫌いと言う訳でもないだろ?」
と、ゴジラの何気ない言葉にゴジラ・アースはむ、と俯き瞼を閉じる。聞いてはいけない類の話だったのだろうか?
「いや、良い…………実は、ワシが6歳になる年の正月、家族で富士の頂上から初日の出を見る事にしたんだ。その時ワシは、懐かしい深い森の気配に惹かれ、両親から離れてしまった。そして、樹海の性質に身を預けている内に眠くなり……気が付いたら二年経ってて帰るに帰れなくなった」
「…………お前、本当に寝坊助だな。人間達が帰ってきた後、ちゃんと起きたのか?実は寝てる間にやられたとか……」
こうして目の前に居るのだから原因は何であれ死んだのだろう。だから、まあ人間達とは戦ってはいるのだろうと勝手に予想していたがこれでは……
「ぬ。おい、失礼な……ワシとてキチンと起きたぞ。お主が死んだ後に、じゃが…………その後寝起きの深呼吸とストレッチしていたら何時の間にか沢山死んでおったがな」
「………………」
普通に動いただけでも大体のモノを破壊出来るのだから相変わらず質量チートな母だ。
「それより、早く紹介してくれ」
「おう。じゃあまずは長女から…………」
ゴジラの言葉に三式機龍が一歩前に出る。
「私は三式機龍。元々は骨になったゴジラの骨に機械の筋肉、鉄の皮膚を付けた兵器だ」
「ほう?ワシを模した兵器はワシの所にも有ったが、似た様なものか?しかしお主は骨が有ったのか?」
「そういや母さんはねーな」
続いて前に出たのはビオランテ。
「私はビオランテ。とある科学者が死んだ娘を生き長らえさせる為に細胞を移植した薔薇に、さらに枯れないように兄さんの細胞を植え付けた結果生まれた怪獣です」
「ふむ、ビオランテならワシの世界にも居たな。ワシと同じく植物怪獣か……」
ちなみにゴジラ・アースは動物ではなく植物の突然変異らしい。
「オレはスペースゴジラ。宇宙に漂ってた兄貴の細胞が結晶生物食ってエネルギー吸収して怪獣化した……その生物がゴミみたいな弱さだから姿はほとんど兄貴に似ちまったな」
「宇宙か……となると宇宙空間を浮遊出来るのか?だとしたらワシも一々備えず追っていけたのだがな…………」
生憎と飛行能力の無いゴジラ・アースは羨ましそうに呟いた。
「私はオルガ。元は宇宙空間の永い旅に備える為に身体を気体化させてたんだけど永い年月の中で元の肉体に戻る術を失って、兄様の細胞を取り込んで戻ろうとしたけどそのまま怪獣化した」
姉妹はこれで全員。後は娘達。
「長女……は、もうミニラか。次女のリトルだ」
「よろしくおばあちゃん!」
リトルは片手を上げて笑みを浮かべる。
「んでこっちはシン。関係としては俺と母さんに近いな。俺の細胞から生まれた分身だ……」
「ほう……?」
「…………?」
ジッと見詰められ首を傾げるシン・ゴジラ。成る程分身だけあって、一番息子に近い気配を発している。が、やはり少し違う。随分と変わった進化をしたものだ。進化そのものが能力とでも言おうか?
「パパ、ボクお姉ちゃんになったの?」
「ん?ああ、今日から長女だ。仲良くな……」
「はーい!二人共よろしくね」
と、シン・ゴジラとリトルに駆け寄るミニラ。
「お姉ちゃん?」
首を傾げるリトル。
「お姉ちゃん!」
胸を張るミニラ。
「お姉ちゃん!」
笑みを浮かべ抱き付くリトル。
シン・ゴジラもそれに続く。体格差から、二人はむぎゅう、と唸った。
「妹と言えばフィリウス、こやつ等も主と遊びたがっておるぞ」
「ん?」
と、その瞬間複数の影がゴジラに向かって飛び付く。
「にーに遊ぼー!」
「うぷ!?」
「遊べー!」
「何して遊ぶ?」
「人間狩り!」
「それもう禁止」
「じゃー鬼ごっこ!」
生前の世界線の一つのゴジラ同様にゴジラ・アースから生まれた怪獣、その怪獣娘達はゴジラに飛び付く。
「…………良いな」
それを羨ましそうに見詰めるのはビオランテ…………ではなくオルガ。
しかし自分のキャラではないし…………。
「時にフィリウスよ、まさかまた妹や姉、娘が増えたりせんよな?」
「……………………」
「おいどうした?こら、目を合わせんか…………」
人の気配が耐えない都会でも、人が寄り付かぬ場所は確かに存在する。その薄暗い路地裏を自身の庭として逃げる影が有った。
日中だと油断していた中年の女性からバックを奪い直ぐ様逃走した男は出来るだけ遠くへ逃げようとなお走り続ける。と、不意に何かがぶつかる。
「────って!?」
一体なんだと見ればそれは少女だった。いや、幼女と呼ぶべきか。こんな所で何を、と思う前に苛立ちが勝る。
「おいクソガキ!てめぇどこ見てやがんだ!」
「………………」
自身の倍以上の男の恫喝に、しかし少女は笑みを浮かべる。
「遊ぼ!」
「は?何言って────」
「高い高ーい♪」
翌日、倉庫から物音が聞こえ覗いた住人に、窓を突き破って進入したと思われる血だらけの男が発見された。そこは五階で男は異様に子供を怖がったと言う。
G家相関図
ゴジラ・アース
↙↗ ↑ ↓
親 子 育て親 拾った子
↙ ↗ ↑ ↓
ゴジラ⬅親子➡ミニラ(卵から生まれる)
↓↑ リトル(拾った卵から生まれる)
兄姉妹 シン・ゴジラ(分身体)
↓↑ (キングゴジラ)(改造クローン(本
三式機龍 編未登場)
ビオランテ
オルガ
セルヴァムシスターズ
もしもシリーズ
もしもアース母さんが蟲師の世界にいたら
「………はー………こりゃまた妙な地だ。光脈筋が複雑に絡まってらぁ」
口元に布を巻いた男、蟲師のギンコは片目しか存在しない緑の瞳で、周囲に満ち満ちる精気を吸い異様に巨大に生い茂った植物達。それは知識がある者が見れば恐竜時代の森のようだと呟いたことだろう。
半年ほど前からこの山と麓の森に異変が起きた。突如植物達が成長したそうな。多くの蟲師が調査に乗り出すも戻った者は誰もいない。
「ふむ、この植物達………かなりの鉄を含んでいるな」
持っていたナイフでカンカンと葉を叩くギンコ。
「ん、池か……何とも綺麗な。しかし魚一匹いない………ん?いやこれまさか、全部光酒か!?」
光酒などワタリにでも会わない限り滅多に手には入るものじゃない。ギンコは早速入れ物を浸し光酒を取る。と、その時───
「蟲師か………また性懲りもなくワシを殺しに来たか?」
「───!?」
突然後ろから聞こえた声に振り返る。そこには森のような緑の服を纏った少女が居た。
人ではないだろう。背鰭に、太い蜥蜴のような尾を持っていた。
「………初めて見たな」
「?」
「まさか光脈筋の終着点が、たった一つの生物だとは……いや、あんたは生命なのか?」
「さて、ワシがそれに答えてやる道理もなし。が、一つ言えることがあるとすれば……ワシは主等蟲師からすれば禁忌の存在らしいの?」
「おいおい落ち着けよ。俺は別にあんたを追い出そうとしてないさ。別段あんたが人に迷惑をかけてるわけじゃないしな……今回はただの調査だ」
「………ほう?」
その言葉に少女は軽く笑うとギンコの横を通り過ぎ池に身体を漬からせる。それだけで光酒の濃度が増した。
「付いて来い。この池のそこ、そこがワシの家だ」
「………信用するのかい?」
「ワシに嘘は通じぬ。嘘を吐く輩は皆蟲にして光脈に沈め、食らってやった」
そう言うと少女はギンコに向かって手を差し出す。ギンコはその手を取ると僅かに痛んだ。溢れる生命力のせいだろう。
「こういうことになれている蟲師なら、まあ多少は平気だろう。これは遠い未来、あるいは遥か過去放射能などと呼ばれていた毒の気だ。しかし希に、適応した生物を進化させることもある。まあ、大概が巨大化する代わりに短命になる程度だがな」
少女とは思えぬ力に引かれ、池の中に落ちる。不思議と息は出来た。
暫く琥珀色の水面を沈んでいると時折妙なモノが見えた。黒い糸が絡まったような不思議な体をした蝙蝠のような蜥蜴のような生物。赤い瞳で、じっと此方を見つめている。
池のそこには穴があった。そこを潜ると穴は曲がり、やがて空気のある空間に出た。
「……これは」
その空間の中央に、大きな鉱石がある。中には人の子に似た、少女と同じく背鰭や尾を生やした少年が煙っていた。
「ワシの子だ。名をフィリウスという」
「ふ、ふぃり……?」
「この時代のこの国の民には発音しにくかろう」
カラカラ笑うと手頃な石に腰をかける少女。ギンコもそれに続いた。
「何故、俺をここに……?」
「他意はない。虚言を労さず、ワシのような未知の輩に話がしたいだけなどと言った定命なる者へのせめてもの褒美だ。それに貴様が敵意を持ったところでワシに何の害になりはしない」
「それで、アンタは何なんだ?」
ギンコは単刀直入に聞くことにした。目の前の存在は、気まぐれでこちらを何時でも消せる存在だ。逆らう気などないが、長く関わろうと思えるほど生易しい存在でもない。
「理だ」
「理だと?しかしアンタは実体を持っているじゃないか」
「この周期は多少特集でな。星の力に、形をやってやった………お前達が蟲と呼ぶものだ」
「周期……?」
「生命のやり取りに関して、ワシは干渉しない。そこはワシの領分ではない故にな………ワシは知性という、自己を手に入れた生物を見張る者。その生物が奢り星を殺そうとした時その生物を滅ぼす。そういう概念だ」
「………滅ぼす?知性を持つ生物……人間をか!?」
「ああ。何度も滅ぼした。お前達からすれば自分達は初めての生命、などと思っているのかもしれないが、実際は繁栄しては滅ぼされてと繰り返しているのさ」
「……………」
「ワシはその時が来れば地表の生命を消去する。星の外に逃げ出した際の対策として、数万の時、この星の環境を生物にとって良くないモノに変える。今回の異変は、その予行だな」
「………近々、人は滅びると?」
「お前達にとってはかなりの時だろうが、ワシからすれば刹那のような時間だ。星から追い出した後はワシは眠りにつく。光脈を吸い力を蓄えるためにな。あやつはその間、ワシの代役を務めるものよ」
そういって眠る少年をみる少女。よくよく見れば少女から少年に向かい光脈が流れていた。
「さて、話は終わりだ蟲師。この地を去るが良い。予行も終わりだ、直にこの山々も元に戻る」
「一つ教えてくれ………この周期ってことは………蟲は、本来存在しなかったのか?」
「元よりただの星の力の流れだ。そこに現象を起こす力こそあれ、現象を起こす道理はない。だがこうやって、星は様々な環境を産むんだよ」
「……何故?」
「何度殺されそうになっても、星にとっては子なんだ。好きなのさ、だから永遠に共に歩ける方法を探す。同じ様な進化をたどり、だが星を殺さぬ存在になるのを願い少しだけ環境を変える……そういうのを何度も繰り返し、何度も失敗した。しかし、やはり諦められぬものよなぁ………」
「………………」
異形の山から降りたギンコは不意に後ろを振り返る。
異様に大きく育った木々は、時期に枯れるのだろう。光脈は変わらずあの親子に力を与え続け、役目が来れば世界を一からやり直す。
「くわばらくわばら、その時に生きては居たくないねぇ………」
と、去りながらもふと考える。あの息子は、明らかに作られている途中。眠らされているわけではない。
あの少女が永遠に存在し続けているのなら、子は?代役は本来、あの黒い生物達の役目ではないのだろうか?
(………環境をがらりと変えちまう、常に星から力を貰える生物か…………)
いったいどれだけの時を生きたのだろう。
いったいどれだけの文明を終わらせたのだろう。
「……そんなに長い間生きてると、やっぱり寂しいのかね」
その後、半年続いた山の異変は、唐突に止まり元の森の景色が戻ったという。
その星は、何度も何度も繰り返す。
知性を持ちより効率のいい繁栄を築いた動物が、やがて奢り星の恩恵を忘れると滅ぼし、しかし何時か解ってくれると同じように産みだし、見定める。何度も何度も。何時か、星の化身が消えるまで。