高度20000フィートの大空で   作:イーグルアイ提督

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空賊基地の偵察

「・・・・・・」

 

「もー・・・ハルはいつまでそうやってるの?」

 

「・・・・・」

 

「まったくもう・・・・」

 

何もやる気が起きない・・・。

それが今の気持ちだった。

私はベッドに突っ伏していた。

 

「いつまで気に病んでるの?」

 

「・・・」

 

「ハル!」

 

「・・・そっちじゃない」

 

「え?」

 

私が今やる気を失っているのは一週間前に助けれなかったパーティのことではない。

確かにかなり落ち込みはしたが・・・。

 

「・・・トムキャット・・・」

 

「あ、あぁ・・・」

 

それはあの戦闘から帰った次の日のことだった。

F-14を定期検査に出したところ、色々な部分が傷んでおり、正直・・・もうこれ以上安全な飛行は保証できないということだった。

部品交換で騙し騙し使えないことはないが、主翼部分が部品交換でももう危ない状態らしい。

そして、私は泣く泣くF-14Dを廃機にし家の庭に置くことにした。

それが何よりのショックだった。

おまけに換えのトムキャットを買おうにもF-14シリーズその物が品薄だった。

 

「・・・トムキャットじゃなきゃ仕事しない」

 

「だからってふて寝しない!」

 

「・・・」

 

「ハルー!」

 

マヤは私を何としてでも起こしたいようだ。

 

「ほら!今からテキサスの航空機ショップに行ってみようよ!」

 

「・・・トムキャットが無いならやだ」

 

「子供かお前はー!!」

 

なんて事をすでに30分以上やっている。

そんな時、部屋のドアが開いた。

ちらっと見たらリリアだった。

 

「・・・何やってるの」

 

「あ!おかえりリリア!ちょっと手伝って!」

 

「ただいま。何があったのよ・・・」

 

「実は・・・」

 

マヤは起きた事をリリアに説明した。

 

「あー・・・それはもうそっとしておいた方が・・・」

 

「リリア分かってる〜」

 

「ハルはお黙り!!」

 

「くーん・・・」

 

「犬みたいに鳴くな!」

 

「わぅ?」

 

犬という単語に反応してトマホークが首を傾げていた。

 

「あ、そうだハル。いい話があるけど」

 

「・・・なに」

 

「さっき格納庫でおじさんから航空機ショップにトムキャットが入荷してたって話を・・・」

 

私はその話を聞いた瞬間飛び起きた。

 

「うわっ!?」

 

「マヤ行くよ」

 

「ハル!?」

 

トムキャットがあるなら行かなければ。

 

「でも、B型よ?」

 

「大丈夫、何百万積んでもいいからD型並にカスタマイズする」

 

「・・・あのハル?私達の食費は・・・」

 

「ここから数ヶ月はそこら辺のモンスター肉で」

 

「ちょっと落ち着いて!!」

 

「やかましい」

 

「なんで私がそんなこと言われなきゃいけないの!?」

 

「まぁ・・・行きましょうよ。多分今買わないとハルずっとこのままよ」

 

「だけど家計が・・・」

 

「あ、それなら大丈夫」

 

「え?」

 

リリアは笑顔でとんでもない事を言い出した。

 

「ほら、私実家に帰ったじゃない?」

 

「うん」

 

「それでお見合いがあるとか」

 

「そうそう。それで頭来たからとりあえず物置に対地ミサイルぶち込んだのよ」

 

「ごめん、ちょっと待って。リリアはなんの恨みがあってそんなことしたの!?」

 

「前に言ったじゃない」

 

「いや、聞いたけども!!」

 

「今回のマヤはツッコミ役」

 

「ハルはボケ担当になってるけどね!!」

 

「いぇーい」

 

「やかましいわ!!」

 

などと漫才のような事をやっていたが、とりあえずリリア曰く、父親を本気で空爆するぞと脅してみたらお見合いを見送る上に200万ドル渡すから爆撃だけは止めてくれ、実の娘に殺されたくないと200万ドル渡されたそうだ。

200万あれば半年は食べるものに困らない。

 

「まぁでも・・・お見合い相手には何故か気に入られちゃったんだけどね」

 

「・・・なんで?」

 

「なんかあんなアクティブな女の子が理想だー!って」

 

「へ、へー・・・変わった人もいるもんだね・・・」

 

「パッシブなら問題無かったかしら」

 

「まって、そんなレーダーみたいな話なの?」

 

「違うの?」

 

「どう考えても違うでしょ!!」

 

なんて事を10分近く続けていた。

 

「ねぇそろそろ」

 

「あ、そうね。行きましょ」

 

「はぁ・・・なんか疲れた・・・私お留守番でいい?」

 

「あら珍しいわね」

 

「誰のせいでしょうね!!」

 

「ハルじゃない?」

 

「ひどい。リリアでしょ」

 

「どっちもだよ!!いいから行ってきてよ!!」

 

「そんな怒らないでもいいじゃない。可愛い顔が台無しよ」

 

「やっかましいわ!!もう私を癒してくれるのはトマホークだけだー!!」

 

マヤはトマホークに抱きついていた。

仕方ないので2人で航空機ショップに向かう。

 

「あの子は元気ね」

 

「ホントね」

 

「ところであのトムキャットって何年乗ってたの?」

 

「確か3年。でも何回か墜落寸前まで損傷してるからこの時期が妥当なのかも」

 

「確かに・・・ハルは無茶するものね」

 

「1回は誰のせいでしょう」

 

「う・・・私のせいです・・・」

 

なんて仲良く話をしながら歩くこと20分。

店に着いた。

中に入り店員にトムキャットの事を聞くとどうも、おじさんが店に話を通していてくれたようですぐに機体の元に案内された。

 

「こちらになります」

 

「トムキャット・・・」

 

D型より少し古い型ではあるがそれでもF-14だ。

 

「これで」

 

「かしこまりました」

 

その後は淡々と手続きを済ませて明日には私たちの格納庫に納入される。

あとはここから2週間ほどかけてD型近くまでカスタマイズを行うつもりだ。

 

「良かったわね」

 

「うん」

 

「なんかハルが自然に笑ってるの初めて見たかも」

 

「なにそれ。人が無感情みたいに」

 

「実際そうでしょ?」

 

「違う」

 

確かにあまり感情豊かなほうではないと思う。

 

「で、これからどうするの?」

 

「んー・・・せっかくだし食費くらい稼ぎに行こっか」

 

「それがいいわね」

 

「マヤは・・・連絡してみるか」

 

そういうわけで電話をかけてみる。

 

「あ、マヤ?」

 

『なーにー?』

 

「今から仕事行くけどどうする?」

 

『うぇ!?トムキャットは!?』

 

「買った。食費だけでも稼ぎにいく」

 

『あー・・・どうしよ・・・』

 

「もしダメならいいよ」

 

『じゃあ今日はやめとくよ!リリアと行っておいで!』

 

「了解」

 

電話を切ってリリアにマヤは来ないという事を伝えた。

 

「あら、そしたら私が後席?」

 

「うーん・・・ねぇ、ミグを借りてもいい?」

 

「え?」

 

「せっかくだし、2機で行こうよ」

 

「んー・・・それもいいわね!あ、でもハルはミグ乗れるの?」

 

「マニュアルさえあれば」

 

「あるにはあるけど・・・まぁ飛ばせれない事はないわね」

 

「うん。初ミグだからちょっと楽しみ」

 

「じゃあ楽しんで。ミグもいい戦闘機だから」

 

リリアからミグについて熱く語られながらギルドのクエストボードに向かった。

 

「さて、何にする?」

 

「護衛は時間かかるし・・・あ、これとかいいんじゃない?」

 

内容は街から北西に約250kmのところにある放棄された飛行場が空賊の拠点になっている可能性が高いらしい。

そこでその廃棄された飛行場に向かい、どういう状況か偵察、空賊が使用している場合、可能なら空賊機を撃墜もしくは地上で破壊しろということだった。

報酬は25万ドル。

燃料代くらいは稼げそうだ。

 

「これで行こっか」

 

「了解!」

 

受付にクエスト申請を行い格納庫に向かう。

そこで武装を決める。

 

「武器はどうする?」

 

「AAMだけ搭載していこ。30mm機関砲なら数発で戦闘機くらい破壊できるから地上目標は機関砲で」

 

「了解、でもハルは地上掃射苦手なんじゃないの?」

 

「苦手なだけで出来ないわけじゃないよ」

 

「カッコイイこというじゃない」

 

「戦闘機乗りとして当たり前」

 

「ファンができる理由が分かるわ・・・」

 

「なにそれ」

 

なんて話をしながら搭載武器を決め、整備のおじさんに伝えた。

 

「なんじゃ今日はハル嬢ちゃんはミグか」

 

「うん。マヤも居ないし」

 

「そうかそうか。了解じゃ。でもなんでR-27なんじゃ?77は詰んのか?」

 

「セミアクティブ慣れしてるから」

 

「便利なんじゃがの・・・あ、でも27ETは積むのか」

 

「格闘戦に備えてね」

 

「了解じゃ!」

 

ちなみにR-27ETとは中射程ミサイルR-27の赤外線ホーミング型だ。

簡単に言うとサイドワインダーが中射程ミサイルになったようなものだ。

 

「搭載数は短射程が2、中射程が4・・・増槽1・・・リリア、弾薬が尽きた場合の援護お願いね」

 

「任せて、こっちはR-77をフルで積んでいくから」

 

「了解。じゃあ行こうか」

 

「うん!」

 

ミサイルと燃料の搭載を確認して乗り込む。

 

「意外と何とかなりそう」

 

マニュアルを見ながら空動作でエンジン始動をしてみるが何とかなりそうだ。

 

「よし。あとは飛びながら慣れよう」

 

《ハル、大丈夫?》

 

「うん。いつでもいいよ」

 

《了解、行きましょ!》

 

格納庫から引っ張り出してもらいエンジンを始動する。

当たり前だが慣れたF-14とは運動性能も何もかも違う。

そこを忘れないようにして飛行しよう。

 

「タワー、こちらエンジェル0-1。」

 

《エンジェル0-1どうぞ》

 

「北方向への出発を要請」

 

《了解、北方向への出発を承認します。滑走路35へ向かってください。》

 

「エンジェル0-1、了解 」

 

出力を上げてタキシングを始める。

今日は少し混み気味だ。

 

「今日は離発着が多いね」

 

《そうね。いつもながらの光景だけどね》

 

「まぁね」

 

滑走路に向かい2000mほどタキシングしたところで管制塔から無線が入ってきた。

 

《エンジェル0-1、現在位置で停止してください》

 

「了解」

 

《渋滞ね》

 

「仕方ないよ」

 

滑走路まであと800mほどだが前に旅客機、その後に戦闘機が3機並んでいた。

そして遠くからは着陸進入してくるB-767が見えた。

 

《滑走路本数増やせばいいのに》

 

「領主側は増やしたいらしいけど住民の反発があるんだってさ」

 

《あら、そうなの?》

 

「街の景観的にこれ以上飛行場が大きくなると・・・だって。それに滑走路を増やすなら家を少し潰さないといけないし」

 

《まぁそうよね・・・》

 

「でも飛行機無いと生きていけないし難しいところだよね」

 

なんて話しながら待つこと10分。

ようやく滑走路手前まで来たがここでも一時停止だ。

 

「ふぁ・・・」

 

《ちょっと、寝ないでよ》

 

「分かってるけど・・・今日暖かいし」

 

《いつもでしょ》

 

「コックピットにいると特別」

 

《だからって居眠りはダメだからね!》

 

「そんな言わなくても分かってるよ」

 

そうこう話してるうちに目の前にほかの冒険者の戦闘機が着陸していった。

 

《エンジェル0-1、0-2滑走路進入を許可》

 

「エンジェル0-1了解」

 

滑走路に進入してもう一度停止した。

もうここまでで30分はかかっている。

 

「ようやくだね」

 

《そうね、早く上がりたいわ》

 

そう言っていると離陸許可が下りた。

私達は出力を全開にして離陸した。

 

「空は自由でいい・・・」

 

《ハルは下でも自由だけどね》

 

「人とは自由であるべきなのだー」

 

《・・・何言ってるの?》

 

「ノリ悪い」

 

《どう乗ればいいのよ!!》

 

「そこは何となくで。で、北西だから方位300くらい?」

 

《話いきなり変えてくるわね・・・えーっと・・・方位300・・・でいいわね》

 

「了解。撃墜数増やして帰るよ」

 

《ハルが落ちないこと祈るわ》

 

「酷いな。私は今まで落ちたことがあるみたいな」

 

《何回かあるでしょ。落ちなくても落ちかけた事は》

 

「えーっと、そのうちの2回か3回はリリアのせいだったけどね?」

 

《うぐっ・・・》

 

「自分で言って墓穴掘ってやんの」

 

《う、うるさいわよ!!》

 

「ふふっ・・・」

 

リリアのフランカーは感情を表すかのようにフラフラと揺れていた。

目標までまだあと200km。

のんびりと行こう。

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