高度20000フィートの大空で   作:イーグルアイ提督

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密輸業者強襲

野戦飛行場を離陸して30分ほど経った。

そろそろ帰ろう。

 

「動かしやすくていい・・・」

 

機体の反応はとても素直で手足を動かすかのような軽さだった。

ただ高速域になると少し重くなる感じはあった。

その時だった。

 

《ハル!》

 

「どうしたの?」

 

焦ったようなマヤの声。

 

《空賊に絡まれた!こっちじゃ逃げきれないよ!》

 

「え!?」

 

そんな、レーダーには何も映ってない。

だが、嘘なはずがない。

 

「分かった!今から行くから待ってて!!」

 

武装をチェックするとウェポンベイに中射程ミサイルが4発、バルカン砲が980発だった。

短射程ミサイルは搭載されてないが何とかなるはずだ。

 

《ハル!敵はえっと・・・れ、零式艦上戦闘機とマスタング!》

 

「レシプロ戦闘機!?」

 

《とにかくヘリじゃ相手できないから助けて!!》

 

「分かった!!」

 

なんでレシプロ戦闘機を使う空賊なんて・・・

とにかく最大速力で向かう。

マヤたちの場所はここから20キロ。

すぐだ。

レーダーにも反応が出た。

 

「見つけた・・・マヤ!」

 

《まだ生きてるよー!》

 

「1度注意をこっちに向ける!その間に逃げて!」

 

《了解!》

 

「レーダー・・・ロックオン!UNKNOWN表記だけど・・・!」

 

レシプロ戦闘機にIFFなんて積まれてない。

敵味方識別装置は機能しないためレーダー上にUNKNOWNと表示されていた。

私は高速でヘリの近くを通過する際にヘリに攻撃を加えようとしていた零戦に機関砲弾を浴びせた。

 

「スプラッシュ!次!」

 

《ナイスキル!》

 

「敵の注意がこっちに向けば・・・!」

 

残りは4機。

空賊機は戦闘機が近づいてきたためか撤退を始めた。

だが私がそれを確認して離れた際にマヤ達に近づかないとは言いきれない。

中射程ミサイルを選択した。

このミサイル、4機まで同時にロックオンできるようだ。

 

「よし・・・FOX3、ファイア!」

 

ウェポンベイから4発のミサイルが発射されすべて別々の方向に誘導された。

レシプロ戦闘機にミサイルを避けることは出来ず、ミサイルは命中した。

 

「撃墜!マヤ、もう安全」

 

《ふぅ・・・了解、ありがとね!》

 

「帰ったら報酬貰うから」

 

《仲間じゃん!!》

 

「冗談だよ」

 

《でもご飯くらいは奢るよ!》

 

「ん、じゃあありがたく奢られる」

 

私は少しだけ周囲の安全を確認してヘリが街に近づいてから帰還を始めた。

 

「テキサスタワー、エンジェル0-1」

 

《エンジェル0-1どうぞ》

 

「空港への着陸を要請」

 

《エンジェル0-1・・・スタンバイ・・・えーと、そちらの機種を教えていただいていいですか?トランスポンダの応答がマニュアルに存在しない機種を示してます》

 

「あ、えっと、X-02Sストライクワイバーン」

 

《ストライクワイバーン・・・了解、回収した感じでしょうか?》

 

「街の近くの野戦飛行場で」

 

《了解。エンジェル0-1、滑走路35への着陸を許可》

 

少しだけ着陸までに手間取ったが無事に滑走路に降りられた。

マヤ達には先に家に帰ってもらった。

ヘリ用の格納庫は家についているのでそっちに直接帰ってもらった。

格納庫に戦闘機を止めると一目散に整備員のおじさんが飛んできた。

 

「嬢ちゃん!新型機じゃってな!」

 

「うん、X-02Sストライクワイバーン」

 

「ストライクワイバーンか・・・ふーむ・・・それにしても見た事ないな・・・それよりもなんじゃこれ」

 

「ん?」

 

「これじゃよこれ」

 

おじさんが指さしたのは尾翼だった。

野戦飛行場の格納庫では気づかなかったが何かが描かれていた。

 

「んーと・・・FGって文字を消すような感じで3本線・・・?」

 

「廃棄された機体・・・ってわけでも無さそうじゃしな・・・」

 

「うん、ピカピカの戦闘機だった」

 

「あとこのOADFってなんて意味じゃろうか・・・」

 

「分からない、異世界の表記だと思うけど」

 

「いやそれがじゃな・・・」

 

おじさんは神妙な顔つきで話す。

異世界と言っても私たちが存在を認識し技術を得ている世界は一つだけだった。

でも、その世界の資料にこんな戦闘機は存在しなかった。

機密の新型機という説もあるがあの世界から来た戦闘機にしては有り得ないギミックを沢山採用していた。

 

「なぁ嬢ちゃん、異世界は一つだけだと思うか?」

 

「うーん・・・私にはなんとも」

 

「この戦闘機、その異世界の異世界から来たやつじゃろうな」

 

「異世界の異世界・・・」

 

「まーなんじゃ、この世界に害を及ぼすような感じもしないし大丈夫じゃ。それ・・・見た感じ、材質や部品も既存の機体と変わらなそうじゃ。ただ、1週間ほど機体を貸してくれんか?」

 

「うん、いいけど、どうするの?」

 

「なに、整備用に調べないとな」

 

「そういう事ならいいよ。壊さないでね」

 

「分かっとるわい!」

 

「じゃあお願い」

 

「任されよ!」

 

私はおじさんに機体を任せて家に帰った。

家からはいい匂いがしていた。

 

「ただいま」

 

「あ、おかえり!今日はありがと!」

 

「ううん、仲間だから」

 

エプロン姿のマヤが出迎えてくれた。

トマホークも一緒に出迎えてくれるが口に何かをくわえていた。

 

「トマホークも出迎えありがと」

 

するとトマホークは私の目の前にくわえていた何かを置く。

それは骨のようだ。

随分とキレイな形だった。

 

「わん!」

 

トマホークはそれをあげると言っているような目を向けてくる。

 

「トマホークなりにお礼してるんだよ。今日、結構怖がってたからね」

 

「そっか。ありがとね、トマホーク」

 

「わふ・・・」

 

「よしよし」

 

嬉しそうに尻尾をふるトマホーク。

疲れも癒される。

 

「ねぇ、マヤが料理してるの?」

 

「うん、私とリリアでね!」

 

「そっか」

 

「パスタだけど、リリアがすごい美味しいボンゴレパスタ作ってくれてるよ!」

 

「マヤは?」

 

「私はケーキ焼いてみた!」

 

「いつの間に買い物を・・・」

 

「ハルが帰ってくるまでの間にね。配送サービス使ってみた!」

 

「・・・もしかしてあのロケットに商品積んで目的地に撃ち込む奴・・・?」

 

「うん、そうだけど?」

 

「あれ使ったの・・・?」

 

「何か商品が壊れないように特殊な加工してあるみたいだよ!それに着く前にパラシュートが開くし!」

 

「いやまぁ・・・そうだけど・・・」

 

しかしそのネットサービス、爆速配達というのを売りにしてるが使われているのがミサイルなのだ。

弾頭部に商品を搭載して着弾前にパラシュートを開いて減速して下ろす事で商品を傷つけないようにしてるとか何とか・・・。

しかも大きさに応じてミサイルの大きさも変わるため大きな物を頼むと大陸間弾道ミサイルで撃ち込まれる事もあった。

もちろん弾頭部に火薬等はないが・・・。

しかもそのネットサービスの本拠地と流通センターが密林の奥深くにあるとか何とかでどこにあるのかまったく不明という謎のサービスだった。

しかし速さと確実性が売りなので利用するユーザーは多かった。

・・・ただし家にパラシュートで降りてくるとはいえミサイルを撃ち込まれるが。

 

「とりあえず食べよっか。お腹空いたよ」

 

「うん!」

 

その後は3人で仲良く夕食をとりお風呂に入って、明日に備えて寝る準備をした。

 

「ねぇ、明日はどうするの?」

 

「何か仕事でもしよ。ストライクワイバーンの整備費用がかなりかかるかも知れないから」

 

「了解、じゃあ明日は撃墜マーク増やせそうね」

 

「それはどうかな」

 

「まぁ明日になれば分かるわね!」

 

「うん、じゃあ寝よ。おやすみ」

 

「おやすみー」

 

明日のことを考えているといつの間にか意識は飛んでいた。

気づけば朝だ。

 

「ふぁ・・・」

 

今日は珍しく三人同時に起きた。

トマホークがそれを見て少し残念そうな顔をしている。

 

「おはよ」

 

「おはよー・・・ふぁ・・・」

 

「んにゃー・・・」

 

マヤはまだ寝ぼけていた。

 

「珍しいわね、マヤが寝ぼけてるけど3人同時に起きるなんて」

 

「うん、何かありそう」

 

「・・・嫌な予感しかしないけど・・・」

 

「大丈夫だよ。きっと儲け話」

 

そう言って寝ぼけてるマヤを叩き起して仕事の準備をした。

時刻は0900。

天気は少し曇り気味だが雲高そのものは低くない。

事前に空港の観測値を確認したが問題は無さそうだ。

 

「じゃ行こっか」

 

「はーい!」

 

「今日はトムキャット?」

 

「うん、今日は乗りたい」

 

「了解!」

 

「RIOよろしくね」

 

「任せて!」

 

3人で空港までの道をのんびりと歩く。

 

「あれ、そういえばリリア、自衛用の拳銃って持ってたっけ」

 

「ん?あるわよ?」

 

「どんなの?」

 

「はい」

 

リリアが出してきたのは使い古されたP-08。

 

「また古いヤツを・・・」

 

「いいじゃない。お爺様からのプレゼントなの」

 

「あ、そっかお爺さんって魔王戦争に参加してたんだよね」

 

「うん、地上主力でね。魔王のケツ穴増やしてやったわ!とかよく言ってたわね」

 

「あれ、リリア意外と下ネタいけるの?」

 

「え?」

 

「ケツ穴って・・・」

 

するとリリアは自分で言ったことを理解して顔を真っ赤にした。

 

「な、なんてこと言うのよ!!」

 

「自分で言ったんじゃん!!」

 

なんてしながら空港に到着した。

私達はまず先に格納庫に機体の状態の確認に向かった。

・・・までは良かった。

手に何やら封筒を持って誰かを待っているドワーフのおじさんがいた。

そしてここは私達の専用格納庫。

 

「・・・行きなさいよ」

 

「・・・分かってるよ」

 

また評議院とかか・・・。

そう思いながらおじさんに近づいた。

 

「お!嬢ちゃん!」

 

「・・・おはよ」

 

「待ってたぞぃ!儲け話があるんじゃ!」

 

「・・・だと思った」

 

手にしているのはどこの部隊か・・・そう思ったがよく見ると書いてあるマークはこの街の領主のだった。

 

「あれ、領主から?」

 

「そうじゃ、これまた直々に依頼が来ての」

 

内容は密輸業者の基地を破壊するというものだった。

最近、この街に密造された武器を密輸してくる組織がいた。

しかし摘発しようにも使用している輸送機が民間機と同じ型で巧妙にフライトプランを偽装しているため、あたかも定期便のように街に堂々と侵入しているらしい。

だが積荷を下ろすだけ下ろしてそそくさと民間機に紛れて離陸していくためいつ何処から来ているのか分かっていなかった。

だがつい最近、魔王軍のアジトを探していた冒険者が渓谷から上がってくる輸送機を確認したらしい。

そしてその渓谷の先を辿ったところに工場のようなものが見えたとも。

しかし、その後この冒険者の乗る機体は空賊に撃墜されてしまった。

そこで今回の依頼は私達2機が夜間に渓谷内を低空で飛行し目標に接近、後続の騎士団強襲部隊が工場を制圧できるように対空火器を確認した場合はそれの破壊及び密輸用輸送機の破壊だった。

可能ならば工場施設への空爆もしてよいという事だった。

 

「・・・」

 

「どうじゃ!1000万ドルの大仕事じゃ!」

 

「1千万・・・」

 

かなり悩む。

1千万クラスの仕事なんて基本的にない。

せいぜい良くて100万ドルだ。

だが渓谷飛行・・・やれないことはないが・・・

 

「リリアは飛べる?」

 

「うーん・・・まぁでも私は自分のレベル上げだと思ってやるわよ」

 

「じゃあ・・・やろっか」

 

「情報だと輸送機はC-17でそれが飛べる広さはあるそうじゃ」

 

「了解、トムキャットでも大丈夫そうだね」

 

「なんじゃ、ワイバーンは乗らんのか?」

 

「今日はね。愛機に乗りたい」

 

「了解じゃ!武装はどうする」

 

私は対地攻撃ということで胴体下部にガンポッドをぶら下げていくことにした。

口径は40mm、その両脇に弾倉も配置して装弾数は30発ほどだ。

リリアは小さめの無誘導爆弾を10発以上搭載していた。

どちらも正直対空戦闘向きな装備ではないが、危なくなったら両方とも武装を投棄して逃げることにした。

お互い、短射程と中射程の空対空ミサイルを2発ずつ積んでいくので自衛くらいは出来るだろう。

 

「じゃあ、お互い幸運を」

 

「ハルもね!」

 

そしてお互いの機体に乗り込んだ。

儲け話とはいえ、危険な渓谷飛行・・・。

気を引き締めよう。

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