Electro Wizard   作:不知火 椛

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1話 再び動き出す時間

ブゥーーン――カタカタカタ、タタ――カチカチ――カタカタカタ――

 

薄暗い部屋の中ファンの音とキーボードの音がよく聞こえる。

そして、部屋を照らしているのは複数台のモニターであった。

このご時世ホログラムキーボードや仮想キーボードを使うのが当たり前になっている中、その人物は今でも物理キーボードを使っていた。

ピコン!チャットに新たなメッセージが書き込まれた。

その人物は、サブのホログラムモニターに目を向けた。

 

System:犬が 電線 に参加しました。

 

犬:今回のお仕事楽すぎません?こんなに報酬貰って後で何か言われるって事無いんですか?

 

この間入った新メンバーの犬が仕事のチャットに書き込んでいるようだ。

 

Ri:あー、新入りは今回が初めてか...

 

犬:はい、初めてですが?

 

てるてる坊主:報酬額は基本的に歩合制だ、時には話し合いで割合は決まるが...

 

犬:え、あれ全部の報酬額ですか!?

 

ホーク:あ、すまん。そこのところしっかり言ってなかった...

 

Ri:うわー、リーダー酷いwww

 

てるてる坊主:そこはきちんと説明しとけよ...

 

ホーク:いや、素で忘れてたわ、すまん。

 

全員に指摘され犬に説明をきちんとしていなかった事に気が付いた。

 

犬:まあ、今聞きましたから。今後このようなことが無いようにお願いしますネ?

 

ホーク:うい。

 

Ri:これは、またリーダー何かやらかしそうだなww

 

てるてる坊主:あ、それフラグってやつだ。

 

ホーク:おい、やめろ。また犬がかわいそうな目に遭うだろうがww

 

犬:え!?こんな目に遭うのまた自分ですか!?嫌ですよ!

 

てるてる坊主:そして2度目を経験したら自動的に3度目がお約束に!!

 

犬:うわああああああああ!止めてくください!

 

Ri:おー、焦ってる焦ってるww

 

ホーク:他人事のようにしているが、お前らに降りかかる可能性も忘れるなよ?

 

てるてる坊主:え゛

 

Ri:え゛

 

犬:プギャ―! 

【挿絵表示】

 

 

Ri:犬てめえ、喧嘩売ってんのか!

 

てるてる坊主:ほう、新入りの癖に喧嘩を売るとは...いい度胸だ。

 

ホーク:?

 

犬:え、何するんです?

 

てるてる坊主:¶←犬がもう1度酷い目に遭うフラグ

 

てるてる坊主:フラグ建設完了!

 

犬:何てことしてくれるんですか!

 

ホーク:おい、それ俺がやらかすこと前提じゃねーか!

 

Ri:え?

 

てるてる坊主:え?

 

犬:え?

 

ホーク:お前ら...いい加減にしろ!

 

Ri:あ、ここのコードやらかしてるな

 

ホーク:あ、それ(ホール)だぞ

 

Ri:お、まじか犬踏むなよ

 

犬:踏むわけ無いじゃないですか...こっちもプロでやってるんですよ~

 

てるてる坊主:ほう、大きく出たな新入り

 

犬:な、なんすか?

 

てるてる坊主:

 

犬:何も言わないのが怖いんですけど!

 

ホーク:そろそろ真面目に仕事に戻れ、報酬減らすぞ?

 

犬:あ、はい

 

Ri:あ、ちょっと怒ってるな、すぐに終わらせよ

 

てるてる坊主:No.24~128まで終わったぞ

 

Ri:は!?てめえさっさとやりやがったな

 

てるてる坊主:仕事を終わらせて、雑談するのなら問題ないはずだぞ

 

Ri:ちくしょおおおおおおおおお!!

 

犬:あ、任されてた分終わりました

 

Ri:犬もか!?嘘だろ!?

 

ホーク:お、そうか終わったか

 

てるてる坊主:ふむ、口だけかと思ったが中々だな犬

 

ホーク:そーだな、少なくともRiよりは働くな

 

Ri:いやいやいや、俺も終わったから!

 

ホーク:本当か?

 

てるてる坊主:つまらん凡ミスをしてないだろうな?

 

Ri:何年やってると思ってるんだ?

 

ホーク:さあ?

 

てるてる坊主:20年?

 

犬:実はおじいさんだったり?

 

Ri:おし、てめえらが俺のことを思っていたのかよーくわかった

 

ホーク:で、そのミスなんだが...

 

Ri:ごくり...

 

犬:wktk!!

 

てるてる坊主:

 

ホーク:最初以外は全部合ってるぞ...最初以外はな!

 

Ri:いいぇー!ええええええええ!?

 

犬:やってしまいましたねー!!

 

てるてる坊主:クソ雑魚カテゴリーはと...

 

ホーク:大文字で始めるところを見事に小文字で始めたからな

 

Ri:嘘だ!

 

System:ホークが画像を送信しました

 

Ri:いやあああああああ!

 

犬:本当に間違えてますね...

 

てるてる坊主:はい、報酬減額かな?

 

Ri:それでだけは勘弁してください、お願いします。今月やばいんです

 

ホーク:ほら、馬鹿言ってないで各自報告

 

Ri:うい

 

犬:はい

 

てるてる坊主:了解

 

Ri:ここのは、一見するとセキュリティが硬い感じに作ってあるが駄目だな

  まあ、最近の傾向を見れば一目瞭然だが、無差別にアタックを掛けるパターン

  の場合は防げねえな

 

てるてる坊主:大枠はそんな感じだったな。中身の話だが、俺らが入れた時点でお察しだ

 

犬:同じくですね。セキュリティレベルは公表はAですが、CL (注1)で言えば正直BBですね。

  極秘に関してのみAくらいですかね。

 

ホーク:なるほどなここは問題ありだな、クライアントには改善点をまとめて報告だな。

 

Ri:まあ、よくこんなセキュリティで何にも盗まれてねえのが疑問だがな

 

てるてる坊主:そんな事もあるもんさ。ただ運が良かっただけだ

 

犬:ですね。それで、今回の仕事はこれで終わりですか?

 

ホーク:まあ、そうなるな。後はクライアントに報告をして報酬を受け取れば―

 

そこまで打ち込んだ所でホークの携帯端末R.V.G.D (注2)にメールが一件来た。

そのメールを見るとすぐさま―

 

犬:あれ?一体どうしたんです?

 

Ri:あー、あれかもな

 

てるてる坊主:その可能性が高いだろう

 

2人はわかっているようだが、犬には状況が呑み込めていない。

そして、急に

 

ホーク:後は頼んだ

 

System:ホークが 電線 からログアウトしました

 

Ri:ビンゴ

 

てるてる坊主:まあ、しょうがない

 

犬:一体何事なんです?

 

ホークはすぐさまサーバーを手動からオートに切り替えR.V.G.Dを引っ掴んで部屋を飛び出した。

 

Ri:そりゃ犬、お前は知るわけもないか

 

てるてる坊主:だが、どこまで語ったものか

 

ホークは部屋を出るまでに呼んだ自動運転のタクシーに乗るや否や、事前に行先を入力していたのにも関わらず声に出して行先を言った。

 

近江(このえ)大学総合医療研究センター1号病棟まで、なるべく急いでくれ!」

 

犬:どう言う事です?

 

Ri:ホークには妹さんが一人いるらしいんだがな

 

てるてる坊主:その妹さんは5年前から昏睡状態らしい

 

犬:はあ...え!?

 

Ri:まあ、驚くのは無理ねえな

 

道中ホークはもう一度メールの確認をした

 

帆鷹充様緊急の連絡のため本題に入らせて頂きます。

帆鷹愛美(あみ)様の意識が戻りました。お時間が御座いましたら、至急近江大学総合医療研究センター1号病棟までお越しいただくようお願い申し上げます。なお、愛美様のご容態ですが――

 

犬:それって、今回の突然のログアウトと関係があると?

 

Ri:だろうな。はあ、今回は俺が報告か。しゃーねえ

 

てるてる坊主:では、頼んだ

 

System:てるてる坊主が 電線 からログアウトしました

 

犬:へ?詳しい説明とか無しですか!?

 

Ri:詳しことは直接本人に聞け。まあ、あれだと当分は無理だろうがな。じゃ

 

System:Riが 電線 からログアウトしました

 

犬:ちょ、本当に何なんですか!もー

 

System:犬が 電線 からログアウトしました

 

「愛美...」

 

ホークこと、帆鷹 充(ほたか みつる)は車中で固く拳を握りつつ病院への到着を待った。

 

 

 




注1 CL ― Cracker Level (クラッカーレベル)
       クラッカー達の間で使われるセキュリティ難易度の事
       D、C、B、BB、BBB、A、AA、AAA、Sの9段階でSが最高
       ランクが高いほど、ハッキングが難しい。

注2 R.V.G.D ― Real and Virtual Glass Device の略称
         R.V.G.Dは多機能型携帯デバイスで、充は最上位モデルの
         nextと言うシリーズを更に強化して愛用している。
         半端な強化はしておらず、性能はスーパーコンピューターに匹敵

  歩合制 ― 変動給とも、業績や成績に応じて支払われる給料の事。
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