高度20000フィートの大空で   作:イーグルアイ提督

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Twitterで『#ふぎむに有志連合』っていう素晴らしいタグを見つけてしまった。
ふぎむに可愛い


基地強襲

「・・・で、なんで王国軍の管制機がセットなの?」

 

マヤが嫌そうにそういう。

空に上がって30分、王国軍機から通信が入ったと思えばいきなり指揮下に入れと言われた。

 

《こちらAWACSバンドッグ。今回の依頼は重要な任務だ。冒険者と言えど指揮下に入ってもらう》

 

「うぇー・・・」

 

マヤは後席で不服そうな声を出していた。

実際私も不服だが。

何が楽しくて王国軍機の指揮下に入らねばならないのか・・・。

まぁ、AWACSなので目は良いから空賊の対処は楽でいい。

 

《それと悪いが俺は飯を食いながらやらせてもらう。腹が減ってはなんとやらだしな》

 

「だからって食べながら離さないでよ・・・」

 

《帰るまでは我慢しようと思ったんだがな、テキサスのご当地空弁の魅力には負けたよ》

 

「食い意地の張った番犬様なことで・・・」

 

《そういうな。・・・あー、そこのコーラ取ってくれ。あ?お前、ゼロカロリーなわけないだろ。それだそれ》

 

・・・随分と自由な管制官だ・・・。

 

《王国軍にしては自由な感じよね》

 

「まぁね・・・」

 

マヤは呆れた感じで言った。

 

《エンジェル0-1、0-2。もう間もなく作戦空域だ。高度を下げて渓谷内に侵入しろ》

 

「了解」

 

高度を下げて渓谷にアプローチする。

気を引き締めよう。

 

「リリア、高度に注意してね」

 

《分かってるわよ、ハルこそ壁にぶつかんないでね》

 

「分かってる。でもなるべく低速で飛ぼう」

 

《了解!》

 

なるべく低速・・・300ノットほどまで減速した。

渓谷内は思ったほど狭くなく飛びやすいがそれでも渓谷内だ。

両側は壁に挟まれている。

 

《バンドッグよりエンジェル。そのまま渓谷を5マイルほど進んだ所に例の基地があるという事だ》

 

「了解、AWACSのレーダーでは何もなし?」

 

《無し。レーダークリア》

 

「了解」

 

「うぅぅぅ・・・壁・・・壁がぁ・・・」

 

「マヤ、大丈夫?」

 

「ハルぅ〜・・・怖いよぉ・・・」

 

コックピットのミラーから後ろを見るとマヤが顔の前で手を組んで震えていた。

 

「怖かったらレーダーを見てて」

 

「み、見てても外が渓谷内だって思うと・・・」

 

「・・・大丈夫、私を信じて」

 

「分かってるけど・・・うぅぅ・・・」

 

《マヤは怖がりね》

 

「怖がりっていうかこんな所飛行機の飛ぶところじゃないから!」

 

《あら?そうなの?この前読んだ異世界の本だと渓谷飛行はエース必修科目らしいわよ?》

 

「何その本・・・」

 

《んー・・・なんだったかしら・・・忘れちゃったわ。あ、あとトンネルか洞窟を飛行するのも必修科目らしいわね》

 

「トンネル・・・」

 

幾ら何でも渓谷飛行は出来てもトンネル飛行なんて人間のやる事じゃない・・・やる奴は命知らずの大馬鹿野郎だ。

 

「リリア、少し渓谷が狭くなってきてる。注意」

 

《了解》

 

先に進むにつれて少しずつだが渓谷が狭くなってきている・・・が、代わりに渓谷を削ったような跡が見えてきた。

目標は近い。

 

《エンジェル、こちらバンドッグ》

 

「エンジェル0-1」

 

《渓谷の上にバンディット。対象はMig-23フロッガー》

 

「パトロールかな」

 

《密輸業者のCAP機だろう。2機確認》

 

「了解・・・バレませんように」

 

狭い渓谷内で回避運動などしたくない。

だが幸いな事にうまくやり過ごせたようだ。

そしてある程度目標に近づいた時だった。

管制機から無線が入る。

 

《エンジェル、こちらバンドッグ。敵無線の傍受に成功した。これからは敵の無線も聞こえる》

 

「え、どうやって・・・」

 

《この機のクルーに盗み聞きが得意な奴がいるんだ》

 

「王国軍なのに・・・」

 

《空くらいは俺たちの自由にさせてくれ》

 

そんな会話をしていた時だった。

渓谷が一気に広がる部分がありその下に飛行場と工場のようなものを確認できた。

目標だった。

敵の無線も聞こえる。

 

《お、おい・・・あれはさっき上がった味方のCAPか?》

 

《違う!あれはF-14にフランカーだ!警報!!》

 

基地中に警報が鳴り響きだした。

 

《空襲警報!空襲警報!!敵襲!輸送機及び戦闘機は急ぎ発進!》

 

《こ、この中を飛ばすのか!?》

 

《あと数分もしないうちに離陸できなくなる!》

 

どうやら想定外の攻撃に大慌てなようだ。

混乱している今がチャンスだ。

 

《輸送機を1機たりとも逃がすな!ウェポンズフリー、交戦を許可する》

 

「了解、マスターアーム点火!」

 

《マスターアーム点火!・・・よし、捉えた!投下!》

 

「マヤ!やるよ!」

 

「分かってるよ!こっちも用意よし!」

 

「発射!」

 

ズドンという振動が機体に伝わる。

さすが40mm機関砲を組み込んでいるだけある。

着弾した輸送機が1発で破壊できた。

 

《ちくしょう!輸送機の5割が破壊された!!》

 

《工場地区で火災発生!!》

 

《馬鹿!消火なんていい!逃げないと焼き殺されるぞ!》

 

《弾薬貯蔵庫に引火!総員退ーーーー・・・》

 

・・・一気に下が火の海になった。

何人死んだのだろう・・・。

私は燃え盛る工場施設をみてそう思った。

 

《ちくしょう!ここの偽装は完璧じゃなかったのか!!》

 

《用心棒を上げろ!今すぐにだ!!》

 

「リリア、滑走路に注意。迎撃機が来るかも」

 

《りょーかい、爆弾も投下し終えたから軽くなったわ。迎撃機は任せて》

 

「了解」

 

私は旋回して飛行場地区の攻撃を再開する。

駐機してある輸送機はほぼ全て破壊した。

あとはハンガーだ。

 

《あれ、ハル・・・うそ!?プロペラ機!?》

 

「え?」

 

《プロペラ機が迎撃に上がってきた!》

 

《プロペラ・・・まずい、全機逃げろ!》

 

《え?!》

 

《そいつはティーチャーの名前で呼ばれる賞金首だ!ジェット戦闘機でも敵う相手じゃない!》

 

《で、でも!》

 

「リリア!上昇して退避!」

 

《わ、分かったわよ!》

 

基地はほとんど火の海だ。

これ以上の攻撃は要らないだろう。

それよりもティーチャー・・・?

 

《ちょ・・・!後ろに食いつかれてる!》

 

「今助ける!」

 

私はリリアに追従するティーチャーを追いかけて渓谷から飛び出る。

 

《エンジェルフライト!その敵機の特徴を教えろ!単に喋るだけでいい!》

 

《機体は・・・えと・・・えーっと・・・!わっかんないわよ!!》

 

「バンドッグ、敵は二重反転プロペラ、ターボプロップ」

 

《了解・・・間違いない、ワイバーンS4・・・ティーチャーだ!そいつは特殊な改造をされているのかジェット戦闘機並に速いぞ!》

 

《あぁもうクソ!しつこいわね!!》

 

「今援護に入る!」

 

《この・・・やろ!!》

 

「!!」

 

リリアは敵機躱すためにコブラと呼ばれる機動をした。

ほぼその場で高度を変えずに機体を垂直に立てる機動だ。

敵はリリアをオーバーシュートした。

 

《貰った!!》

 

だが次の瞬間、敵は右に減速しつつバレルロールした。

そして速度の早いリリアがまた敵を追い越してしまう。

 

《くっそ!また後ろ!?》

 

「射線が・・・!」

 

なかなかすばしっこい敵を捉えられない。

おまけに敵とリリアの距離が近すぎて下手に撃てない。

その時、敵のパイロットと思わしき無線が聞こえる。

 

《久しぶりに胸が踊りそうな動きをしてくれるな。だが・・・》

 

声は70代かそこらのお爺さんの声だった。

その声がした後に大量の曳光弾が発射される。

 

《きゃあああああ!!!》

 

「リリア!!」

 

「大丈夫!?」

 

なんとか間一髪で回避したようだ。

 

《ふむ、外したか。当てるつもりだったのだが・・・》

 

《ティーチャー!いつまで遊んでるんですか!》

 

《遊んでいるのではない。敵を知ろうとしているのだよ》

 

《ハァ、ハァ、ハァ・・・!くっ、うぅっ!》

 

激しいシザーズに入っている。

常に高いGがかかっていて苦しいのだろう。

 

「・・・リリア!スパローを撃つから!」

 

《了解・・・了解!!》

 

私は一旦離れて敵をロックオンする。

 

「ハル!ロックオン!」

 

「この・・・FOX1!落ちろ!」

 

相手にRWRはないはず・・・そう思った矢先だった。

急上昇したとおもったらそのままストールターンをしてミサイルをかわした。

ミサイルはまだ加速中でかなりの速度がでていたはずなのにあっさりと躱された。

 

「そんな馬鹿な!」

 

《聞こえるかね、トムキャットのパイロット》

 

「えっ!?」

 

《君と私とでは経験が違う。それに君たちはまだ若い女の子だ。こんな所で死んではいけない》

 

「な、何を言って・・・!」

 

《もし戦うというのならそれでいい。だが私はこことは違う世界で戦い、君たちのような子供を落としてきた。中には腕の立つパイロットもいた・・・その全てを落としてきたのだ》

 

その言葉にゾワっとした気持ち悪さを覚えた。

単にこの人が気持ち悪いというわけではない。

・・・嘘をついてるという感じが無かったからだ。

 

「リリア!逃げるよ!」

 

「え、ハル!?」

 

「いいから逃げる!」

 

《わ、分かったわ!》

 

アフターバーナーに点火して急上昇して離れる。

基地の破壊そのものは完了した。

仕事は完了だ。

 

《こちらバンドッグ、2機とも無事だな?》

 

「なんとか・・・」

 

「生きた心地しなかったよ・・・」

 

《・・・それ、後ろに付かれてた私の前で言う?》

 

「あはは・・・ごめんなさい・・・」

 

「無事だったから良かったよ。あのお爺さんの気が変わったおかげなのか・・・」

 

私はさっきの戦闘のことが頭の中をグルグルと回っていた。

なんでターボプロップとは言え、プロペラ機相手に苦戦など・・・いや、これはただ慢心していただけかもしれないが・・・。

それよりも、こことは違う世界で戦ったというのはどういう事なのだろうか・・・。

 

「ねえハル?さっきのお爺さん、なんでティーチャーなんて呼ばれてるのか知ってる?」

 

「ううん、何も」

 

《それはアイツの前のコールサインがティーチャーだったって噂だ》

 

「前の?」

 

《異世界での・・・らしいがな》

 

「なにそれ」

 

《空戦の腕は確かだがボケてるのかも知れん。異世界から物は来ても人なんて来ないからな。》

 

《ボケてるのにアレは怖いけどね・・・》

 

まったくだ。

それにあの言葉から嘘は感じられなかった。

それが1番恐ろしい。

何しろ、子供を何人も落としてきたと言っていた。

あの人のいう違う世界では子供が戦闘機を飛ばしているという事なのだろうか・・・。

 

「まぁ考えても仕方ないか・・・」

 

「そうそう!今は生きてることに感謝しながら帰ることだよ!」

 

「まぁね・・・」

 

《こちらバンドッグ、たった今セイバーホークが現場に到着した・・・らしいがどうやら工場施設は完全に焼け野原になっているようだ》

 

「・・・リリア、やりすぎ」

 

《私!?》

 

《とにかく、密輸業者の壊滅をセイバーホークが確認した》

 

「了解」

 

《セイバーホークが現場から離脱するまで上空警戒にあたれ》

 

「はぁ・・・やっぱすぐには帰れないか・・・」

 

《こちらセイバーホーク、俺たちは空の敵に対しては無力だ、頼むよ天使ちゃん》

 

「はいはい、分かりましたよ・・・」

 

「もう一仕事、終わったら甘いものでも食べに行こ」

 

「行く!」

 

《私も!》

 

《なら空港の近くにいいカフェがあるんだ、案内するから・・・》

 

「番犬様はお仕事しててください!」

 

「これは女子会だから」

 

《・・・バンドッグ、ウィルコ》

 

管制官はあからさまにガックリとした声を出した。

 

《振られたな、バンドッグ》

 

《・・・うるさいぞ》

 

なんて話をしていたらレーダーが2機の不明機を捉えた。

さっきのCAPか・・・?

 

《こちらバンドッグ、2機の不明機・・・さっきのフロッガーだ。ヘリに気付かれる前に落とせ》

 

「了解、リリア行くよ」

 

《了解!》

 

旋回して敵機とヘッドオンの状態になる。

 

「私は右の敵に攻撃する。リリアは左」

 

《了解!中射程ミサイルでいい?》

 

「今は先制攻撃したいから」

 

《了解!・・・ロックオン・・・FOX3!》

 

「ターゲットロック・・・よし、FOX1」

 

リリアからはアクティブホーミングのR-77を私からはセミアクティブホーミングのAIM-7を発射した。

気づいた敵は回避運動に入るが距離が近かったためか反転する前にミサイルが到達した。

 

《敵航空機の撃墜を確認、レーダークリア》

 

「これで撃墜マークがまた増えたね」

 

「ふふん!これでまたハルの強さが知れ渡るね!」

 

「なんでマヤが嬉しそうなのか・・・というか私はひっそりとやりたい」

 

「えー?」

 

「目立つのは嫌」

 

「そうは言っても・・・ね、リリア」

 

《えぇ・・・そうね》

 

「何」

 

「ハル、ファンクラブみたいなの出来てるよ?」

 

「誰の?」

 

「ハルの」

 

「はぁ!?」

 

《俺もその1人だ》

 

「バンドッグには聞いてないから」

 

《・・・ウィルコ》

 

いつの間にそんな物が・・・というか何でだ!

なぜ私なんだ!

 

「知らなかったんだ、本物の天使だー!って一部の人から・・・」

 

「どういう事・・・というか私のどこが・・・」

 

「言っとくけどハルは結構美人な部類だからね?」

 

「そんなこと・・・」

 

《それに、撃墜数だってテキサスでトップクラスだからね》

 

「私目立つの嫌いなんだけど・・・」

 

《そういうクールな所も人気だ》

 

「だからバンドッグには聞いてない」

 

《了解・・・》

 

さっきから聞いてもないのにバンドッグがやたらと反応してくるが・・・。

本当にいつの間にファンクラブなんて出来上がっていたのか・・・。

私はひっそりと飛んでいたいのに・・・。

なんて色々と話していたらセイバーホークが無事に空域から脱出が出来たようだった。

 

《こちらバンドッグ、セイバーホークの離脱確認。RTB》

 

「了解。エンジェル0-1、RTB」

 

《0-2、RTB》

 

私たちはテキサスへと機首を向けた。

空は太陽が沈みかけて少し赤くなってきていた。

 

 

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