「暇だ・・・」
我輩はこの世界の魔王。
その気になれば人類など簡単に滅ぼせる力を持っている。
が、今はやることが何にもなく椅子にふんぞり返ってボケーっとしていた。
「魔王様!」
「何だ」
部下の1人が笑顔で我輩の前にきた。
「異世界への扉が開けそうです!」
「なに!本当か!」
兼ねてからの夢だった異世界侵攻。
それが叶いそうだった。
「明日には開けます故にお待ちを」
「ご苦労、大儀である」
我輩はニヤけが止まらなかった。
また、その異世界をどう統治してやろう・・・。
考えはつきなかった。
そんなこんなで時は流れ、異世界の扉を開く時が来た。
「では魔王様」
「よし、やれ」
「はっ!」
部下の魔法使いが呪文を唱え、魔法陣が目の前に現れた。
そして扉が現れる。
「ふふふ・・・はっはっは!!さぁ行くぞ同志諸君!」
我輩は扉を開いた。
眩しい光で思わず目を閉じた。
そして目を開けたら・・・
「ヒャッハー!!なんかよく分からん扉が開いてよく分からん何かが出てきたぜー!!」
目の前にモヒカン姿の男が数人。
何か炎が出る武器のような物を持っていた。
「ふははは!!虫けらどもめ!我輩が今日からーー『ヒャッハー!!汚物は消毒だー!!』アツゥイ!!!」
「魔王様ぁぁぁ!?」
「ちょっ、まっ、マジ熱い!!」
まずい、我輩のHPがどんどん削られていく。
と言うか普通、魔王とはいえ会ったばかりのヤツを焼く?これでも一応人間の姿を模してるのよ?それを会った瞬間焼いちゃう?君たち見ず知らずの人達を焼いちゃう系の危ない人達なの?
だがこの程度で斃れる我輩ではない。
爆発系の魔法を使う。
「砕け散るがよい」
「うんぬ!」
「こんなの狂ってる!」
目の前にいた男達は爆発で消し飛んだ。
「魔王様ご無事ですか!?」
「うむ・・・まぁちょっとローストされかけたが大丈夫だ」
若干自分が焦げ臭いがまぁ大丈夫だろう。
「では魔王様、先に進みましょう」
「うむ、そうしよう」
そして道無き道を歩いていく。
それにしてもなんだこの世界。
道端に白骨死体は転がってるしアンデットモンスターは彷徨いてるし、終いにはさっきの男達の同じ集団が死体で芸術作品を作っていたりとめちゃくちゃた。
「魔王様・・・人間とは何と醜いのでしょう・・・」
「まったくだ。」
そんな話をしながら歩いていた。
「魔王様・・・あの、ちょっと気分が・・・」
「む、大丈夫か同志」
「いえ・・・何とか・・・」
「とはいえ、何か顔色が悪いな・・・おい、そこの小川から水を取ってきてやれ」
「はっ、魔王様」
部下の1人が川から綺麗な色をした水を持ってきてくれた。
「これを」
「コイツに飲ませてやれ。ほら、水だ」
「ありがとうございます・・・」
そして勢いよく飲んだ。
すると・・・
「なんじゃこりゃぁぁ!!」
「な、なんだ!?」
「この水何か変な感じなんです!!」
「はぁ?」
するとそれを見ていた部下の賢者が何かを知っているようだった。
「魔王様、これ汚染されてる」
「汚染とな?」
「色々と魔法使って調べてたけど、ここは『核戦争』っていうのが起きた世界みたい。」
「核・・・戦争?」
「魔王様の使う爆発系魔法の威力を何倍にもしてさらに毒の効果を与えたみたいな武器を撃ちまくる戦争。あとこの汚染に晒され続けると変異するみたい」
「え」
水を飲んだ部下が青ざめる。
「ちなみにもう変異は始まってると思う」
「え、ちょっとまって・・・早くない?」
「魔物系の遺伝子は放射線っていうのに弱いみたい。ちなみに君の遺伝子は特に」
ちらっと部下を見ると何か微妙に体が大きくなってる気がする。
「・・・」
「あ、あの魔王様?」
「同志よ、君はここで名誉の戦死を遂げるのだ」
「は!?ちょ!?」
「君の勇姿は我が魔王軍の輝かしい歴史において永遠に語り継がれるであろう」
「う、嘘ですよね・・・?」
・・・変異を始めた部下を連れて戻るわけにもいかん。
それにこの世界は全く魅力を感じない。
「大丈夫、殺しはしないが・・・許せ」
我輩は転移魔法を使い、その部下以外を扉まで退避させた。
そして扉をくぐって城へ戻った。
「はぁ・・・なんなのだあの世界は」
「ハズレみたいですね。次を開きますよ」
「よろしく頼む」
その後、何回か扉を開いたが何が悪かったのか9割型核戦争後の世界や感染症のせいで文明が崩壊した世界を引き当てた。
唯一まともに見えた世界も扉を開いだ場所が戦争で文明が崩壊したロシアという国の街だった。
しかもそこに居た妙な服を着た男に偵察に出た部下の1人が倒され、あろう事かその男、部下の身包みを剥いで逃げていった。
その時、『やっべこれマジ、ゲロウマ装備じゃん。帰って売ろ。30万ルーブルくらい行くなこれ。ハッピーだぜなんだな』と言って逃げていった。
「・・・・・・・これはいったいどういう事なんだ」
「そんな・・・こんなの嘘でしょ・・・?何故なんですか!」
「それはこっちのセリフだ」
我輩は大きなため息をついて椅子に座る。
「つまりは卑怯な事せずに世界征服しろって事だな」
「は・・・」
「同志諸君、我輩は50年後にこの世界を征服しようと思う。それまでは準備期間だ。我が軍の圧倒的な力を持って敵を圧倒撃滅するのだ!」
「ウーラ!!」
「ふははは!!50年後・・・楽しみだ!はっはっは!!」
そう城で宣言し、あれやこれやとしているうちに月日は流れた。
「魔王様、約束の50年が経ちますが・・・人間達の偵察は必要ないのでしょうか?」
「必要ない。たかが人間如きに我らは止められはせぬ」
そして我輩は攻撃指示を出した。
「行くぞ同志諸君!人間どもを根絶やしにしてしまうのだ!」
「ウーラー!!」
転移魔法を使い、人間の街へと部下達が消えていった。
「さて、報告を待つとしよう」
我輩は椅子にふんぞり返った。
そして、待つこと3時間。
最初の報告が来た。
「報告します!」
「うむ」
「全滅しました!」
「え」
「全滅しました!」
「いや、2度も言わなくていいから」
「全滅しました!」
「3回も言わなくいい!どこの部隊だ!」
「全部死にました!」
「言い直すなや!!どこの部隊だっつってんだろボケ!!」
「全部です!」
我輩は絶句した。
全部?オール?オール壊滅?
「いったい人間どもは何を・・・」
一体何が・・・そう考えているとボロボロの部下が1人帰ってきた。
「ま、魔王様・・・」
「お前は・・・えっと・・・なんでもいいや、大丈夫か!何があった!」
「ち、近づかないで下さい!な、なぁお前これ・・・外せる?」
我輩に近寄るなといい、我輩に報告しに来た部下に腹に巻き付けられた何かを指さして外せるかと言い出した。
「な、なんだこれ」
変な紐まみれな物がくっついた服。
そして部下が近づいた時だった。
「ぬぉっ!?」
大爆発。
帰ってきた部下諸共爆発したのだ。
「な、何が起こっている!?」
「魔王様!敵がーーぐぁ!!」
「!?」
ドカンドカンと大きな音がした。
同時に・・・。
「突撃!!」
「行け行け行け!!!」
敵がなだれ込んで来たのだ。
我輩はあまりの進軍の速さに硬直してしまった。
しかし音を聞いた瞬間に上手く物陰に隠れたので少しは見つからないだろう。
様子を伺う。
「魔王を見つけろ!見つけ次第殺せ!」
「ケツ穴を増やしてやれ!」
「A分隊は魔王の捜索!それ以外は金目の物を運び出せ!コイツらの武器装具は高く売れるぞ!田舎の母ちゃんを喜ばせてやれ!」
「イエッサー!!」
嘘だろコイツら押し込み強盗しに来やがった。
というか何だあの武器は・・・音と同時に魔物の部下に風穴を開けた。
アイツは確か防御力が高かったはず・・・。
「おい見ろよコイツ、金のネックレスだ」
「すっげ、純金だぜ」
「ここに魔王は居なさそうだし盗れるもん盗ったら別の所いくぞ」
「へっへっへ、これで病気の母ちゃんの手術が出来るぜ。魔王軍さまさまだな」
「魔王を生かしとけばこうやって金を稼がせてもらえるもんな!はっはっは!!」
「それにしてもアイツらビビってるぜ、何せ俺らに異世界技術流入してるって気づいてないっぽいからな」
「まったくだ。いきなり街に来たと思ったら今からお前ら殺しますとか言い始めて出したの剣だもんな」
「あれな!傑作だったな!10秒とかからず蜂の巣だぜ!」
「あれは面白かったよ!はははは!」
・・・・・・・・なんだこいつらやべぇ。
しかも我輩生かしとけば金づるって。
我輩これでも魔王よ?
魔物の王様だよ?
男達は我輩の気持ちを知ってか知らずかどこかに行ってしまった。
というか今、異世界技術の流入って言ったか・・・?
まさか・・・。
我輩は最悪の事態を想像してしまった。
「まさかのんびりしていた50年のウチに人間どもは・・・」
我が軍の戦力を大きく上回った・・・。
そんなはずはない!
と言いたいが・・・。
それよりも何故、人間どもに異世界技術が・・・。
「クソっ、我輩の城が・・・!」
地響きと爆発音。
さらに部下の悲鳴、断末魔も聞こえる。
その時、2人のアンデット族の部下が入ってきた。
手には人間どもの武器を持って。
「魔王様!」
「無事だったか」
「何とか・・・人間どもの武器を奪いました!これで時間を稼ぎます。魔王様は今のうちに逃げてください!」
「お前らを置いて行けるものか!」
「行ってください、我々が敵を抑えてる間に!」
「だから置いては行けぬ!」
「魔王様が居なくなったら、私達はどうするんですか!今は逃げて、体制を整えて反攻に転じるんです!」
「・・・」
廊下から人間どもの声が聞こえてきた。
「魔王様!!」
「分かった、我輩は行く。貴様らの勇姿、忘れはせぬ!」
我輩は転移魔法を使って城の外へと逃げた。
燃える城を眺めていた。
「我輩は・・・負けたのか・・・?」
そう呟いた時だった。
「離せ!離して!!」
この声は・・・街に偵察に出ていたサキュバスの・・・?
隠れて様子を見てみよう。
「誰が離すかっての!サキュバスなんて初めて見たぜ!」
「おいおい、ヤると死んじまうぞ」
「それはお前が俺が殺されそうにならないように監視してればいい」
「チッ、俺は2番目か?」
「捕まえたのは俺だ」
「・・・へいへい」
「どうせ魔王軍だ、やる事やったらぶっ殺してほったらかしときゃいい」
「お前・・・軍人がいうセリフじゃないぞ」
「誰も見てねぇ、構うもんか。それにこんないい女見た事ねぇ!」
「・・・ったく・・・早くしろ」
「言われなくても」
「やめ・・・近づかないで!!」
見ていられなくなった我輩は飛び出す。
「やめろこの悪魔共!」
「魔王様!」
我輩は爆発魔法で2人を吹き飛ばす。
「大丈夫だったか?」
「ま、魔王様・・・ありがとうございます・・・」
「部下を助けるのは我輩の仕事だ」
そう言ってサキュバスを介抱していた時だった。
城が大爆発を起こす。
「お城が・・・」
「城なんてまた建てればいい。今は戦力を整えるのが先だ。もう我輩とお前・・・あと少しの部下しか残ってない」
我輩たちはその場を離れた。
その後、生き残った部下の報告によると城から運び出された魔法具等は人間の街で高額で取引されているとか。
おまけに盗る物盗ったから城は爆破処理されたとのことだった。
「悪魔共め・・・」
「魔王様・・・お言葉ですが分類上我々が悪魔です」
「知ってるわそんなもん!」
「まぁ・・・悪魔に悪魔って言われる人間も相当よね・・・」
「よく聞け、我輩たちはここから戦力を整え、人間に対して反抗を開始する。」
「了解!」
・・・と意気揚々と宣言したのはいいが、訓練キャンプが見つかるとどこからとも無く爆撃機というものが飛来して爆撃されるわ、爆撃されなくとも根こそぎ魔法具等を持っていかれるし・・・。
「もう・・・アイツらの方がワシらよりよっぽど悪魔だよな・・・」
「えぇ・・・それ、去年言ってましたよ・・・」
唯一生き残った部下のサキュバスを前に愚痴る。
「我輩が召喚すれば軍備くらい簡単に増えるけど・・・増えたら増えただけ殺されるもんな・・・」
「ついでに・・・押し込み強盗にもあいますし・・・」
「あいつら・・・我輩達が魔王軍だからって何してもいいってなってない?」
「街に偵察に出た者の話だと、魔王軍はクソザコナメクジな上に高く売れるものいっぱい持ってるから見つけたら最優先でぶっ殺して取るもんとってしまえってなってるみたいですよ?」
「・・・もう我輩魔王引退する」
「魔王様!?」
「もう無理・・・アイツらマジ悪魔だもん・・・ワシらの手に負えん・・・」
「ま、魔王様どうか気を確かに・・・」
その時我輩はふと思いつく。
あの核戦争後の世界にいけばいいのではないかと。
「そうだ!」
「!?」
「あの核戦争後の世界とやらに行き軍備を整えるのだ!」
そうと決まれば・・・と魔王城跡地に向かい扉に入る。
あれだけ大きかった城が残骸しかないとは・・・。
我輩は人間どもに復讐を誓い、そして新たな世界の王となり人間どもを滅ぼしてやる!
そう心に誓い、扉へと入った。
「世紀末の王に我輩はなる!!」
そう叫んで。