ヤンキー・グラヴィトン・アンファンツ【完結】   作:梵葉豪豪豪

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 エタってる作品の続きを執筆している途中で書いてみた。


01 ヤンキー・マグニチュード

 世の中には自分でどうもならない進路というものもある。問答無用で試験受けさせられてやれ入れだ何だ言われて国立高校の入学式を迎えて最初のHRに居座る自分がいる。

 ここはIS学園。10年前にインフィニット・ストラトス、通称ISと称する人形兵器が世の中を席巻して、それを学ぶ女子高校という何だそのSF、な気分を抱えてその新入り女子高生はグダっていた。頬杖をついて窓の外を眺めたままだ。

 

「あの~、夕立さん? 自己紹介、お願いできますか? できますよね?」

 

 ここ1組副担任の山田先生(眼鏡巨乳)が微妙に涙目で訴える。既に長いこと自己紹介が進んでいるが、自分の番になっていた。すごく気怠そうにその少女は立ち上がり、

 

「……夕立沙莉寿(ゆうだちさりす)」

 

 名前だけ語ってさっさと座った。

 

「あのー……それだけ? ほら夕立さん、髪の色とか色々紹介するような話とか」

「血筋」

 

 言われてみれば沙莉寿の外見は日本人離れした整った顔立ちに珍しい赤眼、更に微妙にピンクな銀髪サラサラストレートヘアーの子である。所々跳ねているが。更にちんちくりんな体形をしているので殆どボー○スのロリなドールかというスタイルだ。しかしいかにもちょいヤン系なのが近寄りがたい雰囲気を発している。

 

 その後、担任の織斑先生が表れて、カリスマ教師キタコレ万歳先生を讃える歌だの色々クラスが騒いでいたが、彼女は相変わらずであった。

 

 休憩時間、沙莉寿はそれでも変わらずぐだっていた。ついでにポッキーを口に挟み、授業中と同じく頬杖をついて窓の外を見ている。

 

「よっ! 俺、織斑一夏! 隣の席も何かの縁、よろしくな!」

 

 俺マサラタウンのサ以下略みたいなノリで沙莉寿に声をかけたのは、この女子高唯一の男子、織斑一夏である。ISという兵器は女性しか乗れないというある意味クソ兵器ではあるが、その中で唯一発見された男性の適合者が彼だ。ある意味国による保護的な意味での入学となった。ついでに織斑先生の実弟でもある。

 そんな一夏に、

 

「あーさいですか」

 

 の一言で沙莉寿はそちらを見ることもなく返してきた。クラスで唯一どうでもいいオーラが滲み出ている。それでも、まぁそんなこと言わずにお互い頑張ろうぜと笑って話を続けた一夏はそれはそれで大物かもしれない。イケメンだからこそでもある。

 

 そこへ金髪の白人女性が近寄ってきた。縦ロールといういかにもな髪型にお嬢様臭さを周囲は覚えた。

 

「ちょっとよろしくて?」

「うっせー帰れ」

「なっ……!? あなたに言った訳ではありませんのよ!?」

 

 速攻で横合いから沙莉寿に無下にされて戸惑ったのは、セシリア・オルコット、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国のイングランド人だ。4国は文化が違うためゴッチャにするとめんどくさいことになるので強調してみた。掛け値なしに美少女……ではあるが、そこでゴロッとしているちょいヤン美少女とどっちが美少女メンかといえば後者だ、というのがクラスメイトの見解となる。しかしヤン成分で大幅に下がり美少女の美少女たるスタイルは前者となった。とはのほほんなクラスメイト・談。何書いているのかさっぱりだ。

 

「まぁ何ですの? 唯一の男性操縦者だと聞き及びましたから来てみれば、こんな危機感も何もないような面構えをして、一体何しにここへ来たつもりなのですの?」

 

 セシリアの露骨ど直球なボヤキに一夏はつい本音で返すが、

 

「俺に何かを期待されても困るんだが」

「国があなたに期待しているんでしょう? 馬鹿言わないでくださいまし」

「……」

 

 藪蛇という言葉もある。

 

「まぁ、イギリス代表候補生のこの私がずぶの素人のあなたにISの事を指導してさしあげてもよろしくってよ?」

「なぁ、沙莉寿」

 

 さしあたって一夏は沙莉寿の方を向いて、

 

「代表候補生って何だ?」

「そこからですの!?」

 

 セシリアの呆れとともに、クラスの喧騒が絶妙に止まった。意外と皆聞き耳を立てていた。とりあえず沙莉寿はウンザリと顔を上げた。ポッキーは咥えたままである。

 

「下の名前で呼ぶな」

 

 と前置きし、

 

「ISでどつきあって一番偉い奴の予備軍。ぶっちゃけ人に向けて銃ぶっ放していい奴になりたくて頑張ってる奴」

「……何か、偉いってのはなんとなく判ったけど、えらく悪意こもってないか?」

「生身のこっちに向かってバカスカ撃ってくるような連中なんか好きになれんわ。あとポン刀向けてくる奴も」

「君の人生何があったのさ!?」

 

 周りもよくわかんねー、て首をひねる中、セシリアは続けた。自分の威厳のためにも。

 

「とにかく、代表候補生とはISのエリートですのよ。特に私は入学試験の筆記も実技もトップで……」

「あぁ、実技なら俺も教官倒したぞ」

「はぁ?」

 

 実際には突っ込んできたのを避けたら相手が壁にぶつかって自爆しただけである。それでも合格扱いされたのは事前に腕前を確認するための試験だったからだ。

 

「それで沙莉寿はどうだったんだ?」

「こっちに振るな。引き分けだよ」

「そうですわそうですわ、普通は良くてその程度ですのよ」

「ど突き合ったらお互い機体ぶっ壊れたんだからしゃーねーだろ」

「どういう戦い方したらそうなるんだよ! 壁にぶつかったって壊れないよな普通!?」

 

 何か叫んでばかりになってしまったが、授業開始のチャイムが鳴ったのでうやむやにお開きとなってしまった。尚セシリアは捨て台詞を吐いていたがチャイムで聞こえていない。

 

 

「さて、授業の前にまずはこの1組のクラス代表を決めなければならない。早い話が委員長だが、代表試合にも出場するところがこの学園での特徴だ。自薦他薦あれば推して欲しい」

 

 担任の織斑千冬先生(好きなもの:ビール)が非常にざっくりと説明した。尤も、入学案内にも記載されていた事柄なので、話は早い。タナボタで入学させられた一夏以外はと付くが。

 

「ハイ! 織斑君を推します!」

「織斑君!」

「織斑君で!」

「オリムーラー!」

「え? 俺!?」

 

 自分が推薦されまくって狼狽える一夏。要は目立ちそうな判りやすい相手だからである。

 

「ふむ、織斑以外に誰かいないか? ……では私からも推薦を出そう。夕立、お前も出ろ」

「やだ」

 

 速攻で拒否された。

 

「そう言うな。このクラスでは今のところお前が一番強いのだからな」

 

 クラス中でどよめきが走った。世界で一番強い女が強いと推しているのだからそれはもう。

 

「あのー、夕立さんって、そんなに強いんですか?」

 

 クラスメイトの疑問も尤もである。傍目に微妙に怖そうではあるが、小学生かって位のちみった体型の見た目であるからだ。尤もISに乗れば体格は関係ないが、見た目から想像が付きづらい。

 

「こいつは実技試験で私とやり合って引き分けに持ち込んだんだ。機体はついて行けず壊れたがな。これから技術を磨けばこいつは更に上に行けると私は思っている」

 

 更にどよめきが広がった。休憩時間の話は本当だったというのもあるが、世界最強別名ブリュンヒルデとタメ張れるなんてどんだけなのさー! となる。それ以上はシ○ニー・○ィーバーしかいない。

 当の本人は、この野郎いらんこと言いやがってというスカシ目で溜息をついていた。後何か一夏がまぶしそうにこっち見てる。

 

「納得いきませんわ!」

 

 一人気炎を吐いたのはセシリアだった。しかし千冬は冷静に返した。

 

「そう思うなら自薦しろ」

「ぬぅ……ともかく、この私イギリスのエリートが! こんな極東の島国に東洋の猿共と一緒にいるだけでも耐えがたく……!」

「イギリスだって移民問題やら何やらで微妙もいいとこじゃねぇか! あとさらっとうちのクラスと千冬姉ディスるのやめれ!」

 

 それを皮切りにせっしーいっちーのお国バトルの応酬となり、ディスられたクラスメイトもなんやかやと騒がしくなる。拗れに拗れてオーストラリアよりマシ、の結論に達しかけたところで、沙莉寿が一言、

 

「うるせー」

 

 何故か一斉に静かになる一同。セシリアがテンション上がったまま彼女を睨む。

 

「何ですの貴方。ブリュンヒルデに持ち上げられたからっていい気になっていますの?」

 

 口喧嘩のストレスに対する矛先が彼女に向けられただけではある。当の沙莉寿は静かに立ち上がり、右腕をゆっくりと振り上げた。そして一閃、平手で机をぶっ叩く。

 

 一瞬で、机は轟音を立てて床で真っ平らになり、粉砕されて細切れの破片と化した。その衝撃は机ごときで緩和されることはなく、沙莉寿の真下の床を中心に、校舎全体へと直下型地震が発生した。方々で悲鳴が上がる。

 気が付けば、彼女を中心に椅子机人員が放射状に数メートルは後退していた。セシリアを含むクラスメイト一同が安彦良和漫画のモブのごとく驚き顔で固まっている。床まで粉砕されなかったのは有情である。

 

 下手人沙莉寿はこの静かになった空間の中心で一人、無言で扉へと移動しようとしていた。その前に千冬へと振り向く。この教師はまったくもって動じていなかった。流石ブリュンヒルデ。尚山田先生は飛ばされてそこら辺に転がっていた。

 

「せんせー、早退しまーす」

「ふざけるな貴様。許可できる訳ないだろう。後自重しろ」

「床は壊さなかったよ。後机無くなったので授業受けられねー」

「いじめで机隠された生徒みたいなこと言うな。予備なら教壇前にあるだろう」

「やだなーこの雰囲気で私がいるのみんなイヤなんじゃないかなーと思うんだけど?」

「安心しろ、貴様に慣れる程度にはこのクラスは鍛える予定だ。建前でもいいから人並みに授業は受けろ」

「ちっ」

 

 ここでようやくセシリアがよろめきながらも立ち上がり、沙莉寿を睨み指差した。

 

「決闘ですわ!」

「知るか馬鹿」

 

 要するにクラス代表を決闘で決めろと言いたい訳ではあるが、クラスメイトの殆どはそういう話題で言い争っていたと今思い出した。強引に軌道修正がなされてそしてグダグダのままセシリア・一夏・沙莉寿の3人で争うこととなった。無論ISで。誰にとって得なのかさっぱり判らないど突き合い決定戦である。

 

 

 授業も終わり、生徒たちは食堂にて夕食を摂っている頃合いである。沙莉寿も友人と一緒のテーブルで夕食にありついている。2枚目の焼魚定食を頬張っているところだ。和食万歳。

 

「あの地震さりーちゃんのだったんだー。ちょっと見てみたかったなー」

 

 とは友人の更識簪(眼鏡貧乳)。笑顔でクリームシチューをすすっている。4組に所属する日本の代表候補生である。沙莉寿が代表候補生を散々ディスっておいてこれではあるが、生憎と簪も自分の肩書に同じようなことを思っているので特に問題はない。ただし給料は出るのでありがたく受け取っている。

 

「ちょっとそこの1年?」

 

 唐突に呼ばれたので顔を上げてみれば、微妙に悪意の籠っている3人組が睨んでいた。上級生である。

「貴方、先程授業中騒ぎを起こしたそうね? そういうのは困るのよね?」

 

 要するに生意気な下級生は今の内にシメておこうというよくあるアレである。沙莉寿は無視して焼魚を食う。骨も食う。

 

「何とか言ったらどうなの!」

 

 上級生は大声で威嚇し、テーブルを叩いた。トレイに乗っていた味噌汁が跳ねて零れた。食堂中の生徒が何事かとこちらを見る。

 

 彼女は静かに立ち上がり、テーブルを廻って上級生の前に相対する。身長差があり過ぎるのだが、その雰囲気に上級生の方が却って尻込みしかけた。ついでにそんな状況を笑って見ている簪。

 

「ふん!」

「ぐぼぇ!?」

 

 いきなり上級生の腹に5本指を突き立てた。がっちり深くハマっている。上級生の心情は言うまでもない。

 そのまま槍投げの要領で人一人をぶん投げた。槍いや人間は物凄い勢いで食堂の端から端へすっ飛んでいき、窓ガラスを突き破り、森繁る夜の闇の中へと消えていった。投げた当の彼女は手をわきわきさせながら、残った上級生2人へと向き直る。

 

「次」

 

 上級生2人は悲鳴を上げ転げまわりながらその場を逃げていった。泡を食って逃げるという見事なテンプレである。尚投げられた上級生はその後海を隔てた本地にて生きて発見されたという。

 

「帰ろ」

「そだね」

 

 本日二度目の静かな空間が出来上がっていた中、呼びかけたかんちゃんと呼びかけられたさりーちゃんはトレイを洗い場に運び、そのまま出て行った。周りはずーっと目線で追いかけていたままだ。これ以降しばらく、コイツは敵に回してはいけない、という認識は生徒の間で広まった。教師の間ではそうでもない。

 

 

「待てよ沙莉寿!?」

「何?」

 

 廊下で沙莉寿と簪を後ろから呼び止めたのは、一夏である。同じ食堂で一部始終を見ていたのだ。彼女は足を止めたが全く振り返らない。

 

「こういうのさ、良くないだろ? 確かにいじめは良くないけどさ、それでも仲良くすべきだろ? それに昼間だって……」

「よせ一夏」

 

 一夏の肩を掴んで止めたのはクラスメイトで一夏の幼馴染、篠ノ之箒だ。全く描写はなかったがクラスにはいたのである。吹き飛ばされていたが。

 沙莉寿はただ一息吐き、ちょっと長く語ってみた。

 

「その場で何もしなかった言わなかった癖に後になって安全な所でやいのやいのと正義感押し付ける奴嫌い。あっち行け」

「いや、ま……」

 

 そして全く振り返ることなく簪と一緒に去っていった。

 

「一夏、これに限っては彼女に一理ある。ただ降りかかる火の粉を払っただけだ。些か過激ではあったが……」

 

 言ってる箒も、擁護絶対無理、絶対学園と揉める、何であんなのが野放しになっているんだ、て判ってはいるが、世の中には触らぬ神に崇りなしという言葉があるのを知っている。彼女自身、触らぬ神いわゆるゴッドレベルな人に苦労させられた身である。

 

 尚腕っ節が強い程度ではまだ人類の範疇だったと思い知らされるのは後の話である。

 

 

 某所にて。とあるベッタベタの金髪オッドアイ美少年曰く、

 

「ふふふ、重力子のアンファンツは日本にもいるんだね。あ、もしもしパパァ? 僕も日本に行きたい!」

 

 

次回:重力子放射線射出少女第一段階 対 人類 ~あるいはさよなら日本~

 

 




・沙莉寿
 ネーミングが出落ち感半端ないが、あからさまにざっくりぶっちゃけると、艦○れの○立改二とア○ベル・○トーが結婚してロリ体形な娘出来たらこんな感じになる、くらいに思っていただければ。剛腕使いサリーちゃん。二つ名にソロモンの悪夢は流石に安直過ぎるのでしばらく考えさせて欲しい。

・シ○ニー・○ィーバー
 ガチ世界最強の女性といえばこの人だろう。180cmあるし。同着に故○ャリー・○ィッシャー。

・簪
 大抵は経歴魔改造の筆頭クラス。友達は大事。好きなアニメ・特撮は筋肉ケ○カスくんと仮面ジョン○イター○ァッキンと太陽戦隊サ○バルカンファランクス。

・千冬
 沙莉寿に甘いという訳ではないのだが、真っ当な教師として描こうとして何かこうなった。

・一夏
 こうは言わせたけど基本暴力の人なんだよな。

・せっしー
 白人なのに顔平たくね? 本当に今更だけど。

 後アンチ・ヘイトタグを入れるべきかどうか迷ってる。

 後ベッタベタの金髪オッドアイ美少年をキーキャラとして。
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