高度20000フィートの大空で   作:イーグルアイ提督

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我が家

ガンシップが暴れていた地域に戻ると残っていたのは焼け野原になった大地だった。

 

《総員、任務完了だ。帰投するぞ》

 

《了解、RTB》

 

・・・これ、下に動くもの残っているのだろうか・・・

なんてドン引きしながら旋回していた。

その時だった。

 

《こちらスプーキー、森の中に何か動いている》

 

「森?」

 

《旋回して確認する》

 

ガンシップが旋回を始めた瞬間、森の中から轟音を上げて斜め上に向かって何かが発射された。

 

「え!?」

 

《目標確認!》

 

《撃て!》

 

発射された飛翔体はみるみる上昇していく。

 

「ハル!追いかけよ!!」

 

「う、うん!リリア着いてきて!」

 

《りょ、了解!》

 

《エンジェル0-1!発射された飛翔体は巡航ミサイルだ!地上で残骸を確認した!》

 

「巡航ミサイル!?」

 

突然の出来事に頭が追いつかない。

いつの間に魔王軍はそんなものを・・・。

 

「ハル!巡航ミサイルは時速500ノットで飛行してる!今はブースターが切れて減速したよ!」

 

「了解、だけど・・・」

 

そのブースターで加速したせいでかなり離れてしまった。

スパローの射程外だ。

 

《ハル、私は他のが発射されないか警戒してきてもいい?》

 

「分かった。お願い」

 

《了解!》

 

《こちらラングレー、ガンシップより報告を受けた。巡航ミサイルが発射されたのか?》

 

「巡航ミサイルらしきもの・・・としか。今はブースターが切れて巡航に入ってる」

 

《それは魔王軍の物か確認できたか?》

 

「わからない。でも魔王軍の拠点から発射されたからそうかも」

 

《ヤツらいつの間に・・・》

 

いつの間に・・・と言っても技術流入が始まってもう100年近く経つ。

異世界の技術がすべて人類側ならいいのだがそんな上手い話あるわけがない。

魔王軍だってどうにかして異世界技術を手に入れるだろう。

それにそういった技術は高く買うはずだ。

貧困に困っている人が魔王軍の部隊に売ったりなどもあるだろう。

現に、銃火器程度なら異世界へ繋がっている小さな扉から吸い込まれてこちら側に送られてきていた。

それが森の中などにあり、たまに銃火器が落ちていることだってあった。

大抵は家庭用のゴミなどが吸い込まれてこちら側に送られてきているのだが・・・。

 

「ハル、もうすぐ射程に入るよ!」

 

「了解。ラングレー、撃ち落としていい?」

 

《待て、ミサイルの形状の確認を頼む》

 

「了解」

 

ミサイルに後方からゆっくりと近づく。

街まではあと150マイル。

まだ余裕はあった。

 

「マヤ、写真を撮ってラングレーに送って」

 

「了解!」

 

速度をミサイルに合わせて写真を撮った。

 

「見たことないミサイル・・・」

 

「うん・・・ずいぶん古い型みたいだけど・・・」

 

市場に流通している巡航ミサイルと違ってこのミサイルはまるで小さな飛行機だった。

昔の資料でこう言ったミサイルを見たことがあったので古いタイプだというのは分かった。

 

「よし・・・送ったよ!」

 

「じゃ、撃墜できる位置につこっか」

 

背後についてロックオンした。

すぐにラングレーから通信もきた。

 

《エンジェル0-1。対象はハウンド・ドッグと確認。かなり古いタイプのミサイルだ。だが弾頭はデカい。撃墜してくれ》

 

「了解」

 

ミサイルを発射しようとした瞬間だった。

ミサイルが急旋回を始めた。

 

「なっ!?」

 

まるで操縦されているかのような機動。

ミサイルがするはずない動きに戸惑った。

 

「追いかけないと・・・!」

 

ミサイルは降下しながら加速していく。

 

「ミサイルのくせして戦闘機みたいな動きを・・・!!」

 

ハウンド・ドッグはまるで戦闘機のように急旋回、急上昇を繰り返す。

 

「おまけに機動性もいいね!」

 

「マヤが撃墜してくれたら今夜のご飯奢ってあげる!」

 

「後席には操縦桿ないから無理かなー・・・」

 

「知ってる!」

 

下手に接近していたことと、ミサイルが思いのほか高機動なためなかなかロックオン出来ない。

 

「こうなったら減速して・・・!」

 

エアブレーキを開いて減速していく。

これで距離が開いた。

 

「サイドワインダーで・・・ロックオン!FOX2!」

 

翼からサイドワインダーを1発発射した。

戦闘機ではないミサイルにフレアなど搭載されているわけもなく、ミサイルは巡航ミサイルのエンジンを撃ち抜いた。

たがミサイルそのものは爆発せず、エンジンが脱落しグライダーのように降下していった。

下は1面の平原。

落ちても問題はない。

 

「ふぅ・・・ラングレー、巡航ミサイル撃墜」

 

《了解。よくやった。騎士団のヘリがあとで確認に向かう。ご苦労だった。報酬はテキサスのギルドに送ってある》

 

「了解」

 

《今回の働きは見事だった。それに見合う報酬を用意させてもらったよ》

 

「ありがと。ちなみに家以外に何をくれるの?」

 

《80万テキサスドルと、航空機1機だな》

 

「え!?飛行機も!?」

 

《複座の戦闘機だ。新しい型ではないが》

 

「どんな機体なの?」

 

《それはかえってのお楽しみだ》

 

「楽しみが増えたね!ハル!」

 

「うん」

 

どんな機体だろう・・・。

私はそれが楽しみで仕方なかった。

 

「ふぁ・・・疲れた」

 

時刻はもう夕方だ。

朝出たと思えばもうこんな時間だった。

 

「お腹すいたねー・・・」

 

「うん。今日は報酬の我が家でご飯だね」

 

「やった!ついに我が家だね!」

 

「うん、明日こそは家具を買いに行かないと」

 

「だね!」

 

明日の予定を立てながら滑走路に着陸した。

管制官の指示を受けて私達の格納庫に向かった。

それはいつもの整備をお願いしている横の格納庫であまり広くは無いがそれでも6機は格納できるサイズだった。

それに格納庫や駐機場はギルドから借りなくてはならなかったので経費もだいぶ浮く。

いい事ずくめだった。

 

「よし、停止・・・お疲れ様、マヤ」

 

「お疲れ様!」

 

トムキャットと降りるといつの間にか整備員のおじさんが近くに来ていた。

 

「あれ、おじさん」

 

「よく帰ったな嬢ちゃん!」

 

「まだリリアが帰ってきてないけどね」

 

「あの子はどうしたんじゃ?」

 

「もうすぐ帰ってくると思う」

 

「なんじゃ落ちたのかとおもったぞぃ・・・っと!嬢ちゃん喜べ!なんと新しい機体が届いたぞい!」

 

「ラングレーの言ってたヤツかな」

 

「なんじゃ、知っとるのか」

 

「まぁね。報酬上乗せって言ってたし」

 

「まったくいつの間にか腕を上げたのう」

 

「そんな事ないよ。賞金首だって1機しか落としてないし」

 

「そうか?嬢ちゃんギルドの撃墜スコア見てから言っとるのか?」

 

「ううん、最近見てない」

 

「撃墜スコアトップじゃぞ」

 

「え!?」

 

あまりの事にびっくりして大声を出す。

マヤはいつの間にかトマホークと遊んでいたが私の大声を聞いてこっちを振り向いた。

 

「い、いつの間に・・・!?」

 

「フェアリィでの撃墜スコアを加算したっぽいんじゃ。それでも賞金首1機、空賊のミグとハリアーを何機かと魔女を撃墜しとるじゃろ」

 

「あぁ・・・うん」

 

魔女撃墜については思い出したくなかったが・・・。

それでもこの街はまだ初心者が集まる街だ。

その中で撃墜スコアトップでもほかの場所にいったら下の下だろう。

 

「ま!とりあえずそんな話は置いといてじゃな!」

 

おじさんは手招きして歩いていく。

私もその後に続くとマヤもトマホークを連れて歩いてきた。

 

「新しい機体はこの中じゃ!」

 

おじさんの商売用の格納庫に連れていかれた。

中には布を被った航空機が。

 

「ぬふふ、驚くなよ・・・!」

 

おじさんは布を剥いだ。

中から出てきたのは・・・。

 

「フェ、フェンサー・・・」

 

Su-24MフェンサーD。

F-14と同じ可変翼を持つ戦闘爆撃機だ。

 

「どうじゃ!しかも改修されてて、本来は詰めないはずのAIM120AMRAAMやR-77が搭載できるぞぃ!それと・・・これじゃ!」

 

おじさんが指さすのは150mmはあるんじゃないかというくらい大きな口径のガンポッドだった。

 

「155mm榴弾砲を組み込んだガンポッドじゃ!しかもM982が使えるんじゃ!」

 

「M982?」

 

「GPS誘導の榴弾じゃよ。嬢ちゃん達がたまに積むJDAMの榴弾型って言ったらいいかの。とりあえずあまり高機動は無理じゃが爆弾より遥かに長射程からピンポイント爆撃できるぞぃ!まぁ欠点はこの砲を積んだらめちゃくちゃ重くなるのと砲弾は3発しか詰めないってとこかの。」

 

「ううん、充分だよ」

 

「砲弾はクラスター弾頭からフレシェットまでなんでもあるぞい!」

 

「分かった。ありがと」

 

私は今にも乗り込みたい欲を抑えていた。

F-14と同じ可変翼であり、それでももって爆撃機のように大きな胴体・・・まぁ戦闘爆撃機ではあるが。

トムキャットとは違う美しさを持った航空機だった。

一時期購入を検討していたが在庫がなく、王国軍で使用されているくらいしか見たことがなかったためかなり嬉しかった。

 

「ま、大切に使ってくれ!さて、ワシは嬢ちゃんの可愛いトムキャットでも見てくるぞい」

 

私はそれに返事をする間もなく機体に乗り込んだ。

 

「広い・・・」

 

トムキャットの縦列複座ではなく、この機体は並列複座。

横に広いため乗った時に広く感じた。

コックピットの機器も操作しやすい位置に配置されていて扱いやすそうだ。

私は座席に置いてあったマニュアルを持って機体から降りた。

 

「どう?ハル」

 

「いい。広々としてて」

 

「へー、そうなんだ」

 

マヤは少し悪い顔をして続けた。

 

「じゃあハル、初めての浮気・・・だね」

 

「え」

 

「この子に乗る時、生き生きとしてたよ?トムきゃんに乗る時くらい」

 

「あ・・・」

 

私は何故かとんでもない罪悪感に襲われた。

 

「マヤ・・・」

 

「ん?」

 

「私を殺して・・・」

 

「はぁ!?」

 

「トムキャットへの浮気は死を持って償う・・・」

 

「待って待って!ごめんって!ちょっといじってみただけだから!!」

 

「マヤのおかげで気づけた・・・私はクズ」

 

「そこまでか!!というか落ち着いてハル!」

 

「死ぬ・・・腹切る・・・」

 

私はナイフを取り出した。

 

「ちょっ待っ・・・!!生きろ!そなたは美しい!!」

 

なんてしてたらリリアがいつの間にか帰ってきていた。

 

「・・・なにこれ」

 

「ハルが突然ネガティブ思考に・・・!」

 

「死ぬ」

 

マヤに押し倒される形で押さえつけられていた。

 

「はぁー・・・マヤあんたこの子のネガティブスイッチ入れたでしょ」

 

「なんで分かるの!?」

 

「幼馴染なんだから。どうせ愛機から浮気とかそんな事じゃないの?」

 

「そ、そうなんだよ!冗談で言ったら!」

 

「私はクズ」

 

「ハルちょっと落ち着いて!!」

 

「マヤ、こうなったらもうどうしようもないから1時間くらい縛ってトムキャットのコックピットに乗せとけば大丈夫よ」

 

「縛るの!?」

 

「ほっとくとマジで死ぬわよハルは」

 

「なんてアンタはそんな冷静なの?!」

 

「これで4回目くらいかしら・・・」

 

「慣れっこなんだ・・・」

 

「まぁね」

 

その後、手際よく縛られてF-14のコックピットに3時間くらい監禁された。

寂しくないようにってトマホークも一緒にいてくれたがそもそもネガティブ思考になりすぎて何してたか全く覚えていない。

 

「・・・ちょっと、これ解いて」

 

「も、もう大丈夫・・・?」

 

「大丈夫だから解いて。お腹は空いたしトイレも行きたいの」

 

縄を解いてもらいコックピットから降りて少し駆け足でトイレを済ませた。

 

「ひどいよ、縛って放置は」

 

「だってほっとくと自殺しそうじゃない」

 

「私をなんだと思ってるの」

 

なんて話をしながら街の不動産屋に向かう。

ギルドから発行された報酬の明細書も持っていく。

 

「ま、まぁその話は置いといて!どんな家なんだろうね」

 

「うん、楽しみ」

 

「豪邸だといいわね!」

 

「お嬢様は言う事違うね」

 

「何よ!なんか嫌味な言い方ね!!」

 

「別に?」

 

「ケンカしない!」

 

「わん!」

 

トマホークが前足でペシペシ叩いてくる。

 

「ほらトマホークも怒ってるよ!」

 

「・・・この子ほんと頭良すぎない?」

 

「・・・私もそう思うわ」

 

「えー?賢いのはいい事だよねー」

 

「わぅ・・・」

 

なんてしてたら目的の不動産屋に着いた。

中に入るとおじさんが1人店番をしていた。

 

「いらっしゃい」

 

「報酬で貰った家の契約に来たんだけど」

 

「あー、評議院のな。この家だよ」

渡された家の写真と見取り図を見て目が飛び出るかとおもった。

 

「え・・・豪邸・・・?」

 

二階建ての石造りの家だった。

家そのものはそんなに大きくないのだが、家の裏にCH-47が駐機できる大きさのヘリポートと格納庫が着いていた。

・・・なんか裏がありそうで怖い。

 

「ハル!すごいよ!アパッチをここに駐機してられるよ!」

 

「ほんとね!VTOLでもいいわね!」

 

2人は盛り上がっているが・・・。

 

「ねぇこれ・・・事故物件とかじゃないよね・・・」

 

「ん?大丈夫だよ。誰も死んどらんし事件も起きてないんだが・・・まぁ・・・なんだ。」

 

「・・・何」

 

嫌な予感しかしない。

 

「いや、床下から何か謎の古代の遺物みたいなの出てきて掘ったヤツら全員死んだくらいだな」

 

「何それ!?」

 

「まぁなんだ。全員死んだが家では死んでないから事故物件じゃないぞ。あとその遺物はまだ埋まってる」

 

「怖いよ!」

 

マヤが大きな声で突っ込む。

 

「いやでも掘り当てて売ったらいいお金になるんじゃないかしら・・・」

 

「リリアはさっきの話聞いてた!?掘ってた人死んでるんだよ?!」

 

「まぁほっとけば実害ないんじゃない?」

 

「ハルはそんな不気味なものあっていいの!?」

 

「死にはしないから大丈夫」

 

「えー・・・」

 

マヤは不服そうだがこんな豪邸逃すわけにはいかない。

リリアは以外にも平気そうだったので2人とトマホークで嫌がるマヤを引きずる形で家に連れていった。

これで帰る家を手に入れれた。

明日こそは買い物だ。

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