ヤンキー・グラヴィトン・アンファンツ【完結】   作:梵葉豪豪豪

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 東京都のビル群の高さを調べてみて、この主人公ならヤれる! とちょっと思った。
 後主人公の見た目ってウーパールーパーじゃマイカンって気が付いた。

 今回は5人しか登場していません。



03 簪's baroque ~カンザシ→カーン→カンバーバッチバンザイ~(挿絵有)

 学園の外れにうっそうと茂った人口の森がある。その内切り倒されて何番目かのアリーナが新設される予定である。誰のせいとは言わない。そこには沙莉寿と簪が向かい合って構えていた。

 

「行っくぞー」

「来て来てー!」

 

 沙莉寿は拳から例のビームを撃ち出していった。対する簪は満面喜色で両手を掲げてその奔流を、全身で飲み込んだ。物でもエネルギーでも何でも貯め込む、それが簪の、沙莉寿と対になる能力である。自分の範囲よりはみ出ていた光は容赦なく周囲の木々や草花を蒸発させていく。

 出してキモチイイ、入れてキモチイイ。実に喩えとしてそういう関係のアレな行為に浸っていた。

 

 かつて簪がグレていた頃、夜の街で沙莉寿と喧嘩になったのが二人の出会いとなる。この時沙莉寿に影響されてか、簪が超常の能力に目覚めたのだ。というか目覚めなかったら簪は蒸発してこの世から消えていた。それ以来簪が惚れ込んでお互い意気投合しての仲である。尚当時の簪は「ナックルのカンバーバッチ」と二つ名を自称していた。全く定着しなかった。

 

 ひとしきりヤるだけヤってさっぱりした頃合いに、千冬が草木をかき分け現れた。

 

「馬鹿のエコシステムも結構だがいい加減公共物を傷めるな」

「喧嘩売ってんの? 買うよ? 買うよ?」

 

 ヤクザに喧嘩売られた某巨体のプロレスラーみたいな煽りをかましてみる沙莉寿。流石に千冬は乗らなかった。

 

「仕事でなしにいちいちやってられるか、お前を探してただけだ。後更識、いつぞやに貴様に背後から狙撃されたことはしっかり覚えてるからな?」

「えー何でバレてるんですぅ? あれ避けられちゃったけど」

「まだ私の知る内だから安心しろ。あまりやらかすと知らんがな」

 

 日本の関係機関には自分はまだバレていないと知り安堵の溜息を漏らす簪。沙莉寿に関してはもはや手遅れである。

 

「とにかくクラスの生徒が怖がってる。本気で自重しろ夕立」

「過ぎたことをグッダグダとまぁ」

「メンタルケアしなきゃならん生徒を量産したお前が言うことか」

 

 前回の騒ぎの翌週、1組では沙莉寿が顔を出した途端、全員が高遠るい作品のモブ顔で一斉に後退するというクラス内民族大移動が起こることとなった。誰しも人の形した理不尽というか人の形したゴジ○にまともに関わりたくはない。千冬が出張ってやっと落ち着いた次第だ。それでも沙莉寿に話しかけようとしたセシリアと一夏は大物かもしれない。箒は無理だった。尚クラス代表は千冬の一存で一夏に決まった。前回やった試合はクラス代表を決めるものだったことを千冬に指摘されるまでクラス一同は忘れ去っていた。

 

「それはそれとしてだ、夕立、お前が半年前通っていた研究所から調査結果が寄せられた。……まぁぶっちゃけお前の体がどうなっているのかまるで判らなかったそうだ。ただ研究チームは何故か自殺した。発狂だそうな」

 

 千冬からの報告に、特に沙莉寿は関心を示すこともなく、適当にあしらった。

 

「ロリコンがくたばったから何なのさ。どーでもいーし」

「……待遇が悪かったのか?」

「いや別に」

 

 そこで沙莉寿限定ロリコンの簪が話に加わってくる。

 

「さりーちゃん何やってたの?」

「んー何というかイメージビデオの撮影ごっこ?」

「動画どっかネットに落ちてたり売られてたりしない?」

「ないない」

 

 手を振って苦笑いで否定した。和やかにしつつ簪は目の前から缶を一本出現させる。先の能力で自分に貯め込んでいた物の一つである。缶を開け、二人で一口ずつ回し飲みした後、まだ残っているそれを沙莉寿は放り投げ、ビームで跡形もなく消し去った。

 

「おいお前らそれ缶チューハイ」

「ジュースぅ」

「缶チューハ……」

「果汁40%ソフトドリンクぅ」

「……激しい運動の後に摂るアルコールは危険だと言ってやろう」

「それ経験すかー?」

 

 既に証拠は消滅した。

 

「ところで外出届ってどうやるんだ?」

「下りると思ってるのか貴様?」

 

 行政から東京都への出禁を密かに検討されているとは本人は知らない。

 

 

 日が変わってここは整備室。IS学園なので当然整備する物は人の形した件の兵器だ。今いるのはしかめっ面でISをいじっている簪、手伝っている1組の布仏本音、回転椅子に座って暇こいている沙莉寿の3人である。

 

 内装とフレーム剥き出しのISとノートPCとを睨めっこしていた簪が、スカシ目でラチェットをトレイの上に放り投げた。意外に大きな落下音に本音がビクッとする。そして簪が一言、

 

「飽きた」

 

 これには普段はのほほんとしている本音すらもうどうリアクションしていいか判らず、

 

「え……え~……」

 

 と目を見開いて何とも言えない何かを吐くしかなかった。

 

「やっぱ遂にそうなるか」

「うんなった」

 

 沙莉寿は流石に友人の心情が判っていた。その程度には付き合いが深い。

 

「何ですってぇえええ!?」

 

 クッソ広いコンクリ部屋の遥か隅の方から何から驚愕の雄たけびが轟き、並べてある多くのISの間を縫い、一人の女が猛然とこちらへ駆けてくる。

 

「あ、お姉ちゃんいたんだ」

「いたなそんなの」

 

 簪の姉、更識楯無(芸名)の登場である。生徒会長でもある彼女が血相を変えてダッシュして来た。つまるところ妹をひっそりと見張り続けていた訳だ。そのピーピングトム女は簪にこれまた猛然と問い質す。

 

「何で? 飽きるって何?」

「だってもう馬鹿らしいもんこんなの」

 

 背後にある内装剥き出しのISを親指でぞんざいに指差した簪はしれっと答える。

 

 そもそも今やっていたのはISの整備ではなく開発である。メーカーの倉持技研から自分が受領する筈の次期試作機・打鉄弐式の開発が凍結されて簪にぶん投げられたからだ。その理由が、初の男性操縦者用ISの開発にリソース割くからこっちはやめるよ後はそっちでやってねという大手企業らしからぬクソふざけた代物なのだから、段々アホらしくもなってくる。ちょっと詳しい程度の素人の女子高生(当時中学生)に投げる奴があるか。死ねクソ大人どもともなる。

 

 楯無は妹の頑張りを無駄に終わらせたくなく、何とか説得を試みる。

 

「大体簪ちゃんIS好きなんだから諦めちゃ駄目だよ!? ヘッドセット着けてるんだし」

「お姉ちゃん知らないの? これ市販品だよ? 日○トレンディにも載った流行りだよ? 後私特にIS好きとかでもないし?」

「えー……」

 

 事実、簪が頭に被っているIS用のヘッドセットは、ISのヘッドセットを受注しているメーカーがヘッドセットをほぼそのまま民生用として販売した製品である。手ぶらで何でもこなすこれは、スマホの上位機種として男女問わずのヒット商品と相成った。

 

 それはそれとして簪は居心地悪そうにしている本音に振り返り一つ訊いてみた。

 

「ところで本音ちゃん、爆薬どこに保管してある? 欲しいんだけど」

「……えーと?」

 

 簪の実家の従者でもある本音は、学校に来てまでこんな訳の分からない局面と命令でヒエラルキーに従わなければならない自分に今初めて疑問を持った。

 

「これ倉持技研に送り返して到着した頃爆破されて、後腐れなく全部吹っ飛んで終わるって寸法」

 

 そんな簪のプランに、回転椅子で一周し両手人差し指で簪を指差した沙莉寿は一言、

 

「……イイネ!」

「良くない!」

 

 この二人の前では叫んでばかりの楯無だ。どうしてこうなった。こいつかこの女の子版ガン○ムXか。矛先を沙莉寿に変えてみる。

 

「大体あなたがかんちゃんをこんなにしちゃったのが悪いのよ……」

「今更それ言うかお前」

「かんちゃん、今からでも遅くないから友達は選んで? ネ?」

「お姉ちゃん喧嘩売ってる? 買うよ? 買うよ?」

 

 そもそも簪がグレた直接の原因自体、彼女に失言した楯無の責でもある。まさか妹がグレた先に人として堕ちるどころか宇宙的な何か明後日の方向に飛ぶとは姉は思いたくはなかった。誰だってそうだ。うちの妹どうしちゃったの。吸い込む能力って何? カー○ィ? 楯無の視界が歪み、立ちくらみを覚えた。

 

 その簪は沙莉寿からプリッツを向けられ、沙莉寿が持ったままのそれにそのままパクついた。ここでふと沙莉寿が思い出す。

 

「そういやうち、かんちゃんの実家に囲まれたよねー」

「色々酷かったねアレ」

 

 簪が沙莉寿の実家で敢行したお泊り会が10日目をカウントした頃、平屋一軒建ての夕立家は簪の実家というか楯無の指揮する部隊によって包囲された。ドイツのステキライフルG34で武装した忍者軍団である。実に絵的にシュールな連中だった。尚沙莉寿は慈悲もなく撃たれた。酷いことに頑丈過ぎて皮膚を通らなかったが。

 

「あんなことがあると実家を掌握しなきゃって使命にかられちゃう」

「まぁあの忍者軍団いれば好き勝手やり放題だよな」

「あなたは既に好き勝手やり放題だから黙ってて!」

 

 とりあえず楯無はそこの問題児Sを無視して物事を進めることにした。

 

「あのねかんちゃん、私達の仕事ってそんな簡単な話じゃないのよ命がけなのよ」

「お姉ちゃんは現場で頑張っててね、そのうち私が安全なとこで命令するから」

「あーいや……」

 

 妹に手を差し伸ばした姿勢のまま固まってしまった楯無。家業が妹からショコラ並に超甘く見られていたことを悟り、こっちの世界に絶対関わらせちゃいけないと決意を胸にした。思うだけなら勝手である。

 

「でもまぁ実家の家業に関わるのはちょっとイヤかなぁ」

「あ、そんなもんか?」

「何せうちってほら、生まれた女の子に刃物の名前付けるイカレた家系だし」

「ホント何考えて付けたんだろうなカタナとか。アレか、ポン刀って消耗品だから使い潰す意味でとか」

 

 遂に楯無(本名:刀奈)は妹と他1名から実家の被害者扱いされ、涙を禁じえなかった。マゾ系姉の誕生である。

 

 

 尚残念ながら後日、倉持技研の工場が丸ごと吹き飛ぶ事故が起き同社が多大なる物的かつ人的被害を被り、送り返された打鉄弐式は灰となり、同社のその後の経営戦略に大いに穴を開ける結果となる。後開発のいざこざは政府と自衛隊を呆れさせたが後の祭りである。この件に関して簪は最後までトボケ続けたという。

 

 

次回:04 お注射のお時間 ~トんでる山本山昇留置場グルメ紀行~(仮)

 




・沙莉寿
 ヤン娘その1。人間GP02。ドールちゃんまたはウーパールーパー。制服を前開きしてブラチラしているが特に気にしていない。という程度には雑な性格をしている。次回鈴ちゃんさんをどこまでぶち飛ばせるか。

・簪
 ヤン娘その2。人間GP03。グレれば色々変わるもの。ベネディクト様ごめんなさいの人。原作やアニメでは青髪だけど染めてなければリアルじゃ多分黒髪が光の加減で一部青っぽく艶が出る感じかも。後結構貯め込んでいる筈である。酒を。

・楯無(源氏名)
 気が付けば被害者と化していた人。

・簪の実家
 敢えて暗部という言葉は使わない。当主の姉が外に出ずっぱりなら実際に実務をやって指揮している実家の人に投げっぱの筈。という簪の憶測から出た安全な云々の発言。

・打鉄弐式
 黒鉄ヒ○シと響きが似ているというネタは挟むところがなかった。それはそれとして最初に外装のない状態からデザインを考えるというめんどくさいことになった。フレームといってもサイズ的にガンダム的な骨格じゃないだろうし。
(ネイキッド第1稿)

【挿絵表示】


・ISヘッドセット
 こういうのは大抵米国製。今時軍需品だけ受注してやってけるかって感じでこうなった。デュノア社も一番稼いでいるのは多分金融とか医療機器とかそっち方面。

 後毎回お菓子の名前をどっかに入れようという方針で。

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