高度20000フィートの大空で   作:イーグルアイ提督

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狩りの準備

「離陸前チェックリスト」

 

「フラップよし・・・えーっと・・・他のもよし!」

 

「了解」

 

「えーっと・・・ハル・・・あの・・・」

 

「なに?」

 

「怒ってらっしゃない?」

 

「・・・別に」

 

マヤは昨日の事で謝っているのだろうが・・・。

もうどうせ女同士だからいいやと思っていたのでたいして怒ってはない。

 

「ほんと・・・?」

 

「ホント。まぁ前にマヤには命を助けもらったし許してあげる」

 

「わーい!ハル大好き!」

 

「・・・タクシー中は抱きつこうとするのやめて・・・」

 

今日はテキサスに帰る日だ。

お土産も買い、今はテキサスに向けて帰るために滑走路に向かっている。

 

「帰ったらきっとトムきゃんが寂しそうにしてるね」

 

「たぶんね。でも帰ったら次は狩りに行くんだからね」

 

「分かってるよ!ライフルも買ったし楽しみだね!」

 

「うん」

 

私も狩りをするのは久々で楽しみだった。

狩り立ての獲物を捌いて大きな肉を豪快に焼いて食べる事を考えるとお腹が空いてきそうだ。

 

《エンジェル0-1、滑走路手前でホールド》

 

「滑走路手前でホールド、エンジェル0-1」

 

指示通りに滑走路手前に止まる。

リリアのフランカーも私の後ろに止まった。

 

《タワーよりエンジェル0-1。747の着陸後、滑走路に進入して待機》

 

「エンジェル0-1、了解」

 

ここから1分程度のところに747の機影が見えた。

 

「旅客機のパイロットっていうのも何か楽しそうだね」

 

「えー?私は戦闘機乗ってる方が好きだけどな」

 

「私もそうだけど、たまにはあんな大型機を操縦してみたいよ」

 

降りてくる747を見てそう言った。

民間機のパイロットになるには私達のような戦闘機の免許よりももっと難しい学校に入らなければならない。

旅客機パイロットの免許取得の過程は異世界と同じシステムを取っているらしく、並大抵の事では取得出来なかった。

それ故に旅客機パイロットは航空機を操縦する職業の中で1番のエリート職業だった。

何百人もの命を預かるのだから当たり前といえば当たり前だが。

 

「さてと、降りたの確認したし滑走路に入ろっか」

 

「だね!」

 

「リリア、横について来て。2機で上がるよ」

 

《りょーかい、フォーメーションテイクオフね》

 

「うん、私が左、リリアが右で」

 

《了解!》

 

フォーメーションテイクオフとは編隊を組んで離陸する事だ。

滑走路を半分ずつ使う形で離陸する。

 

《エンジェル0-1、0-2。離陸を許可します。離陸後は計画に従い飛行してください》

 

「離陸許可、0-1」

 

《0-2》

 

スロットルを目一杯開いて加速する。

十数秒で機体は地面から浮いた。

 

「0-1離陸」

 

《0-2、離陸》

 

《エンジェル0-1、0-2。良い旅を》

 

管制との交信を終わり巡航に入った。

ホットウォーターは観光地のため、空域が非常に混雑していた。

すぐに大型旅客機とすれ違う。

 

「んー・・・低空だと危ないか・・・」

 

「アプローチを待機してる航空機多そうだもんね」

 

「事故起こすわけにもいかないし、ちょっと気持ち悪くなるかも知れないけど急上昇するよ」

 

「そのほうが良いかも・・・どこまで上がる?」

 

「なるべくコースから外れたいから10000まで」

 

「りょーかい!リリアも聞こえてた?」

 

《聞こえてるわ、10000ね》

 

「じゃ、上昇で」

 

操縦桿を引いて迎え角40度まで引き起こした。

一瞬、強いGがかかる。

トマホークが突然のGに少し嫌そうな顔をしていた。

 

「トマホーク、大丈夫?」

 

「わぅ・・・」

 

「よしよし、もう変なことしないからね」

 

私は片手でトマホークの頭を撫でてやった。

高速で急上昇したのですぐに高度10000ftに到達した。

 

「ここから上に雲は無し・・・綺麗な青空」

 

私は空を見上げて呟いた。

 

「そういえばこの前読んだ小説に更に上のダークブルーの空は神秘的だって書いてあったよ!」

 

「ダークブルー・・・私は青黒い空は嫌いかな」

 

「えー?」

 

「なんだか吸い込まれそうな感じがして」

 

「んー・・・そうなのかな・・・」

 

「まぁでも綺麗だとは思うよ」

 

なんて他愛もない話をしながら順調に飛行を続けた。

久々だ、こんなに平和に飛べたのは。

 

「もうすぐテキサス管制圏だよね」

 

「うん、とは言っても着陸の前に交信するくらいだけど」

 

「旅客機は誘導したりしてくれるのに・・・」

 

「民間人と戦闘機乗りじゃ民間人のほうが優先に決まってるでしょ」

 

異世界の航空関係の雑誌を翻訳したものはよく出回っているが、異世界での航空管制はとても細かく規則なども細かく定められていた。

それに対してこっちの世界は民間機に対しては異世界と同様のシステムを取ってはいるが数の多い冒険者に対してはかなり雑だった。

管制は離着陸のみで行われ、空に上がってしまうとあとは自分の計画に従えばそれで良かった。

それに民間機の発着数は日に多くても5便程度であとは全て冒険者の航空機だった。

また着陸や離陸も緊急時を除き民間機優先のため、民間機の到着、出発時刻はタキシングの許可すら出ない事もあった。

 

「家に帰ったらとりあえずお土産開けないとね!」

 

「食べたいだけでしょ」

 

「えへへ、バレた?」

 

「早く食べたいオーラが買う時から出てた」

 

「ま、まぁほら、年頃の女の子ですし・・・」

 

「いくら年頃の女の子でも酒に酔って同性を襲ったりはしないと思うけどね」

 

「うぐ・・・て、てかそれ関係ないじゃん!」

 

「開き直り?」

 

「違う!でもごめんなさい!」

 

「素直でよろしい」

 

なんて話しつつ滑走路に機首を向ける。

 

「テキサスタワー。エンジェル0-1」

 

《エンジェル0-1どうぞ。》

 

「空港への着陸を求めます。現在地空港から南東20マイル」

 

《エンジェル0-1、確認しました。そのまま滑走路17に向かい飛行してください。》

 

「了解。リリアも続いて」

 

《りょーかい》

 

2機はゆっくりと高度を下げていった。

今日は風も穏やかで天気もいい。

それでももうあと2時間ほどで日没の時間だ。

 

「だいぶ空が赤くなってきたねー」

 

「日が落ちる前に帰れて良かった」

 

「そうだね!」

 

窓の外を見ながらそう言った。

ふと視線をトマホークに向けるとマヤの膝の上で気持ちよさそうに寝ていた。

 

「トマホーク、気持ちよさそうに寝てるね」

 

「うん、いい夢見てそうだよ」

 

「そっか。それにしても、よく戦闘機の中で寝れるよね」

 

「ハルの操縦が上手いんだよ!」

 

「褒めても何も出ないよ」

 

「えへへ」

 

「でも、本当に扱いやすい」

 

トムキャットに比べると機動性はないが、それでも安定感がある機体だった。

本当に飛ばしやすい飛行機だ。

 

「おっと、ハル、空港まで5マイルだよ」

 

「了解、タワー。こちらエンジェル0-1。空港まで5マイル」

 

《エンジェル0-1及び0-2。確認しました。滑走路17への着陸を許可します》

 

「着陸許可、エンジェル0-1」

 

あとは慣れた手順で空港へ着陸し格納庫にタキシングした。

 

「ん、くぅぅ・・・!」

 

「お疲れ様」

 

「お疲れ様、ハル!」

 

「お疲れ様、楽しかったわね」

 

「うん。じゃ、帰ろっか」

 

後のことは整備員に任せ私たち3人と一匹で家まで歩いた。

 

「ねぇマヤ・・・買いすぎじゃない?」

 

「えー?これでも我慢したほうなんだよ?」

 

マヤの手にあるのはお土産で買ったお菓子類。

チョコやらクッキーやらケーキやら・・・。

おかけで私が自分とマヤのライフルを持って帰っている。

・・・重い・・・。

 

「はぁ・・・マヤ、ちょっと持つからハルのライフル持ちなさいよ」

 

「ありがとリリア・・・重かった・・・」

 

「ごめんハル!」

 

「あとでお金請求する」

 

「勘弁してください!!」

 

荷物を分け合ったり旅の思い出を話しながら家に入った。

二日ぶりの家だ。

 

「ふぅ・・・ただいまっと・・・」

 

「おっふろー!」

 

マヤは真っ先に風呂を入れに行った。

トマホークもお風呂に行きたいのかマヤについて行った。

 

「ねぇハル、明日は狩りに行くの?」

 

「うん、そのつもり」

 

「じゃあバーベキューセット持っていかないとね!」

 

「あ、そうだね。でも私1回で良いから塊みたいなお肉を塩コショウだけで焼いて食べたい」

 

「あ!それ私もやりたい!」

 

「じゃあそのセットを持っていこっか」

 

なんて明日の予定を立てた。

まずはマヤのヘリを買うところからだが。

 

「移動はどうするの?」

 

「明日ブラックホークを買うよ」

 

「買うの!?」

 

「うん、マヤの機体で」

 

「あ、そっか。あの子ヘリパイだもんね」

 

「うん、ブラックホークは乗りなれてる機体だから」

 

昨日からブラックホークの話をするとマヤは目をキラキラさせて喜んでいた。

いままで私だけ好きな機体を飛ばせていたのだからマヤにも好きな機体に乗せてあげないと・・・。

なんてしていたらマヤが風呂を入れて戻ってきた。

 

「ただま!」

 

「おかえり。マヤ、明日はヘリを買ったらそのまま狩りに行きたいんだけど大丈夫?」

 

「うん、大丈夫だよ。ブラックホークなら操縦出来るから」

 

「じゃあライフルとか用意しましょうか」

 

私たちはガンケースにこの前買ったライフルを入れた。

それと、私とマヤはロッカーからAKを出した。

念の為の護身用だ。

 

「AKなんて使う?」

 

「念の為」

 

「そうそう!」

 

「私はこれだけでいいわ」

 

リリアはケースに99式小銃と弾薬を詰めていた。

私も弾薬とライフルのスコープをケースに詰める。

 

「あ、そっか。ハルのはスコープ付いてるんだよね」

 

「うん。弾薬も強力な338ラプアマグナム」

 

「じゃあ魔獣が出たらハルに任せましょうか」

 

「そこはリリアに全部任せる」

 

「何でよ!」

 

「なんとなく」

 

「ひどい・・・」

 

明日の準備をワイワイ楽しみながら進め、3人でのんびりと風呂に入った。

トマホークも付いてきて一緒に風呂に入っていた。

そして、トマホークの性別に気づいたリリアが顔を真っ赤にしてのぼせていた。

 

「ワンコなんだから気にしなくてもいいのにねー、トマホーク」

 

「わぅ・・・」

 

トマホークはマヤの太ももに前足を乗せてまったりとしていた。

そこから数分程度で風呂から上がり、旅の疲れもあってかスグにみんな寝てしまった。

気づけば朝だ。

 

「ん・・・ふぁ・・・」

 

時計を見ると朝の7時。

ちょうどいい時間だ。

 

「マヤ、リリア」

 

「んー・・・」

 

「くぁー・・・」

 

「起きて。朝」

 

「んにゃー・・・」

 

起きる気配がない・・・。

トマホークはもう起きて伏せてのんびりしていた。

 

「トマホーク」

 

「わぅ?」

 

「やれ」

 

「わん!」

 

トマホーク、満面の笑みでベッドへ飛び乗りふたりの上で跳ねだした。

 

「うわぁ!?」

 

「な、なになに!?」

 

「わん!」

 

「ト、トマホーク・・・」

 

「目覚ましトマホーク」

 

「名前だけのインパクトなら凄いわねそれ・・・」

 

確かに名前だけならインパクトがすごい。

 

「ほら、顔を洗って。準備して行くよ」

 

「はーい」

 

3人で洗面所に行き、歯を磨いて顔を洗う。

さっぱりしたら着替えて必要な荷物を持った。

 

「じゃ、行こっか」

 

「うん!ブラックホーク楽しみ!」

 

「トマホークはどうするの?」

 

「連れていくに決まってるでしょ」

 

「そうよね。トマホーク、行きましょ」

 

「わん!」

 

大荷物で街を10分ほど歩き空港に到着した。

今日は比較的涼しいから大荷物でも汗をかかなくてすんだ。

いつものおじさんの所に向かう。

 

「おじさん」

 

「おぉ、嬢ちゃん!」

 

「いきなりなんだけど、ブラックホークある?」

 

「ブラックホークか?それなら何機か在庫があるな・・・どうした?」

 

「1機買いたい」

 

「ほう、珍しいな」

 

「マヤの機体だからね」

 

「そうかそうか!分かったぞぃ!じゃあマヤ嬢ちゃん、こっちに来い!」

 

「あ、うん!」

 

「ハル嬢ちゃんはどうする?」

 

「私もちょっとヘリを見たい」

 

「リリア嬢ちゃんは?」

 

「私はトマホークと遊んでるわ」

 

「了解じゃ!じゃあ付いてこい!」

 

おじさんについて事務室のような所に向かった。

そしてカタログの様なものを出す。

 

「今の在庫はこの4機じゃな。ブラックホークじゃなくてシーホークでもいいなら7機はあるが」

 

「だって、マヤ」

 

「ううううぅ・・・悩む・・・」

 

カタログにあった機体はスタンダードなUH-60、空中給油用のプローブが着いたMH-60、30mm機関砲などが搭載されたMH-60DAP、捜索救難に特化し洋上迷彩という美しい迷彩色が施されたUH-60Jがあった。

 

「どれがいい?」

 

「値段は?」

 

「んー・・・そうじゃな。DAPは武装してるから600万ほどになるが他のはお得意様価格で300万でいいぞい」

 

「ほんと!?」

 

「ホントじゃホント。嬢ちゃんには儲けさせてもらってるからな!うははは!!」

 

「えっと・・・じゃあ・・・」

 

そしてマヤが選んだのはUH-60J。

 

「お!嬢ちゃんお目が高い!この機体はこの前量産され始めた新作じゃよ!」

 

「ふふん!でしょでしょ!この迷彩がカッコイイから選んじゃった!」

 

「中々良さそうだね」

 

この機体にも空中給油用のプローブが付いていて、増槽まで搭載されている。

それにホイストも付いているので何かあった時に誰かを助けられる。

捜索救難に特化した機体なだけある。

 

「嬢ちゃんの格納庫に10分ほどで届けてもらうから楽しんでくるんじゃぞ!あ、お金はどうする?」

 

「これでお願い」

 

私はカードを渡した。

 

「んむ、了解じゃ!」

 

「やったー!ハルありがと!!」

 

「いえいえ。じゃあリリアの所戻ろっか」

 

「うん!」

 

リリアの所に戻るまでにマヤはブラックホークに乗れる事が相当嬉しいのか私にキラキラとした目でブラックホークについて語ってきた。

 

「・・・でねでね!っと、もうこんな所まで・・・」

 

「マヤが熱く語ってくれたおかげで退屈しなくて良かった」

 

「ふふん!まだまだ足りないよ!」

 

「あらおかえり。買えたの?」

 

「うん。捜索救難機型のUH-60Jを」

 

「へぇ、捜索救難機・・・いいわね。人助けも出来そうだし」

 

「うん!これでリリアが落ちても助けに行けるね!」

 

「ちょっと縁起でもないこと言わないでよ!!」

 

なんて話していたら格納庫の扉が開く。

外から美しい青の洋上迷彩のUH-60Jがトーイングカーに引っ張られて入ってきた。

 

「わぁー・・・!」

 

マヤが今までに見たことないほど嬉しそうな顔をしてブラックホークを見ていた。

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