ヤンキー・グラヴィトン・アンファンツ【完結】   作:梵葉豪豪豪

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 自分の創作物がIS二次のニーズに合っていないというのは自覚しているつもりです。
 でも書く&描く。



11 井の頭にて ~Girly, Girly, drops~(挿絵有)

 旅館に着いたのは午前中、1日目の残り午後はどういうカリキュラムか自由時間となっていた。海岸で一夏が水着姿の女子一同からもみくちゃにされていたが止める者はいなかった。まさに肉食系女子フィールド。一夏はご愁傷様である。

 

 そんな中、沙莉寿、簪、シャルの3人だけは各々の部屋で爆睡していた。中にはシャルの寝顔を覗きに来たピーピングトム女子も多少はいたが、不幸にも男子は教員部屋との共同にされ、あえなく撃沈したという。悔しいので「山田先生寝てるシャルにセクハラ疑惑」を吹っ掛けようとしたが敢えなく失敗した。世の中甘くない。

 

 夕方になると各自風呂に入る。大浴場である。絵はない。「後ろに抱きつき沙莉寿の足の指の間まで洗う簪」というノーマルな子にはドン引きの様子が見受けられた以外は実に平和であった。

 尚男子浴場では、一夏がシャルに洗いっこを誘い、「親しき仲にも節度があるよ」と流したシャルの姿があったという。とは壁にしがみついて聞いていたのほほんな人:談。

 そんな男子浴場の湯舟に浸かる中で一夏はシャルに問いかけた。真面目な話を吹っ掛ける。

 

「なぁ、シャルは沙莉寿と仲いいのか?」

「ん? 普通に仲良くしているけど何か?」

「そうか……やっぱさ、沙莉寿に惚れてる?」

「いきなりな質問だね。他人の惚れた張れたに興味あるの?」

「いや……よく一緒だろ? やっぱさ……」

「とりあえず、そういう湿っぽい仲ではないとは言っておくよ。でもかけがえのない仲間さ」

 

 顔面に湯をばしゃっと引っ掛けてシャルが応える。この後の流れはシャルにも想像はついた。

 

「そうなのか……あいつは何が好きなのかな? どうしたら喜ぶかな?」

「あぁそういうの。まぁ、頑張ってみればいいんじゃないかな」

 

 沙莉寿からまるで脈が見られないのは知っている。とはいえ他人の恋路を邪魔するというのも野暮な話である。

 

 

 風呂の後には全員揃っての夕食となる。一夏がチャンバラトリオの面子とセシリアとラウラにもみくちゃにされたり、シャルと沙莉寿が周りにほだされて刺身入りワサビのチキンレースを始めたりとか、簪とクラスメイトがシン・クラス代表の特技にお菓子作りがあると知ってほんわかしたりとか実に平和を謳歌していた。

 

 沙莉寿の隣に、いつの間にかラウラが座っていた。隣にいるシャルは鼻を摘みつつ涙目になって上を向いていた。彼は勝ったのだ。何にであろう。

 スカシ目の沙莉寿を前に、ラウラが速攻で本題に入る。

 

「きょーだい、いつか嫁と一緒に私の部隊へ来てもらえないだろうか?」

「嫁って誰だよ。つか行かねーよ。ド突かれて懲りねーか? 後公衆の面前で全裸とか」

 

 トーナメントの一件以来何をどう折り合いをつけてその結論に達したのかラウラは沙莉寿を勧誘するが、ラウラの権限を越えているし現実に出来る筈もない与太話にしかならない。とはいえ本人の中では本気の話である。

 尚彼女はオンリーワンな恰好やら言動やらこれまでの痴態やらで周りからはネタキャラだと思われている。

 

「いやそれは……ともかく、我が部隊に来れば我々はより強くなれる! 結束もより固まる!」

 

 眼帯を持ち上げて左目を光らせてみせるラウラ。こんなところを見せるのはお前だからだ的なニュアンスで取った行動だが、周囲にはネタキャラのネタが更に増えたと映っていた。

 

「あのさぁ、それお前側の都合ばっかじゃん」

「……そうなのか?」

「友達欲しいなら普通にやりゃいいじゃん普通に」

「友達……友達か……」

 

 後ろ手に手を振りシャルに向いた沙莉寿を見ながらラウラが言葉を噛みしめる。幸せのプロセスは案外もっと手近にある。ラウラがそう気付くまで遠くはなかった。

 

 

 旅館・花月荘の目と鼻の先にある巨大倉庫、そこに1学年が集合していた。倉庫の中はEOSで満杯である。企業の倉庫を借りての実習なのだ。ついでに奥に何故か武器弾薬が納められていることに一部の生徒が気付いていた。

 生徒は各々がISスーツもしくは体操服を着ている。IS関係以外でISスーツを着るのにちょっと抵抗がある女子は意外と多い。教員側としてはISスーツにはAEDが備わっているので是非運動の際には積極的に着て欲しいところである。

 

「なぁ沙莉寿、ISスーツってそんなに着たがらないものなのか?」

 

 男性用ISスーツを着た一夏が隣の沙莉寿にこっそりと聞いてみる。沙莉寿自身は体操着である。ついでに下は丈の短いレギンスになる。一夏の方を見ることなく沙莉寿が敢えて答える。

 

「夢のないことを言ってやろう」

「うん?」

「ISスーツ着る時にはな、皆下の毛とムダ毛剃ってるぞ」

「……」

 

 生々しいスキンケアの話に周囲がうん!? と一斉に振り向いた。この後の返事を間違うと女子一同から顰蹙を買う大惨事であろうことは流石の一夏でも想像がついた。この女子高の購買にT字剃刀が陳列されていた理由を彼は悟った。無駄に気まずい空間の誕生である。尚言ってる本人には生えていない。他人事とも言う。

 

 幸いにも直後、生徒たちの先頭に立った千冬がハンドスピーカーを片手に実習の説明を始めた。千冬も体操服……の訳はなく半袖ブラウスとタイトスカートだった。着ても喜ぶのは弟くらいしかいない。

 

「本日午前中は、EOSの実習を行う。実際に触り乗って、EOSとはどういうものか直に知ってもらう。皆習った通り、EOSはISから派生したものだ。だがEOSはISと違い世界的にも普及が見込まれる。諸君らはISの世界に触れたいと思い入学した筈だ。だがISの業界は狭い。一方でISの技術に長けた人材は他業種からも求められている。諸君らも場合によってはEOSの業界に身を置くこともあるかもしれないということを念頭に置いて、各々触れて欲しい。では、各自配布資料を元に、EOSを動かすように。始め!」

 

 EOSをもっと積極的に取り入れようと千冬が学園長に提言したため、今年は触りでやってみる事になった。千冬なりの、束や世界に対するささやかな抵抗である。

 

 1機の、発動機の搭載された巨大な背面が上方に開放された状態にあるEOSを取り囲んだグループの中から、簪(体操着)が後部より手足を突っ込み乗り込んだ。同じグループである4組の面々が周囲で見守っている。

 EOSはよく見ると背面の腰辺りにナンバープレートが付いている。実は保安部品も付いて公道を走れる「車両」なのである。尤も公道を走るには運転免許が必要になるが。

 

「かんちゃん行けそう?」

「ふふー、トラックより簡単。……よーし!」

 

 舌なめずりをしつつ両手に握った操縦桿の感触を確かめる簪。いつどういう状況で何故にトラックを駆ったのかは聞いてはいけない。免許の有無も含めて。

 

 右手の傍にあるスターターを押し込むと、発動機の重厚な駆動音が響き渡る。周囲のEOSも同様であるためこの場は実にうるさい。

 同時に目線を落とした位置、顎の周辺にデジタルの回転計が渦巻き状に表示される。エンジンの回転が安定し駆動音がうるさくない程度に落ち着くと、簪は左手傍にある似たようなスイッチを押し込み、背面を閉じた。ついでに風防とゴーグルを開けて生で外を見るようにする。ナマがいいのだ。

 両手には操縦桿が握られている状態にある。肘を直角に曲げた状態で正位置だ。そして各々の指周りには各々対応したトリガーが付けられている。EOSの細かい操縦はほぼこのトリガーと自身の挙動のトレースに集約されているので、簪から見れば簡単に思えるのだ。

 そのトリガーから左親指にある2つの内1つを数回押すと、各種モードに切り替わっていく。同時に顎周りのモード表示も日本語がくるくる切り替わった。さしあたっては「歩行」モードにしておいた。歩行と言っても自分の脚で走る挙動をすればドタバタ走るのであるが。

 操縦桿を回転させたり中指のトリガーを押したりで、手の回転と握り拳がちゃんと機能するのを確認する。機種によっては手は簡略化されているものもあるが、この機体は人と同じ5本指となっている。尚人差し指は人差し指トリガーで独立して可動する辺り、この機体のコンセプトと用途がよくわかる。頑張ればこの指でコンビニ弁当を食ったり生卵を拾ったりできるし銃も撃てるだろう。

 

 簪は一歩、一歩と高下駄になっている足を踏み出し歩いてみる。マイケル・ジャクソンのゼロ・グラヴィティ(例の前屈)を真似しても、機体が姿勢を高度に制御し意地でも転ばせないので、楽に歩ける。周囲のEOSも幾つかがよろけつつもどうにか歩き回れている。向かい側にいる2組の鈴音に至っては中国拳法の型を実践している程だ。

 足を止め、簪がグループの面子を誘う。左人差し指を立てて背中を指差している。

 

「乗ってく?」

『イエス!』

 

 背面には荷物用のステップがある。2人はよじ登ってステップに立った。ロープを引っかける出っ張りを持って体を安定させる。実は人は乗っちゃいけない。軽トラだって本当は荷台に人を乗せて走っちゃいけない。でもみんなやる。

 

 簪が左親指で「巡航」モードに切り替える。機体の長い前垂れと膝下まで伸びた背面下部が前方左右へと展開し、空気を噴き出させて機体を浮かせる。いわゆるホバリングだ。同時に下半身の関節は固定される。右親指のトグル2個で前進/後退/ホバー出力、左右のブレーキレバーで停止、後は重心移動を検知して旋回やスライド移動を行うという按配である。周囲がそんな機能あったの!? と驚いているが、我らがかんちゃんは気にしないで前進させた。

 

「あ、かんちゃんの旦那さんや」

 

 背面に乗ったクラスメイトが沙莉寿を見るなり指差す。簪を知る生徒からはそう見られている辺り実に何ともやらだ。

 

『うっひゃー!』

 

 そのまま道路を横切り結構な高低差のあった海岸に着地し、ハイテンションのまま海に向かっていった。ホバリングで何の障害もなく海上を走り、いや飛び回る様にそれはもう目撃した生徒らはビックリするばかりだ。後に続く連中が続出するのも時間の問題であろう。

 進路上の海面に三角の黒光りするヒレが現れた。マンボウ……ではなくサメである。暴走する女子高生3名は気付かないまま飛沫と嬌声を上げて真上を通過した。巻き込まれ跳ね上げられたサメは6、7mはある少々デカイ奴だった。

 サメはひっくり返ると気絶する。EOSで走りつつ海の馬鹿騒ぎを見ていたシャルは、頭頂部に跨っている沙莉寿につい一言、

 

「サメって意外とどんくさいんだね」

「そうかも知れねぇ」

 

 持ち込んだチーズ饅頭をもっちり食いつつ沙莉寿が適当に答えた。尚EOSでサメを轢いた初の事例である。

 

 

そして平和だった臨海学校はここまでだった。

 

 

次回:12 JACK THE RIPPER ~バーニング・ラビット・シンドローム~(仮)

 




・サブタイ
 某曲名からなんとなく。次回サブタイも。

・一夏
 人を好きになるということは、スペックや活躍ではなく真正面から他人のことを考えるということでもある。そうでなかったら相手を最悪都合の良い道具やオナホとしてしか見ていないも同然になる。

・ラウラ
 公衆にマッパ晒して何とも思われてないと思うなガール。左目にはビームを仕込むのは野暮だろう。友達というものについては大いに悩んでもらいたい。

・千冬
 簡単に流したが葛藤は長々とあったろう。

・ISスーツ
 胸周りのメカメカしい辺りがAED関係。尚文科省によると全国の高等教育機関でAEDが必要になった事例は意外と多いらしい。

【挿絵表示】


・EOS
 盛った。ぶっちゃけ描写の元がMA○OX-01。操縦桿については昔Vガン○ムのインターフェイスについて色々考察したことがあるのを思い出しつつ。色々言われている原作の設定の中で、EOS関係が最も可能性に富んだガジェットだと思う。後スター○ップ・トゥルーパーズ・インベイジョンのマローダーとかヤ○ト2202の機動甲冑とかコン○ットドールとか大好き。

・サメ
 噛んでみないと食えるものかも判別できないというお前の知性はどこにあるんだ的な海洋生物。メリケン人によく狩られる。

・チーズ饅頭
 宮崎から通販で。

 次回束とクロエ登場。箒の心は死ぬ。
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