「あれ何人くらい住んでるんだろ・・・」
村から少し行った所にある屋敷。
敷地はさっきの村より大きい。
推定でも50人以上は住んでそうだ。
「というかさ・・・ハル、1つ聞きたいんだけどいい?」
「なに?」
「エルフってさ・・・銃火器とか兵器があんまり好きじゃないんだよね」
「そうだね」
「じゃああれ何・・・?とんでもない物見えるんだけど・・・」
「・・・」
屋敷には自衛用だろうか、門の近くに12.7mm重機関銃が置いてあった。
また、屋敷の屋根には12.7cm連装高射砲がドカンと2基配置してあった。
まぁこれはカルト教団や魔獣相手なら妥当な手段だろう。
というかそんなものはどうでもいい。
屋敷の庭にどう考えてもおかしい物があった。
こんな物所持する領主とか嫌だ。
「なんで・・・スカッドミサイルあるの・・・?」
移動式発射機に装備されたスカッドミサイルが堂々と庭の真ん中に置いてあった。
カルト教団相手に使う気だろうか。
「とりあえず降りよう」
「そうだね・・・私ちょっとあそこの主人と話すの怖くなっちゃった・・・」
ヘリは庭に着陸する。
するとメイドらしき女性が出迎えてくれた。
「お待ちしておりました」
「御主人様は中?」
「はい、出迎えの準備をしています」
「分かった、ちょっと待ってて」
ヘリのエンジン停止を待つ。
・・・それにしてもあのスカッドミサイルの存在感がヤバい。
あんなもの持ってる奴を襲おうなんて何考えてるんだカルト教団は。
「おまたせー!」
マヤはエンジン停止させてこちらに来た。
「では、お屋敷に案内します」
メイドさんについて屋敷に向かう。
それにしても・・・デカい家だ。
「おっきいね・・・」
「うん、いい家だね。あれさえ無かったら・・・」
「あ、あはは・・・弾道ミサイル置いてる家なんて怖いよね・・・」
なんて話しながら屋敷の中に入る。
そのまま一つの部屋に案内された。
「ご主人様、到着されました」
「あ、はーい!」
こっちに寄ってくる女の子。
銀髪の似合う可愛らしい子だった。
・・・庭に弾道ミサイル置くような子には見えない・・・というか見たくない。
「初めまして!」
「初めまして、えと・・・」
「あ、名前がまだだったね!私はカエデ!」
「カエデ・・・私はハルだよ」
「私はマヤ!」
「それで本題なんだけど、カルト教団ってのはどんな奴らなの?」
その話題を出すとカエデは面白くなさそうな顔をする。
「・・・酷い人達・・・としか言えないわ」
「分かった、それだけでいいよ」
「そうだ、それよりも気になってた事あるんだけど」
「なーに?」
「・・・あのスカッドミサイル・・・カエデさんの?」
「え?あ、あぁ!あれね!あれ村の人たちが危ない人達が襲ってきたらこれで戦うんだよって餞別でくれたの!」
「へ、へぇ・・・」
餞別・・・こんな破壊力のある餞別なんてあっただろうか。
そもそもどこからこんな物調達した。
「でもお父さんったらこういう物詳しくないからいちばん強そうなの持ってきたってドヤ顔で言っちゃって・・・私使い方分からないのに・・・」
いちばん強そう・・・まぁそりゃ強いでしょう。
弾道ミサイルなんですから。
1発しかないけど。
「そういえば、私達の他に人って来てないの?」
「あ、その人たちなら村の方にいってもらったわ。村の防御を固めたら何人かこちらに戻すって・・・」
「分かった。こっちも狙撃とか出来そうな位置を探そうか」
「そだね」
「カエデ、この家で高くてあの門が見える部屋を教えてもらえる?」
「それなら私についてきて」
カエデの案内で部屋に向かう。
「ねぇハル、狙撃って言っても私達の小銃だよ?」
「距離は大体300m無いよ。狙撃銃じゃなくても当たる距離」
「まぁそうだけど・・・」
「マヤにはスコープ付いてるでしょ、大丈夫」
「そうだね・・・頑張ってみるよ!」
なんてしてる間に部屋につく。
「ここ、私の部屋だけどここが1番見晴らしはいいと思うわ」
「確かに・・・正門まで距離約260・・・マヤ、260mは狙える?」
「静止目標なら何とか・・・相手の数にもよるけど門をこじ開けようとしてる連中の狙撃なら出来るかも」
「あ、そうだ!ハルさん、これ使う?これも餞別で貰ったものなんだけど・・・」
「え?どれ・・・?え?」
カエデがタンスから出してきたのはダネルNTW-20。
私達のF-14に搭載してあるバルカン砲と同口径のライフル・・・人というか生き物に対して撃つものじゃない。
マヤは若干引きつった顔でカエデにそれが何か分かってるのかと聞いていた。
「あの・・・カエデさん?これが何かご存知で・・・?」
「え?えーと・・・強そうな・・・鉄砲?あと重いわ」
「OK、分かった。とりあえずそれは人に対して撃つものじゃない」
「え、そうなの?」
「こんなの食らったらトラウマ級の状況が目の前で広がるよ!」
「でもお父さんがあの教団の人達の防御魔法を貫通させるならこれしか無いって・・・」
・・・なるほどね・・・まぁでもこんな物で狙撃されれば敵に対して強力な精神攻撃もできるはずだ。
・・・目の前で仲間が消し飛べば私なら逃げる。
「とりあえずそれはそこの窓に設置しよっか」
「分かったわ、そこね」
「それ・・・使うの?」
「相手の人数も装備も分からないからね。強力な武器はあったほうがいいよ」
「まぁ・・・でもそうだよね」
マヤは無理やり納得している感じだった。
「ハルさん、こんな感じ?」
「うん、あとは脚を窓枠にガッチリ固定だね」
あとは足元に20mm砲弾が入った弾薬箱を置いて準備完了だ。
「じゃあ私達はこの部屋で待機する。たぶん敵は夜間に来るからマヤと私はお昼に交代しながら仮眠とろ」
「了解、あと敵の偵察を見つけたらどうする?」
「そりゃもう・・・先手必勝一撃必殺で」
「了解!」
こっちの防御状況を伝えられる訳にはいかない。
なるべくこのダネルNTWは本襲撃のために温存しよう。
「じゃあ私はちょっとやる事あるから下に戻るわね。えと・・・何かあった時はよろしくね」
「任せて」
カエデは部屋を出ていった。
「さて、どうする?」
「どうするって・・・とりあえず見張りかな」
見張りに着こうとした時に後ろのドアが開いた。
振り返ると村で別れたチームのうちの4人ほどが戻ってきていた。
そのうち2人は女の子だ。
「あら、とんだゲテモノ置いてるのね」
「これ、あの子のだよ」
「・・・あの子、スカッドといいこれと言い・・・どうかしてますわ・・・」
お嬢様言葉な女の子は確か、カナという名前だった。
お嬢様言葉だが見た目は異世界の特殊部隊のような格好だが・・・
「・・・お姉ちゃん、この部屋の防御もうちょっと固めたほうがいいかも」
「ん、そうですわね。アキ、M2機関銃をあと2つ窓に設置で」
「分かった」
姉妹か・・・最初に自己紹介してなかったから分からなかった。
妹のアキは複製魔法が使えるようだ。
ただ工場の職員のようにパーツで作るのではなく、構造や機能を全て理解していないと出来ない、一気に作り上げる方式だった。
つまり彼女は少なくともM2重機関銃の全ての機能と構造を頭に叩き込んであるようだ。
「で、ローチ。あなたが私たちのリーダーなんだから作戦を決めましょうか」
「そのあだ名やめろと何度言えば分かるんだ」
「あら、あなた地雷踏んでもちょっと足折るくらいだったじゃない。異世界のゴキブリと同じくらい生命力が高いって褒めてたのに」
「そんな人を蔑む視線で言うんじゃない・・・」
ローチと呼ばれた男の人は顔を骸骨が書いてあるバラクラバで覆っているため顔が分からない。
「ま、作戦だな・・・とりあえず敵を見つけたら全部狩れ。撃滅しろ。以上」
「ふふっ、貴方らしいわ。でも・・・久々の狩りねぇ・・・うふふ」
「・・・狩りじゃー」
「楽しませてくれる獲物だといいわぁ」
何かこの姉妹雰囲気超怖い。
「・・・ねぇハル・・・このふたり怖い」
「私も同意見」
それもだが、あと1人さっきから全く喋ってない人がいる。
ただそいつは前、東海に乗ってきた奴と同じでガスマスクを付けていた。
ただ、それだけならいい。
なんでアンタはミニガン背負ってる。
それ人が扱える物じゃない。
「あら、どうしたの?」
「ひぇ!?え、えっと・・・」
姉の方に突然話しかけられとんでもない声が出た。
「あー、彼のミニガン気になってるんでしょ。彼、魔法で筋力とか上げてるからミニガンの反動とか押し殺せるのよ。あと彼、昔負傷した時に声帯やられてるから喋れないけど根はいい人だから怖がらないであげてね。人見知りだけど。名前はエコーよ」
「あ、あはは・・・分かりました・・・」
エコーはじっとこちらを見てくるがガスマスクのおかげで目しか見えず威圧感がやばい。
前のガスマスクは目がサングラスのようになっていて全く見えなかったが見えたら見えたで威圧感が凄かった。
「あ、えっと・・・私はF-14のパイロットしてるハル」
「私はRIOしてるマヤだよー!」
「F-14?ということは戦闘機乗りか?」
「うん」
「なんで戦闘機乗りがこんな依頼を?」
「前、賞金首とばったり会っちゃって・・・何とか撃墜したんだけどトムキャットはあと一ヶ月くらい飛べなくなった」
「賞金首撃墜したのか・・・ははっ、心強い味方だな」
ローチは気さくにそう話しかけてくれた。
このチームの人達は本当にいい人そうだ。
「さて、そっちの2人はどういう作戦だ?」
「え?えっと・・・」
考えてなかった。
だが思いつくとしたらこの広い庭で交戦するよりも会えて家の中に入れ、閉所戦闘を強いるという事だ。
広い庭だと魔法を使う場所が存分にある。
だが魔法を使うにはある程度の開けた場所で使う必要があり、それは強力になるほど広い場所が必要になる。
なら敢えて狭い場所におびき寄せ、銃撃したほうがいい。
私はそれを伝えた。
「なるほどな・・・ただ家の中に入られる前にある程度数を減らす必要がある」
「それならその重機関銃とダネルNTWで」
「それがいいな」
作戦も決まった。
あとは襲撃に備えるだけだ。
「そういえば他の人は村?」
「あぁ、他の連中は村で待機してる。ただ思った以上に村がデカくてな。子供が多いということで女性、老人、子供はヘリに乗せていったん俺たちの母艦に匿ってる。」
「母艦?」
「あぁ、アドミラル・クズネツォフ級だ。随伴艦にモスクワ級とウダロイⅡ級だな。本当はカシン級も居たんだが・・・二週間前にUボートに襲われてな。沈められた」
「・・・驚いた。船を使う冒険者が居たなんて」
「俺たちの住んでる場所は比較的海が穏やかでな。対潜専用の艦を連れてるから艦隊で動けてるよ。今回は近くまで移動してきて洋上で待機してる。絶えず対潜ヘリと駆逐艦が動いてるから魔獣の入り込む隙間もないけどな」
この冒険者パーティー・・・パーティーというよりももはやギルドだ。
1000人単位で人が居るんだろう。
「お喋りはこの辺にして、飯にでもするか。いい匂いもしてきてるしな」
「あ、そういえば」
「・・・お腹空いた」
なんて話してたらカエデのメイドが食事の準備が出来たと呼びに来てくれた。
時間はもう午後の6時だ。
「お客様、食事の準備が出来ましたのでこちらまで」
「よし、見張りを2名残して残りは食事に行くぞ」
「じゃあ私が見張ってるわ。アキも一緒に」
「うん」
「じゃあ残りは飯だ」
メイドに連れられて向かった先は大きな部屋だった。
長いテーブルに美味しそうな料理がたくさんあった。
入ると準備を手伝っていたカエデがこちらに気づいた。
「あれ?4人なの?」
「2人は見張りだ」
「そんな事しなくても良かったのに・・・」
「念の為だよ」
「・・・仕方ないわね・・・とりあえず座って座って!」
マヤの隣に座る。
もうお腹ペコペコだ。
「じゃあ頂きましょうか」
「いただきまーす!」
マヤは早速お肉に食いついていた。
私も美味しそうなステーキから手をつけた。
「美味しい・・・」
「うま・・・これうま・・・」
マヤは感動していたが・・・食べながら話すから何か汚い。
30分ほど食事を楽しみ、見張りを交代した。
「さて・・・今日は来てくれるなよ、準備がまだ出来てないんだからな」
「敵はヘリの音を聞いてるはず・・・来るとすれば今夜かも」
「・・・だよなぁ・・・」
待つこと1時間、当たりは真っ暗だ。
いつの間にか食事に言っていた姉妹も帰ってきていた。
すると双眼鏡を覗いていたマヤが小声で何かを伝えてきた。
「・・・ハル、なんか来た」
「・・・さっそくかな」
私も双眼鏡を覗く。
何やら黒ずくめの衣装を身にまとい剣のような物を持った人がいた。
その奥には本を抱え何かをみんなに伝えている司祭のような人物も居た。
「おいでなすった・・・ミスフィット1指揮官、こちらミスフィット1-2。おくれ」
《1-2、おくれ》
「屋敷の正門前、例の教団らしき人影。何かの儀式をしているようにも見える。交戦許可願う」
《1-2、それは敵か?おくれ》
「事前に確認した敵の服装、装備共に一致している。おくれ」
《ミスフィット指揮官了解、1-2へ。門に手をかけたら攻撃してよし。繰り返す、門を開けようとする動作を確認した時点で攻撃せよ。おくれ》
「了解、門を開けようとしたら攻撃する。おわり」
ローチは無線で村にいるリーダーと連絡を取っていた。
とりあえず門を開けようとするまで撃つなという事らしい。
「ハル、マヤ。聞こえたな。門を開けようとするまで撃つな」
「りょーかーい」
「了解」
マヤはAKを私はダネルNTWを構えてその時を待つ。
「司祭の奴・・・なんか泣いてるよ」
「泣いてるね。」
「ねぇ撃っちゃう?撃っちゃおうか」
「やめて」
「冗談だって。あ、門に来た」
その時ローチは少し笑っているように見えた。
そして攻撃命令を出す。
「オープンファイア」
「うふ、ふふふ、あはははは!!」
「・・・ひゃっはー」
姉妹は機関銃を門めがけて掃射する。
「ちょちょ!!いきなり始めたよ!」
「マヤ!」
「分かってる!」
私も呼吸を整え射撃する。
突然の銃撃に敵は混乱しているようだが、やはり想定内だったのか指揮官らしきポジションの司祭は落ち着いているように見えた。
だが・・・
「・・・!」
トリガーを引くと物凄い衝撃を受ける。
さすが20mmだ。
その砲弾は司祭の頭を捉えた。
「うわっ、グッロ!!」
指揮官の頭が消えた事で敵がとんでもない威力の物で狙っているということが分かったのだろう、まっすぐ屋敷に向かってくる。
「ひゃははは!!リロードですわ!」
カナはすごく嬉しそうな顔をしながら機関銃を撃ちまくっていた。
「何人か入ってきたな・・・」
その時、部屋にカエデとメイドが入ってきた。
「な、何があったの!?」
「襲撃だ。3人はここにいろ。他に人は?」
「わ、私達だけ・・・」
「分かった」
ローチは拳銃をメイドの1人に渡した。
「使い方は分かるな。敵が来たら胸に2発頭に1発だ。」
メイドはこくこくと頷くだけだった。
「よし、ここでの戦闘を中止。中に入ってきた奴を片付ける。狩りの始まりだぜ・・・」
「ふふっ・・・いいわぁ。ちょっと先にやる事やったら行くわね」
「何する気?」
「お楽しみよ」
カナは単独で離れていく。
「よし、弾はあるな。行くぞ」
廊下を慎重に進む。
したからは小走りで走る音が聞こえた。
「階段を警戒」
無言で階段に銃を向ける。
その時だった。
『きんこーん、カルト教団のみなさーん』
カナの声だ。
この家のスピーカーを使っているようだ。
『遠路はるばるご苦労さま。でも残念、ここでみんな狩られる運命ねぇ。でも安心して、あなた達にも家族が居るでしょう?私達優しいから貴方達を殺したあと、家族もちゃんと殺してあげるから。ふふ、ふふふ、あはははは!!あの世でしっかりと再会してね!もう何人かの家には爆弾を詰んだ戦闘機が向かってるかも!いいわねぇ・・・すぐ会えるわよ。ふふふ、あはは!』
なんだこのどっちが悪役か分からなくなる放送は・・・
「また始まった・・・余計な事まで・・・」
「また?」
「アイツ、この手の事になると毎回だ。しかも空爆に向かってる事まで言いやがって・・・」
「え、マジなの!?」
「家族をピンポイントで狙うわけじゃなくてヤツらの教会をな。ただ家族がそこにいる連中もいるってだけだ」
「そういうことね」
そんな話をしていると目の前の階段から音もなく4人ほど現れた。
全員顔をフードで隠してるため顔は分からない。
「コンタクト!」
銃撃を浴びせる。
敵の獲物は剣だ。
近づかれる前に撃たないと。
「こいつら速いよ!」
「速ぇっ!クソっ!!」
剣だけ・・・というわけではないだろう。
連中、魔法かなにかで自分たちの速度を上げていた。
だが・・・
「出番だぜ、エコー」
ミニガンの銃身を回転させながら前に出てきた。
そして獣の咆哮のような銃声が響く。
あっという間に敵は蜂の巣だ。
「うっへぇ・・・えぐい・・・」
「うん・・・これはちょっと・・・」
「・・・慣れた」
「アンタたくましいよ・・・おぇ」
なんて話していたらカナが帰ってきた。
「ただいまーって・・・あら、もう殺っちゃった?」
「4人だけだ。それより最高の演説ありがとよ」
「うふふ、褒めても何も出ないわよ」
「これが褒めてるように見えるか?」
「ええ、見えますわ」
「・・・そうかい」
ローチは呆れた感じで言った。
「アキ、近くに何人居そうだ?」
「・・・6人」
「分かるの?」
「あいつはあぁ見えても魔法使いだ。レーダーみたいな魔法が得意でな、敵の位置とか簡単に特定してくれる」
「魔法って便利だね・・・」
「マヤも修行してきたら?3年くらい」
「3年もハルと離れたくない!」
「そこか」
「ついでに勉強も嫌だ!」
「知ってた」
「喋ってないで行くぞ」
ローチにそう言われ、階段を降りる。
「通路クリア」
「・・・違う、廊下と同化してるのが3人いる。」
「また汚い真似を・・・どこだ?」
「そこ」
アキが指さす方向に銃撃を加えると死亡した事で魔法の効果が無くなったのか3人出てきた。
「まったく張り合い無いですわ」
「お前の出番はまだだ」
「・・・その角、5人隠れてる」
「ふふ、うふふ、ここは私に任せて欲しいですわ」
「・・・必要以上にちょん切るなよ」
「ふふふ」
カナは2本のナイフを取り出した。
・・・格闘でやる気かこの人
「援護お願いしますわね」
「分かった」
カナが走り出すと同時に廊下の角に数発射撃、頭を出せないようにする。
その数秒後、カナが廊下の曲がり角に消えた。
「あは、あはははは!!」
笑い声と共に聞こえるのは悲鳴か断末魔か・・・
「あーなったらもう手をつけられん・・・はぁ・・・」
「・・・お姉ちゃん怖い」
「あなたのお姉ちゃん、私も怖い」
マヤもドン引きしていた。
私もドン引きしていた。
だって廊下の角からそれ何のパーツ?って聞きたいような聞きたくないような物が飛んで出てきていたから・・・
「カナ!おい!だからバラすなって言ったろ!」
「あはははは!!」
「ダメだありゃ・・・」
絶対に敵にしたくない。
心の底からそう思った。
そんな事思っているとカナが出てきた。
・・・血まみれで。
「お前な・・・」
「ふふ・・・あはぁ」
「怖い!」
マヤが遂に言った。
いや私も言えるなら言いたい。
言ったら殺されそうだけど・・・マヤが今言っちゃったけど。
「あら、怖いなんて心外ですわ」
血まみれの格好に血まみれのナイフ2本持って目の前に出てきたら誰でも怖いって言うと思う。
「・・・後ろ」
「え?」
後ろを振り返ると刃物で切りかかろうとしている敵がいた。
狙いは後ろにいたマヤだった。
「マヤ!」
「お、やば」
マヤは冷静にそう呟いたと思ったら刃物を持った手の手首を掴み、捻る。
刃物を落としたところで空いている右手で拳銃をホルスターから抜いた。
「はい、終わり」
「え、マヤ・・・?」
こんな格闘する子だったっけ・・・
私はそんなことを思った。
「お父さんが格闘大好きでさ、何か私も一緒にやってたら覚えちゃったんだよね、あはは」
拳銃を相手の喉に押し付けたまま目線を逸らさずにそう言った。
「ハル、コイツどうする?」
「どうするって・・・」
どうしようかと思っていたらカナがマヤの掴んでいる敵に近づいた。
「どうするも処刑しかないですわね」
「え、ちょ・・・!」
カナは自分の拳銃を使って相手の頭を撃ち抜いた。
「・・・カナ、いい加減にしとけ」
「あらローチ。いつもの事ですのに」
「相手が何であれ、殺しを楽しむなと言われているだろ」
「ふふ、忘れてましたわ」
「・・・ダメだこりゃ・・・」
ローチは完全に呆れた感じであった。
その後もカナは敵を見つけては銃撃したりナイフで切りつけたり・・・しかも即死しない所を狙っていた。
もがいてる敵を見ては笑顔を浮かべているしこの人怖すぎる。
「あと何人だ」
「・・・最低でも20・・・待って、回復魔法を使っている敵を見つけた」
「じゃあそいつからですわね」
「・・・敵は正面玄関ホールを拠点にしてる。そこにあと全員。増援待ちかも」
「分かった、エコー。出番だぞ」
こくっと頷き、ミニガンを構えた。
正面玄関まではこの階段を降りたらすぐの所だ。
エコーが先に降りていった。
「こいつら片付けたら一眠りしたいよ・・・ふぁ」
「私もですわ」
「わ、私はちょっと眠れないかな・・・」
「・・・マヤと同意見・・・」
あんな光景ずっと見せられて寝ろと言われても無理だ。
「ねぇハル、帰ったらトムキャット飛べるようになってないかな」
「部品がまだ届かないって言ってたから・・・」
「あと何が届いてないんだっけ」
「レーダー・・・それの輸送とかにあと一ヶ月くらい何だって」
「あと一ヶ月はこんな仕事ばかりかな・・・」
「・・・そうだね」
敵は人のみを至上の存在とし、その他の種族は奴隷もしくは人の為に働くべきものだと考え、この世界を作った神は人であり人が世界を納めるべき存在だと信じている教団だった。
だから人の姿をし人より長く生きるエルフなどの種族を忌み嫌っていて見つけ次第殺せというのがその教団のやり方のようだ。
殺す以外にも捕まえて奴隷として売ったりなど外道としか言いようのない集団ではあったが・・・とはいえ、私達と同じ人を殺すという行為は気持ちのいいものではない。
「ハル、帰ったらさ。トムキャット直るまで新しい機体に乗らない?」
「それ・・・賛成かも」
「ありゃ、ダメ元だったのに」
「こんな至近距離で人を撃ったりするのはもう今回切りでいいよ・・・」
私とマヤでそんな話をしていたら下からミニガンの咆哮が聞こえた。
「仕上げだ」
ローチはそう言って下に下りた。
「・・・うわぁ・・・これ生きてる人いるのかな・・・」
エコーの足元にはまだ煙を出している金色の薬莢が落ちていた。
そして目の前には血の海・・・としか表現出来ない状況が広がっていた。
「・・・まだ何人か生きてる」
「なんだよまだ生きてるの居るのか・・・全くしぶといったらありゃしない」
「貴方みたいね、ローチ」
「うるさいサイコパスお嬢様」
「酷いわね」
「はぁー・・・さっさと終わらせるぞ・・・」
そう言うと同時に柱の影から何人か飛び出してきた。
「まだ元気なの残ってるじゃねーか全く・・・殺せ殺せ」
4人は銃撃を飛び出してきた連中に浴びせた。
私達は銃を構える気にもなれなかった。
この人達は場慣れしているのだろうが・・・私達には無理だ。
もう血の臭いで吐きそうだった。
「これで全部か」
「・・・まだあそこ、隠れてる」
「マジかよ」
アキの指さす方向に向かうと微かに緑色の光が見えた。
回復魔法特有の光だ。
「チッ・・・アイツか」
ローチはいい加減面倒臭いと言った感じの舌打ちをした。
というかこの人、殺しを楽しむなと言った割には嬉嬉として殺せ殺せと言ったり・・・めちゃくちゃだ。
「おい」
「ひっ!?」
そこには教団の人とは違う、普通の魔法使いの服装をした人がいた。
「や、やめ・・・私、教団に雇われて・・・!」
「雇われた・・・ね。なんだ、治療の途中か?」
魔法使いはこくこくと頷く。
よく見ると私達より一つか2つ年下に見える。
「じゃあ俺が治療してやるよ」
そう言ってローチは拳銃で先ほどまで治療されていた男の頭を撃った。
魔法使いは呆然としていた。
「治療終わりだ。さて、お前は雇われたから教団の人間じゃないと」
「何で・・・何で・・・!この人苦しんでたのに!」
「話を逸らすな。大体俺たちの仕事はコイツらの殲滅だ」
「この・・・人でなし・・・!」
「そりゃこっちのセリフだ。コイツらの所業を聞いた事くらいあるだろう。それなのに雇われてコイツらを助けた」
「お金に困って・・・でも・・・!」
「あー・・・でもとかじゃなくてだな・・・まぁいい、話は単純なんだよ」
ローチは拳銃に手をかけたまま話す。
彼は彼女の目を見たまま目線を動かなさない。
「要するに、お前は俺たちが撃った敵を治す魔法使いだよな?ん?」
「・・・?」
「・・・だったらお前も敵じゃん」
彼は素早く拳銃を頭に向ける。
「やめ・・・!」
私は体か勝手に動いた。
ローチに体当たりをした。
拳銃を発砲されたが弾は彼女を逸れて壁に当たった。
「何すんだ」
「何すんだってこっちのセリフだよ!この子が人を殺したの!?助けてただけなのに!」
「綺麗事か?そんなので生き残れるような場所じゃないぞ。それとも戦闘機に乗ってると綺麗事しか吐けなくなるのか?」
「この・・・」
山賊野郎め。そう言おうとした時だった。
「ハル!!」
マヤが叫んだ。
私はふと後ろを見ると魔法使いの女の子は近くに落ちていたナイフを私に向かって振りかざしていた。
「ほらな」
ローチはそう言うと同時に2発発砲した。
弾丸は胸を撃ち抜いていた。
「だから甘いんだよ」
「あ、あ・・・」
確かに・・・甘かったのかも知れない。
ただ彼女はこのままだと殺されると思いナイフを手にした・・・と考えたかった。
「ハル、大丈夫?」
「・・・うん、大丈夫」
マヤが心配そうに聞いてくれる事が何故か嬉しかった。
「終わりだな。ミスフィット1-2よりミスフィット指揮官」
《1-2、おくれ》
「屋敷での戦闘終了。全て片付いた」
《了解、村も片付いた。死傷者無し、そちらの損害送れ》
「損害無し」
《了解、1-2はそのまま村に戻れ》
「了解、おわり」
ローチは事後報告を終えて立ち上がる。
「よし、カナ、アキ、エコー。このまま村に向かう。ハルとマヤはこちらでの事を頼んだ」
「・・・」
「・・・嫌われたな。まぁいい」
「では、ごきげんよう。また会いましょう」
そう言って4人は屋敷を出ていった。
・・・2度と会いたくない。
「行こっか」
「そうだね」
カエデのいる部屋に向かう。
屋敷に入ってきた人数は100以上、庭で倒した数が60人・・・屋敷内で残り全部・・・
「カエデさん、終わったよ」
部屋に入ると3人は無事そうだった。
「ほ、ホント?」
「うん、4人は先に村に帰ったけどね」
「そ、そっか・・・じゃあ後片付けしないと・・・」
「私達も手伝う」
「え、いいの?」
「汚したのは私達だから。」
「じゃあ・・・お願いしようかな」
その後は落ちた薬莢などを片付け、残った遺体は庭に集めカエデが供養していた。
何だかんだ穴の空いた壁を埋めたりしている家に2日は立っていた。
「終わったー!疲れた!」
最後の壁を埋め終わりマヤが背伸びをした。
「眠い・・・」
「ハルずっと眠れてなかったみたいだもんね」
「マヤのいびきがうるさいから」
「んな!?マジで!?」
「嘘だよ」
私は戦闘の事を思うと眠れなかった。
直接私が撃ったのは2人だ。
狙撃で撃った司祭と廊下で出会わせた敵・・・
気持ちのいいものでは無かった。
「マヤ・・・ちょっと仮眠してくる」
「うん、了解!」
でも眠気も限界だ・・・カエデが貸してくれている寝室に向かいベッドに倒れた。
私はそのまますぐに眠りについた。
「・・・ル、ハルー!」
「ん・・・」
「晩ご飯!食べたら帰るよ!」
「え・・・?」
時計を見ると17時。
私が寝たのは確か10時過ぎ。
お昼も食べずに寝てたのか・・・
「ほら、いこ!」
「うん・・・ふぁ・・・」
マヤに手を引かれて食堂に向かう。
私はその最中にもう銃を握るのは魔獣相手にだけにしよう・・・帰ってトムキャットが治ってなかったら治るまでに何か新しい飛行機を買おう・・・
そう思っていた。というかそう決めた。