ヤンキー・グラヴィトン・アンファンツ【完結】   作:梵葉豪豪豪

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 こういうアクションの脳内BGMにはあの閣下のバンドが最適。でありたい。



14 UNDERTAKER 1 ~爆音のアンサンブル~

 地球の丸みが判る程の高度で洋上を飛ぶのは、箒の「紅椿」、そしてその背に掴まる一夏の「白式」だ。

 2人は、ただ押し黙っている。もう決めたのだ。

 

「見えた!」

 

 箒のISによる拡大された視界に、夕焼けに近くなった空にただ一点、白い点が見えた。目標である「シルバリオ・ゴスペルⅡアンダーテイカー」を、一夏も釣られて望遠で捉える。飛行と眼球によるブレブレの視界の中で、それは見えた。数呼吸もすれば減速する間もなくすれ違う。

 

「真正面から向かってももすれ違うがオチだ。側面か背後に廻ろう」

 

 一夏が提案した直後、「アンダーテイカー」がその巨体を急角度で左上にと進路を変えた。この機動力がISであることを知らしめるが、あまりに巨大なため一夏らには距離感に錯覚が伴う。

 

「第1陣、接触します!」

 

 同様に急角度を取り追撃する2人。一方「アンダーテイカー」は迎撃のため一発、ミサイルを投下した。全長がISの数倍はある。

 一夏は「白式」から、マイクロミサイル60発を一斉射した。半分はこの後のためまだ残してある。マイクロミサイルは目標のミサイルを蛇行して追いかけていき、ミサイルが子機らしきものを射出する直線に撃墜した。

 

「うぉぉぉお!」

 

 その爆炎を縫って、一夏が接近する。その巨体に圧倒されつつも、纏わりつき巻き付くように3周、雪片弐型から、目標のバリアを無効化する「零落白夜」を発動し、深く長く斬りつけた。だがそう甘くはなかった。

 

「駄目だ、相手がでかすぎるんだ!」

 

 300mの巨体からすれば、たかが深さ1mかそこらの人も通れない切り傷などはひっかき傷程度の誤差にしかならない。

 

 ここで、作戦の参加者全員に、ほぼ致命的と言えば致命的な先入観があった。なまじ「白騎士事件」なるものがあったために、ISはミサイルのような巨大構造物も倒せる、ということが半ば常識化されていたのだ。実際には事件以降どのISも誰も実際に再現した事例はないのに、である。だからこの件も目標がICBMに毛が生えた程度という前提で対処してしまう。だが「アンダーテイカー」は人が乗りトリッキーに動きバリアを張れる、自律するれっきとしたISなのだ。

 

 「アンダーテイカー」がいやいやをするように左右に機体を振り動かし、一夏を振り落とした。一夏はデタラメな軌道で飛び回る目標を見た一夏が先程の挙動を思い出し、別のことを思い出した。思い出してしまった。

 

「あぁ、そうか……コイツ、人が動かしてるんだよな……人が乗ってるんだよな! なら助けないと……!」

 

 追いすがった箒が一夏の肩を掴んで揺さぶった。仕事を中途半端に放り出しかねない一夏に対し激高している。

 

「一夏! 今更言うな! 諸ともやるしかないんだ!」

「そんな悲しいこと……! そんなの人として良くないじゃないかぁ!」

「良くなくてもやるんだ一夏!」

 

 その通話は第2陣にも伝わっていた。

 現在、シャル、セシリア、ラウラ、沙莉寿がV字体勢で飛行している。セシリアの機体の背に沙莉寿が乗っかっている形になる。両者の間に繋がっているカラビナとワイヤーロープは簪が用意してくれたものだ。あと数10秒もすれば目標のいる空域に到達する。

 

「あのヤロー何言ってんだ」

「そうは言っても嫁は一般人なんだ。人を殺す覚悟なんて職業軍人でも苦しいものだ」

「一夏さん……」

 

 沙莉寿が呆れ、ラウラがフォローし、セシリアが身を案じる。

 

「一夏君! 今は忘れて攻撃に集中して!」

 

 シャルが呼びかけるが、今の一夏に効果は甚だ疑問だ。即決で洗脳して落ち着かせることに決めた。そのためには視界に入る距離まで接近する必要がある。

 だが、シャルの機体が第三者の機影を捉えて、それもままならなくなる。

 

「何かが、いや、ISが紛れ込んできた! 照合……日本機だ!」

 

 つまりは自衛隊機「ラファール・リヴァイヴ」だった。先行して1か2班の編成が「アンダーテイカー」を迎撃していた筈である。セシリアがつい愚痴り、背に乗る沙莉寿はせせら笑った。

 

「あぁもう次から次へと……!」

「何だしぶとく生きてたか自衛隊」

 

 その自衛隊機は一口に言えばズタボロで、煙の尾を引いていた。4基ある筈のバックパックが1基しかない。片足は外装が剥がれ落ちていた。ある筈の武装は既に亡くした様子だ。

 

「第3陣、先行した自衛隊の生き残りがいた。合流次第回収を頼む」

『了解した、リーダー』

 

 シャルが面倒事を後方に投げ……任せ、鈴音が応答した。

 が、そう大人しく物事は進行してくれない。

 

「あぁ、奴は目標に向かって行く!」

 

 自衛隊機は何の工夫もなく、ただ愚直に「アンダーテイカー」へ直進する。ただの特攻である。

 

『オ゛ォォア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!』

 

 操縦者からの通信内容はもはや人としての理性を明後日に放り投げた末路であることを表していた。

 一夏が自衛隊機を何とか止めようと、ロールして接近を試みる。

 

「やめるんだアンタ! 大人しく救助を……」

「ウルゼェ! 男が命令ズンナ゛アァァァアア!」

 

 一夏がISで生まれた女尊男卑というものの実情にこれまで遭遇しない訳ではなかったが、あまりに生々しい憎悪をぶつけられたのはこれが初めてである。

 

 が、「アンダーテイカー」から射出されたドローン数機が自衛隊機を取り囲んで無慈悲に直接機首をぶつけてきた。ISの3倍の全長を持ちサーフボード型をしたそれらが、自衛隊機の全身にハリネズミの如く張り付いた。

 顔面にぶち当てた1機が、機首からアームを展開させ、相手の口に捻じ込んできた。直後、操縦者の頭が赤い霧を吹いた。絶対防御で外に流れない。頭がグズグズになった自衛隊機と操縦者は、何の抵抗もなく海面へと墜落していった。

 一夏は手を差し伸べることもできなかった。

 

「そんな……絶対防御があるのに」

「ISが世に出て10年も経つんだ。対抗策の一つや二つ作られて当然だ」

「あぁ……」

 

 そういった話自体は知っていたラウラだが、実際に目の当たりにするとIS信仰というものの覚束なさに嫌でも気付かざるを得ない。

 

「駄目だ、あの人はもう助からない。まずは目標の迎撃に専念するんだ!」

 

 シャルが追いついた第3陣の分も含めて、叫びながらも指示を出す。その目標は現在高速で蛇行しながらも、確実に日本本土へと接近していた。周辺にISの数が集まり過ぎたせいもあろう、「アンダーテイカー」はドローンとミサイルを2桁近く射出していた。ミサイルが子機の小型ミサイルをばら撒き、その迎撃に追われるISたち。

 

 ミサイルの爆炎に気を散らしたのがまずかったのか、セシリアの眼前に「アンダーテイカー」の巨大な突端が真正面から迫って視界一杯に迫ってきた。

 慌てて避けに入ったものの、機体を目標の側面にガリガリと引きずりながら、体勢を立て直そうとする。だが、ワイヤーロープ一本で繋がっている沙莉寿が背を離れ、乱気流に振り回されてしまう。彼女が強引にビームを撃つが光条は明後日の方へしか向かなかった。セシリアが彼女に手を差し伸べる。

 

「あっ!」

 

 不幸にもというか必然というか、あの巨大サーフボードのドローンがセシリアの下方より背中に突撃してきた。腰にマウントしていた遠隔兵器は大半が持って行かれてしまう有り様だ。

 同時にワイヤーロープが千切れ飛び、沙莉寿が逆さに投げ出された。

 

「夕立さん!」

「ぬわぁあ!」

 

 そこへミサイルの一つが展開し、大量の金属球を射出した。タングステンで構成されたゴルフボール大の球である。噴出力により短時間自力で飛行し、親機の指示に従い大量の子機がまとまって目標を削り粉砕する。その巨大ヤスリの雲の中に沙莉寿が投げ出された。

 高速で移動している集団から見てその雲はあっという間に遥か後方に流された。

 

「沙莉寿……沙莉寿ゥ!」

 

 叫ぶ一夏だけでなく、他の多くからも沙莉寿が殺された様に、狼狽し攻撃の手が緩んでしまった。

 

「クソッタレがぁあああ! よくも! よくも! 手前ェブッ殺してやるウウウウウ!」

 

 一夏が心に構成していた何もかもをかなぐり捨て、素の自分が怒りのままに「アンダーテイカー」へと突進し、巨大な壁面を無茶苦茶に斬りつけた。

 

「落ち着け一夏! くそおおお!」

 

 箒も倣って刀からエネルギー刃の斬撃を何度も叩き込む。彼女の死を目の当たりにし、一瞬でも喜んだ自分が今憎らしかった。

 

 だが、その後方からビームが伸び、「アンダーテイカー」を掠めた。大量の金属球は一瞬で蒸発していた。

 

 そこに現れたのは、夥しい光と、周囲の空気を焼く炎を全身に纏い空を飛ぶ、沙莉寿だった。勝ち誇った口から炎が噴出している。

 

「……沙莉寿ちゃん?」

「ほらね?」

「その発想はなかった」

 

 宇宙怪獣で頑丈ガールの生還を信じて疑わなかったシャルと簪ではあったが、このビジュアルには流石にシャルも驚いた。まさか恒星のフレアを全身に噴出させて空を飛ぼうとは。

 

「何よアレ……」

 

 鈴ちゃんのドン引きもごもっともな話である。しかしてあの姿は、人類が到達した一つの姿なのだ。

 

 

次回:15 UNDERTAKER 2 ~戦闘妖精~(仮)

 




・一夏
 今回足引っ張った人。原作の密漁船のくだりは最適解を言えば「本部に指示を仰いで指示に従う」だが、人間そんなに都合よく合理的に動いちゃいない。合理的と呼べるのはコミケ3日目にロリの隣が巨乳で向かいがショタホモという地獄のような配置に巻き込まれた状況とかだ。

・殺す覚悟
 ドキュメンタリー番組やインタビューなどで職業軍人が概ね言うことは「誰が仕事でもないのに好き好んで人を殺すか」。そこら辺の匙加減を間違えると創作で変な軍人キャラが出来てしまう。

・ドローン
 全自動で動く、せっしー涙目な兵器。巨大ばかうけ。

・タングステン球
 米軍が出戻りの戦車の車体を巨大な洗濯槽に入れ大量のタングステン球でヤスってリサイクルしていたドキュメンタリー番組から思いついた。

・沙莉寿
 格好つけて描写しているが、要は裸の幼女が空飛んでるっていうアレのナニな描写。ここまでやってやっとウルトラマンと殴り合える。
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