高度20000フィートの大空で   作:イーグルアイ提督

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教団からの依頼

「おかえりなさい、お姉様」

 

「マイー!会いたかったよー!」

 

「私もですわ」

 

・・・想像と違う。

私がマヤの妹を見た瞬間に思ったことだった。

金髪のロングヘアで、いかにも聖職者ですと言った感じのシスター服を着ていた。

おまけに喋り方がお淑やか。

 

「ところでお姉様は何故ここに?」

 

「それはマイが心配になったからだよ。内部分裂だっけ?」

 

「えぇ、困ったものですわ・・・あ、それとハル様ですよね?初めまして」

 

「あ・・・初めまして」

 

「乗られている戦闘機は何ですか?見たことない機体・・・」

 

「えっと、X-02Sストライクワイバーンだよ。異世界からの新型機」

 

「ストライクワイバーン・・・いい名前ですね」

 

「私も気に入ってる」

 

「爆装は可能なのですか?」

 

「うん。JDAMとかも積めるようになってるよ」

 

「JDAMですか・・・あれは良いものです・・・」

 

・・・何故だろう。

爆弾の話になるとちょっと嬉しそうだ。

 

「実はこの前も精密爆撃に挑戦してみたのですが、やはりレーザー誘導もいいですがGPS誘導も良いものです」

 

「・・・ちなみにターゲットは何にしたの?」

 

「私達の教団に手を出した不届き者ですわ。なんて名前でしたっけ・・・あぁ、忘れてしまいました。でも・・・この世界から浄化されていくものを一々覚える必要などありませんわ」

 

・・・やっぱこの子ヤバい。

 

「・・・あの、ちなみになんだけど・・・浄化って・・・」

 

「空爆です」

 

「あ、うん・・・予想通り」

 

ある意味浄化だ。

・・・きれいさっぱり無くなるし。

 

「ねぇねぇ!立ち話もなんだし家にでも!」

 

「あ、それがなのですがお姉様。依頼をうけてくださいませんか?」

 

「え?」

 

「・・・嫌な予感」

 

「実はですね・・・」

 

一瞬、マヤから聞いていた内部分裂組の撃墜かと思ったが、教団に新しく導入される爆撃機の護衛をして欲しいという事だった。

 

「良かった・・・内部分裂組を撃ち落とせなんて言われなくて・・・」

 

「あら、そんな野蛮ではないですわ。あんなものほっとけば勝手に終わります」

 

「ほっとけば終わるんだ・・・」

 

「一応、この時まで終わらなければ・・・ふふっ・・・みたいな期間も設けてますよ」

 

「何その含み笑い怖い」

 

やっぱりマヤの妹すこしヤバい。

 

「あ、ねぇマイ。新しく入る爆撃機ってなに?」

 

「あぁ、それでしたらこれですよ」

 

写真を1枚取り出して見せてくれた。

機体はアブロ バルカン。

大きなデルタ翼が特徴の爆撃機だ。

でもこの機体は連邦の国防空軍しか保有していなかったはず・・・。

 

「あの、これ連邦の国防空軍のだよね?」

 

「えぇ、耐用年数が近くなってきたらしいのでうちで買い取る事にしたんです」

 

「でも連邦のって・・・」

 

「向こうの国にも教団の支部がありますし何より爆撃機好きに悪い奴は居ませんわ」

 

「いやまぁ・・・うん」

 

一応・・・一応だが連邦と王国は友好関係となっているが、連邦は王国を、王国は連邦を仮想敵国としていた。

国境線沿いまでは連邦軍機が護衛をし国境は超低空でレーダーに引っかからないように超えてくるのだとか・・・。

そして超えてきたところをこちらと合流、連れて帰れという事だった。

 

「もちろんお金は払いますわ。80万ドルでどうでしょうか」

 

80万・・・普通の仕事でもかなりいい部類だ。

護衛の仕事の相場は10〜20万ドル。

それが80万だ。

それに慣熟飛行の予定だったので小遣い稼ぎには丁度いい。

 

「分かった、それならいいよ」

 

「え、いいの?」

 

「護衛をしながらこの機体の能力を見たいし」

 

「りょーかい、ハルがそう言うならいいよ」

 

「契約成立ですわね。では二時間後に離陸は可能ですか?」

 

「二時間後!?」

 

「ええ、到着は今日の予定でして。ランデブーポイントはここ・・・えっとデルタ19の上空です」

 

「デルタ19って・・・」

 

デルタ19・・・それは戦争で放棄された街に付けられた略号だった。

放棄された街がある区域をアルファからフォックストロットまで各区域20個ずつに分けて地図に表していた。

ここはそのデルタ地区の19個目の放棄された街という事だった。

ちなみにこの国でもトップクラスに危ない街でもある。

国境に近い事、街の中には異世界からの扉が開いていること、街の近くには銃火器を扱える好戦的な山賊オークが住んでいること、街の中には山賊や一攫千金を狙う冒険者が常に戦闘をしているなど近寄るだけでも危ない場所だった。

そしてそれは王国軍も一緒で基本的にそんな場所には近寄ってこなかった。

だからこの街の上をランデブーポイントにしたのだろう。

 

「可能なら近寄りたくなかったけど・・・」

 

「あのあたり常に雷雲があるし不気味だもんね・・・」

 

「それもある」

 

「まぁ、空の上なら大丈夫だよね!」

 

まぁ・・・大丈夫ではあるだろう。

ただホントにあの辺は常に雷雲が発生している上に乱気流まである。

 

「まぁ何とかなるか」

 

私はそう呟いて機体に向かった。

 

「ハル、ごめんね」

 

「何が?」

 

「巻き込んじゃって」

 

「大丈夫だよ。それよりも内部分裂組を撃墜なんて言われなくて良かった」

 

「あはは・・・それは私も思った」

 

「まぁ、飛んできた爆撃機を護衛するだけだし、お金もたんまり貰えるし、慣熟飛行のつもりがいいお金稼ぎになったよ」

 

「そう言ってくれるとありがたいよ!」

 

「いえいえ。じゃあ行こっか」

 

「了解!」

 

私達はストライクワイバーンに乗り込んでエンジンを始動してタキシングする。

マイは私達が離陸していくのを見送っていた。

 

「ランディングギア、アップ」

 

車輪を仕舞って高度を上げていく。

デルタ19まではここから1時間の距離だ。

 

「さてと、のんびり巡航だね」

 

「だね!レーダークリア!」

 

「りょーかい」

 

目的地を機体のコンピュータに入力しようと思ったのだが表示される地図がどうもおかしい。

まぁそれもそのはず、この機体は異世界から来たオリジナルの機体。

この世界の地図はインプットされていなかった。

ただおかげでこの機体が来た国の名前が分かった。

 

「オーシア・・・?」

 

「何が?」

 

「この機体の航法装置の地図にそんな名前があった。たぶんこの機体が来た国の名前だと思う」

 

「ふーん・・・ねぇねぇ!それ以外にはどんな国がある?」

 

「えっとね・・・」

 

辛うじて読み取れる国だけ読み上げた。

エルジア、ベルカ、ユークトバニア・・・。

どれも普段私達が知っている世界の国とは違う名前だった。

 

「何か不思議だね、異世界が何個もあるって」

 

「異世界だから・・・とも言えるけどね」

 

通常ありえない事だからそんな事があっても仕方ない・・・と思えてきた。

ただいくら大量に異世界と繋がっても扉は物や小さな動物程度の生き物は通しても人等は通さない性質があった。

おかけで異世界の軍隊が攻め込んでくるなんて事がなくていい。

ただティーチャーのように何かの間違いでこの世界に送り込まれる人もいるのだろう。

 

「異世界か・・・」

 

「どうしたの?」

 

「いや、異世界の人からみたらこっちが異世界で・・・とか考え出したらキリが無くなりそうで」

 

「まぁね。宇宙がどうとか考えるのと一緒だよ」

 

「これだけで1日過ごせそうだね!」

 

「それするくらいなら仕事する」

 

なんて話しながら飛行を続けた。

もう間もなく合流時刻だ。

だが・・・

 

「ねぇハル、合流時刻的にはもうレーダーに映っててもおかしくないよね?」

 

「うん。もう国境は超えてるから高度を上げてるはず」

 

国境線沿いには無数の対空レーダーが設置されているが高度50m以下は探知出来なかったり、そこを超えてしまえば他のレーダー群はなかったりと割と雑な警備だった。

それも大陸が繋がっている連邦と王国が友好関係だから・・・ということとそもそも異世界のように国土全体に街があるというわけでは無いので何も無いところをいきなり航空機が入ってきたからと言って誰も気に止めなかった。

ただし、長距離を飛行できる戦略爆撃機のような航空機がレーダーに補足されると迎撃が上がってくる可能性はあった。

だから今回は低空で国境を超えるという手段を使ったのだった。

 

「マヤ、妹さんに連絡は取れる?」

 

「待ってね・・・えーっと・・・」

 

マイは無線機のある建物で待機しているという事だったのでその無線機の周波数に合わせていた。

 

「マイー?お姉ちゃんだよー」

 

《はい、何でしょうか》

 

「んとね、爆撃機がレーダーに映らないんだけど、どこ飛んでるか分かる?」

 

《・・・やっぱりですか》

 

「え?」

 

《実は国境線を超えた後から連絡が途絶えているのです》

 

「え、それって・・・」

 

《断定は出来ません。お姉様、可能でしたら国境まで飛べますか?》

 

「ハル、いける?」

 

「・・・無理かな」

 

燃料が足りない。

ここから国境まで行き往復となると、途中で燃料切れになる。

本当は捜索に行きたいがこのままだとこっちが捜索されるハメになる。

 

「テキサスまでギリギリ帰れる分しか残ってない」

 

《そうですか・・・分かりました》

 

「ごめんね」

 

《いえ、大丈夫です。ハル様はそのまま帰られますか?》

 

「マヤはどうしたい?」

 

「んー・・・まぁ妹の顔見れたし満足かな?」

 

「両親はいいの?」

 

「お父さんとお母さんは2人とも飛行機乗りで色んなところ行ってるからね。今回も居なかったみたいだし」

 

「そっか。じゃあこのまま帰投でいい?」

 

「うん!」

 

「了解」

 

「ということでマイ、またね!」

 

《はい、また近いうちに》

 

残念ながら依頼は失敗。

当然のごとく報酬は無しだが仕方ない。

私達はテキサスへの進路を取った。

 

「ねえマヤ」

 

「なになに?」

 

「ちょっと休憩してもいい?」

 

「うん!ずっと飛んでるから疲れたよね」

 

「うん。ちょっと自動操縦に切り替える」

 

私は進路、速度、高度維持装置の設定をした。

機体は自動的に安定した飛行に移る。

 

「何かあったら叩き起してくれていいからね」

 

「りょーかい!」

 

本来はダメだが私は疲れも溜まっていたので少し仮眠を取るようにした。

目を閉じるとすぐに意識が飛んだ。

 

「・・・ル!ハル!起きて!」

 

「ん・・・ん?」

 

「何か無線が・・・」

 

「無線・・・?」

 

《近くを飛行中の航空機居たら応答願う!!》

 

切羽詰まったような声と銃声が聞こえてきた。

 

《こちらは山賊と交戦中!航空支援求む!座標・・・》

 

聞こえてきた座標はここからすぐ近くだった。

燃料も何とか残っている。

 

「こちらエンジェル0-1」

 

《よかった!神よ・・・!》

 

「こちらはそちらからすぐの所を飛んでる。何があったの?」

 

《ダンジョン探索中のガンナーパーティだ!途中で山賊の集団と出会っちまったんだ!》

 

《アレン!こっちに来い!》

 

《行けるならそうしてる!!》

 

《またお友達だ!二時方向!!》

 

無線からは銃声と怒号が響く。

 

「そちらの状況を」

 

《状況・・・あぁ、クソッ!!さっきパーティリーダーが死んだ!ウチの回復担当の魔法使いも重症だ!》

 

「了解、すぐに支援するから!」

 

《了解!スモークを投げるからそこを掃射してくれ!》

 

「了解!頑張って!!」

 

私は急降下して目的地を目指す。

 

「ハル!燃料は大丈夫なの!?」

 

「何とかする!あの人たちを見捨てれない!」

 

「ハルらしいね!了解!助けよ!」

 

《スキフが撃たれた!!》

 

《大丈夫か!?》

 

《ちくしょう重症だ!!胸をやられてる!!アイツらの弾はボディーアーマーを抜いてくるぞ!》

 

《天使が来るまで耐えるんだ!》

 

《今じゃ天使なんて迎え以外に思いつかねぇよ!!》

 

《喋ってないで敵を殺せこのマヌケ!!》

 

無線から聞こえる状況は刻一刻と悪くなっている。

機関砲の残弾は980発。

20mmとはいえ詰まっているのは破砕榴弾。

効果はあるだろう。

 

「こちらエンジェル0-1!目標確認!」

 

《了解!やってくれ!》

 

《来たぞ!!》

 

私が狙っているのは人・・・そう考える間も無くトリガーを引いた。

引いた時間は2秒程度だが100発以上の20mm弾が敵の頭の上に降り注いだ。

 

「下はどう?!」

 

《エンジェル0-1!もう一度頼む!》

 

「了解!」

 

私は再度上昇して攻撃準備をした。

 

《20mm食らってまだ生きてんのか!!》

 

《何人かには当たってる!アイツら数が多いんだ!!》

 

《ここはもう持たない!移動する!!》

 

《援護する!》

 

まだ敵の数は多い。

下からは生々しい戦闘の状況が聞こえてくる。

 

《手榴弾!》

 

《ちくしょうこの蛆虫共が!!何人いやがる!!》

 

《そもそもここらで2番目くらいにでかい規模の山賊なんだ!これくらいいたって不思議じゃない!》

 

《ちくしょう何だってこんな仕事!!》

 

《いいから口より手を動かせ馬鹿野郎!!》

 

一刻も早く助けないと・・・。

そう思っていた時だった。

コックピットに警報が鳴る。

この警報は・・・。

 

「ハル!ロックオン!!」

 

「携帯SAM!?」

 

そしてミサイル警報が鳴った。

 

「ミサイルミサイルミサイル!!」

 

「分かってるよ!!フレア!!」

 

降下を止めてフレアをばら撒く。

ミサイルはフレアに釣られていった。

 

「ミサイルを持ってるやつがいて近づけないよ!!」

 

《バックブラストをこちらで確認した!片付ける!!》

 

《確認した!俺がやる!》

 

上空を旋回しつつ様子を見ていた。

その時だった。

 

『Bingo Fuel. Bingo Fuel.』

 

コックピットに自動音声が流れた。

ビンゴフューエル。

空港に戻るための最低限の燃料しか残っていないという警告だった。

 

「こんな時に・・・!!」

 

戦闘行動をしたため燃料の消費が激しい。

どんなに節約してもここからテキサスまでは1時間。

空港に降りる寸前か降りた後すぐに燃料切れを起こしてしまう。

 

「ハル・・・」

 

「クソっ・・・!」

 

燃料が持つ範囲に給油機は飛んでいない。

廃棄された飛行場はあるかも知れないが燃料はそこに無い。

私は、決断を迫られた。

 

「下のガンナーパーティ・・・ごめんなさい・・・」

 

《エンジェル0-1、どうした?!》

 

「燃料がもう・・・空港に帰れるだけしかない」

 

《・・・了解!支援に感謝する!》

 

「・・・ごめんなさい」

 

《なに、大丈夫だ!俺たちの街もテキサスだ、帰ったらビールの1杯くらい奢ってやるよ!》

 

《三時方向!!》

 

《確認!!》

 

私は旋回を止めてテキサスへ機首を向けた。

空域から離れるのが心苦しい。

 

《エンジェル0-1!帰ったらお茶か食事に行こう!》

 

「・・・うん、楽しみにしてる」

 

《その時は連絡先も・・・》

《RPG!!》

 

無線から聞こえたのは爆発音。

・・・その後は雑音しか聞こえなかった。

 

「・・・」

 

引き返したい。

その気持ちでいっぱいだった。

でも・・・それを出来るだけの燃料がない。

村で給油をしなかった事を後悔していた。

 

「・・・マヤ、帰ろう」

 

「うん・・・」

 

仕方ない・・・そう思うしかなかった。

彼らには運がなかった・・・。

 

「まさか・・・失敗続きになるなんてね」

 

「仕方ないよ。冒険者ってそういうリスクもあるんだから」

 

「まぁ・・・そうだよね」

 

「私達も急ごう。燃料が持たないよ」

 

「このままだと日光浴になっちゃうかな?」

 

「どっちかって言うと森林浴からの食物連鎖」

 

「それだけはやだ!」

 

「私も」

 

燃料計を見ると節約しながら飛べば着陸した後くらいに燃料が切れる。

滑走路の向きにもよるがギリギリ格納庫に戻れるかも知れない。

ただし・・・緊急事態宣言をしなければならないが・・・。

空港の運営者に緊急着陸時に全てにおいて優先してもらった事への料金を払わなければならないが・・・。

民間機なら何も費用はかからないのだが、冒険者で特に燃料切れという自分の責任になるものは料金がかなり高い。

150万ドルは持っていかれる。

でも自分の命と機体には変えれない。

 

「マヤ、緊急事態宣言」

 

「仕方ないかー・・・」

 

「ちょっとお金かかるけど仕方ない」

 

「だよね・・・了解!」

 

私は操縦に専念し、無線をマヤに担当してもらった。

 

「テキサスタワー、こちらエンジェル0-1。パンパンパン」

 

パンとは準緊急事態に陥った事を意味するコールだ。

メーデーは命に関わるような緊急事態を意味するが、パンは命に関わる程ではないが危険な状態を意味していた。

 

《エンジェル0-1、テキサスタワー。パンコール了解、どうされました?》

 

「えと、帰り道に戦闘を行ったために燃料がもうありません、緊急着陸を要請します」

 

《エンジェル0-1、了解。スタンバイ》

 

「これで大丈夫かな?」

 

「たぶん。燃料もまだギリギリ」

 

《エンジェル0-1、緊急着陸を承認します。滑走路はどちら側を使っても構いません》

 

「了解!ありがとうございます!」

 

「さぁ、降りるよ」

 

「任せたよ!ハル!」

 

空港はもう目視出来ている。

降下を開始した。

 

「燃料切れは恥ずかしい・・・」

 

「仕方ないよ!あんな事あったし・・・ね」

 

「まぁね・・・」

 

RPGという叫び声の後、無線機からは雑音しか聞こえなくなっていた。

銃声も何も聞こえなかった。

聞こえた内容からしてガンナーパーティは6人前後。

そのうち1人が死亡、2人が重症だった。

・・・生存は絶望的・・・そういう言葉が頭を過ぎったが考えない事にした。

 

「あと5マイル・・・」

 

その時コックピットに警報がなり始めた。

燃料ポンプの圧力異常だった。

 

「この高度なら・・・」

 

滑空も見据えて高めを飛行していたので滑空で充分降りられる。

そう思っていたら第一エンジンの回転数が下がり始めた。

続いて第二エンジンも。

 

「あー・・・ダメだったか」

 

「トーイングカーで引っ張ってもらうしかないね・・・」

 

「・・・変に目立ちそう」

 

誘導路をトーイングカーで引っ張られて格納庫に向かう姿を想像して恥ずかしくなる・・・がもうどうにもならない。

 

「タワー、エンジェル0-1。両エンジン停止」

 

《了解、着陸は可能ですか?》

 

「可能。トーイングカーをお願いします」

 

《了解》

 

「はぁ・・・」

 

ため息をついて操縦桿を握り直す。

その後は何事もなく滑空で着陸し、トーイングカーで引っ張ってもらった。

その間に今日あった護衛対象のロスト、救難要請をしてきたガンナーパーティからの交信途絶などを思い出していた。

 

「疲れた・・・」

 

でも今はその言葉しか出なかった。

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