高度20000フィートの大空で   作:イーグルアイ提督

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温泉旅行

「家だー!」

 

マヤははしゃぎながら門をくぐる。

空港から少し離れた場所に我が家はあった。

石造りのオシャレな家。

 

「いい家ね」

 

「うん、さっそく荷物入れようか」

 

街で借りた車に詰んだ荷物を搬入していく。

元々航空機で旅をする特性上、大して荷物はないから楽だった。

 

「寝室は・・・ここだね」

 

部屋を開けるとすでにマヤがベッドに転がっていた。

 

「早いね」

 

私は少し苦笑いしながら言う。

 

「私の寝室センサーを舐めたらダメだよ!そしてお布団ふっかふかー!」

 

「遊んでないで荷物の仕分け」

 

「えー・・・」

 

「トマホークも手伝ってくれて・・・あれ?トマホーク?」

 

さっきまで小さな荷物を咥えて運んでくれたトマホークが居ない。

ふと周りを見渡すといつの間にか寝室に置いてあった布団にダイブして自分のベッドを作り上げていた。

 

「・・・自分のベッドは大事だよね・・・」

 

「わふ!」

 

布団に顔を埋めながら返事をするように吠えるトマホーク。

 

「ねぇハル、お風呂は?」

 

「あぁ、そうだね。もういい時間だし入れとかないと」

 

「任せたよー」

 

「マヤも来る」

 

「やーだー!」

 

駄々を捏ねるマヤ。

 

「まぁいいじゃない。今日くらい」

 

「そうだそうだー!今日くらいいいじゃん!」

 

「はぁ・・・まぁマヤにはフェアリィで助けれもらったしいいか・・・」

 

ベッドで幸せそうにしているマヤを置いてリリアと風呂に向かう。

 

「お風呂はどこかしら」

 

「こっちかな」

 

なんとなくの勘で家を歩く。

そこそこ大きな家で部屋も多い。

大半を使う事が無いかもしれないが・・・

途中にあったリビングは大きな暖炉が置いてありいい雰囲気だった。

 

「ここかな?」

 

私は観音開きの扉を見つけて開けた。

中には脱衣所のような場所があったのでビンゴだ。

 

「ここだね」

 

「結構広そうね」

 

風呂場のドアを開けると大きな湯船があった。

湯船は木で出来ていていい香りがした。

お湯を張るスイッチは脱衣所にあり、なんと航空機のMFD(多機能ディスプレイ)を引っペがして貼り付けてあった。

温度やら量やらを調節でき、いろいろと確認できるシステムだった。

 

「MFD置いてるなんて凄いわね・・・」

 

「私もこれは予想外。」

 

お湯張りをすると壁側からお湯が流れてきた。

温泉みたいだ。

 

「温泉みたいね」

 

「私もそれ思った」

 

「そういえば温泉でも行きたいわ・・・」

 

「どしたの」

 

「いえ、確か北に行くとあるじゃない温泉で有名な街が」

 

「ホットウォーターだっけ?」

 

「うん、そこ」

 

たしかあそこの街の領主がそこそこの年の女性で自分の事をホットウォーターババアとか言ってたような・・・。

かなりユーモアな人だとは聞いているが。

 

「でも温泉か・・・いいね、明日にでもフェンサーの慣熟飛行って事で温泉旅行しようか」

 

「いいわね!」

 

「じゃ決定で」

 

寝室に戻るとマヤが気持ちよさそうに寝ていた。

 

「くー・・・」

 

「気持ちよさそうに寝ちゃって・・・」

 

幸せそうな寝顔までしている。

 

「これじゃ起こすの可哀想ね」

 

「うん。トマホーク・・・も寝てるね」

 

「ええ・・・ぷふっ、すごい寝顔」

 

トマホークは布団が相当気持ちいいのか熟睡している。

若干目が半開きなのが面白かった。

 

「とりあえずお風呂湧いたら入ろっか」

 

「そうね」

 

「それまで休憩ー・・・」

 

私もベッドに寝転んだ。

リリアもそのままベッドに寝転ぶ。

 

「あー・・・気持ちいい・・・」

 

「ほんとね・・・疲れが取れるわ・・・」

 

そのままいつの間にか意識を失っていた。

気づけば朝だった。

 

「んぁ・・・あ・・・朝だ」

 

寝ぼけた目を擦り起きる。

 

「あ・・・お風呂・・・」

 

入れたまま忘れていた。

たしか自動で止まるので溢れている事はないだろう。

 

「ふぁぁぁ・・・」

 

背伸びをして2人を見る。

まだ熟睡していた。

 

「まだ起きなさそうだし・・・」

 

とりあえずお風呂のお湯を抜いておかないといけない。

私は風呂に向かった。

 

「ふぁ・・・疲れ溜まってたんだなー・・・」

 

独り言を呟きながら風呂に入ると湯船からは温かそうな湯気がでていた。

 

「あれ・・・」

 

設定を確認すると一定温度を保つように設定されていた。

 

「そういうシステムか・・・じゃいいや朝風呂しよ」

 

1度寝室に戻り着替えを持っていく。

2人はまだ気持ちよさそうに寝ていた。

トマホークは起きてのんびりしていた。

 

「おはよ」

 

「わふ」

 

トマホークはお風呂に向かう私に付いてきた。

 

「どしたの?お風呂行くの?」

 

「わん!」

 

「そっか、じゃ入ろ」

 

脱衣所で服を脱いで中に入る。

トマホークも一緒に入ってきた。

 

「そういえばお風呂にまだ1回も入ってなかったよね」

 

「わん!」

 

「じゃあ私が洗ってあげる」

 

シャワーの前に私とトマホークが座る。

トマホークはこちらを向いて座っていた。

 

「そんなじっと見ないで恥ずかしいから」

 

「わう?」

 

いくら犬と言えど裸をじっと見られたら幾ら何でも恥ずかしい。

 

「シャンプーないから水洗いになっちゃうけど大丈夫かな」

 

少しぬるめのお湯でトマホークを洗ってやる。

トマホークは気持ちよさそうな顔をしていた。

 

「よしよし、気持ちいい?」

 

「わう・・・」

 

トマホークを洗っている時に私はふと思った事があった。

今まで気にしてなかった事だが・・・

 

「あれ、そういえばトマホークって性別何・・・?」

 

お腹を洗っている際に何かが手にあたってふと思った。

 

「わう?」

 

「・・・もしかして男の子?」

 

「わん!」

 

・・・男の子みたいだ。

 

「・・・トマホークはあっち向いてて」

 

「わう?」

 

「じ、じっと見ないで・・・ほんとに・・・」

 

犬でも異性と分かり余計に恥ずかしくなる。

 

「よし、終わり・・・私も洗わなきゃ」

 

私も体を洗って流す。

トマホークはいつの間にか湯船で泳いでいた。

 

「私も入ろ」

 

湯船に浸かるとちょうどいい温度だった。

心地よい温かさだ。

 

「ふぅ・・・」

 

天井を見上げているとトマホークが泳ぎながら突進してきた。

姿勢が楽なのか私の足の上に前足を乗せてリラックスし始めた。

 

「そこがいいの?」

 

「わん!」

 

「そっか」

 

そのまま10分ほどしたらトマホークは暑くなったのか湯船からでていた。

私も温まったので湯船から出た。

 

「お湯は・・・抜いとくか」

 

トマホークから抜けた毛が浮いているのでお湯は抜く事にした。

 

「トマホーク、おいで」

 

脱衣所に出てトマホークを拭いてやる。

さっぱりして気持ちよさそうだ。

 

「朝風呂もいいものだね」

 

着替えて寝室に戻るとリリアが起きてボーッとしていた。

 

「おはよ」

 

「あ、おはよー・・・」

 

「よく寝れた?」

 

「お風呂に入るの忘れるくらいには・・・ハルは今入ってきたの?」

 

「うん、トマホークと一緒に」

 

「そうなんだ。トマホークも良かったわね」

 

「わふ」

 

トマホークは自分の布団に帰って再び丸くなった。

 

「ごめん、リリア。トマホークとお風呂入った時にお湯抜いちゃったからお湯は無いよ」

 

「ううん、いいわよ。シャワー浴びてくるわね」

 

「それならマヤも起こして連れてって」

 

「りょーかい」

 

肩を叩くと目を擦りながら起きた。

 

「んー・・・」

 

「お風呂行くわよ」

 

「もーそんな時間ー・・・?」

 

「もうそんな時間」

 

「はーい・・・」

 

まだ頭が起きてないのかボケーっとしながら立ち上がった。

 

「じゃ、マヤをよろしく」

 

「はいはい、任せて」

 

寝ぼけて歩くマヤを見てもう1度ベッドに寝転んだ。

 

「温泉か・・・」

 

私は旅行の事を考えながらSu-24のマニュアルを開いた。

やはりトムキャットとは違う操作が多い。

 

「慣れるまでは時間がかかりそう」

 

そう思いながらマニュアルに目を通していた。

30分もすると2人が帰ってくる。

 

「ただいま」

 

「ただいまー!」

 

「おかえり、目は覚めた?」

 

「うん、最初寝ぼけてて気がついたら裸で知らない場所でお風呂入れられてたから心臓止まりそうになったけどね」

 

「それは寝ぼけすぎでしょ・・・」

 

「えへへへ・・・それより!温泉に行くんでしょ?」

 

「うん、慣熟飛行も兼ねて」

 

「じゃあ準備しないとね!」

 

「うん、リリアも準備して行こう」

 

「そうね」

 

機体に詰めるスペースは限られているので極力少ない荷物にする必要がある。

一応、簡易的な輸送用ポッドもあるので少々多くても問題はないが・・・。

 

「こんなもので・・・いっか」

 

私服と着替えだけでとりあえず大丈夫だ。

 

「2人ともOK?」

 

「おっけー!」

 

「いいわよ」

 

「それじゃ行こうか、トマホークもおいで」

 

「わんっ!」

 

空港に向けて出発する。

 

「そういえば温泉って何年振りだろ」

 

「そうだよねー・・・いつだっけ、ミヤコって街あったよね、異世界の・・・えっと日本風の街」

 

「三年前かな。その時振りだね」

 

「だね!」

 

車の中で色々と計画を立てながら空港に向かった。

空港につくと運航事務所にフライトプランを提出して格納庫に向かった。

 

「リリア、ちょっと時間かかるかもだけどごめんね」

 

「大丈夫よ!」

 

「じゃ、乗ろっか」

 

コックピットに乗り込んでマニュアルを開く。

 

「えーっとこれが・・・」

 

エンジンスタートの手順を空動作で実施する。

 

「なるほどね・・・ほんと使いやすいデザインだね」

 

「だね!あ、そうだ。自衛用の武装ってどうしたの?」

 

「R-73とR-77を2発ずつ。アクティブ誘導はあんまり好きじゃないんだけどね」

 

それにこの機体は戦闘爆撃機とはなっているが純粋な戦闘機ではない。

格闘戦になる前には逃げないと。

 

「よし、じゃあ行くよ」

 

「了解!」

 

「テキサスタワー、エンジェル0-1」

 

《エンジェル0-1どうぞ》

 

「エンジンスタート許可願います」

 

《エンジェル0-1、スタンバイ》

 

ほんの数秒後、許可が降りた。

 

《エンジンスタートを許可します。その後はタキシングを始めてもらって構いません。滑走路35手前で待機してください》

 

「滑走路手前で待機。エンジェル0-1」

 

もう1度マニュアルを見ながらエンジンをスタートさせる。

トムキャットとは違った音が心地よかった。

 

「回転数・・・よし、行こう!」

 

「うん」

 

いつもの縦列式ではなく並列式の座席なのでお互いの顔を見ながら会話できる。

旅客機に乗っている気分だ。

 

「今日は空いてるね」

 

「うん、珍しいよね」

 

「いつもなら戦闘機が何機か滑走路前にいるのにね」

 

「今日は私達だけみたいだね。運がいいのかな」

 

「だね!それよりもトマホークがなんかちょっと不満そうな顔してる」

 

マヤは苦笑いしながらそう言う。

いつもの座席ではないから座り心地がイマイチなのだろう。

不満げな顔だった。

 

「よしよし、そのうち慣れるから!」

 

「わぅん・・・」

 

マヤがトマホークを撫で回してるウチに滑走路手前に到着する。

 

《エンジェル0-1、そのまま滑走路手前で待機してください。タンカーが着陸します》

 

「了解」

 

空を見上げると大きな機影が見えた。

KC-767だ。

すでに最終着陸進入に入っているのでもう間もなく着陸するだろう。

スロットルを機体を動かせる程度に開いてブレーキを踏む。

 

「こう見ると旅客機だよねー」

 

「まぁ元が旅客機だからね」

 

給油機は何事もなく着陸し、滑走路から離れた。

 

《エンジェル0-1、滑走路に進入してください。離陸を許可します》

 

「離陸許可、エンジェル0-1」

 

ブレーキを離してゆっくり前進する。

 

「そのままローリングテイクオフで行こっか」

 

「ハルに任せるよ!」

 

「了解。リリア、先に上がってるね」

 

《了解、こっちももうすぐ上がるわ》

 

スロットルを目一杯開いてアフターバーナーに点火する。

急加速で機体はすぐに離陸速度に達した。

 

「テイクオフ・・・」

 

地面から離れていく。

目の前は大空だ。

 

「ランディングギア、アップ。マヤ、フラップ上げてもらっていい?」

 

「了解!フラップス、アップ」

 

《エンジェル0-1、フライトプランに従って飛行してください。安全なフライトを》

 

「了解。ありがとうございました」

 

離陸して進路を北に取る。

あとはリリア待ちだ。

 

「そういえばホットウォーターの天気ってどうだっけ」

 

「たしか晴れだったよ!でも道中で大雨だったかな」

 

「了解、リリア来たら高度をあげよっか」

 

「そだね!」

 

数分もしないうちにフランカーが編隊に加わる。

 

「リリア、いきなりだけど高度を上げようと思う」

 

《道中天気悪いらしいものね。了解よ》

 

「じゃあ30000フィートで」

 

《了解!》

 

「マヤ、レーダー見といてね。民間機居ると危ないから」

 

「ちゃんと監視してるから大丈夫だよー」

 

「了解、任せたよ」

 

操縦桿を引いて上昇する。

テキサスの近くはまだ快晴と言っていいほど天気が良かった。

 

「綺麗な青空・・・」

 

高度は30000フィートに近づいている。

ホットウォーターまでは予定だとあと2時間ほどだ。

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