高度20000フィートの大空で   作:イーグルアイ提督

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相棒の村へ

「し、死ぬかと思ったわ・・・」

 

格納庫でリリアがそう言った。

まさか着陸寸前にエルロンが外れるなんて運がない・・・。

外れた原因はティーチャー戦で被弾していたようだった。

主翼のエルロン付近に弾痕が残っていた。

 

「当分は修理だね」

 

「うぅー・・・私のフランカー・・・」

 

「たまにはフルクラムにも乗らないと」

 

なんて話してるとフランカーの状態を見ていたおじさんがこちらに来た。

 

「まーたこりゃ派手にやったもんじゃな、どこの誰にやられた?」

 

「密輸集団の用心棒っていうか賞金首っていうか・・・」

 

「賞金首?」

 

「えーっと・・・AWACSの管制官がティーチャーって呼んでたよ」

 

「ティーチャー!?お前アイツと戦って生き残ったのか!?」

 

おじさんは目玉が飛び出そうなくらい目を見開いてリリアに言った。

 

「え、な、なに!?私!?」

 

「そうじゃ!どうやったら生き残って・・・いや、生きて帰ってきただけ良しじゃな・・・」

 

「そ、そんなにヤバイ奴だったの?」

 

「ヤバイってレベルじゃないぞい。たとえ最新鋭の戦闘機を持ってしても勝てる相手じゃないんじゃよ・・・一説によると異世界人らしい」

 

「異世界人?」

 

「あぁ、しかも昔は嬢ちゃんらと同じ、冒険者だったんじゃ」

 

「うそ・・・」

 

賞金首が元冒険者というのは珍しい話ではないが・・・。

 

「まぁこれは噂なんじゃがな・・・」

 

「そういえば前の世界は子供が戦闘機に乗っていたって・・・」

 

「あぁ奴曰く、ショーとしての戦争が起きてて戦うのはみんなクローンの子供。大人のパイロットは自分含めてほとんどいないとかなんとかな」

 

「ショーとしての戦争・・・」

 

「戦争をショーなんて・・・狂ってるね」

 

「そういえばマヤ嬢ちゃんの村は昔魔王戦争に巻き込まれたんじゃってな」

 

「うん、巻き込まれたっていうか・・・誤爆されたんだけどね。私が生まれるずっと前だけど」

 

「そうか・・・まぁなんじゃ、とにかく無事でよかったぞい。リリア嬢ちゃん、エルロンの修理はタダってやっといてやるぞ」

 

「ほんと!?」

 

「ほんとじゃ、ティーチャーと戦って生き残ったパイロットは嬢ちゃんらが初じゃないかの」

 

おじさんは笑いながらそう言うがこちとら全く笑えない。

こっちはジェット戦闘機だから・・・と慢心していたのもあるが食いついたら離さない・・・しかも必中距離まで撃ってこないという食いつかれるほうからしたから恐怖でパニックになりそうな戦い方をしてくる。

それを狙っているのかもしれないが・・・。

 

「さってと、帰ろ帰ろ!」

 

マヤは元気にそう言った。

 

「そうだね、疲れたし」

 

「私は今日寝れないかも・・・」

 

「トマホークが隣にいてくれたら大丈夫なんじゃない?」

 

「わう?」

 

トマホークはリリアのほうを見て首を傾げた。

 

「それは逆に寝れないわね」

 

「なんで?」

 

「ぜったい夜通しモフモフしちゃうから」

 

「わぅ・・・」

 

「あはは!トマホークが嫌がってるよ!」

 

トマホークは嫌そうな顔をした。

 

「なんでよー・・・1晩くらい・・・」

 

「ぐるる・・・」

 

「威嚇するほど嫌なの!?」

 

「そりゃトマホークも寝れないもん」

 

「うぅ・・・トマホークに振られたわ・・・」

 

なんて話をしながらのんびりと家に帰った。

やっぱり家は落ち着く。

 

「さってと、ご飯はどうする?」

 

「もう暗いし食べに行かない?」

 

「そうね・・・私行きたい店あるの!」

 

「え、どこどこ?」

 

「気になってたお店なんだけど・・・」

 

リリアがケータイで店のホームページを見せてきた。

そこは異世界の居酒屋を真似た店で料理はもちろん店の雰囲気まですべて異世界風ということだった。

つい最近オープンしたばかりだった。

 

「いいね!ここにしようよ!」

 

「うん、私もお酒飲みたい・・・けど、マヤは飲み過ぎ注意」

 

「う・・・気をつけます・・・」

 

「決まりね!あ・・・でもトマホークは・・・」

 

「リリア、メニューよく見て」

 

「え?」

 

メニューには犬や猫用のメニューがあった。

魔法使いの使い魔のためのメニューでもあるが基本的に普通の犬に食べさせても問題は無い。

 

「じゃあ行こ!」

 

「良かったね、トマホーク」

 

「わん!」

 

美味しいものが食べられると分かっているのかいつにも増して嬉しそうだった。

家を出て15分ほど歩いたところにその店はあった。

 

「これが異世界・・・」

 

「風だけどね」

 

店の中には日本語で書かれた札のようなものがたくさんあり、テレビには扉からこちらに送り込まれた日本のテレビ番組のDVD等が再生されていた。

 

「テレビは何言ってるか分からないけど、異世界も私たちと変わらないのかな」

 

「でもあんなに大きな街は無いわよね」

 

言葉は分からないが少しテレビを眺めていると航空系の番組に切り替わった。

内容は・・・どうも航空事故関係のようだ。

 

「うわぁ・・・この前事故に遭遇してばっかだし縁起悪い・・・」

 

「ほんとに・・・」

 

「ま、まぁほら!料理を注文しましょ!トマホークもまだか!って顔してるし」

 

「あ、そうだね!」

 

とりあえずということでサラダとお刺身、串ものを注文した。

トマホークには鹿肉と鶏肉を炭火で焼いたものを注文した。

お酒も頼み、来るのを待つばかりだ。

 

「ねぇハル、明日は?」

 

「んー・・・ストライクワイバーンの慣熟飛行でもしようかな」

 

「ねぇ、それって遠くまで飛ぶ予定ある?」

 

「気分次第で・・・どうしたの?」

 

「んとね、ちょっと地元の村に顔出したいなーって思って」

 

「了解、いいよ。明日はマヤの村に行こっか。リリアもいい?」

 

「あ、ごめんなさい。私明日はちょっと実家に帰らないと」

 

「あれ?家出してたんじゃないの?」

 

「してないわよ!半ば家出だけど!」

 

「家出じゃん・・・で、何かあったの?」

 

「お父様が結婚しろ結婚しろってお見合いセッティングの話をずっとするからちょっと話つけてくるのよ」

 

「お嬢様だもんね」

 

「そうだけど・・・私は戦闘機に乗ってるほうがいいわ・・・あ、そうだ。ハル、フルクラムって空対地ミサイル詰めたっけ」

 

「確か積めたはず」

 

「じゃあ爆装はミサイルとクラスター爆弾でいいわね」

 

「・・・ちょっと待って実家に帰るんだよね?」

 

「ええ、帰るわよ。でもお父様の執務室の近くをこの状態で飛んでやるわ」

 

「・・・」

 

「娘の言うこと聞かないとここを石器時代に戻してやるってアピールしてやるわよ」

 

なんて恐ろしい事を・・・

 

「まぁ対地ミサイル1発程度じゃ家も崩壊しないだろうし物置に1発ぶち込むつもりではいるけど」

 

「やめたげて」

 

そんな盛大な親子喧嘩聞いたことがない。

死人が出そうだ・・・。

 

「あ、ハル来たよ!」

 

続々と頼んだ料理が届く。

美味しそうだ。

 

「じゃ、かんぱーい!」

 

「かんぱーい!」

 

「かんぱい」

 

そしてビールを一気に飲む。

一気飲みは体に良くないがグビグビと行きたい気分だった。

 

「んくっ・・・ぷはー!染み渡るぜー!」

 

「はー・・・美味しいわー・・・」

 

トマホークも運ばれてきたお肉にがっついていた。

 

「そういえばマヤはなんで村に帰るの?」

 

「んーとね、私の妹の話ってしたっけ?」

 

「うん、爆撃機を信仰する会の幹部なんでしょ?」

 

「そうなんだけど、どうも最近内部分裂が起きそうになってるらしくて・・・」

 

「内部分裂?」

 

「なんかね、空飛んで爆弾積めたら全部爆撃機だろ派と爆撃機ってのはB-52とかそういう専用の機体の事を意味するんだ派とで・・・あ、あとなんか第三勢力的な感じで戦闘爆撃機も爆撃機だよね?派が・・・こっちは大人しいらしいけどね」

 

「なにそれ・・・」

 

「妹は全知全能の神B-52さえ崇めていればなんでもいいって言ってるんだけど・・・最近、全部爆撃機派と専用機派がお互いの集会所上空を爆装した状態で威嚇飛行を繰り返してるとかなんとかで・・・」

 

なんだその一触即発の状況は。

というかそれマヤになんの関係が・・・。

 

「まぁそんな事でちょっと妹の事が心配になったから帰ろっかなって」

 

「・・・良かった、その内部分裂組をすべて撃墜しろって依頼受けたのかと思った・・・」

 

「いやさすがにないよ!」

 

「なら良かった」

 

「そっちも大変ねー・・・」

 

「家を爆撃するつもりのリリアほどじゃないかな・・・」

 

「だからしないわよ!あのクソ親父がゴネたら庭に1発大穴開けてやるくらいよ」

 

「さっき物置って・・・」

 

「それは挨拶代わりに吹き飛ばすつもりよ」

 

「過激すぎない!?」

 

「こうでもしないと分かんないわよ、お父様は」

 

「さっきクソ親父って・・・」

 

リリアの言動がお酒が入っているからか過激になってきている・・・。

 

「とりあえずお見合い相手が来てるならその送りの車も爆撃しようかしら」

 

「死ぬよ!人が!」

 

「大丈夫よ、死なないように爆撃するから」

 

「そういう問題じゃないからね!?」

 

死なないように爆撃・・・いったいどうやるのか見てみたい。

 

「でも、あのヒゲだけは引きちぎってやるわ。いえ、燃やそうかしら・・・」

 

「あ、あのリリアさん・・・?実の父親になんてことを・・・」

 

「大丈夫よお母様にそんなことしないから」

 

「そういう話をしてんじゃないから!」

 

「なによじゃあ火炎放射器で燃やせばいい?」

 

「お父さん嫌いなの!?」

 

「大好きに決まってるでしょ。顔面に30mm機関砲弾ぶち込みたいくらいに」

 

「それは好きって感情じゃない!」

 

マヤがリリアにツッコミまくってる中私はお肉にがっつくトマホークを眺め、時々撫でながらお酒を飲んでいた。

そして3人ともほろ酔いといった感じになり帰路についた。

家に帰るとそのまま寝てしまった。

 

「ふぁ・・・」

 

差し込む朝日で目が覚める。

だが起き上がった時に昨日お風呂に入ってないと言うことに気づいた。

 

「あ・・・」

 

寝起きでボサついた髪がすこしベタつく。

 

「シャワーでいいや・・・」

 

2人はまだ爆睡していた。

私は先に起きてシャワーに向かう。

今日はマヤの村に行く。

行くのは初めてだが、楽しみだ。

妹もどんな人物か会ってみたい。

・・・ただ所属している爆撃機を信仰する会がちょっと怖いが・・・

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