ヤンキー・グラヴィトン・アンファンツ【完結】   作:梵葉豪豪豪

7 / 22
 ドバイ線て何だ。

 後本当はメカ関係よりもラブコメが書きたいです。



07 恋どろぼう ~鮮血俛汰琉ジャーニー&ヤンキー・ヤンキー・シェイカー~(挿絵有)

 沙莉寿の父は、かつて軍人だった。それはもうガッチガチの武人で。

 結局敗走してテロリストに身をやつし戦い続け、爆死という形で戦死して生涯を終えた。

 筈だったが、気が付けば現代日本の土地に立っていた。

 そこから平和な世界で精一杯働いて、名家の娘と恋に落ち結婚して、一人娘を授かった。

 

 ……という父の語りを聞いて、絶対嘘だ序盤とかがってかアンタ若い頃はトラックの運ちゃんやってたって言うてたやん、と当時沙莉寿はスカシ目で暑苦しい銀髪親父に突っ込みを入れていた。真実は謎である。

 ついでに自分の名前について、母曰く鬼灯から名付けたとのことだった。が、父曰くかつて自分の命を預けた信頼できる兵器の名前も同時に入っているという。それはギャグで言ってるんだよな? と再度父に突っ込んだ。

 

 ……というしょうもない過去を沙莉寿が思い出したのは、今現在目の前のラウラが熱心に自分の出自を語って聞かせているからだ。物凄い勢いで物陰に連れ込まれたと思えばこれである。対象の歴史を長々語るオタクはウザがられる。

 曰く、自分は軍に作られた試験管ベビーであり、手術により特殊能力も備えている。その特殊な見た目といい強さといいお前も同じ所から作られたのではないか? と。

 腹違いの不倫の子というカミングアウトかと思ったらそんなもの通り越してわけわからんSFな告白をされたので非常に困る。そもそも赤目だって沙莉寿や簪の家系からしてそうなので別段珍しいものでもない。困ったので、

 

「全くもって関係ねーよ」

 

 一言で切って捨てた。出産の苦労を天然な母から訥々と聞いていたので、あれで嘘ならうちの母は女優になれるわと思ったが面倒なので口にはしなかった。

 

「なぁきょーだい、私とお前でドバイ線を越」

 

 最後まで言わせず、沙莉寿は両手親指をラウラの首筋両側面に無言で押し込んだ。どこぞの漫画で読んだ相手を落とすやり方をうろ覚えで実践したのだ。生兵法は怪我の元である。

 その生兵法にかかったラウラは気持ちよさに恍惚とした後、すとっと落ちた。幸い心停止には至っていない。いなければいいというものでもない。

 友達の作り方を全力で履き違えたラウラを放っておいて、沙莉寿はさっさとその場を後にした。

 

 

 それはそれとして1組のクラスルーム。一夏と箒は机で向かい合って首を捻りつつ唸り合っていた。目の前には白式の詳細を端末から表示させている。一夏が預かっているISである白式は、拡張領域には専用のポン刀「雪片弐型」しか格納できない・除外もできないついでに射撃に関連したシステムもないというクソオブクソ仕様なので悩みは大きい。

 ブレードオンリーはロマンとか姉と同じとか言うと格好はいいが、現実に銃弾の乱れ飛ぶ試合ではものには限度というものがある。そんなアルティメットファッキンマシンを、開発関係者への呪詛を呑み込み、何とかできないものかと唸り合っている次第だ。

 

 そこへ通りがかったシャルがつい一言と首を突っ込んでしまう。ISメーカーの関係者故よくISのことで女子から質問を受けたりするため癖になってしまった。無駄にまめな性格とも言う。

 

「え? 本体に武器を直付けすれば済むんじゃない?」

 

 そうだ隙間にミサイル詰めまくりゃーいいんだ! と周囲にいた女子たちが天啓を受けた。当事者の一夏としては引いてしまうしかない。ついでにシャルも引いた。

 そして一夏そっちのけで整備系女子たちによる「白式ミサイル小僧化プロジェクト」が軌道に乗った。ついでに倉持技研の涙は枯れ果てる。

 

 

「ずばごがちーん」

「おー」

 

 簪がパンフレットと仕様書を沙莉寿に掲げている。簪用の専用ISが遂に決まったのだ。

 

 ここは放課後バトルなんとかなアリーナの一角。ISの自主練をしに来た訳でもない沙莉寿がここにいるのは、購買に併設されているケーキ屋にいたところを一夏によって無理矢理連れてこられたからである。そこへ沙莉寿を探していた簪が連絡を取って合流した次第だ。

 

 そんな意中の子にまるっと無視された一夏の周囲にいる面子は、箒、鈴音、セシリア、シャルとなる。シャルは沙莉寿含めたこの面子の人間関係を何となく把握できた気がした。脳内で相関図を描くと何故か撃ってる最中のデススターになったがわけわからんのでとりあえずデススターは脇に置いた。

 

 ここで、各人の装着しているISについて一度はフォローしておくべきだろう。

 

 一夏は言わずと知れた「白式(びゃくしき)」を装着している。表面には既に女子たちによる鉛筆のマーキングがあちこちに引かれている。

 

 箒は「打鉄(うちがね)」。学園で貸し出される数種ある機体の一つである。

 

 鈴音は「甲龍(JIALONG)」。中国本土ではほぼこの機体で統一されている。

 

 セシリアが装着する機体の名は「ブルー・ティアーズ+」。遠隔攻撃兵器の試験機だ。しかし先日半壊したため、学園に搬入した3機分の予備の本体の内1機を丸々潰して改修している。どう壊したかセシリアが本国へ正直に報告したところ頭を疑われたのは致し方ないところである。尚諸元が大幅に変化してしまったため不本意ながら暫定的に名称に+が付くことになった。

 後定期的に出向しているスタッフは昼夜問わず頑張った。

 

 シャルの機体名は「ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ」。シャルの会社というかデュノア社がIS学園と自衛隊に卸している機体「ラファール・リヴァイヴ」、長いので生徒間の通称アールツーまたはラッパー、のカスタム機である。初代カスタムはどこに行ったのであろう。

 これも名前が長いのでアールツーシーツー(R2C2)とも呼ばれていたりする。発声ならともかく文字にすると却って紛らわしい。

 

 またここにはないが、簪が選んだ機体は名を「十鬼丸(じゅっきまる)」という。両側面に独立した外腕を持つ純然たる技術評価試験機である。

 十鬼丸のメーカーは実のところ、ディーゼルエンジンを搭載したパワードスーツ「EOS(エクステンデッド・オペレーション・シーカー)」の「八鬼丸(はっきまる)」シリーズを世に出している企業でもある。バイクやボート、自動車用エンジンを手掛けたノウハウがEOSに生かされ、その延長上で「十鬼丸」が開発された次第だ。

 

 尚EOSとは、ISの黎明期に、低性能のバッテリーを搭載してパワーも小さく稼働時間の極端に短い、ホーレISとは比較にならんだろ? とIS業界が当てこすりのために開発し発表した実に政治的なメカであった。が、他業種から発動機や燃料電池を搭載した高性能な機体がズンドコ市場に出回り、IS業界がいい面の皮と化した。IS業界大手のデュノア社ですらEOSに舵を切りつつある程だ。誰でも扱えて大量生産が出来て民間にも手が届くこのジャンルがこれから世界的な成長市場と化すのは道理と言える。

 災害現場や建築現場などでEOSはよく目にするようになっている。実のところISは災害現場でも運用されるという謳い文句の割に誰も現場に来てくれないのだが。

 

 ともかく、これからは倉持技研から政府に返還されたISコアがメーカーに貸与され機体に搭載する作業がメーカーにより行われる。メーカーも意欲的である。ついでに簪ともども広報活動に勤しむこととなる。ユーザーに投げるなんて真似はしない。

 

「そんな勝ち組にご褒美だ、一緒に食べようか」

「おぉーっ」

 

 にこやかに沙莉寿が大上段に差し出した紙箱の中身はエクレアである。甘い匂いが漂い簪が破顔する。尚アリーナ内部は飲むのはともかく食べるのは禁止である。

 

 直後、破壊音と悲鳴が響き渡り、沙莉寿の手からぶら下がっていた紙箱がバシッと叩かれる音とともに消えた。2人の間に何か大きなものが通過したのだ。

 2人が何かの行き先、つまりはアリーナの壁をゆっくり振り返ると、そこにはコンクリ片が壁に叩き付けられて転がっていた。そして叩き付けられた壁には白や茶色の汚い何かが潰れて爆発したようにぶち撒けられていた。小癪なことに甘い匂いまで漂ってくる。つまりはエクレアのなれ果てである。ラストダイブして二度と還ってこなくなった。

 糸が切れる音がした。

 

 一方、この騒ぎを起こした張本人ラウラはIS「シュヴァルツェア・レーゲン」を纏って空中に佇んでいた。この機体は自身の部隊で使用している軍事用であり、更に右側面に自身と同等以上の長さを誇るレールカノン、つまりは電磁的な機構で弾を撃ち出すクッソ馬鹿デカい大砲を構えている。間違っても人に向かって撃つ物ではない。これで一夏らを狙い、結果壁や地面に損壊を与え周囲が巻き込まれ避難する騒ぎになった。沙莉寿らの前に飛んできたコンクリ片の生みの親である。

 

 ガチな機体と武装を持ち出しあまつさえ撃ったラウラに対し周囲は、空気読めよ、という呟きを漏らしていた。

 そんなラウラはおい織斑一夏私と勝負しろと指差し、言われた一夏がうっせー馬鹿空気読めと抗議していた。

 

 一夏が気が付けばすぐ後ろに沙莉寿が背後から迫っていた。彼女は物凄く無表情になっている。一夏とその周囲は、何か知らないがめっちゃ怒ってらっしゃる、と察した。人間マジで怒ると激昂もせず表情が消える。ラウラのみが気付いていない。

 シャルが彼女の歩いてきた方向を振り返ると、同じく無表情の簪が黙って汚い壁を指差していた。おおよそを把握したシャルは、うんまぁ怒るよね、しーらない、となった。

 

 沙莉寿が片足を大仰に踏み込んだ瞬間、空中のラウラに向かって砲弾のように頭から飛んだ。いやジャンプした。結構な距離がある中でである。

 

「飛んだぁ!?」

 

 これは鈴音である。水平に長くジャンプできれば飛行だと言い張れる富野由○季理論を生で見るとは思わなかったのでそれはもうビックリするしかない。

 

「きょーだい!?」

 

 慌てたラウラが反射的に両手をかざす。ISにハンドパワー的な機能が備わっているためだ。だが沙莉寿は捕捉されて身動きを封じられる前にラウラの目前に迫り、左ストレートでレールカノンを殴った。分割線に沿ってレールカノンの外装が上下に開き、中身が前後にひしゃげる。バックパックに接続されたジョイントが耐え切れずに弾け、哀れレールカノンだったものは後方へと吹っ飛んでいき、アリーナのバリアに当たってバラけた。

 そのまま沙莉寿はラウラの突き出た両腕を足場に駆け上がる。ラウラは腕からワイヤーに繋がったブレードを沙莉寿に向かって複数射出した。が、空中で前転する沙莉寿の生足が悉く弾く。回転の勢いで沙莉寿はラウラの頭頂へ踵落としを決めた。実に無慈悲に。

 

「へごぶっ!」

 

 絶対防御と空中という条件がなかったら頭がシュート! されていたであろうラウラである。そしてラウラとその上で踏んづけている沙莉寿は一直線に落下し地面に激突した。

 

 出来上がったものは、逆立ちになって頭丸ごと地面にめり込ませ気絶したラウラのオブジェだった。両脚は前後に大開脚して垂れ下がるという実にテンプレのズッコケポーズを披露している。実は少々どころではなく失禁しているが絶対防御に守られ湯気と臭いが外に漏れ出していないので周囲に気付かれていない。絶対防御様々である。

 

 無言で通路まで立ち去っていった沙莉寿と追う簪。目で追っていたシャルは後で差し入れをしてフォローしようと算段した。後あのオブジェをどうやってサルベージしよう。

 

 一夏と箒が把握している限りで、これで沙莉寿が倒したISは4体目である。人間キング○ドラによる嫌な記録の達成に箒はウンザリした。高校生活している間だけでももうみんな平穏に過ごそうよバハハマイヤーと切実に願った。

 

「……下もライムグリーンか」

 

 腕を組んでいる一夏のこの呟きは幸い誰にも聞こえてはいなかった。

 

 

 尚この後沙莉寿は千冬から放送で呼び出しを食らったが、ラウンジにて簪とシャルとでエクレアを食べていたのでまるっと無視した。千冬が怒鳴り込むまで10分。

 

 

次回:08 World Child F**kers ~あるいは怒りと理不尽~

 




・沙莉寿パパ
 簪の実家に囲まれた時に表に出て、忍者軍団に向かって武人の何たるかを説教した暑苦しいオッサン。忍者は武人ではないので当然撃ち返されたが何故か全弾当たらなかった。

・沙莉寿
 最後のエクレアはシャルからの奢り。

・簪
 密閉できるジュラルミンケース手に入らないかなと思ってるガール。

・ラウラ
 作中のポーズ、みんなも女の子のフィギュアとかプラモデルとかでやってみよう。人生について考え込むこと請け合いである。

・白式
 全身ミサイルというと巌○無のアレとかアレとか。

・ブルー・ティアーズ+(plus)
 試作機とか試験機とかは普通部品取りも含めて複数本体を揃えておかないと色々困る。更に実機が1機だけで他国に年単位で出向しっ放しなんて機体や計画を捨ててるも同然なのではということで色々盛った。

・ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ
 毎回長々と名称を羅列するのはどうにも無理があるし抵抗がある。誰も疑問に思わなかった奇跡。

・十鬼丸
 先祖がバイクとか電動アシスト自転車。見た目某悪魔型武装神○みたいなベタな代物。腕は独立していた方が便利なんじゃないかなとは思う。メーカーの元ネタはヤ○ハ。

・EOS
 当作品では見た目まんまMA○OX-01とかOVA宇宙の○士版PSみたいな奴。原作は現代のバッテリー技術ナメてるだろとか色々言いたいことはあるが言うときりがない。

【挿絵表示】


・シュヴァルツェア・レーゲン
 アマチュアのママチャリレースにプロが空気読まずロードレース仕様のガチな自転車でやってくるようなもの。ところで絶対防御って中から溢れ出る物はどうなるんだろう。

・水平にジャンプ
 富野由悠季著「アベニールをさがして」による身も蓋もない(屁)理屈。この人の著作は、特に破嵐万丈シリーズなどは身も蓋もない軽快な言い回しをよくするので、興味がある方は読んでみて欲しい。また破嵐万丈は、女性のみによるテロリスト集団が登場してリアルかつコミカルに描かれているので、ISの二次でそういうネタをやる方々は一度目を通しておいて損はない。

 次回はシャル曰くシリアスな話。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。