ヒロアカ オリ主 作:ケンタッキー
雄英高校 入試試験
人類に個性という夢のような力が備わるに連れ、
かつて誰もが抱いた憧れが現実になった。
人々を支え、心の平穏を取り戻し、平和の象徴となる存在。
そう、この世界には僕らの「ヒーロー」がいる。
雄英高校
NO.1ヒーロー、オールマイトを始め名だたるヒーローたちが勉学に励んだ、謂わばトップヒーローへの登竜門。世界最高峰とも呼ばれるこの雄英高校の入試試験は、もちろん厳しいものだ。その難易度は試験中に死者が出てたほど。現在では、リカバリーガールの治癒の個性や、安全対策によってかなり安全なものになったものの、試験中に重傷を負うものも少なくない。
そんな雄英高校の入試が今、行われていた。
勝利に飢えた爆殺少年が、
父親に対する憎悪を孕んだ少年が、
家族のためにヒーローを目指す心優しい少女が、
オールマイトに憧れる優しさと勇気を持つ少年が、
ヒーローに憧れる少年少女が合格のため、それぞれ全力を尽くしている。
そして、ここにもヒーローに憧れる少年が一人。
「よっしゃ!これで48P!」
前方からきた仮想敵の攻撃に、
タイミングを合わせた飛び膝蹴りを喰らわせる。
空から降ってきた仮想敵のスタンピングをひらりとかわし、
その勢いで回し蹴りを叩き込む。
左右から挟撃してきた仮想敵は片方に走り寄り、殴ろうとしてきた腕を掴み背負い投げをして、反対側の仮想敵にぶつけ両者がもつれ倒れたところにとどめをさす。
彼にとってはこの程度は朝飯前である。
普段から地獄のような鍛錬をこなしている彼は正直、
こんなもんでいいのか?といったところだ。
「んー…
ターゲットも結構減ってきてんな。
もうあんま点伸ばそうにないなぁ…
って、やばっ?」
あんなにいた仮想敵が数える程になり、
そろそろ試験時間も終盤かと周りを見渡していた時だ。
どこかカエルっぽい見た目の女の子が、
他の受験生をかばって蹴られそうになっている!
「そこのカエルっぽい少女!伏せろっ!」
「ケロッ⁉︎」
一瞬で間合いを詰めた彼は、咄嗟に身を伏せた少女の肩に手を乗せ勢いの乗った飛び蹴りを喰らわせた。
「大丈夫か?」
「ケロ、助かったわ。ありがとう。」
傷を負っていないか確認しながら問いかけると、少女が礼を言ってくる。やはりカエルっぽい。愛嬌を感じる喋り方だ。
「気にすんな、ヒーローなら当たり前だろ!
俺は不断 努気。君たちは?」
「蛙吸梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで。」
「オイラ峰田実だ。 二人とも助かったぜ。」
「OK、梅雨ちゃんに実。怪我は無さそうだし、俺は先行くな。」
「えぇ、私ももう少しポイントをっ⁉︎」
「っつ⁉︎なんだ⁉︎」
二人に怪我がないことに安堵したのも束の間。突如地中から現れたロボに三人を含めた多くの受験生が驚愕する。それは、地中から現れたその物体は、もはやロボットというより、建造物と言った方がいいレベルの巨大仮想敵だった。
「こ、こいつは…説明にあった0ポイントの仮装敵っ!」
「ケロォ…まさかこんな大きなロボを持ち出してくるなんて…」
「や、やべえよ!早く逃げようぜ!」
梅雨も実も、あまりの規格外さに動揺している。
周りを見れば他の受験生はすでに悲鳴をあげながら逃げ出している。
全長三十メートルはある仮装敵だ。実戦経験のない、少し個性に自信があるだけの子供である彼らが逃げ出すのは当然だ。
しかし…
「いや、行くのは少し待ってくれ!
まだ逃げ出せていない奴らがいる!俺があいつの動きを留めておくから、その間に救助と避難誘導をっ!」
そう、巨大敵の出現に腰を抜かしてしまったものや、現れた時の瓦礫に埋もれたものなど、この辺りにはまだ逃げ出せないものたちが残っていた。
「おいっ!何言ってんだよ!!
あんなでっけぇ敵の動きをって…無理に決まってんだろ!
抱えられる奴らだけ助けて早く逃げようぜ!」
「そうだわ、不断ちゃん。残念だけど、峰田ちゃんの言う通りよ。無茶をすれば助けられるものも助けられなくなっちゃうわ。それにこれは入試試験。最低限の安全は保証されているはず。ならここは退くべきよ。」
二人は今にも駆け出しそうな努気の手を引き、説得しようとする。
彼らの言い分は最もだ。いや、むしろこの状況で他者を思いやれる素晴らしいヒーロー性を持っている。だがしかし、彼には見捨てるという選択を受け入れるなんて出来なかった。敵は巨大?違いない。大きさとは、強さでもある。生半可な力では倒さないだろう。入試試験だから大丈夫?確かにそうだ。試験の監督者は、今も状況を把握していて、試験終了後には彼らを救出するだろう。
しかし、瓦礫に埋もれている者は今、恐怖しているのだ。逃げ遅れてしまったものは今、いつ巨大仮想敵に潰されるのか恐怖しているのだ。無理?無茶?上等である。無謀を実現させてこそのヒーローだ!
「おいおい、お前らこそ何言ってんだよ?
あいつ倒さなきゃ助かんねぇやつらがいるんだぜ?
安全が保障されてる?そんなん今痛がってるやつらにはわかんねぇだろ?やつらは今助けを求めてんだ。なら、ここで動かなきゃヒーローなんて目指せねぇだろ?だから、俺は行くぜ」
二人の手を解き、努気は振り向く。
振り返った努気の顔を見て梅雨と端夫は目を見開いた。
「俺はヒーローだからな」
彼は笑っていた。
そこに恐怖の色はない。ただ純粋に助けを求めるものに救いの手を差し出す。それだけを考える盲目的な、ある意味恐ろしい考え。しかし、だからこそ美しい。超人然とした美しい表情をしていた。
「救助が終わったら合図を出してくれ。こいつを破壊して、俺も二人のところに行くよ。じゃあ!」
「まっ!」
ドンッ‼︎‼︎‼︎
峰田が声をかけようとするも、地面に蜘蛛の巣状のヒビが入るほどの勢いで飛び出す努気。
一瞬で近づくとロボの目の前まで浮かび上がり、勢いよく両手を打ち鳴らす。
バンッ!!
「ッ!!ヒョウテキハッケン!ハイジョスル!!」
仮装敵に人間の体温か、物音か、それ以外の何かかはわからないが、それを感知し、追いかける機能が付けられていることはこれまでの戦闘でわかっている。辺り一帯の救助が済むまで、下手に攻撃することは破片を落としたり、救助の邪魔になるため、まずは自分を標的にさせ攻撃の余波を周囲に撒き散らさないようにしながら避け続けなければならない。
「よしよし、こっち見てんな!そのままずっと見つめ続けてくれよ?
ダンスパーティーといこうじゃねぇかっ!」
巨大仮想敵は動き自体は大したことない。その体格に見合った鈍重さだ。しかし、救助を優先するなら攻撃を散らしてはいけない。被害のない場所に向けて受け流す。
「ちぃっ!流石にキツイなっ!!!」
相手の攻撃を逸らす時は腕に手を添えて横から力を与えるのがふつうだ。しかし、この巨体!このパワー!添えるだけではまるで動かない!したがって努気は仮想敵の拳を僅差で躱し横から殴りつけることで周囲の被害を限定的に留めていた。だがその拳から生まれる衝撃波をもろに受けていた。
「っあっ!」
努気は動かない。それ故、仮想巨大敵は追いかけることもせずに思う存分拳を振りかざす!次々振り下ろされる拳!拳!拳!
僅かなミスも許されない状況が努気の精神を削る。しかし彼の笑みは曇らない。守る。その意思が彼の心を熱くし、その足を深く地に植え付ける。
「オラアァァァアアアアアアアアア!!!!!!!」
**********
「な、なんだよあいつ…
一人で盛り上がりやがって…
バカだろ!
何の点にもならねぇ無駄な事して…
ちくしょう、なんなんだよあいつ…」
峰田は顔を歪ませ、拳を握り締めながら巨大仮想敵に相対する努気に溢れる想いをぶつけていた。理屈で言えば愚かとしか言えない。これは入試試験だし、あれは0ポイントなんだ。なら向かっていくやつはバカとしか言えないだろう。そう、理屈で言えば。
だが、理屈ではなく、感情で。この内から湧き出る想いは彼に訴えかけている。かっこいい。ただ、かっこいいと。
彼もヒーローに憧れる少年だ。理由は不純ではあるのだが、そこは間違いない。人を助ける為に巨大な敵と戦うなんて、如何にもヒーローっぽいではないか。同い年のやつは、今まさに彼が思い浮かべるヒーロー然とした行動をしている。なのに、なのに自分は逃げようとしてしまった…。
荒れ狂う実の心を落ち着かせる言葉が、梅雨には出てこない。
梅雨の中でも彼の行動を賞賛する気持ちと批判する気持ちがぶつかり合っているからだ。しかし、後に『人々の精神的支柱になれる』と称される彼女は、自分のことは後にして他者のために動くことができる生徒だった。
「峰田ちゃん。あなたの気持ちもわかるわ。でも今はやるべき事をしましょう。不断ちゃんが時間を稼いでくれている間に、なるべく早く他の人たちの救助を!」
握り締めていた拳を緩め、キッと空を見上げて振り向く。
「あぁ、わかってるよぉ!オイラの個性は『モギモギ』!救助には向かない個性だけど、やれるだけやってやらぁ!」
「ケロケロ。さっきまでよりいい顔してるわ、峰田ちゃん。私の個性は『蛙』。二人で頑張りましょう。」
**********
「ふむふむ。今年も、なかなか素晴らしい子供たちが来てくれたようだね!」
場所は、試験監督室。複数ある会場を見れるように、多数のモニターが配置されている。
室内には、先の発言をした校長を含めプレゼント・マイクやイレイザー・ヘッド、オールマイトなどがいる。
どの会場にも、(おや、これは…!)と思わせる受験生がいたが、今全員が注目しているのは一つの画面、そこに映る不断努気だ。
今年の実技試験では、三種類のロボットにポイントが割り振られており、倒して得たポイントの合計点が合否を分ける仕様になっている。こう聞けばただ戦闘力を測るだけに思われるかもしれないが、もちろんそこは雄英高校。
そんな簡単な試験ではない。群がっているスタート地点周辺からいかに早く抜け出すか、市街戦ならではの遭遇戦をいかにうまくこなすか、将来がかかっているこの状況で他人を、それもライバルを助けるヒーロー性をもっているかどうか、それらが測られていることに気づくことが出来るか?他にも多くの課題を受験生に課している。
ロボットを見つけるや否や、一瞬で詰め寄る瞬発力。関節部などの弱点を正確に狙う繊細さ。
そして何よりも徒手空拳で硬い装甲のロボを一撃で倒す破壊力。
間違いなく今年度最優の一人だろう。
「スピード、パワー、テクニック…戦闘センスがあるのは間違いなさそうですが、あまり考えて動くタイプではなさそうですね。
行動に移すまでにラグが無さすぎる。それに、学生としては異常な場慣れ感を匂わせる…」
不断に対して疑惑の目線を向けるのは抹消ヒーロー『イレイザー・ヘッド』だ。個性の消滅と捕縛武器を併用した徒手空拳で敵を殲滅する合理的なヒーローだ。
「確かに、彼の救助の手際は初心者らしい早計が見られませんね。
明らかに現場を知っている人間の動きです。どうしても戦闘ばかりに目がいってしまう若者には珍しく、非常に好ましいと僕は思いますが…」
不断が瓦礫に埋もれた他の受験生を助け出している場面を見ながら述べるのはスペースヒーロー『13号』。ブラックホールの個性で、災害救助において目覚ましい活躍をしている紳士的なヒーローだ。
「うん、みんなの考えてることは分かっているよ。ヒーローではない学生がなぜ経験値を持っているのか。つまりこうゆうことだろ?」
校長が周りを見渡しながら問えば皆が神妙な顔で頷く。当たり前だ。もし彼が皆の予想通りなら、その行いはどれだけ倫理的に正しくとも犯罪なのだから。
「ところでみんな、ここ数年名前も名乗らずに敵を捕縛し交番前に置いていく義賊のことを知っているね?」
「っ!まさか、校長‼︎彼がその『ノーフェイス』であると⁉︎」
『ノーフェイス』
ここ数年東京都内を騒がせている義賊だ。
彼は、祭りの屋台で売られていたオールマイトのお面を被り、赤と黄色の全身タイツを着たオールマイトのフォロワーと思しき男だ。
ノーフェイスは人知れず敵を倒し、捕縛して交番の前に届けるという義賊のような行いをし、その名誉も報酬も受け取らず、ただ民衆を守るという姿勢が、超常黎明期に活躍した自警団を想起させかなりの支持を受けていた。
警察はその目撃証言や、犯行時刻が平日の夕方以降と休日に限定されていることから、犯行を未成年の高身長の少年と仮定し、都内の部活に所属していない中高生に犯人像を絞っていた。
しかし、犯人は未だ特定されていない。
ノーフェイスの一連の犯行には、どう考えても不可解な点があり、そのために警察組織の持つ一つの個性が効果を発揮することが出来なかったからだ。
ここで少し話は変わるが、現在世界で個性を持ちの人口は8割程に及ぶ。この個性に満ち溢れる世界で、資格制度を設けない政府などあるわけないだろう。現在では、ヒーロー資格を持つ者しか公共の場で個性の使用は認められていない。だがしかし、敵然り無資格で個性を使う輩は絶えることはない。それ故、警察組織には代々重宝されている一つの個性があった。
効果は個性の追跡。現場に残る個性の残り香のようなものを追うことが出来る、警察犬のような能力だ。
そして、ここからが話の本題だ。
今回のノーフェイスの事件でも、彼の犯行に感銘を受け、後を追う者が出ることを危惧した警察は比較的早い段階で、この個性使用者を現場に派遣した。しかし、何もわからなかった。弱い敵だったから、個性を使うまでもなく倒したのだろう。そう判断したものもいた。しかし、その後に捕縛された敵の中にはプロヒーローに何度も追われようとも捕まらなかった強者もいたのだ。これを個性を使わずに捕縛するなどありえない。腰に剣を差しているのに、素手で強者に殴りかかる者はあまりいないだろう。
結果、ノーフェイスには個性の痕跡を消す個性を持つ共犯者がいる。
もしくは、これは現在一番可能性の低いものなのだが、何人もの敵を捕縛した義賊『ノーフェイス』は、”無個性”であるかもしれないとの結論に至っていた。
「そうさ!ここに彼の書類があるんだが、住所は東京都内!中高では部活に入らず!身長も目撃証言通りの180前後!そしてあの抜群の戦闘能力!」
「そして…個性登録なし。つまり無個性ってわけですか。」
「その通り!さっき言った条件だけでは正直ガバガバもいいところだろう?でもここに無個性という要素が加わるとどうだい?
ノーフェイスという像に不断努気くんがかなり重なってきたんじゃないかな?」
校長の言葉に周りのプロヒーローの顔に納得の色が浮かび始める。
しかし…
「確かに理解は出来ますが…
ここはヒーロー育成校で相手は義賊ですよ?
自ら飛び込んくるものでしょうか?」
そう。ミッドナイトの言う通りだ。確かに条件は満たしているし、説明された今ではますます受験生の彼、不断努気がノーフェイスに見えてくる。だがそもそもの前提として、ヒーロー育成校に義賊が受験しにくる。普通しないだろう。しかも、書類の提出が義務だったり映像に収められたり、今後の義賊活動に不利になることだらけだ。スパイをするつもりであったなら、人類の誇る最高知能『ハイスペック』の根津校長を舐めすぎであるわけだし。
「君の言うこともよくわかるよ。ここに来た時点で彼の義賊活動が終わりを迎えることは誰が見ても明白。そんな愚行を犯してでも成し遂げたい目標とは何か?…正直、あまりに単純なことで僕自身もほんとにこんな考えなしというか、馬鹿な思考を辿れないことに苦笑を禁じ得なかったよ。」
どこかしんみりとした雰囲気を出しながら語った校長。質問したミッドナイト含め、周りのプロヒーローは突然始まった答えになっていない答えに戸惑った顔をしている。
「でも…なるほど。時代の転機に現れる革命児。彼らはその後の時代では英雄と呼ばれたみたいだけど、前時代では須らく馬鹿やうつけ者と言われていたらしいね。彼らは、大抵最初は誰にも相手にされていなかった。しかし、その業火の如き熱量を持つ魂は、周りの人たちを猛烈な勢いで奮い立たせたそうだ。」
別の液晶には、先ほどまで努気と一緒にいた梅雨と実が、辺りで救助をしていた他の受験生に協力を頼み、より効率的に、迅速に救助が出来るようにしている。
「だから、彼も。きっと、今より後の時代の英雄なんだろう。
それなら今この時くらいは、馬鹿呼ばわりも許してもらえるさ。」
そう締めくくり、巨大仮想敵が投影されている液晶に目を向け、微笑みかける校長。
そこに写っているのは、超大型仮想敵を打ち倒している次代の英雄の姿だった。
読んでくれてありがとうございまーす
小説を書くのに慣れてないんで、
誤字脱字とか多いかもしんないんで
自分も確認しますけど報告してくれると助かります!