高度20000フィートの大空で   作:イーグルアイ提督

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新年早々、凍った路面で5秒くらい滑って女の子座りみたいな格好になってコケた作者です。
誰も見てなくて良かった・・・


東へ

「ハンター921、滑走路17への着陸許可を願います」

 

《ハンター921、テキサスタワー。着陸を許可します》

 

やっと帰ってこれた・・・その気持ちでいっぱいだった。

もう2度とあんな仕事やりたくない。

 

「あはは、ハル、すごい疲れた顔してるよ」

 

「実際疲れたよ・・・」

 

「お疲れ様、下りたらゆっくり休もうよ」

 

「そうしたい・・・」

 

肉体的にも精神的にも疲れた三日間だった。

そんな話をしながらマヤはヘリを着陸させ、格納庫前に移動した。

 

「お疲れ様、私はエンジン切ったら降りるよ」

 

「うん、ちょっとトムキャットの様子見てくる」

 

「はーい」

 

私はF-14のある格納庫に向かった。

 

「おじさん」

 

「ん?おお!嬢ちゃん!待ってたぞ!朗報もあるぞぃ!」

 

「朗報?」

 

「驚け!なんとじゃな、レーダーが届いたんじゃ!」

 

「え?あと一ヶ月は届かないって・・・」

 

「それがじゃな、ワシの知り合いにF-14乗りのパイロットが居たんじゃがそいつが引退するってことでな、部品取りでF-14をワシが買い取ったんじゃよ。D型で状態もかなりいいしな!」

 

「それでレーダーも・・・」

 

「そうじゃ!まぁ料金は機体を買い取った分があるからちょっと高くなるけどな」

 

「いくら?」

 

「まー増えても60万って所じゃな。」

 

「ん、分かった」

 

「お金は大丈夫なのか?」

 

「報酬でエルフのダイヤモンド貰った」

 

「おお!これがそれか!」

 

私はダイヤモンドを取り出して見せる。

 

「ワシは宝石の魅力は良く分からんが・・・でも良い値が付きそうじゃな」

 

「うん、今から換金してくる」

 

「おー!そうか!ちなみに修理費交換費はしめて3400万って所じゃな」

 

「分かった、これ換金したら払えるよ」

 

「待っとるぞぃ!」

 

そんな話をしていたらマヤがこちらに来た。

 

「おまたせー!トムキャットの様子はどうだった?」

 

「明日から飛べそうだよ」

 

「え?レーダー届いたの?」

 

「うん、明日はちょっと別の街に行ってみない?リリアも連れて」

 

「いいね!テストフライトも兼ねて!」

 

「そういう事」

 

「早速明日から飛ぶのか、じゃ、燃料とオイルはサービスでやっとくわい!」

 

「ありがとおじさん!」

 

マヤがそうお礼をいい、ダイヤモンドを換金しに向かった。

 

「しめて・・・5000万って所ですね」

 

「ご、ごせんまん!?」

 

「はい、かなりいい品ですね」

 

まさかこんな値段が着くとは・・・

私は小切手を受け取り、ちかくの銀行からお金を受け取る。

そのままおじさんにお金を渡していつもの宿に向かった。

 

「今日はもうゆっくり休もう」

 

「そだね」

 

「銃・・・どうしよう」

 

背負いっぱなしの小銃をどうするべきか悩む。

トムキャットに詰める大きさではあるが・・・

 

「まぁ何かあった時のために取っとこうよ」

 

「そうだね、もしもの時・・・いや、もしもの時は運命を共にするからいいや」

 

「せめてそれは私の同意の元で・・・」

 

「私と一緒に飛んでる時点で同意してると見てる」

 

「やめて!まだ死にたくない!」

 

「絶対に死なせないから大丈夫」

 

「・・・イケメンかよ・・・惚れてまうやろ・・・」

 

なんて話しながら部屋に入る。

荷物を適当な所に起きベッドに横たわる。

 

「疲れた・・・」

 

「ねぇ、お風呂はいろ!」

 

「いい時間だしそうしよっか」

 

外は暗くなり始めていた。

明日は直ったF-14で飛ぶ。

そのために疲れを取っておかないと。

 

「はぁー・・・あったかい・・・」

 

「うん・・・」

 

「ん・・・あれ?ハル、なんかでかくなってない?」

 

「え?」

 

「何か一ヶ月前と違う気がする・・・」

 

「いや・・・ちょっと待って・・・どこ見てるの」

 

「胸」

 

「即答か」

 

「何で!?何食べたらそうなるの?!誰かに揉まれてるの!?」

 

「何を言い出すの・・・てか、揉んできてるのはマヤでしょ。寝てる時に寝ぼけて」

 

「んにゃぁぁぁ!!なんでそんな美味しい事を覚えてないんだ私ー!!!」

 

「むしろ忘れてて」

 

二日に1回くらいのペースで寝ぼけてベッドに潜り込んでくる・・・。

 

「私、先に出るね」

 

「はーい」

 

湯船から上がり体を拭いて着替える。

もう寝たい・・・。

 

「明日は・・・とりあえず東のほうに行ったことあまり無いしそっちかな・・・あ、そうだリリアにメールしとかないと・・・」

 

彼女も誘って東の方に小旅行と言った感じで飛ぼうと思っていた。

確か、東の方には古い城などが立っていて空から観光するのに最適な所だった。

 

「これでよし・・・ふぁ・・・」

 

返信を待っているといつの間にか寝てしまっていた。

 

「・・・ん・・・?」

 

朝、誰かがベッドに座っている感覚がして目を覚ます。

うっすら目を開けると本当に人が座ってケータイをいじっていた。

私はビックリして飛び起きる。

 

「うわぁ!?」

 

「あれ?リリア」

 

「あれ?じゃないわよ!」

 

「なんでここにいるの?」

 

「あんたがメール送ってきて返信したのに何も返さないから!てか、起きなかったら起こしに来てって書いてたでしょ!」

 

「あー・・・そんな事書いたかも」

 

私はベッドから起き上がって洗面所に向かった。

 

「それで、今日はどんな仕事するの?」

 

「今日はしないよ。ちょっと東に飛ぼうかなって」

 

「トムキャット直ったの?」

 

「うん。レーダーも換装してもらえた」

 

顔を洗いながらそんな話をした。

時間は朝の10時。

 

「あ、そういえばマヤは?」

 

「私が9時くらいに来たけど入れ違いでどこか行ったわよ。朝ご飯買ってくるとか何とか」

 

「珍しいね」

 

「ハルが爆睡してるから起こすに起こせなかったんだって」

 

「・・・」

 

悔しい、マヤにそんな事言われる日が来るなんて。

 

「まぁもうそろそろ帰ってくるんじゃない?」

 

「1時間くらい経つからね」

 

なんて話してたらドアが開く。

 

「ただいまー!あら、ハル起きたの?」

 

「うん、おはよ」

 

「おはよ!爆睡だったね!」

 

「疲れてたから・・・」

 

「まぁあんな事あったしねー・・・とりあえずはい!朝ご飯!ついでにリリアのも買ってきたよ!」

 

「え?私のも?」

 

「うん、ついでにね!」

 

「ありがと・・・どれ貰ったらいいの?」

 

「適当にお店でパン買ってきたから好きなの取っていいよ!」

 

「じゃあ私は最後に残ったのでいいわ」

 

「じゃあハルからで!」

 

「うん、ありがと」

 

私は無難にとクロワッサンにした。

2人もそれぞれ好きなパンを取り朝食にした。

 

「そーいえばハル、いつ頃から出発するの?」

 

「んー・・・とりあえず食べ終わったら」

 

「アバウトね・・・」

 

「トムキャットはいつでも飛べるから」

 

「あ、私のミグの燃料まだ入れてないや・・・」

 

「何しに来たの?」

 

「メールの返信もしないで寝てるあんたを起こしに来たのよ!というか、なんで私が一緒に飛ぶのOKする前提なの!?」

 

「リリアは優しいから」

 

「え・・・そ、そう?」

 

「うん。ちょろい」

 

「それせめて私に聞こえないように言うべきじゃないの?!」

 

「いいから早く燃料入れて来いこのメス豚め」

 

「喧嘩売ってんの!?」

 

「ま、まぁまぁ・・・とりあえずハルはケンカ売らない!」

 

「新年の大安売り」

 

「煽るな!」

 

マヤに怒られた所でやめとこう。

 

「リリア、待ってるから燃料入れておいで」

 

「始めからそういう風に言ってよ・・・とりあえず食べたら行ってくるわ。集合は格納庫?」

 

「うん。そこで」

 

「分かった」

 

リリアは食べかけていたメロンパンを食べきり部屋から出ていった。

 

「じゃ、私達も準備?」

 

「うん、そうしよ」

 

いつものフライトスーツに着替えて私服は最低限だけ小さめのアタッシュケースにしまう。

あとは小銃やらを持って準備完了だ。

 

「ねぇハルー・・・もうちょっと大きい荷物積みたい・・・」

 

「無理言わないで。これでもギリギリなんだよ」

 

「私は!年頃の女の子として!オシャレしたいの!」

 

「じゃあSu-34でも買う?」

 

「え・・・ほんと?」

 

「嘘に決まってるでしょ」

 

「・・・」

 

マヤが珍しくしょぼーんとしていた。

 

「・・・簡易輸送ポッドなら取り付けれるからそれならいいよ」

 

「ほんと!?今度はほんと!?」

 

「ほんと。正直私も荷物詰める何か欲しかったから」

 

「やった!ハル大好き!」

 

「・・・暑い・・・」

 

マヤに抱きつかれてそのままベッドに押し倒される。

今日は少し気温が高いせいか暑い。

 

「おじさんなら在庫持ってそうだし聞いてみようか。どうせ機体下部は大体何も積んでないから」

 

確か、増槽を改造して500kg程度なら積める輸送用ポッドを作って売っていたはずだ。

値段も大したこと無かった。

 

「それじゃいこ!」

 

「うん」

 

部屋を出て格納庫のあるギルドに向かう。

久々の空だ。

楽しまないと損だ。

 

「そういえばさ、ハルってアムラーム搭載用の改装キット買わないの?」

 

「何で?」

 

「そりゃあれってアクティブレーダーホーミングでしょ?スパローのセミアクティブホーミングに比べたららくじゃない?」

 

「・・・」

 

確かにそうだ。

対象を命中までロックオンし続ける必要があるスパローと1度ロックオンして撃ったらあとは自由に回避行動を取れるアムラームではアムラームのほうが楽だし命中率も高い。

 

「だけど・・・私は人に向かって撃ちたくないから」

 

「?」

 

「魔獣相手ならスパローで十分って事だよ。アムラームは対戦闘機に真価を発揮するでしょ」

 

「まぁ・・・ね」

 

「AIM-9X改装キットならいいよ」

 

AIM-9Xとは私達が普段使っているAIM-9Mと同じ系統のミサイルだが機動性や命中率が桁違いのタイプだ。

魔獣の中には突然目の前に出てきてドッグファイトになる事も少なくなく生き物という事もあり機動性が戦闘機とは全く別物だった。

遠距離からなら一方的に攻撃できるが至近距離となると難しいものがあった。

だがこのAIM-9Xなら高機動で、機体を改修すれば使えるオフボアサイト機能でこちらの視線を合わせるだけでロックオンしてくれる機能のおかけで魔獣を正面に捉えなくても攻撃できるようになっていた。

 

「着いた」

 

「だね!じゃあ愛しのトムきゃんの所へ!」

 

「誰の許可得て愛しのなんて言ってるの」

 

「えーと・・・ハル?」

 

「許可してない。マヤは主翼パイロンに吊るして音速を超えて飛行する刑にする。」

 

「やめて!謝るからやめて!」

 

そんな事しながらトムキャットの近くに行く。

初めてトムキャットを見た時と同じように綺麗になったトムキャットがあった。

私は少しでも早くコックピットに座りたかった。

 

「ハルー!」

 

そんな事思ってたら名前を呼ばれて振り返る。

そこにはリリアがいた。

 

「もう準備いいの?」

 

「うん。リリアは?」

 

「燃料補給と飛行前の点検は終わったわ。いつでも大丈夫よ」

 

「分かった、私も今から点検して飛べるようにするよ。終わったら機内の無線で呼ぶから」

 

「分かった!」

 

リリアはフルクラムのほうに走っていった。

私は機体の周りをくるっと周り、異物や異常がないか触って点検もした。

コックピットは事前に整備員が点検してくれていたので大丈夫そうだがやはり自分で見たかったので乗り込んでスイッチ類やディスプレイの点検もした。

後席にはすでにマヤが乗り込んでいた。

 

「早いね」

 

「だって私の家みたいな場所だし!」

 

「そうだね。レーダーとかお願いね」

 

「うん!」

 

「あ、そうだ。輸送用ポッド。」

 

私はその事を思い出しおじさんの元に行く。

そしてそのまま輸送用ポッドを購入して機体に搭載した。

値段も2万程度で安いがそれでも500kgまで搭載可能ないい品だった。

 

「お待たせ」

 

「輸送用ポッド買ったんだね!」

 

「うん。マヤも欲しがってたし忘れないうちにね。さてと・・・」

 

私もコックピットに座り、ヘルメットをかぶる。

そのまま無線をリリアに繋ぐ。

 

「リリア」

 

《ハル?もう大丈夫?》

 

「うん、私からトーイングカーで引っ張り出してもらうからその後で」

 

《了解》

 

「マヤ、最終点検。ディスプレイは大丈夫?」

 

「大丈夫だよ。異常無し!」

 

「分かった。」

 

トーイングカーがF-14を引っ張っていってくれる間に私も最終点検を行う。

操縦系統、電気系統・・・油圧、燃料・・・大丈夫。

格納庫から外に出るとそこには雲一つない青空が広がっていた。

 

「絶好のフライト日和だね!」

 

「うん」

 

今すぐに飛びたい。

そんな気持ちが私の中を埋め尽くしていた。

 

「マヤ、エンジンスタートするよ」

 

「OK!」

 

順番にスイッチを押していき、エンジンをスタートさせる。

タービンの回る音が心地よい。

隣にはいつの間にかMIG-29も出てきていた。

横からもタービンの回る音がした。

 

「エンジン・・・異常なし」

 

その時、リリアから無線が入った。

 

《ねぇ、ハル。そう言えばなんだけど、管制呼び出す時のコールサインどうしたの?》

 

「あ、伝え忘れてた。二機編隊だしエンジェル0-1と0-2だよ」

 

《あんたの所のコールサインね・・・了解よ》

 

「不満?」

 

《いいえ、天使・・・なんてハルに似合わないコールサインだなって》

 

「決めたのマヤだよ」

 

《そうなの?》

 

「そーだよ!てか、ハルが天使じゃないとはどういう事だコノヤロー!!」

 

《そこか》

 

私はもはやツッコミもしなかったが・・・

まぁ、エンジェル・・・天使というコールサインは気に入っている。

そんな事してる間に2機ともエンジンが温まった。

 

「テキサスタワー。こちらエンジェルフライト。」

 

《エンジェルフライト、テキサスタワー。どうぞ》

 

「2機編隊で、東方向への出発許可願います」

 

《エンジェルフライト、誘導路A、Dを経由して滑走路35に向かってください。》

 

「エンジェルフライト、了解」

 

スロットルを少し開きタキシングを始める。

 

「操縦翼面チェックするよ。右エルロンとラダー」

 

「チェック・・・異常なし!」

 

「左」

 

「OK!」

 

ラダーと操縦桿を動かして翼面をチェックした。

 

「エアブレーキ」

 

「チェック・・・OK!」

 

トムキャットはご機嫌なようだ。

チェックも終わり、滑走路に近づいてきた。

 

《エンジェルフライト、滑走路手前で待機。王国軍輸送機の着陸後滑走路に進入してください。ローリングテイクオフを許可します。》

 

「了解」

 

ローリングテイクオフとは滑走路内に進入したあと一時停止せずにそのまま離陸できる事だ。

 

「リリア、OK?」

 

《全部聞こえてるからOKよ》

 

「了解」

 

数分もすると目の前を巨大なAn-124が着陸していった。

大きな輸送機だ・・・。

 

「あれタイヤ何個あるんだろ・・・」

 

「さぁ・・・」

 

輸送機に見とれているといつの間にか輸送機は滑走路から出ていた。

 

《エンジェルフライト、滑走路に進入してください。離陸を許可します》

 

「エンジェルフライト、了解」

 

滑走路に入りスロットルを全開にする。

アフターバーナーも点火し急加速した。

 

「おぅふ・・・この加速は久々・・・」

 

「これ好き」

 

トムキャットはすぐに離陸可能速度に達した。

操縦桿を引いて機首を上げる。

 

「テイクオフ・・・」

 

すぐにリリアのフルクラムも離陸してきた。

少しスロットルを緩めてアフターバーナーを切る。

 

「テキサスタワー、エンジェルフライト。離陸完了しました。」

 

《テキサスタワー、了解。いい旅を》

 

「ありがとうございました」

 

管制への通信を終わり、高度を上げていく。

 

「ねぇ、ハル。せっかくだし少し低めに飛ばない?」

 

「低め・・・」

 

下を見ると綺麗な草原が広がっていた。

確かに低めに飛ぶのも面白そうだ。

 

「リリア、上がってすぐだけどこのまま降下、低空を飛ぶよ」

 

《あ、それいいわね》

 

「じゃあ・・・ディセンド、ナウ!」

 

機体を反転させて操縦桿を引く。

 

「ちょっ!急降下はお願いしてない!」

 

「ふふっ・・・」

 

《急降下ぁ!?》

 

リリアもそれに付いてくる。

傍から見たら空中戦に見えるだろうか。

なんて思いながら高度2000まで下がり水平飛行に移る。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・おぇ・・・」

 

「マヤ、女の子が出しちゃダメな声出てる」

 

「ハ、ァ・・・久々の・・・ハイGで・・・ぜぇ・・・」

 

「ふふっ・・・」

 

「な、んで・・・笑うの・・・ぜぇ・・・」

 

「息が整うまで変な動きしないから安心して」

 

「そういう問題じゃないよ・・・うぇ・・・胃の中のもの上がってきそう・・・」

 

「吐かないでね」

 

暫くマヤは息切れしていた。

 

「エチケット袋・・・」

 

「やるならキャノピー開けて外でして」

 

「死んじゃう!」

 

「もう直ったみたいだね」

 

「なんとかね・・・」

 

私は草原を見ながら300ノットで飛ぶ。

下には野生の羊や人畜無害な魔獣など色々暮らしていた。

 

「草原・・・気持ちよさそうだね」

 

「うん、何も無かったら寝転びたい」

 

「あはは、お昼寝したら最高かも!」

 

そんな話をしながら東へ飛び続ける。

すると前に何か黒い点のようなものが見えた。

 

「ん・・・?マヤ、何かレーダーに見える?」

 

「ううん、何も」

 

その点は数十秒もしないうちに何か分かった。

 

「あ、珍しい。ウィッチだ」

 

「え!?うそうそ!?」

 

黒い服を着て箒に跨り飛んでいた。

冒険者や勇者などの移動手段がヘリや航空機になりつつあるこのご時世で箒で空を飛ぶ魔法使いの数は減ってきていた。

 

「あ!ほんとだ!おーい!」

 

マヤはコックピットから手を振る。

ウィッチの女性もこちらに気づいたようで笑顔で手を振り返してくれた。

私は手を振る代わりに翼を振ってバンクで答えた。

トムキャットはすぐにウィッチを追い越した。

リリアも同じように手を振る代わりにバンクで答えていた。

 

「ウィッチって何だかカッコイイよね」

 

「うん、箒で空を飛べるってすごいよ」

 

「何年くらい修行したら飛べるんだろ・・・」

 

《私の友達、ウィッチになろうとしてるけど1年くらいで箒で飛べるらしいわよ》

 

「1年なんだ。5年くらいかかるかと思ってた・・・」

 

《西に500kmくらい行ったところに箒で飛ぶための技術を教えてくれる学校があるそうよ。友達もそこに行ってたけど・・・でも何か入ったらクソ虫だウジ虫だ教官には全てサーを付けて答えろメス豚とか色々言われて最初の頃は毎日泣いてたんだって》

 

「え・・・箒で飛ぶ技術を得るためなのに・・・?」

 

《しかも教えてくれるのってウィッチだから女性かと思ったらゴリゴリのオッサンで箒で飛んでる姿はヤバかったって言ってた》

 

「なにそれ・・・」

 

「まぁ・・・箒で飛ぶだけなら男性でも出来るらしいけど・・・」

 

好んで飛ぶ人は居ないとか。

何かどこだったかのポジションが悪いと痛くて乗れないって聞いた事が・・・。

 

《まぁ、戦闘機の免許取りに行くのが無難で簡単だったわよね》

 

「まぁね。飛行機乗れないと生きていけないし」

 

本で読んだが、異世界では飛行機の免許を取るのはとても難しく並大抵の事では取れないらしい。

だが、こっちでは街どうしが離れていてしかも地上は人にとって危険な魔獣がいっぱい・・・。

異世界では車の免許を持っている人が沢山だがこっちでは車よりも飛行機の免許のほうが多かった。

むしろ車は街の中を移動するくらいでしか使わず、大体の場合は街中を無人運行のバスが走っているので車の免許を持っている人は少なかった。

冒険者になるとまた話は別だが。

 

「あれ?ねぇ、ハル。あれ滑走路じゃない?2時方向なんだけど」

 

「え?」

 

突然マヤにそう言われマヤが示した方向を見る。

すると確かに飛行場のようなものが見えた。

なぜ森の中に・・・

 

「管制から呼び出してこないし無人なのかな」

 

「みたいだね」

 

「ねぇ、ハル、降りてみない?」

 

「んー・・・リリアどうする?」

 

《私は面白そうだから賛成ね》

 

「・・・じゃ、行こっか。休憩も兼ねて」

 

「了解!」

 

少しだけ右旋回して滑走路と平行に飛ぶ。

そしてさらに180°旋回して滑走路に着陸進入を始める。

滑走路にはうっすらと15という文字が見えた。

文字が掠れるほど前から放置してあるのだろう。

ただ、滑走路そのものは堅牢なのかひび割れなどはほとんど見えない。

 

「50・・・40・・・」

 

徐々に高度を下げてなるべく優しく着陸した。

ただやはり、ひび割れがないとは言え、放置されていた滑走路。

着陸した後にかなり機体が揺れる。

 

「格納庫があるみたいだからそこまで移動しようか」

 

《了解》

 

普段より遅めにタキシングして格納庫前を目指す。

ふと管制塔を見上げると窓ガラスは割れ、近くには錆びて朽ち果てた航空機用のタンクローリーがあった。

 

「何か掘り出し物とかありそうだね!」

 

「こんな堂々と滑走路があるんだよ。もう残ってないと思うけど」

 

「やっぱそうかな・・・」

 

格納庫前に停止してエンジンをカットする。

 

「う・・・んー!」

 

マヤは早速背伸びをしていた。

 

「マヤ」

 

「何?」

 

「鉄砲」

 

「え?わっ!!」

 

すぐ下にいたマヤに小銃を投げる。

一応何がいるか分からないから自衛手段が必要だ。

 

「ハル、この格納庫あける?」

 

「うん。」

 

マヤは格納庫の扉を開けようと扉を調べに行った。

 

「あら、格納庫あけるの?」

 

「うん、何かいいものあるかもだってさ」

 

「そうかもね。見た感じ・・・この飛行場って魔王軍との戦闘に使ってた飛行場みたいだし」

 

「そうなの?」

 

「こんな放置されてる飛行場なんて他にないわよ。まだ色んなところに野戦飛行場として使ってた所が何ヶ所もあるんだって」

 

「へー・・・じゃあ昔はここから魔王軍と戦うために戦闘機が・・・」

 

「今みたいにジェット機じゃなくてレシプロ戦闘機だけどね」

 

「それもロマンあっていいと思う。たまにおじいちゃんパイロットとかはレシプロ機で旅をしてたりするし」

 

「そうね・・・でもあのレシプロエンジンの音っていいわよね。何か昔ながらって感じで」

 

「・・・私はタービンエンジンのほうが好きかな」

 

「あら、残念だわ」

 

なんてしてるとマヤが何かを見つけたらしくこっちに向かって走ってきた。

 

「開ける方法見つけた!」

 

「ほんと?」

 

「うん!見てて!」

 

再び格納庫に走っていく。

私達もそれを歩いて追いかけた。

 

「元気ね」

 

「元気すぎるけど」

 

「ハルはあの子とどれ位一緒に飛んでるの?」

 

「えっと・・・確か、私が戦闘機に乗り始めたばかりの時に一緒に飛ぶ人募集みたいな張り紙みて知り合ったから・・・5年くらい?」

 

「結構長いのね」

 

「まぁね」

 

なんてしてると大きな音がして格納庫の扉が開き始めた。

 

「おー、開いた」

 

ゆっくりと開く扉。

すると中には布のかかった飛行機のようなものがあった。

プロペラのような形も見える。

 

「何これ」

 

「わーい!おったからー!」

 

「いや・・・宝かどうか分からないから」

 

マヤは早速布を剥ぎ取り始めていた。

すると・・・

 

「ワンッ!!」

 

「うわぁ!?なに!?」

 

突然の鳴き声。

振り返るとマヤを威嚇してる犬がいた。

 

「わ、わんこ?」

 

犬は唸りながらマヤを威嚇していた。

 

「犬種・・・柴犬?」

 

「柴犬ね・・・可愛い・・・」

 

くりんっとした尻尾が愛らしい犬で頭が良いので街でもよくペットにしたり旅の仲間にしてる人もいた。

 

「わ、私は敵じゃないよー、怖くないよー」

 

マヤはそっと手を伸ばしてみた。

するとその柴犬はマヤに近づいて匂いを嗅ぎ始めた。

 

「可愛い!」

 

横でリリアが興奮していた。

でも確かに可愛い。

 

「くぅーん・・・」

 

犬はマヤにそう鳴きながら擦り寄っていった。

 

「え、なにこれ可愛い!!ほら、これ食べる?」

 

「ワン!」

 

クッキーをポケットから取り出すと犬は元気に吠えた。

そして美味しそうに食べる。

 

「懐かれてる?これ」

 

「懐かれてるわね」

 

マヤは笑顔で柴犬を撫で回していた。

私はその間に飛行機を覆っていた布を剥ぎ取る。

 

「え・・・これ・・・」

 

「・・・零式艦上戦闘機・・・」

 

レシプロ機乗りの冒険者ならヨダレを垂らして乗りたがる機体・・・異世界の日本という国が作ったレシプロ戦闘機だ。

魔王軍との戦闘では圧倒的な機動力を武器に敵の翼竜を撃墜し、すぐに制空権を確保したそうだ。

しかもよく見るとこの機体は異世界から何らかの理由でこちらに送り込まれたオリジナルの機体だった。

零式艦上戦闘機やほかのレシプロ機は需要と供給の理由でかなり高額で販売されていた。

その中でも零式艦上戦闘機は小回りが効き、航続距離も長い事で人気の機種だった。

そしてその異世界から入ってきたオリジナルの機体は大金持ちのマニアからすれば是非ともコレクションしたい機体だった。

ほかにもBf109やP-51、スピットファイアなどのレシプロ戦闘機の異世界製オリジナル機はとても高額で取引されていた。

 

「ハル!これいいお金になるんじゃ!」

 

「うん・・・そうだけど・・・」

 

コックピットを覗くと当時の持ち主が残した物か、ナイフと拳銃、計器盤には写真と小さな手編みの人形が貼り付けてあった。

 

「これは・・・ここに残しとこう。」

 

「うん・・・そうね。」

 

一緒にコックピットを覗き込んでいたリリアもそう呟いた。

この零式艦上戦闘機も状態はいい方だが放置されていた結果かサビだらけでマトモに飛ばせる状態ではない。

 

「まぁ、こんなに思い出の品みたいなのが残ってなかったら売ってただろうけど」

 

「あんたね・・・」

 

役目を終えた老兵は静かに眠らせておくのがいいだろう・・・というのも理由ではあるが。

 

「マヤ、そろそろ行くよ」

 

「まって・・・きゃっ!あ、あははは!くすぐったいよ!」

 

マヤは柴犬に舐め回されていた。

 

「やめ、やめてってば!」

 

相当懐いてるようだ。

 

「ねぇハル・・・この子・・・連れていけない?」

 

「・・・言うと思った」

 

だが、別にトムキャットに乗せれないほど大きい訳でもない。

正直、私も柴犬は好きだから連れていきたいが・・・

乗るのは戦闘機だ。

高いGがかかった時にこの子は大丈夫なのだろうか・・・

 

「私が面倒見るからぁ!!」

 

マヤはどうしても連れていきたいようだ。

・・・まぁ・・・いいか。

 

「分かった、しっかり後席に乗せてあげて。私もなるべく激しい機動はしないようにするから」

 

「やったー!!よし!お前の名前を決めよう!」

 

マヤは犬を抱き上げて名前を決めようとしていた。

 

「うーん・・・何がいい?」

 

「いや、私に聞かないで」

 

「ちぇー・・・」

 

マヤは数分悩んで答えを出した。

 

「よーし!お前の名前はトマホークだ!」

 

「巡航ミサイルの名前はやめて」

 

ぺしっと頭を叩く。

だが・・・それを聞いた柴犬は喜んでいるのかキリッとした顔でお座りをしていた。

 

「・・・トマホークで決定みたいね」

 

「・・・」

 

「んふふー、トマホーク〜」

 

マヤは早速抱き上げて可愛がってるし柴犬も柴犬で嬉しそうな顔をしているし・・・良かったのかな?

 

「じゃ、出発しよっか」

 

「ワンッ!」

 

トマホークが元気にそう答えてくれる。

・・・仲間が増えて賑やかなフライトになりそうだ。

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