VRモードの臨場感半端ないですよね!
「チェック・・・よし、離陸前チェックリストコンプリート!」
「了解、エンジンスタート」
真新しいブラックホークのコックピット。
私とマヤがコックピット、リリアとトマホークはキャビンにいた。
「へぇー・・・グラスコックピットなのね」
「計器が見やすくていいよ」
必要な計器を弄りながらリリアと話す。
マヤは黙々とエンジンスタートの手順を実行していた。
タービンの回転数が上がり始める。
「第1エンジン始動・・・回転数、よし。第2エンジン」
「始動」
順調に回転数は上がっていく。
今回の目的地はテキサスの近くにある森だ。
またその森の中には昔の野戦飛行場が残されているためそこを拠点に使う。
「よし、出力安定・・・ハル、交信お願い!」
「了解。タワー、エンジェル0-1」
《エンジェル0-1、こちらテキサスタワー》
「東への出発許可願います。」
《テキサスタワー了解。そのままその場で離陸してもらって構いません。ただし滑走路上空の通過は禁止》
「了解、滑走路上空を避けます」
「よっし!テイクオフ!」
コレクティブピッチを上げていくと機体がフワリと浮いた。
そのまま機首を東へ向ける。
「じゃあ宜しく、機長」
「まっかせて!」
ヘリは滑走路を避けて空港施設の上空を通過してそのまま東へと向かう。
距離は40kmほど。
すぐの距離だ。
「低空でいい?」
「うん、すぐだし1500ftくらいで行こう」
「了解!」
高度を1500ftで維持して猟場に向かう。
「そういえば野戦飛行場ってまた前みたいに何か無いかな」
「何かって?」
「高く売れそうな物」
「あはは・・・さすがに無いんじゃないかな?」
「だよね」
外を見ながらそんな話をした。
あわよくば・・・とは思ったが。
「あ、ハル!あの森!」
「ん?」
キャビンのリリアが森を指さしていた。
森の中に野戦飛行場らしきものも見えた。
目的地だ。
「マヤ、11時方向目的地」
「りょーかい!」
機体を左旋回させて目的地に向かう。
「1度上空をパスして。障害が無いか確認する。リリア、銃を撃てる準備して」
「了解!何も無いといいわね」
「念の為」
マヤは高度を維持したまま速度を落とす。
リリアはキャビンのドアを開けて銃を構えた。
「あ、ハル。この機体FLIR付いてるから使ってみて」
「了解、いろいろ付いてるんだね」
「捜索救難機だからね!」
私はFLIR、赤外線探査装置を起動した。
それを使って飛行場を見てみたが熱源は何も無かった。
「OK、リリア。ドアを閉めていいよ」
「了解、一安心ね」
「着陸するよー!」
「了解、エプロンに直接的降りよ」
「分かった!」
「着陸地点に障害物無し・・・OK」
「周囲の監視お願いね!」
「了解、リリア、鳥とか居ないか確認お願い」
「了解!両サイド・・・クリア」
「りょーかい・・・」
マヤはゆっくりとヘリを降下させていく。
「高度200・・・障害無し・・・クリア」
「キャビンから両サイドも確認したわ、クリア」
「了解」
地面が近づいてきた。
ふと管制塔の方を見るとイノシシ型の魔獣がこちらを見ていた。
突進の体制を取っていた。
「マヤ、着陸中止!!」
「えっ!?」
私の言葉に反応してコレクティブピッチを上げた。
降下が上昇に変わる。
同時にイノシシ型魔獣が走ってきた。
「リリア!」
「任せて!」
キャビンのドアを再び開けて銃を構えた。
「みんな腹ぺこよね?」
「冗談言ってないで早く」
「何よ、ノリ悪いわね」
リリアは照準から目をそらすこと無くそう言った。
そして銃声が機内に響く。
「あら硬いわね」
「当たった?」
「頭に当てたけど・・・ダメね、硬いわ」
「私のライフル使って」
「了解、じゃあ借りるわね!」
「イノシシは?」
「頭に当たったせいかフラついてるわ。マヤ、ホバリングよろしくね!」
「はいはーい!」
マヤは機体をその場にピタッと静止させていた。
この子のヘリパイとしての技術は相当高い。
ずっと後席に乗っているのが勿体無いくらいに。
「ハル!1発使うわよ!」
「はいはい、いいよ」
後ろを見ると弾を装填して私のTAC-338を構えていた。
そしてさっきの99式小銃よりも重い音のする銃声が機内に響く。
「ヒット!やった、ヘッドショット!」
「目標は?」
「ダウン!」
「了解」
「ハル、着陸地点は?」
「ちょっと待って。リリアも索敵お願い」
「了解!」
もう一度FLIRを使って索敵する。
「一匹だけってわけでも無いだろうし・・・」
「・・・いた!ハル!管制塔のそば!」
「了解、リリア撃てそうなら撃って」
「了解!」
そしてすぐに銃声が響く。
「標的ダウン!338強いわね」
「旧式とは違うのだよ・・・なんちゃって」
「ひどいわね!ロマンがあるでしょロマンが!」
「冗談だよ。あ、リリア。次、格納庫のよこ・・・左側」
「確認・・・マヤ、もうちょっとだけ右に回頭してもらえる?」
「了解!どのくらい?」
「ほんのちょっと!」
「はいよー!」
少しだけラダーペダルを踏んで右旋回した。
それで射線に入ったのだろう、銃声が響く。
「ダウン!えーと・・・あとは・・・クリア?」
「まって、確認する。マヤ、少し上昇して2回か3回ほど低速で飛行場上空を違う角度でパスして」
「了解、角度は私が決めていい?」
「うん、違う角度なら何でもいい」
「りょーかい!」
数回上空を飛行して確認した。
今度こそクリアだ。
「今度こそクリア。着陸しよ」
「了解!」
周囲を警戒しつつ着陸した。
前にトマホークを拾った飛行場と同じような荒れ具合だった。
「3匹も狩っちゃったわね」
「うん。確かあのイノシシ型の魔獣は血抜きをしっかりすれば美味しいって噂だよ」
「あら、じゃあせっかくだし捌いてみる?」
「うん。結構大きいから時間かかるかもしれないけど」
「大丈夫よ」
「ハル!格納庫の中調べてきていい?」
「うん、いいよ。リリア、ごめん。機内からナイフ持ってきて貰っていい?」
「いいわよ。ハルは?」
「先にイノシシのところ行ってる」
「了解!」
私とリリアはイノシシを捌きに、マヤとトマホークが格納庫を調べに行った。
「はい、ハル」
「ありがと」
すぐにリリアがナイフを持ってきてくれた。
「結構大きいわね・・・」
「うん、結構大型だもん」
私はイノシシを捌き始める。
その時に血が飛び散って服に付いたりしてしまった。
・・・マヤに貰った可愛い服でなくて良かった。
あの子の事だから悲しんだだろう。
そんなことを思いながら作業をすること30分ほど。
肉を剥いでいた時だった。
「ハルハルハル!!」
「なになになに」
「こっち!こっちきて!!」
「ちょっと待って」
「こっちは私がやっとくからいいわよ」
「出来る?」
「これくらいなら」
「じゃあお願い」
私は早く来いと興奮気味のマヤについて行った。
そして格納庫の中に入る。
「どうしたのそんな興奮して」
「これ!これ見て!」
「え?」
マヤが指さした先にあったのは戦闘機。
しかもジェット戦闘機だ。
「え・・・何これ」
「でしょでしょ!」
「こんな機体見た事ない・・・」
それは複座型で翼が前進翼だがV字型になっていて大きなカナード翼、そして斜めに角度の付いた尾翼がある機体だった。
エンジンを見ると推力偏向型に見える。
「なんて戦闘機だろ・・・」
「分からない・・・でもこれ、もしかしたら異世界から送られてきた機体かも」
「まさかー!」
「でもこれ、見て」
戦闘機の機首と翼に円の半分が青で半分が白、その円内に星が描かれたマーク、OADFという文字も見えた。
「こんなマーク見た事ない」
「じゃ、じゃあこれって・・・」
「うん。異世界から送られてきたオリジナルの機体。しかもこんな所にあるってことはまだ見つかってない」
「すごいじゃんハル!」
「うん・・・でも・・・」
私は欲に駆られた。
冒険者はオリジナルの戦闘機を見つけた場合、任意で研究機関に届ける事も出来るし自分だけが使うという事も出来る。
ただ研究機関に届けた場合、莫大な報酬を得る事が出来た。
報酬金+研究が終わったばかりの新型機を貰えるという噂だった。
でも私は・・・。
「・・・これに乗りたい」
「言うと思った」
マヤは分かってましたといわんばかりの顔でそう言った。
私は早速コックピットに乗り込んだ。
つい最近ここに送られてきたのか真新しい機体だった。
しかもご丁寧にマニュアルまで一緒にセットになっていた。
ただ異世界語・・・英語だったが。
辛うじてこの機体の名前だろう『X-02S Strike Wyvern』という名前が読めた。
ストライクワイバーン・・・カッコイイ名前だ。
マニュアルはわかり易く写真で解説されていたため、エンジン始動や操縦は何とかなりそうだ。
「ハル、もしかして乗って帰る・・・?」
「当たり前でしょ」
「狩りは?」
「中止」
「ちょっと!?」
「冗談だよ。でも乗って帰りたい」
「そういうと思ってた」
「ごめん、わがまま言って」
「大丈夫!私もその機体カッコイイって思うし!」
「ありがと、リリアの所行って手伝って貰ってきていい?」
「うん!」
マヤは格納庫からトマホークを連れて出ていった。
「すごい・・・ほとんどスイッチがない・・・」
あるのは無線とエンジンをスタートさせるために必要なスイッチのみ。
あとはパネルのみだった。
最近入ってきた新型機がそういうシステムだったという話を思い出して私もそんな機体を入手出来たことにちょっと優越感を覚えた。
「乗り心地もいい・・・」
私は一通りコックピットを満喫してリリアたちの所に戻った。
もう捌き終わって肉を焼く準備が整っていた。
「あ、戻ってきた」
「ただいま」
「いいわね、新しい機体見つけたらしいじゃない」
「うん、X-02Sストライクワイバーンって名前」
「名前が分かったの?」
「マニュアルがあったから」
「ストライクワイバーン・・・いい名前ね!ねぇ、今度私も乗せてもらえない?」
「いいよ、明日か明後日に慣熟飛行したいから」
「じゃ、私はたまには地上にいようかな?」
「いいの?」
「うん、たまにはね!」
「じゃあ今度は後席にリリアお願いね」
「うん!あ、準備出来たしお肉焼きましょ!」
「そうだね!」
一つ一つ串に刺してさっき火をつけた焚き火で焼く。
「豪快でいいわね」
「くぅーん・・・」
「トマホークのもあるから、待っててね」
「わん!」
トマホークはヨダレを垂らして目をキラキラさせていた。
「私たちのは塩コショウで・・・」
そこから1時間ほど3人と一匹で新鮮な肉でBBQをした。
イノシシ型魔獣一匹だけで食べきれないほどの量だった。
「はぁー・・・お腹いっぱい・・・」
「私も・・・」
「わぅん・・・」
「トマホークもお腹いっぱい?」
「わん!」
「そっかそっか」
火を消して後始末をした。
「さて、どうする?」
「どうするって・・・ハルから早く飛びたいってオーラが出てるけど」
「・・・出てない」
「出てるよ」
何故分かった・・・。
一刻も早く乗りたかった。
「まぁ今日はお腹いっぱいだし、いい物も見つかったし帰りましょ」
「うん、そうしよっか」
そしてマヤとリリアがヘリに、私はストライクワイバーンに乗り込んだ。
《先に上がって帰ってて!私たちはゆっくり帰るから!》
「了解、じゃあお先に」
トムキャットやフェンサーとは違ったエンジン音を響かせてタキシングした。
それにしても操作が簡単で扱い易い。
必要な操作はすべてタッチパネルで行うようだった。
兵装などはスティックとスロットルにあるスイッチのみで操作出来た。
「じゃあお先に」
《はーい!気をつけて!》
滑走路に入ってスロットルを開く。
加速性能はかなりいい。
すぐに離陸した。
「機動性も高い・・・」
ある程度の速度になりふとコックピットのミラーを見たらこの機体の特徴を目にした。
翼が畳まれ、尾翼も水平に可変して機体が矢のような形状になった。
減速すると畳まれた翼が出てきて前進翼機となる。
すごい機能だ。
「すごい・・・」
そんな言葉しか出なかった。
私は少しだけ旋回や上昇、降下を繰り返して街への進路を取った。
きっと顔は嬉しさでニヤケていただろう。