この前外で作業してて凍りそうになってた作者です(
「給油機はレーダーに捕らえてる?」
「うん、KC-10・・・えーっとコールサインはミルキー1だっけ」
「そうだよ。交信できる?」
「うん、さっき給油できるように調整したよ!」
「分かった、ありがと」
給油機まであと30マイル。
燃料はあと500km分程度だ。
「この空域・・・何もいないといいけど」
「武装だって心許ないからね。」
「旧式機相手なら対処できるけど・・・」
お世辞にもトムキャットは格闘戦に強いとは言えない。
どちらかと言うと相手が補足できない長距離から長射程ミサイルで狙い撃ちという戦法を得意とする機体だ。
もし敵が出てきてそれが格闘戦能力の高い戦闘機だったら・・・それが不安だった。
幸いにもレーダーには給油機以外の影は無かった。
「早めに給油すませよ」
「そうだねー・・・」
兵装だってAIM-9が2発とAIM-7が2発。
バルカン砲に600発。
最低限の装備しかない。
「給油機を目視・・・」
前方に特徴的な3発のエンジンを積んだ給油機KC-10が見えてきた。
「ミルキー1、こちらエンジェル0-1」
《エンジェル0-1、どうぞ》
「給油を求めます、後方から500ノットで接近中」
《ミルキー1了解、そのままの速度で接近してください》
「了解」
ゆっくりと慎重に高度を合わせて近づく。
空中給油はあまりした事がないため神経を使う。
「ハル、頑張って!」
「分かってる」
ゆっくりと近づき、KC-10からぶら下がっている給油口にトムキャットの給油プローブを差し込んだ。
《満タンですか?》
「満タンで」
《了解》
燃料計の目盛りが増えていくのを見ながら一安心した。
これなら余裕でテキサスにたどり着ける。
《エンジェル0-1、給油完了しました。》
「了解、ありがとうミルキー1」
すこし離れて給油プローブを格納、旋回して給油機から離脱した。
テキサスまではあと600km。
「トムキャットもお腹いっぱいになれたし良かった良かった!」
「うん、これで給油できないって言われたら燃料足りなかったよ」
なんて話をしているとレーダーから電子音が聞こえた。
「ん?」
「どうしたの?」
「えーっと・・・うぇ・・・レーダーに空対空目標・・・IFF応答無し・・・速度600・・・距離・・・10km・・・ヘッドオン!」
「10km!?なんでこんな近くに!?」
「雲の中にいたみたい!あ、まった・・・3機補足!相手は3機編隊!」
とにかく回避だ。
右に旋回して避けようとすると相手もそれに追従した。
「やる気だよコイツ!」
「敵・・・敵なの!?」
「わっかんない!」
そしてその敵とはすぐに交差した。
敵は真っ黒に塗られたMIG-21だった。
「フィッシュベッド!」
「武器は見えた?!」
「翼に短射程ミサイルっぽいのが・・・でも相対速度が速すぎてほとんど分かんない!」
3機のMigは旋回して後方に付いてきた。
「マヤ!急降下で逃げるよ!」
「了解!トマホーク乗せてなくて良かった!」
思いっきり操縦桿を押し倒し機体を降下させる。
マイナスGで若干気持ち悪くなった。
「敵は?!」
「まだ・・・後ろ!」
アフターバーナー全開で逃げる。
相手のミグは統率の取れたパイロット達のようだ。
「ハル!あいつら空賊だよ!」
「なんで分かるの!」
「この付近に真っ黒に塗られたMigが出るって噂あったからね!」
空賊・・・通りかかった輸送機や民間機を襲い身代金などを要求するならず者だ。
また、自らの腕を試すためや、腕のあるヤツはただ楽しむために通りかかった冒険者を襲う事もあった。
「なんでミグがこっちを見つけれたんだろ・・・」
「何か思い当たる事でもあるの?!」
私は逃げるので精一杯のため声を荒らげてしまう。
後方には空対空ミサイルを装備した戦闘機が3機。
恐怖で操縦桿を握る手が震える。
「ミグのレーダーは良くて20km程度しか探知できないはず・・・」
マヤは何か独り言を言いながら考えているようだ。
「ハル!ロックオン!」
「くっ・・・!!」
RWR・・・レーダー警戒装置から電子音が鳴る。
ロックオンされた音だ。
すぐにその音はミサイル警報へと変わる。
「撃たれた!後方からミサイル!」
「フレア!」
発射されたミサイルは熱源を感知して飛んでくる物だったため、フレアと呼ばれる高熱源体をばら撒く。
「空賊め・・・!」
ミサイルはフレアに突っ込んでいった。
私は減速しつつ急上昇して敵をオーバーシュートさせた。
敵機が目の前に現れる。
武装をAIM-9に選択しロックオンした。
「この・・・!FOX2!」
ミサイルは極至近距離から発射され相手が逃げる余裕も無く命中した。
エンジンに命中し機体が爆発する。
搭乗員は撃たれた瞬間にベイルアウトしていた。
「あと2機!」
味方を落とされて頭に来たのか再びロックオンしてきた。
だけど、1機撃墜するために急減速したおかげで相手が苦手とする低速域の戦闘に持ち込めそうだ。
こっちは低速になり主翼が大きく開いた。
低速域での機動性なら負けない。
ただ、短射程のAIM-9はすでに1発撃ってしまい、あと1発しかない。
AIM-7は2発あるがこの距離からでは撃てなかった。
私はさらに減速しつつバレルロール、ミグの射線から外れた。
相手は一撃離脱を図るためか加速をしていたためF-14を追い越していった。
きっと例え1機撃墜されてもまだ1機残っているためその1機が攻撃を仕掛けるチャンスがあるからだろう。
「ロックオン・・・FOX2!」
必中距離からサイドワインダーを放つ。
相手は急旋回で逃れようとしていたが無駄だ。
「スプラッシュ!」
「マヤ!もう1機!」
「右から来るよ!高度2000!」
相手のミサイルはこちらがヘッドオン状態だとロックオンできないようだ。
私は機首を相手に向ける。
「距離は?」
「5km!スパローは撃てないかも!」
「分かった」
私は加速して敵とすれ違うようにする。
相手の機関砲に注意しないと何発も食らえばタダではすまない。
「そろそろ機銃の射程だよ!」
「分かってる!」
射線から逃れるように左に上昇しつつ旋回した。
その時に発砲炎が見えた。
「外れてっ・・・!!」
願いが届いたのか機銃弾はトムキャットを掠めていった。
「このまま引き離してスパローで攻撃するよ!マヤ!」
「了解!」
相手が再びこっちの後ろを取る前に全力で離れる。
だが相手のほうが少し早かった、ロックオン警報が鳴る。
「後方、ロックオン!」
「くっ・・・相手も手慣れだね!後ろ見ててね!」
「分かってる!後方機銃が欲しいよホントにもう!!」
降下しつつ速度を稼ぐ。
その時、ミサイル警報が鳴り響いた。
「6時方向!ミサイル!」
「フレア!」
フレアをばら撒きながら眼下に広がる森の木を掠めるくらい低空に逃げる。
「ミサイルロック!また来るよ!」
「次から次へと・・・!」
再び警報が鳴り響く。
木に接触するギリギリの高度を飛んでいると目の前に太く背の高い大きな大樹が見えてきた。
「あの木を盾にするから!」
「うわぁ・・・あれなんか神秘的な感じするけど・・・」
「そんな事言ってる場合じゃないから!」
フレアはもうほとんど残弾がない。
今は何かを盾にしないとダメだった。
全速で木に向かい、木が盾になるように飛んだ。
ミサイルは当然木を避けるプログラムなど無いため真っ直ぐ木に突っ込んでいった。
「ミサイル、木に命中だよ!・・・あとで祟られませんように・・・」
「これで相手のミサイルの残弾は尽きたはず・・・」
後ろを見ると残弾が無くなったミグは離脱するように上昇していった。
「ハル、どうする?」
「私は空賊じゃない。逃げる奴まで撃ち落とす気はないかな」
「うん!やっぱハルらしいね!」
「なにが・・・あ、そういえばさっき何か思い当たる事がありそうだったけど」
「あ!そうそう!ミグのレーダーって私達ほどじゃ無いにしろ、そんな遠くまで探知できないでしょ?ましてや分厚い雲の中でどうやって見つけたのかなって」
「確かに・・・」
可能性は低いが私は一つ思い当たる事があった。
ただ空賊がそんなもの持ってるかという話だが。
「ねぇマヤ、もし相手に早期警戒機がいた場合ってどう?」
「うーん・・・それなら向こうがこっちを簡単に見つけて誘導してきたって説明が着くね」
「レーダーに影はある?」
「・・・実は前方200km、高度20000ftに1機・・・IFFは応答無しだよ」
「給油機か民間機の可能性は?」
「さっきまでそんな気がしてたけど、あのミグはまっすぐそっち向かってるよ」
「・・・もし相手が民間機ならあのミグの機関砲でも落とせるよね」
「うん、たとえ7mm機銃でも・・・迎撃する?」
「当たり前でしょ。もし民間機でそれを無視して何人も死んだら夢見が悪い」
「そうこなくっちゃね!」
「燃料はまだ余裕がある・・・行くよ!」
加速してミグの後を追う。
「あとちょっとでスパローの射程だよ」
「うん・・・」
操縦桿を握る手が少し震える。
さっきの2機は至近距離だったため脱出出来たのかどうか確認が出来た。
だけど今度は視界外戦闘・・・相手の状態をレーダースクリーン上でしか確認できない。
私は相手を殺したか殺してないかの確認が取れない。
「ハル、相手は空賊・・・どれだけの命を奪った相手か分かるよね」
「分かってる」
マヤのいう通り、相手は空賊。
ならず者だった。
そう言って今から相手を撃墜する事を正当化できればいいが、簡単ではない。
でも撃たないともしあれが民間機だったら・・・
私は民間機を守るためと言い聞かせ、発射ボタンに指を置いた。
「レーダー・・・ロックオン!」
「FOX1!」
翼のパイロンからAIM-7が発射された。
白い尾を引いて目標に向かう。
「着弾まで20秒・・・相手は気付いてない・・・RWR積んでないのかな」
「見た感じ・・・使い古した旧型機だったからね」
そんな話をしているとミサイルはすぐに目標に到達、敵の反応が消えた。
遠くに爆発閃光を確認した。
「脱出しててよ・・・お願いだから」
「ハル、もう一機はどうする?」
「・・・早期警戒機だったら何人乗ってる?」
「10人くらいじゃないかな。でもあれ一機だけじゃ何もできないし」
「うん・・・そうだよね。テキサスに向かおっか」
「そうしよ!」
再び進路を正してテキサスに向かう。
残りあと400km程だった。