高度20000フィートの大空で   作:イーグルアイ提督

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無慈悲はペンギン

「後ろ!!地味に速いよコイツら!!」

 

「こっちは500ノットだって言うのに・・・!」

 

魔女3人が食いついて離れない。

だが食いついているのは都合がいい。

その間にフランカーが早期警戒機を探してくれている。

 

「そのまま狙ってこい・・・そうすればこっちのモノなんだから・・・!」

 

危険だが敢えて逃げきれないフリをして飛ぶ。

ただそんな飛行の仕方に慣れてないので敵の攻撃魔法がギリギリで外れていく。

ほんの数センチで命中という時もあった。

 

「AWACSは見つけた?!」

 

《待って・・・レーダーコンタクト!》

 

「民間機かも知れないから長距離攻撃は禁止だからね!」

 

《分かってる!》

 

あとは撃墜を待つだけだ。

それにしてもこの魔女連中、対戦闘機なのに良く付いてこれるものだ。

高温の排気ガスを避けて真後ろにくっつかないし積極的にエアインテークを攻撃しようとしてくる。

航空機の弱点をしっかりと理解してるようだ。

 

「マヤ、もう1度フレア炊いたら急降下するからね!」

 

「りょーかい!!」

 

フレアを3発ほど発射してアフターバーナーに点火、急降下する。

機内に対地接近警報が鳴る。

 

「この辺りで・・・引き上げ・・・!」

 

4Gほどの重力を感じ少し気持ち悪くなる。

ただ、速度は乗った。

すこし引き離そう。

加速しながら逃げていると再び、敵の無線が聞こえてきた。

 

《敵戦闘機が接近している。貴様ら何を見ていたんだ!》

 

《え!?あ、クソっ!!フランカーが居ない!》

 

《私が追いかけるわ》

 

見上げると1人が離れていく。

今リリアを追いかけられるわけにはいかない。

 

「逃がさないから・・・今度はこっちの番だよ!」

 

反転して離れていく魔女を追いかける。

発砲はせずに高速で近くを追い抜いてやろう。

 

《マイ!そっちにホーネットが!》

 

《私はフランカーを追いかける、後ろはお願い》

 

《分かっ・・・クソ!速い!!》

 

何故私達だけに敵の無線が聞こえるのか分からないがこれは運がいい。

相手が何をしようとしているか把握できる。

 

「全部筒抜けだよ、間抜けめ」

 

数秒で目標を追い抜く。

近くを高速で追い抜いたため、衝撃波をモロに体に食らっていた。

 

《ちょっと、後ろはお願いって言ったわよ》

 

《速すぎなんだよ!》

 

《こちらバッドウィッチ!!敵戦闘機が更に接近!!お前ら何をしている!はやく接近する戦闘機を落とせ!!》

 

《ホーネットが邪魔で行けないんだよ!!》

 

《だったら体当たりでもなんでもして落とせ!!》

 

敵の怒鳴り声が無線から聞こえてきた。

どうやら連携が上手く取れていないようだ。

 

「チームワークならこっちの勝ちだね、ハル」

 

「うん。リリア、そっちは?」

 

《対象を目視!E-2よ!》

 

「分かった、撃墜して」

 

《りょーかい!!》

 

《このクソガキどもが!!さっさとこっちに来い!!この敵機に体当たりでも――――・・・・・・》

 

遠くで爆発閃光が確認出来た。

 

《撃墜!!キルマーク1追加ね!》

 

《バッドウィッチ!バッドウィッチ!!ちょっと・・・お父さん!!》

 

《ちくしょう!!》

 

《・・・私達の負けよ。》

 

《待てよ!まだ私は!!》

 

《ミカもパパもやられた。これ以上家族を失いたくないわ》

 

《クソッタレ!!》

 

その無線を聞かなかった事にして私達は上昇した。

魔女達もそれには付いてこなかった。

・・・家族だったのか。

私達が撃ったあの魔女も・・・。

 

「帰ろ、模擬戦は中止だよ」

 

《仕方ないわね・・・》

 

旋回して街への進路をとった。

 

「あの子に無線が聞こえてなくて良かったよね」

 

「うん・・・家族だったんだね・・・」

 

「襲ってきたほうが悪いけど・・・」

 

私が撃った魔女の事が脳裏に焼き付いていた。

でも戦闘機に乗っていく以上、人と戦わなくちゃいけない時もある。

納得するしかない。

 

「それにしても空中管制機と魔女がセットって新しいよね」

 

「ホントだよねー・・・」

 

本来は戦闘機の部隊を指揮したりする空中管制機が魔女を指揮するというは見たことがなかった。

 

「はぁ・・・真っ暗だね」

 

「真っ暗だけど・・・あ!ほら!星がきれいだよ!」

 

「ホントだ・・・」

 

「なんかハル疲れてる感じだね」

 

「ううん・・・大丈夫」

 

正直大丈夫ではないが・・・

何しろ仲間を守るためとは言え、人間相手に20mm弾をぶち込んだのだ。

嫌でも記憶に残ってしまう。

 

《はぁ・・・私も疲れた・・・》

 

「そういえばこの前もリリアと模擬戦したら賞金首が出てきたよね」

 

《うぐっ・・・!》

 

「あの時はトムキャット壊れて大変な目にあった」

 

《・・・》

 

「お金もすごいかかった」

 

《何よ!悪かったわよ!あの時はホント心から反省したんだから!!でも帰ったらギルドのいちばん高いメニュー奢ってあげるからもう許して!!》

 

「さすがリリアお嬢様!」

 

晩ご飯を強引に確保して街へ戻った。

今晩からペンギン迎撃に出る冒険者は基本的にギルド内で待機らしい。

かわりに食事やギルドの設備の温泉などは無料だと言う事だった。

 

「食事・・・無料じゃん」

 

「無料・・・だったわね」

 

「奢ってくれないから許さない」

 

「酷くない!?」

 

空港に着陸し、ホテルに預けていたトマホークを連れてギルドに魔女が出たと言う事とその時のガンカメラの映像を提出して情報提供の報酬を5万フェアリィドルほど貰った。

そしていざリリアにめちゃくちゃ高い料理奢ってもらおうと意気込んでいたらまさかの無料提供だった。

 

「ま、まぁハル、ご飯タダで食べれるわけだし・・・」

 

「マヤは分かってない。人のお金で食べるタダ飯ほど美味しいモノは無いって」

 

「ハル!?」

 

「・・・私最近ハルが怖い・・・」

 

なんて3人でワイワイ言いながらご飯を食べる。

 

「それにしても・・・暇だね」

 

「うん。迎撃まで待機だからね」

 

「ふぁ・・・トマホーク連れてきてて良かったわね」

 

「くぁ・・・」

 

リリアの欠伸に釣られてトマホークも大欠伸をしていた。

時間は深夜の1時。

周りの冒険者も所々寝始めていた。

いつ飛ぶかも分からないため、お酒は禁止と言う事でいつもは賑やかなギルド内が静かだった。

 

「温かいお布団で寝たい・・・」

 

「ペンギン来たらすぐ飛ばなきゃいけないんだから我慢する」

 

「うぅー・・・」

 

私もそろそろ眠くなってきた。

寝れるうちに寝てしまおう。

 

「マヤ、もう寝よ」

 

「ハルと一緒の寝袋入る!」

 

「狭いから駄目」

 

「やだぁ!ハルと寝るのぉ!!」

 

「駄々こねるなら40000フィートくらい高さからスカイダイビングさせるよ・・・水着姿で」

 

「それは普通に死ねる!!分かったよ・・・1人で寝るもん・・・ぐすん」

 

大人しく寝袋にくるまったのを確認して私も寝袋に入った。

疲れていたからかすぐに意識が飛んだ。

 

「ハル!!ハル!」

 

「ん・・・」

 

目を覚ますと周りが慌ただしい。

 

「来たって!今受付のお姉さんが!」

 

「ん・・・分かった。リリアは準備いいの?」

 

「私はいつでも!マヤを起こさないと!」

 

「分かった。リリアは先に格納庫に」

 

「分かったわ!」

 

「マヤ、起きて」

 

マヤを起こそうと揺さぶるとスピーカーからペンギン接近のアナウンスが流れた。

 

《フェアリィの南、200マイル地点でペンギンの群れを補足しました!冒険者の皆さんは直ちに離陸、迎撃に向かってください!》

 

200マイル・・・かなり近い。

ただ、写真を見る限り小型のミサイルという感じなのに200マイルも先から街を狙ってくる・・・。

射程だけなら巡航ミサイル並だ。

武器ではなく魔獣ではあるが・・・。

 

「マヤ、起きてってば」

 

「んー・・・?」

 

「よくこの中で寝れるね・・・」

 

「ふぁぁぁ・・・んにゃ・・・どしたの?」

 

「どしたのじゃない。ペンギン」

 

「え!?マジで!?」

 

「周りが慌ただしいんだから気付こうよ」

 

まわりの冒険者は我先にと格納庫に向かっていく。

撃墜数が多い人、もしくはそのパーティには特別報酬が支払われるからだ。

毎年特別報酬の内容は違うが今年は異世界から入ってきた新型航空機だと言う。

 

「さぁ、行くよ」

 

「ちゃっちゃと終わらせて朝ごはんだね・・・ふぁ・・・あ!トマホークは私達が帰ってくるまで待っててね!」

 

「わん!」

 

トマホークは分かりましたと言わんばかりにキリッとお座りをした。

私達はそれを見て格納庫に急ぐ。

 

「出遅れちゃったね!」

 

「まだ間に合うよ。フェアリィタワー、エンジェル0-1」

 

《エンジェル0-1どうぞ》

 

「エンジンスタートの許可願います」

 

《エンジェル0-1、エンジンスタートを許可。準備が出来次第、タキシングを始めてもらって構いません。滑走路35に向かってください》

 

「了解」

 

素早く必要なスイッチを弄り、エンジンをスタートさせる。

 

「0-2、リリア。聞こえる?」

 

《こちら0-2!聞こえるわ!》

 

「先に上がって。上で合流しよ」

 

《分かったわ!フェアリィタワー、エンジェル0-2。離陸許可願います!》

 

《エンジェル0-2、滑走路35より離陸を許可します》

 

爆音とともにフランカーが離陸していく。

私達もエンジンの回転数が安定してきた。

 

「よし・・・行こう」

 

《ガーゴイルフライト、滑走路進入を許可。続けて離陸してください。全機、離陸後は空中管制機の指示を受けてください》

 

次々と戦闘機が離陸していく。

空はまるで戦闘機の見本市だ。

 

「トムキャットで出られないのが残念・・・」

 

空にはトムキャットの編隊もいた。

その中に交じれて飛べたらどんなに楽しいだろう・・・。

そんなことを思いながら滑走路に向かう。

 

《エンジェル0-1、離陸を許可します》

 

「離陸許可、エンジェル0-1」

 

滑走路に入るとすぐにアフターバーナーを点火、急加速して一気に離陸する。

 

《こちら王国軍所属、空中管制機サンダーヘッド。迎撃に上がった航空機に告ぐ。現在、ペンギンは150マイルまで迫ってきている。数は400以上確認。》

 

王国軍のAWACSが出てくるとは・・・随分と大きなイベントだ。

滅多な事が無ければ冒険者に関わる事がない王国軍が空中管制機を派遣するなんて珍しい事だった。

 

《なお、撃墜スコアについてはこちらと地上管制で記録している。各員の健闘を祈る》

 

「やるからには1位を目指すよ。マヤ、リリア」

 

「おっけー!」

《そう来なくちゃね!》

 

なんて話してると後ろからトムキャットの編隊が近づいてきた。

腹にはフェニックスが4発ずつぶら下げられていた。

 

《トリガーより全機、槍を放て》

 

無線からそんな声が聞こえると同時にミサイルが連続発射される。

トムキャットは同時に複数の目標を攻撃出来る。

4機から4発。

計16発が発射された。

 

「先を越されたよ!」

 

「大丈夫、まだ慌てなくて」

 

私は加速して目標との距離を詰めていく。

武装はサイドワインダーが2発にアムラームが8発。

スパローが良かったのだが在庫が無いと言われて仕方なくアムラームを積んできた。

 

「それにしても相手が相手だからただの鴨撃ちだよねー・・・」

 

「もしかしたらマヤみたいにしぶといのが居るかも知れない」

 

「何それ酷くない!?」

 

「ふふっ、嘘だよ」

 

「私傷ついた・・・もうハルのおっぱいでも揉まないと生きていけない」

 

「そう。分かった。マヤをベイルアウトさせる」

 

「ちょっ!!嘘だから!!」

 

「本気だったらベイルアウトさせたあとにインテークに吸い込ませる」

 

「ひどい!!色んな意味でひどい!!」

 

なんて話してるとレーダーに目標が映る。

 

「マヤの処刑は後にしといて目標補足だね」

 

「処刑・・・後回し・・・怖い・・・」

 

「全部冗談だからしっかりして」

 

「うぅ・・・ハルが怖いよ・・・」

 

なんて言いながらもマヤはしっかりと武装の準備を進めた。

 

「どれを撃とうかな・・・」

 

レーダーには無数の光点が映っている。

 

「この集団は?50以上集まってるっぽいし・・・上手く行けば誘爆で2〜3匹はいけるんじゃない?」

 

「だね。それを撃とうか」

 

「了解!マスターアームON!」

 

「射程まではもうちょっと・・・」

 

武装をアムラームに選択して射程に捕らえるのを待つ。

遠くではすでに爆発閃光が確認できた。

先に上がった戦闘機乗り達が交戦を始めたようだ。

 

「始まったねー・・・」

 

「出遅れた」

 

「まぁほら!300万フェアリィドル手に入ると思えば!」

 

「まぁね・・・」

 

その時、HUDの表示が変わる。

ロックオンしたようだ。

ミサイルの最大射程でのロックオンだが相手は直進してくる魔獣。

発射しても問題無く命中するだろう。

 

「マヤ、1発撃って様子を見るよ」

 

「了解!用意よし!」

 

「FOX3」

 

翼から1発のアムラームが発射された。

白い尾を引いて目標に向かう。

 

「飛翔時間20秒・・・」

 

時計を見ながらそうつぶやく。

周りも射程に捕らえた機からミサイルが発射されていた。

 

《捕らえたわ!FOX3!》

 

リリアもミサイルを2発発射していた。

周りを確認しているうちにミサイルは目標に到達する時間になった。

 

「さて・・・当たるかな」

 

そう思った時だった。

レーダーから自分が発射したミサイルが目標と重なり消えるのと同時に見たことないほど大きな爆発が起きる。

レーダーからは無数の光点が消える。

 

「え・・・!?」

 

「な、なにあの爆発!!」

 

《こちらサンダーヘッド、エンジェル0-1の撃墜数150以上を確認。トップだ。》

 

《ちくしょう!あのラッキーガール、無慈悲なペンギンの亜種を落としたみたいだ!》

 

「・・・・・・」

 

あまりの出来事に言葉を失う。

 

《ついに来たのか・・・あの伝説のペンギンが・・・》

 

《あんなもの落ちたら街なんて消し飛ぶぞ!!》

 

伝説やら無慈悲やらの単語が飛び交い1体なんの事か処理できない。

それよりもなんだあの威力は・・・。

 

「・・・ハルって強運なんだね」

 

「・・・それは撃墜数トップってこと?」

 

「色んな意味で・・・」

 

勘弁してくれ。

心の底からそう思った。

これから住もうという街にあんなもの来たらたまったもんじゃない。

 

「とりあえず・・・トップだし、撃墜数稼ごうか」

 

「了解!」

 

加速して目標に向かう。

 

《ラッキーガールに離されるな!男の意地だ!負けるなよ!!》

 

《了解、ボス!》

 

後ろからは多種多様な航空機が追いかけてきた。

その時、予想もしてない無線が入ってきた。

 

《ちくしょう!!今年のペンギン、航空機を狙ってきやがる!!》

 

《グール3!ブレイク、ブレイク、ブレイク!!》

 

《こちらサンダーヘッド、ペンギンの速度が上がった・・・航空機を狙っているペンギンが・・・ダメだ、速い!!数は複数、複数だ!!避けろ!!》

 

《避けきれない!!》

 

《うわぁぁぁぁぁ!!!――――・・・・・・》

 

《スピアフライトがレーダーからロスト。フェアリィ、SARヘリを発進させてくれ。》

 

《こちらフェアリィタワー、ネガティブ。ヘリは飛ばせません》

 

無線から聞こえた内容はペンギンが空対空攻撃をしてきたという事だった。

動く物全てを攻撃する無慈悲なペンギン・・・

実際に、狙った相手には慈悲のかけらもない体当たり攻撃をしてくるのだろう。

すでにペンギンとの距離はかなり近くなっていた。

 

「リリア!狙われたら逃げて!!」

 

《分かってるわよ!》

 

《誰か助けて!!ペンギンが!!うわぁぁぁぁぁ!!!―――・・・・・》

 

数キロ先で航空機が炎に包まれた。

機動力はサイドワインダー並だ。

 

「どうしたら・・・」

 

《2匹編隊からすり抜けた!街に行くぞ!!》

 

《こちらサンダーヘッド、迎撃に向かえる機はあるか?》

 

《分かった、分かった!今から行く!》

 

ペンギンを撃墜した時の爆発と撃墜された戦闘機の爆発で空が黒い煙で暗くなっていく。

 

「ハル!ペンギンがこっちに!!」

 

「え!?」

 

よそ見をしてる間にペンギンが後ろに食いついて来た。

 

「しまった!」

 

《ハル、援護に!!》

 

「私は大丈夫!街に向かうのをお願い!!」

 

《でも・・・》

 

「私は大丈夫だから!」

 

《・・・分かった!》

 

コックピットのミラーで後ろを確認すると2匹が食いついていた。

 

「食いついたら離さない上に無慈悲な体当たり攻撃なんてシャレになんないよー!!」

 

「喚いてないで後ろ見てて!!」

 

「しっかり見てるから!!」

 

フレアを撒いてみるがまるで効果が無かった。

 

「生き物だから当たり前か・・・!!」

 

「近い近い近い近いぃぃ!!」

 

「後部機銃付けてくれたら200万出してもいいよ!!」

 

「冗談言ってる場合じゃないから!!」

 

「冗談でも言わないと気が狂いそうなの!!」

 

ミサイル警報は当たり前だが鳴らない。

だからまだ向こうはこちらを補足してるのかすら分からない。

いつまで追いかけられるのか・・・頭の中は恐怖でいっぱいだった。

 

「避けれますように・・・!」

 

そう神頼みして右に旋回しながら急降下に入ろうとした。

だが、無情にもペンギンは左翼のすぐ近くで爆発した。

連鎖するようにもう1匹も。

左のエルロンが吹き飛ばされた。

コックピットに警報が鳴る。

 

「被弾!被弾!!」

 

《ハル!!》

 

「大丈夫!陸地まで飛べるから!!」

 

「ハル!燃料が漏れてる!!」

 

「クソっ・・・!!」

 

陸地まではほんの数十キロ・・・。

 

「マヤ、トムキャットじゃなくて良かったね!」

 

「どういうこと!?・・・って、火災!第1エンジン出火!!」

 

「エンジンカット!滑空で陸地までは飛べるから!」

 

「分かった!ハルを信じるよ!」

 

ガタガタと揺れる機体で何とか飛び続ける。

幸い、ペンギンから距離を取れたので狙われる事は無さそうだ。

交戦空域から少し離れられた。

 

「街まで帰れそう?」

 

「・・・無理かも」

 

「ベイルアウトは?」

 

「・・・この際仕方ない。陸地に入ったら脱出しよう」

 

「分かった!リリア、私とハルはベイルアウトするから救難ヘリお願いね!」

 

《だ、大丈夫なの?!》

 

「借り物の機体だけど・・・仕方ないよ」

 

「こりゃあとで弁償だよね・・・」

 

「・・・その時はフェアリィから別の街にでも行こう」

 

「・・・そうだね・・・っと・・・電気系統がなんか・・・」

 

「うん・・・ヤバいかも」

 

HUDがついたり消えたりを繰り返している。

レーダーはすでに消えていた。

 

「ベイルアウト・・・今からする?」

 

「うん。でももう少し高度を下げる」

 

鳴り響く警報の中高度をなるべくゆっくりと下げていく。

エンジンの火災は何とか鎮火したが操縦桿の効きが鈍くなっている。

 

「高度・・・3000フィート・・・マヤ、脱出するよ!」

 

「りょ、りょーかい!」

 

私は脱出レバーを引く。

その時脳裏に昔見た悪夢を思い出す。

私は脱出出来てマヤが脱出出来ない悪夢・・・。

だがレバーは引いてしまった。

キャノピーが吹き飛ぶ。

 

「ッ!!」

 

そして強烈なGを感じながら打ち出される。

目を開けると回転しながら落ちていくホーネットと無事脱出出来たマヤを確認できた。

 

「良かった・・・」

 

《ハル!!》

 

「大丈夫、リリアは交戦を続けて」

 

《必ず迎えに行くから!》

 

「分かってる」

 

下を見ると森が広がっていた。

降りたあと座席部分を探してサバイバルキットを回収しないと・・・

脱出した高度が低かったため、地上にはすぐに着いた。

だがそこからが運が悪かった。

木にパラシュートが引っかかってしまった。

だが幸いにもすぐ目の前に座席があった。

 

「こんな時に・・・」

 

「ハルー!どこー!?」

 

「こっち!木の上!!」

 

大声でマヤを呼んだ。

 

「どこー?っていた!」

 

「降りれない・・・」

 

「ナイフで紐を切らないと!」

 

「分かってるけど・・・」

 

その肝心なナイフが座席の中なのだ。

携帯しておけば良かった・・・。

 

「どしたの?」

 

「ナイフがないの。マヤは装備回収してきてていいよ。私は何とかするから」

 

「大丈夫?」

 

「うん、大丈夫」

 

マヤが自分の装備を回収しにいく間に何とかパラシュートを体から外した。

 

「よっ・・・と」

 

木を滑るように降りた時に何かが足に当たった。

当たった場所が焼かれるように熱い。

 

「あっッ!?」

 

見ると細いが尖った木の枝が足に刺さっていた。

 

「痛ッ・・・!なんでこんな時に・・・!」

 

傷を抑えているとそこにマヤが戻ってきた。

 

「ハル!?大丈夫!?」

 

痛そうにしている私を見るなり走ってきた。

 

「だ、大丈夫・・・」

 

「大丈夫じゃないよ!血が!!」

 

痛くて目を開けれなかったが下を見ると小さな血溜まりが出来ていた。

 

「止血しないと・・・!!」

 

マヤは装備品から止血帯と包帯、消毒液を取り出した。

 

「ハル、言っとくけど痛いよ!」

 

「わ、分かってる・・・」

 

マヤは先に刺さっている枝を抜こうとしてくれていた。

正直、枝に触れただけでも痛い。

 

「いくよ・・・1・・・2・・・」

 

私は痛みを想像して目を強くつぶった。

 

「3!!」

 

「いッた、あああぁぁ!!」

 

「抜けた!もう大丈夫!」

 

「あッ・・・ぐぁ・・・い、痛い・・・よ!!」

 

「痛いっていうのは生きてる証拠なの!」

 

「分かってるよ・・・!」

 

激痛で涙が止まらない。

汗も吹き出てきた。

 

「ハル、ごめん、傷の位置が悪くてズボン履いたままだと包帯が巻けない・・・」

 

傷は右足のほぼお尻に近いところにあり包帯がかなり巻きにくそうだ。

 

「ズ、ズボン脱げ・・・っていうの・・・?」

 

「えっと・・・うん」

 

「・・・いいよ、どうせお風呂だってたまに一緒にはいるんだし・・・」

 

ズボンをずらして傷が見えるようにする。

まだ出血は続いていた。

 

「消毒はしたからあとは・・・」

 

マヤは優しく包帯を巻いてくれる。

 

「キツくない?」

 

「んっ・・・大丈夫」

 

「ホントに?」

 

「うん。ちょっとくすぐったいだけ」

 

すぐに包帯は巻き終わった。

 

「ハルの装備も回収してくるね」

 

「うん・・・お願い」

 

マヤは目の前にあった座席の収納部分から色々と持ってきてくれた。

 

「これ、使わないと思ってたのにね・・・」

 

「面倒くさがってトムキャットから積み替えてないなんて事してなくて良かったね!」

 

そう言ってマヤはPDWくらいのサイズにカスタムしたM4A1を渡してくれる。

 

「なるべく私が頑張るから!」

 

「うん、でも無茶はしないように」

 

「分かってるよ!」

 

マヤは私に方を貸して移動を始める。

 

「とりあえず開けた所に言ってヘリを待とう」

 

「そだね!」

 

私は食料や医薬品を詰めたバッグを背負って歩き始めた。

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