離陸して20分。
目標近くの山岳地帯に来た。
もうそろそろだ。
「リリア、何かレーダーに映ってる?」
《なにも・・・なんかここまで近くに来てるのに居ないって不気味ね》
「警戒を怠っちゃダメだよ」
《分かってる》
そう言った瞬間だった。
レーダー警報が鳴った。
「レーダースパイク!」
《こっちも!補足された!?どこから!?》
「レーダー波は前方から・・・となると・・・」
少し上を見ると何かが太陽光を反射していた。
「見つけた!12時方向!上!!」
《上!?》
敵機を見つけたその時、警報の音が変わる。
これは断続的なレーダー照射を受けている時の音だ。
主にレーダー誘導式のミサイルを撃つ時にこの方法を使う。
つまり・・・
「発射煙!ミサイル!!」
《確認!ブレイク!》
チャフをばら撒きながら逃げる。
「リリア!高度を下げて!」
《稜線を使うのね!了解!》
「その通り!」
稜線に隠れて敵の視界から逃れる。
格闘戦に持ち込みたいが敵がどういう戦闘機なのか分からない以上下手に格闘戦に入れない。
「リリア、77は撃てる?」
《補足さえ出来ればね》
「分かった。私が1回急上昇して相手の視線をこちらに向けるからその時撃って」
《何言ってるの!危ないわよ!!》
「危険は承知の上!逃げてばかりじゃ勝てないよ!」
《あーもう!ホント、ハルにファンが出来るの理解出来るわ!了解!!》
私は一気に急上昇する。
山から出た瞬間レーダー警報がなりはじめた。
その時、すぐ近くに敵機を見つけた。
あれは・・・F-16・・・!!
「リリア!敵はF-16!」
《16!?ってことは・・・》
「アムラームっぽいのも翼に見えた!スパローかも知れないけど警戒して!」
《了解!》
なんで空賊がF-16なんか・・・と思ったが希にF-15を使う集団もいる。
なにも全部が全部Mig-21なわけがない。
《捕らえた!ハルの後ろのファルコンを撃つよ!》
「了解!」
《FOX3!》
撃たれたことに気づいたF-16はチャフをばら撒きながら右に急旋回した。
《行け行け行け!!》
敵機までの距離は約3マイル。
私もミサイルを目で追っていたが、ミサイルはギリギリの所でかわされた。
《外れた!》
「F-16の機動力、馬鹿にできないね!」
《同意見!》
そうこう話してるうちに敵機は2機から3機に増えていた。
増援・・・というよりは最初から居たが補足できていなかった敵だろう。
「リリア、援護に入る」
《分かった!後ろはお願い!》
「了解」
今散り散りで戦うより編隊で戦闘をしたほうが得策だろう。
私はリリアの援護位置についた。
「R-27ET・・・ある意味これが切り札かな」
ある程度の距離からミサイルを撃たれれば、敵はそれがレーダー誘導式のミサイルと思い込むはずだ。
乱戦になった今なら尚更だ。
きっとフレアではなく、チャフを撒くはず。
そこを狙う。
《フランカーを舐めないでよ!ロックオン!FOX3!》
リリアは捕らえた一機に向けてミサイルを発射した。
距離は2マイルもないほどだが・・・。
だが敵は腕がいいのだろう。
またギリギリでかわした。
「リリア、近すぎ」
《言われなくても分かってるわよ!》
「交代。私の援護に回って」
《分かったわよ!》
フランカーが援護位置に着こうと動いたのを確認して目の前にいるF-16を追いかける。
「IRミサイルなら・・・!FOX2!」
機動力の高いR-73ならこの1.5マイル程度の距離から撃てば逃げられないはずだ。
「いけいけいけ!当たれ!!」
ミサイルは願い通りか敵機に命中した。
エンジン付近に命中し大きく抉れ破損した機体尾部が見えた。
火を吹きながら落ちてゆく。
「撃墜!」
《グッドキル!》
「次行くよ!」
《了解!バンディット、3時方向に確認!》
「一機落とされてムキになってるよ、警戒!」
残り3機、今確認出来るのは2機だ。
あと一機はどこだ・・・。
「リリア!編隊を解くよ!あと一機が隠れてるからソイツを私が探す、リリアは2機をお願い!できる?!」
《大丈夫!やれるわ!》
「了解!」
私は急降下して稜線に向かう。
きっと稜線を利用して近づいてきているはずだ。
《よーしそのまま・・・ロックオン!》
チラッとリリアのほうを見るとすでに一機を補足し攻撃態勢をとっていた。
私はすぐに視線を前に戻す。
《撃墜!次!!》
上空ではすでに一機撃墜されていた。
私は低空を慎重に飛ぶ。
「どこだ・・・私ならこのあたりから狙うはず・・・」
集中して敵を探す。
すでに補足されているのでは・・・と少し恐怖心もあったが気にしないようにしていた。
「大丈夫、ミグなら格闘戦になっても勝てる」
自分に言い聞かせるようにそう呟いた瞬間だった。
前方にある山の隙間からF-16が飛び出してきた。
・・・ビンゴだ。
不意打ちを仕掛けようとしていた敵機は私の予想どうりの場所に飛び出してきた。
相手は慌てて急上昇した。
それに続く。
「ここで急上昇なんて撃ってくださいって言ってるようなもんだよ!!」
短距離ミサイルを選択し、ロックオンした。
「FOX2!」
発射ボタンを押す。
相手はフレアを撒いて必死に急旋回した。
その時、偶然か敵機の逃げた先にもう一機のF-16が突っ込んできた。
リリアに追いかけられていた敵機だった。
2機は不運にも空中衝突を起こした。
一機は左の主翼を。
もう一機はその主翼に機首から突っ込んだため、機首が潰れていた。
コントロールを失った敵機は炎上し錐揉みを起こして落ちていった。
ベイルアウトは確認出来なかった。
《わーお・・・これはひどい》
「運がなかった」
《そうね・・・えーっと、空域はクリア?》
「たぶんね。敵基地に向かおう」
《りょーかい・・・ってあら?》
「どうしたの?」
《レーダーコンタクト・・・一機だけ》
「敵?」
《分からないわ》
「了解、確認しよう」
《了解》
リリアが捕らえたという航空機の方向に進路を変える。
「距離分かる?」
《えーっと・・・4マイルね。なんでこんな近くに・・・》
「レーダー照射は受けていないから・・・でも警戒は怠らずに」
《了解》
輸送機かそれとも・・・と考えていたら目標をうっすらと確認できた。
機首で何かがキラキラと光っている。
プロペラ・・・?
「ねぇリリア・・・あれプロペラじゃない?」
《えぇ・・・ということは・・・!》
「・・・ティーチャー!!」
私達は高度を稼ぐために上昇すると目標もそれに追従した。
間違いない、ティーチャーでなくとも攻撃の意思がある戦闘機だ。
「相手がティーチャーでもこっちは2機、挟むよ!」
《了解!まだ残弾は残ってるから!》
「分かってると思うけど単機だと食われる。連携していくよ」
《食いつかれてた私が1番良くわかってるわ・・・》
その間にも距離は縮まり2マイルほどになった。
「牽制で1発お願い」
《了解!FOX3!》
リリアがミサイルを1発発射。
様子を見る。
「やっぱりティーチャーか・・・化け物みたいな動きしてる」
《ミサイルが効かないんじゃどうしようもないわよ》
「当たれば落ちるよ。当たればね」
《じゃあ手本見せてよ》
「無理」
実際、ミサイルを引き付け綺麗なバレルロールでかわしてみせたあの動きを見たら勝てる気がしない。
だが補足された以上背を見せて逃げるわけにもいかない。
「格闘戦に入るよ!」
高速で真正面からすれ違う。
間違いない、ついこの前見た戦闘機・・・ティーチャーの乗機だ。
簡単なクエストのはずが化け物相手の空中戦になってしまった。
「相手が化け物なんて・・・シャレになってないよ!」
《こっちはこの前と違って空中戦用の装備なのよ!負けないわ!》
「だからって油断は禁物!」
目で敵機追い旋回しつつそう話した。
相手は機関砲しか持たないプロペラ機・・・と信じたい。
距離さえ取れば空対空ミサイルで勝てるはすだ。
「残弾は短射程・・・もう残ってない・・・中射程が4・・・」
中射程ミサイルしかないなら距離を取りたいが下手に離脱しようとすると背後を取られる可能性がある。
「どうする・・・」
そう呟いた時だった。
敵機の機首がいきなりグンっと上がり急減速した。
敵はコブラを行い急減速した。
私は下手に考え事をしたせいで反応が遅れ背後を取られた。
「しまっ・・・!!」
《ハル!!》
直後に機体に衝撃が来る。
そして操縦桿の縦方向への反応が極端に鈍くなる。
後ろを見ると片方の水平尾翼が無くなっていた。
敵機は私を追い越して上昇して行った。
「尾翼が・・・!!」
《脱出して!!》
リリアがそう叫んだ。
私は急いで射出レバーを引いた。
だが・・・
「・・・反応しない」
レバーを引いてもキャノピーは飛ばず、シートも射出されなかった。
《なんで!!脱出してよ!!》
ほとんど金切り声だ。
脱出したいが・・・これじゃ無理だ。
「・・・リリア、逃げて」
《え!?》
「私が引きつける。逃げて」
《嫌!!》
「逃げて!!私は何とかするから!!逃げてマヤとヘリで助けに来て!!」
私は無線に怒鳴るように言った。
《・・・分かった》
フランカーが離脱するのを確認した。
私はティーチャーを再び探した。
だけどいつの間にか居なくなっていた。
「助かったのかどうなのか・・・」
ため息を付きつつ上を見上げると太陽を背にティーチャーの機体が見えた。
・・・反復攻撃・・・か。
「・・・やられた・・・ごめんね、マヤ」
もう回避も間に合わない。
最期の言葉くらい残す暇を与えてくれてもいいんじゃないか・・・。
そう思い目を閉じた。
「ん・・・」
体の痛みで目を覚ます。
「生き・・・てる・・・?」
痛む体をすこし捻って外を見た。
運がいいのか悪いのか・・・機体は墜落こそしたものの斜面を滑るように落ちたようだ。
それに火災も発生していないとはまた幸運だった。
だけど・・・酷く胸のあたりが痛む。
肋骨の1本くらいは折っているかもしれない。
ただ手足は無事だった。
あとは内蔵くらいか・・・。
「いた・・・とにかく脱出しなきゃ・・・」
火災は起きていないとはいえ、いつ火がつくか分からない。
幸いにもキャノピーは衝撃で破損し割れていた。
自衛用の拳銃と予備の弾倉を持って外に出た。
「はぁ・・・足も折れてはないけど痛い・・・走れないかな・・・」
とにかく離れよう。
私は危険ではあるが近くの森に逃げ込む事にした。
運良く近くには綺麗な小川もある上に木には果実が実っていた。
飢えや乾きですぐに死ぬ事は無さそうだ。
・・・すぐに・・・というだけだが。
「弾は・・・9mmRIPを込めてきてて良かった」
弾倉に詰まった弾を見て呟いた。
RIPとは弾芯の周りが鋭く尖った爪のようなもので覆われていて、それが標的に着弾するとその爪のような部分がそれぞれバラバラに標的の体内で散り非常に大きなダメージを与える弾丸だ。
簡単に言うならダムダム弾のような弾丸だ。
最近、魔獣に対して非常に効果のある弾丸と評価されていた。
「とりあえず木に・・・」
私は近くにあったおおきな木にもたれかかった。
「うぅ・・・いたた・・・」
足と胸が痛む。
服をめくってお腹も見てみたが・・・素人目には内蔵がどうなってるかは分からない。
「はぁ・・・」
いつ来るか分からない助けを待ちため息をついた。
その時だった。
草むらを掻き分ける音がした。
「嘘でしょ・・・」
拳銃を握って警戒する。
「お願い・・・山賊じゃありませんように・・・」
そう祈った。
だが・・・チラッと見えた格好はどうみても山賊だった。
墜落機の状態を確認しにきたのだろう。
「捕まったら割とマジでシャレにならない・・・」
特に若い女性なんて・・・。
私はゆっくりと拳銃を構えた。
「この辺か?戦闘機が落ちたのって」
「あぁ、原型が残ってれば回収して売っちまおう」
「パイロットは?」
「ほっとけ、どうせ死んでんだ」
なんて話をしながら私の前を通り過ぎた。
下手に手を出さないようにしよう・・・。
その時だった。
「・・・くしゅん!」
・・・・・・私のバカ。
くしゃみが出た。
「なんだ!?」
・・・気づかれた。終わった。
私は素早く相手の頭を撃った。
「うぉっ!?」
驚くもう一人も素早く撃つ。
倒れたのを確認した時、遠くから声が聞こえてきた。
「そりゃ2人なわけないよね・・・」
私は痛む足を引きずって森の奥へと逃げる。
だが足を引きずっているため移動が遅い。
「いたぞ!!」
見つかってしまった。
私は応射する。
「早すぎるよもう!」
さすがのRIP弾。
当たれば敵の動きは完全に止まる。
だが敵も撃ち返してくる。
「ひぐっ・・・!」
弾丸が掠めて反射的に身を縮めた。
「もうやだ・・・!!」
拳銃を撃ちながら泣き言を言う。
弾薬だってあまりないのに敵は多い。
捕まりたくもないし死にたくもない。
その時だった。
「あぐっ!!」
肩に強い衝撃、その後焼けるように熱くなる。
見ると血で染まっていた。
「うわぁぁぁぁ!!」
痛みと焼けるような熱さで思わず叫ぶ。
そして何人かの山賊が近くまで迫ってきた。
「やだ・・・!やだ・・・!!来ないで!!」
残った弾丸を敵に向かって撃ちまくる。
だが2,3人に当たりはしたが・・・そこで弾切れだ。
「う、うわぁぁぁ!やだ!来ないでってばぁぁ!!」
これから起こることを想像してしまい、叫びながら後ずさる。
「久々にいい女だ」
「安心しな、殺しはしねぇ」
じりじりと近寄る山賊。
弾切れだが私は恐怖のあまりトリガーを引き続けた。
「やだ・・・!誰か・・・助けて・・・!!助けてぇぇぇ!!」
半分狂ったようにそう叫んだ。
その時だった。
「コンタクト!!」
「右に敵!!」
「左に敵2!」
私が後ずさっていた方向から数人出てきた。
目の前に居た山賊を次々と射殺していった。
「大丈夫か!」
「え・・・?え・・・?」
「もう大丈夫だ、今診てやるからな!」
「大尉!そっちはどうだ!!」
「クリア!!」
この人たちの話している言葉・・・英語・・・?
異世界の言語だ。
学者でもない限り話す人は居ない。
私はマニュアルを読むために多少学んだ程度だったが。
私に話しかけてくれた人はこの世界の言葉を話していた。
「もう大丈夫、血は止まったから」
「あ・・・ありがと・・・」
何が起こったのか分からない。
だが助かった・・・。
私は緊張の糸が途切れたのかそこで意識を失った。