Electro Wizard   作:不知火 椛

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2話 近づく気配

「愛美!」

 

勢いよく引き戸を開け個室の病室へ充は駆け込んだ

 

「シー」

 

しかし、入った途端担当の看護師である木田さんに突入と共に言われた。

 

「あ、すいません...それで、愛美は?」

 

充はすぐさま謝り、今度は小声で木田さんに話しかける。

 

「大丈夫よ、簡易検査がさっき終わったの、それで疲れちゃったのね、今は眠っているわ」

 

木田さんはカーテンが閉められた先にあるであろうベッドに向かって顔を向けた。

 

「それで、検査の結果は?」

「まずは、そこから聞くのね、まあいいわ。ここじゃ、何だからちょっとこっちに来て」

 

充は病室のすぐ近くのナースステーションの一角にある机に案内された。

 

「それで、愛美さんの簡易検査の結果だけど―」

「は、はい」

「今のところ特に問題はないわ」

「よ、よかった」

 

充は妹の無事を聞いて充は脱力をする。が、

 

「でも、これはあくまで簡易検査の結果よ、詳しく検査しないとわからない事もあるんだから、まだ完全に喜ぶには早いわよ?」

「は、はい」

「まあ、私の見立てでは大丈夫でしょうね。体の方はリハビリをしないといけないけどね。ただ」

「た、ただ?」

「いえ、これは誤魔化しても問題の先送りね、彼女目を覚ました時初めに何を言ったかわかる?」

「ま、まさか、両親の事ですか?」

 

妹が目覚めた嬉しさで失念していた最悪の出来事を思い出した。そして、思い至った。至ってしまったのだ。一気に残酷な現実に引き戻され、背筋が凍る感覚が全身に駆け巡る。

木田さんも目を伏せ口を開いた。

 

「多分その通りよ。ただ、5年ぶりに言葉を発したからでしょうね、はっきりとは聞き取れてないの。ごめんなさいね。今喜んでいる所に水を差すような事を言ってしまって」

 

木田さんは謝りながら言った。

 

「い、いえ。こちらこそ気を使ってもらって―」

「看護師だから当たり前です。愛美さんもだけど、充君あなたも大分無理してない?」

 

何故か、話題の矛先がこちらに向かって来ていたので、すぐに話を切り替える。

 

「そ、そう言えば、筋力を取り戻すリハビリって普通はどのくらい掛かるものなんですか?」

「んー、そうね。大体は寝ていた期間の倍は掛かるとされているわ」

「そう...ですか...」

「でも、その話は少し前の話よ。今は患者さんの気力にもよるけど愛美さんの場合は脳と精神系統の症例だから180日間は病院でできるわね。まあ、回復の速さは本人の頑張りと気力次第よ。」

「そうですか...回復はするんでしょうか?」

「愛美さんの場合、若いから完全に運動機能が回復する可能性は低くないわ、元々脳や神経にはこれと言った障害は負っていなかったはずだから大丈夫よ」

「なるほど。よ、よかった」

「でも、」

 

木田さんは少し間を置き、充の目をしっかり見据えて続きを言った。

 

「ここからが、本当に大変な所よ、愛美さんが元の、いえ...それ以上の生活に戻れるかどうかは充君、()()()()()()()であるあなたに掛かっているわ」

「っ...!」

 

充はその一言を言われ、体に力が入った。木田さんの言う通り、愛美がいざという時に頼れる家族は充ただ一人なのである。親戚連中が当てにならない事は、両親の葬式の時に嫌と言うほど思い知らされた。また、前の後見人には既に無理を言ってなって貰っていたため、成人をした去年に愛美の後見人を引き継いだ。

 

「そう、ですね」

「ごめんなさいね、まだ若いのに追い詰めるような事を言ってしまって...」

 

そう言った木田さんの表情もいつもより暗かった。と言うか、あなたもお若い気がするのですが。

が、木田さんはすぐに暗くなった話を元に戻すように

 

「さて、まずは今後どうしていくか計画を立てましょう?」

 

木田さんはそう言うと見積書や、リハビリのスケジュールプラン等を持ってきた。

その後担当医も交え、今後の事を話し合った。その結果、

 

「今日は泊まっていきなさい」

 

と言う担当医と1号病棟の看護師長でもある木田さんから言われてしまい今日は愛美の眠る病室に泊まる事が半ば自動的に決定したのである。

 

――――――

 

「全く、とんでもない事が今日は起こりすぎだ」

 

自宅へ一度帰り1泊する準備をして再び近江大学総合医療研究センターに戻る道中、充はそうぼやいていた。自宅に帰宅した充がした事はまずサーバーのログの確認であった。サーバーの管理を任せているAI「Re;Lear(リーリア)」の報告を確認する。

 

「アタックが4千回か、6時間出掛けててこれは少ないな」

 

どんどん読み進めていく

 

「動作異常も無いし、特に問題は無いな」

 

最後までチェックを終わらせると次は、ネットワーク界隈での動向の変化が無いかの確認し、準備を終わらせる。

 

「Re;Lear1日ほどここを空ける、何かあればすぐに報告をするように」

「命令を了承しました。いってらっしゃいませ充様」

「ああ、それと...」

「どうかなさいましたか?」

「いや、これは帰って来てからかな」

 

ホログラム内に設定したRe;Learは首を傾げる動作をしているのを傍目にしつつ部屋を後にした。

それが、つい5分前の出来事である。

 

「愛美は俺を兄と認識してくれるだろうか?」

 

ふと頭によぎるのは妹の事である。5年間眠っていたも同然なので、どうすべきか悩んでいたのだ。

 

「まあ、今悩んでいても仕方がない。まずは喜ぶ事が大切だな」

 

充はそう割り切る事にした。

 

――――――

 

「じゃあ、一応確認しておくわね。もし、目を覚ましても、急に動かすような事はしない事、何か異常があればすぐにナースコールをする事、いいわね?」

「はい、わかりました」

「ならよし、本当は君がいる時に目を覚まして欲しかったんだけどね」

「いえ、快復したと聞いただけで嬉しいですよ」

「まあ、明日目を覚ますだろうから大丈夫よ。その時どう声を掛けるか考えておきなさい」

「はい、ありがとうございます」

「じゃあ、私はナースステーションに居るから」

 

そう言うと木田さんは病室を後にした。充は予め教えて貰っていたパスワードを入力して病院の専用ネットワークにアクセスする。実はこの病院も充達の大口のクライアントで懇意にしてもらっており、ここのネットワーク管理もほぼ充がやっている。また、他の病院のセキュリティレベルはAAだがこの病院はSにしている事もあり、信頼をして貰っているためだ。その代わり、クラッカー達の標的にされていると言う皮肉な所はあるのだが、それはまた別の話。

 

「前回のチェックは13時間前だったな。まあ、なんとも無いと思うが確認は重要だ」

 

そう言いR.V.G.Dと病院のサーバー、充の家のサーバーとも同期してサーバーの処理能力を上げ、サーバーログの確認を行う。

 

「Re;Learログチェック開始」

「サーバーNo.1~16までの同期を確認ログチェックを実行します」

 

Re;Learに確認処理を任せ、ハードの異常が無いかの確認を行っていく。

ハードの方も自動で報告を上げるように設定しているのだが、細かい所は本人がチェックするようにしている。

1サーバーあたり32ラックで構成されており、16基合わせて512ラック。

1ラックあたり64ノードで32768個のCPUで運用している。

4PFLOPSと言う莫大な計算をこなせるようにしている。

メモリーは1ノードあたり32GBで合計1PB。

計算結果即時記憶装置でSSDが合計512TBで3TBの耐久SSD188台。

カルテや計算結果等データ自体を記憶する記憶装置でHDDが合計20PBで4TBのHDDが1ラック10台で5120台。

KONOEGMCサーバーと名前がついている。

 

「CPUの異常動作はなし、メモリーは46番、224番、863番、6789番、20403番ノードでエラーを数回吐き出してるな...交換申請を出しておくか。SSDは96番と136番が不良セクタがあり、一度フォーマットして戻らないなら交換だな。HDDはNo.4サーバー113番ラックの7番、No.15サーバー478番ラックの2番、No.16サーバー511番ラックの10番が不良セクタあり、こっちもフォーマットして戻らないなら交換だ。ハードはこんな感じか」

 

ハードの方の確認が終わると次はログの確認である。

 

「Re;Learログで変化はあったか?」

「前回より稼働効率-0.0032%エラー件数7件、前回比+4件で不良セクタの影響です。アタックは1万302回で前回比-300回です」

「これと言った変化は無し、いつも通りだな」

「はい、これと言った問題は確認されませんでした」

「よし、最後にスキャン掛けてチェック終了だ」

「システムスキャンを開始します。その後通常稼働に戻し、同期を切断します」

 

充は同期を切ったのを確認し、サーバーとの接続を切る。

 

「特に問題は無かったな」

 

充は一息つく為、愛美に変化が無いのを確認して病室を出た。そして、自販機のある場所に向かい暖かいミルクティーを近くのベンチで飲んでいた。すると人の気配があった、巡回の看護師かと思い顔を上げるとスーツ姿にサングラスを掛けた如何にもな人物が立っていた。

 

「...どうしたんですか?ナースステーションはあっちですよ」

 

嫌な予感がしながらも、充はナースステーションの方を指差した。

 

「帆鷹充くんですね?総務省国家情報保安部の者です。」

 

そう男は口を開いた。

 

「国家情報保安部?」

「はい、総務省の管轄になります」

「で、そのお偉いさんがこんな一般市民に何の用ですか?」

「ははは、ご冗談を...ですが今は関係ない」

「どう言う意味だ?」

「いいでしょう、真夜中ですから早く帰りたいので本題に入らせていただきます」

 

深夜の病棟が異常に静まり返っているように充は感じた。男は笑いつつ一瞬区切ってから。

 

「国家解体プロジェクト...これのプロジェクトにご参加頂きたい」

 




KONOEGMC ― 近江大学総合医療研究センターのサーバー兼スーパーコンピューター
         GMCは General medical centerの略称
       ・全体構成
        全体で512ラック
        CPU数は32768個(512ラック×64ノード×1CPU)
        計算結果即時記憶装置SSD容量512TB(3TB×188台)
       ・ラック
        1ラックあたり64ノード。1ノード、1CPU
        磁気ディスクHDD容量20PB(1ラックあたり4TB×10台)
        システムボード
        IO用システムボード
        電源
       ・CPU
        Zero;code128
        16コア(1コアあたり8GHz)
       ・メモリー
        1ラック32GBで合計1PB
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