僕は、今通っている中学校へ急いだ。そこに真海がいるはずだ。やっぱり、人が入った形跡がある。僕は、校舎内に入った。一年生の廊下で一つだけ灯りが付いてるところがあった。僕の元クラス一年四組だ。僕は、一年四組の扉を開けた。そこには、真海が“前と同じ場所”に座っていた。僕は真海の隣に座った。
「真海…。」
「愛、斗…?」
今にも消えそうな声。声も震えている。僕が来ることにひどく驚いている。
「何で、分かったの…。?」
真海が言った。僕は、いつにもなく優しい声で、
「何でって、真海は僕と同じクラスだったじゃないか。」
「何で…。“記憶は消えていた”はずなのに」
「やっぱり、真海は超能力者だったんだな。」
これでやっとつじつまが合う。
「久しぶりだな、真海…。いや“真琴”。」
「…、いつから気づいてたの?」
「真琴の家で手紙を読んだとき。」
「記憶は完全消したはずだよ?」
「完全じゃないだろ?僕の記憶の中には、君と似たような声があった。それって、僕がまだ真琴の事忘れてないって事だよね?記憶は完全に消さないと、忘れないよね?何かの拍子で思い出してしまうからね。だから、真琴は僕の記憶を完全に消えてないって事だよね。」
「やっぱり、凄いなぁ。愛斗は…。」
「それより、どうしてこの世界にいるの?」
彼女は答えなかった。ずっと下を向いている。
「ねぇ、覚えてる?私たちが本当に初めて出逢ったときの記憶。」
「あぁ、覚えてるよ…。」
僕は、中学一年生のときの記憶に遡る。僕は、中学一年生のときも、一人だった。お弁当は基本一人。昼休みは読書か屋上にいる。あの日、僕は人と避けるために屋上へ行った。するとそこには、屋上の鉄格子の向こう側にいる一人の女の子がいた。彼女は今にも飛び降りようとしている。僕は、
「何をしているの?」
と聞いた。すると彼女は、
「見て分からない?自殺しようとしてるの。」
と言った。自殺するときとは思えない優しい声である。僕は引き留めようとはしなかった。しかし、彼女は、なかなか飛び降りようとはしなかった。すると彼女は急に笑い出し、大声で泣いた。僕はその時も読書をしていた。
彼女は、クラス内でイジメを受けており、耐えきれなかったそうだ。僕は彼女の気持ちを理解できた。
「ありがとう。受ケ留くん…。なんか、呼び辛いな。愛斗で良い?」
「別に何でも。」
「ありがとう…。」
「それより、君の名前は?」
「広田真琴…。真琴って呼んで。」
僕たちは、それからたくさんいろんな事を喋った。好きな食べ物や、好きな人のタイプとかたくさん喋って、たくさん笑った。何故だか彼女には心が許せた。それからというもの、彼女とは昼休みのとき毎日屋上で話した。夏休みに彼女といろんなとこへ行った。全部楽しかった。
僕は自分でも知らなかったが、真琴に恋をしていたようだ。初めて出逢ったときから。多分だけど、真琴も僕の事を…。
しかし、彼女は突然死んだ。いや、殺されたんだ。イジメがエスカレートして殺された。その後、この出来事は新聞に乗り、イジメをしていた子達は非難された。でもこのとき僕は何が何だか分からなかった。彼女とは関わりがないのだ。なんか記憶が抜かれた感じ。ただ何故か心にある悲しみや恨みに涙するしか、できなった。
僕は、あの日の出来事を思い出してると、
「愛斗は私の命の恩人だよ。愛斗がいなかったら、恋を知らないまま、死んでたと、思う…。」
僕は立ち上がり、
「僕は…!僕は!何も出来なかったじゃないか!君を助ける事が出来なかった!僕は命の恩人なんかじゃない!」
「ううん。愛斗は命の恩人だよ…。これは私が悪かったの。…でもこうしてまた会えるなんて思っていなかったよ…。」
「どうやってここの世界に来たの?」
「神様っているんだね。私は死んだ後、天国に行ったの。でも、神様にまだ未練があっちの世界にあって成仏できないと、一生幽霊として生きてくことになるよって言われて、神様が私に体を授けてくれたの。」
「そういうことか。世の中、分かんないことだらけだな。…まさか、君が超能力者だったなんてね。」
「言わなくてごめんね。言うと、恐がられちゃうから…。」
「そんなことないよ?」
それから僕たちは、あの頃のようにたくさん喋った。
「…あの時の本当のことを言ってくれないか?」
「わかった…。あの時の私は殺されることが分かっていたの。」
「予知能力も持っているの?」
「うん…。」
「何で言ってくれなかったの!?」
「言ったら、怖がると思った。それに、私の予知は絶対。変えることはできない。だったら、君が忘れた方が良いと思ったの。」
「だから、記憶を消した…。」
「でも忘れて欲しくなかった。」
「だから完全に消さなかったのか。」
「うん…。」
僕は重い空気をどうにかしようと話を変えた。
「未練って何だったの…?」
「愛斗に、好きって言われることと、もう一つは…。」
彼女はかなり戸惑っている。
「どうした?」
「私と、キス、してくれる…?」
僕はこのとき心臓が今までにないほど高鳴った。僕は勇気を持ち、勢いで真琴の唇にキスをした。
そのとき僕は真琴との数々の思い出が溢れ出てきて、涙が流れた。こんなにキスというのは、悲しくていいものなのか。僕たちはまるで世界の時が止まったかのような感じがした。キスが終わると、真琴は泣いていた。僕は今までにないほど力強く抱きしめた。
「ありがとう…。また、逢えると良いね…。」
そういうと彼女は、どんどん消えていく。僕はただ見守ることしか出来なかった。
僕は真琴が消えた後、スイッチが入ったかのように、泣いた。
何で早く気づいてあげれなかったんだよ。
何で素直に好きって言えねぇんだよ。
何で僕なんかを救おうとしたんだよ。
僕は何も出来やしてないじゃ無いか。
なのに。
なのにさ。
また逢えるとか。
また逢えるわけねぇだろ。
僕は枯れることの無い涙を流し続けていた。