高度20000フィートの大空で   作:イーグルアイ提督

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救助

「ハルちゃん、ごめんねぇ。いきなり飛行機を飛ばせって言っちゃって」

 

「ううん。大丈夫。操縦するのは好きだから」

 

私は住んでいる村から近くの街の病院へと村の高齢者を定期検診に連れていった帰りだった。

飛ばしているのはホーカー100。

小型のビジネスジェットだ。

村のバス代わりの飛行機だった。

私はついこの間、戦闘機の免許を取得し、村で航空機を飛ばせる人が少なかったために私がバイトのような形で飛ばすことになった。

隣には飛行機乗りになって30年は経つベテランのおばさんが乗ってくれていた。

この機体ももう3000時間以上乗っていた。

 

「どう?飛行機は」

 

「楽しい。空って綺麗だなって」

 

「でしょ〜。ハルちゃんもそのうち、戦闘機で成層圏まで登ってみなさい。あのダークブルーの空は忘れられないわよ〜」

 

「うん。でもお金貯めないとだし・・・あとパパとママが許してくれるかな」

 

「2人とも飛行機は嫌いだったものね」

 

「うん。おじいちゃんが飛行機事故を起こしちゃったからね」

 

元々、レシプロ戦闘機乗りだった祖父はジェット機に乗りたいと言い出しF-86を購入してきた事があった。

そしてその機体に乗り始めて1週間も立たないウチに事故を起こした。

その事故も悲惨だった。

たまたま祖父の操縦する機体と同高度、同経路を飛んでいた魔法使いと空中衝突を起こした。

魔法使いはもちろん即死。

祖父も衝突の衝撃で気絶しコントロールを失った機体は地面に激突した。

それ以来、両親は飛行機に乗ることを強く反対するようになった。

私は半ば強引に戦闘機乗りになるため免許を取得した。

 

「まぁでもハルちゃんもいい大人の女性だし自分の考えで生きるべきよ」

 

「そのつもり。戦闘機を買ったら冒険者になる」

 

「あら、そしたら私のお古の拳銃でもあげようかしら」

 

「お古の?」

 

「ずっと使ってた護身用の拳銃。古いけどまだまだ動くわよ」

 

「じゃあ、ありがたく」

 

なんて話をしながら飛行を続けていると眼下を捜索救難機、U-125が。

それに追従して空中消火が可能な消防仕様のC-130。

またUH-60やCH-47も飛んでいった。

こんな大規模な緊急用航空機の編隊は飛行機事故・・・しかも旅客機が落ちたようなレベルの事故だった。

 

「やーね、縁起でもないわ」

 

「うん・・・でも向かってる方向が・・・」

 

「ええ、村の方向なのよね・・・」

 

「急ごう」

 

少し加速し飛行を続けると嫌な予感がしてきた。

立ち上る煙、そしてその煙があるのが村の近く・・・いや、私達の村のような気がしてならない。

 

「ハルちゃん、操縦をお願い。村長と話す」

 

「分かった」

 

「こちらシニアバス450。村長、聞こえますか」

 

無線からは雑音のみ・・・と思った時、応答があった。

 

《シニアバス450!緊急事態!》

 

聞こえた声は村の副村長だった。

 

「緊急?それよりも村長は?」

 

《村長は亡くなられた!》

 

「はぁ!?」

 

《飛行機事故だ!!旅客機が落ちてきた!》

 

「む、村の被害は・・・」

 

《家が1軒・・・あぁ・・・ハルはそっちにいるか?》

 

「あ、い、いるけど・・・」

 

心臓の鼓動が早い。

この後のことを想像してしまう。

嘘であってほしい。

その気持ちでいっぱいだ。

だが・・・

 

《落ち着いて聞いてくれ・・・君の家に・・・落ちたんだ》

 

「え・・・?」

 

《今・・・捜索してるが・・・すまない、絶望的だ・・・》

 

「え・・・え・・・?う、嘘・・・だよね・・・パパ・・・?ママ・・・?」

 

「ハルちゃん、操縦を変わって」

 

「そんな・・・リンも・・・?嘘・・・そんなの・・・」

 

「操縦を代わりなさい!!」

 

私は家にいた両親と妹のリンの事が頭の中でぐるぐると回っていた。

おばさんの声も聞こえていない。

私は操縦桿を強く握りしめたままだった。

 

「左に傾いてるの!ハルちゃん!!」

 

その時、右の頬に強い衝撃。

おばさんにぶたれていた。

 

「操縦桿を離して!!」

 

「あ、あ・・・ゆ、ユーハブ・・・」

 

「アイハブ!」

 

水平義を見ると左に酷く傾いていた。

どうやら無意識にこの場所から去ろうと思ったのか左に旋回させていたようだ。

しかも戦闘機を飛ばす勢いで。

そして村に正対し煙の上がっている場所を見つけた時、ショックのあまりなのか意識を失った。

おばさんが必死に起こそうとしていてくれた気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん・・・」

 

「あ!気づいた?よかった〜・・・」

 

「おばさん・・・?」

 

「はぁ!?誰がおばさんよ!!」

 

「え・・・?いたッ!!」

 

「あぁ!無理しちゃダメだよ!撃たれてるんだから!」

 

「撃たれた・・・あ・・・」

 

さっきまでのは全て夢だったようだ。

忘れたくても忘れられない記憶・・・。

それよりもここはどこだ?

 

「ねぇここ・・・」

 

「待っててね!」

 

私を看病していてくれた白衣の女性は部屋から出ていった。

・・・少し揺れる感覚がある。

・・・船?

しばらくすると女性は白髪の男性を連れて戻ってきた。

青い海のような柄の迷彩服を着ていた。

 

「初めまして。無事でよかった。酷くうなされていたと聞いていたから」

 

「あ、えと・・・」

 

「私はこの船の艦長のトム。こっちは本艦の医者のベルだ」

 

「よろしくねー」

 

「えと・・・あの・・・」

 

「ハルちゃんでしょ?勝手に身分証見ちゃったからね」

 

「あ、うん・・・えと、それよりも船・・・なの・・・?」

 

「あぁ。駆逐艦ハルゼーへようこそ」

 

「ハルゼー・・・?」

 

「ふふふー、びっくりすると思うけどね。この船なんと!世界に1隻しかないアーレイ・バーク級なのです!」

 

「アーレイ・バーク・・・」

 

その時昔の記憶がフラッシュバックする。

騎士団のP3Cを撃墜した海賊船を。

 

「!!」

 

無意識に私は後ずさる。

 

「わわ!?どうしたの?!」

 

「か、海賊・・・!」

 

「海賊・・・?あ、トムの見た目が?」

 

「誰がだ」

 

「ふざけないで!テキサスの近くでP3Cを落として私達まで攻撃しようとしてきた!」

 

「P3・・・あぁ・・・君はあの時の・・・」

 

「私は・・・お金なんて持ってない・・・」

 

差し出せる物なんて何も無い。

そうなると・・・。

 

「すまない、あれは仕方なかった。私達は・・・この世界の人間ではない。ベルはこの世界の人間だが」

 

「え?」

 

「私達はこことは違う世界から来た。私達はアメリカ海軍だ」

 

「え・・・?扉の向こうの・・・?」

 

「訓練中に突然の悪天候から落雷を受けて気づいたらここにいた。」

 

そして艦長は海賊となってしまった経緯を話してくれた。

まず、この世界の言語は英語に似ているようで違い、言葉の壁があった。

そしてこの船をいきなり攻撃してくる航空機や艦船があった。

そのため、どれが敵でどれが敵ではないのか分からなくなってしまった。

敵味方識別装置も反応がない。

そして知らず知らずのウチに冒険者や王国軍までも手にかけていた。

そしてこの世界に来て半年程たち、ある程度言語を取得できた時、補給拠点として停泊させてもらっていた港町にある噂が届いた。

・・・この船は海賊船だと。

しかし、港町の住人は暖かくこの船とクルーを受け入れてくれた。

この船が近くを通る海賊船や空賊を撃退していたからだ。

それにこの世界には扉の向こうに異世界があるということが分かっている。

そしてその異世界から来たという事もすぐに分かってくれたそうだ。

また、海賊となってしまった経緯には彼らの所属していた軍での交戦規定のせいでもあった。

異世界では火器管制レーダーを相手に照射する行為は戦争行為なのだが、この世界では火器管制レーダーは敵味方識別の一つとしても使われていた。

つまり火器管制レーダーを警告無しに照射して撃ってくれば敵、警告があれば味方という事だった。

冒険者も王国軍も明らかに敵という目標以外には火器管制レーダーを照射されてもまずは警告を行う。

そしてその警告は1度きりなのだが、これに応答しない、もしくは撃ってくる場合は敵と判断して攻撃という事だった。

だから彼らは突然のレーダー照射を受け元の世界での規定に従い、反撃をした迄だった。

それにこの世界で例え異世界から来た人間だろうが冒険者や王国軍などに手をかけた者は無条件でお尋ね者になってしまう。

そもそも異世界から人が来るという事を想定していなかったからだ。

だから、気付けば海賊扱いだった。

 

「そうだったんだ・・・」

 

「君は信じてくれるのか?」

 

「ここまで手当してくれて信じない方が酷いと思うけどな」

 

「まぁ、そうだな。君は1人か?」

 

「ううん。本当なら迎えのヘリが来るはずだったけど・・・」

 

「迎え?もしかして墜落地点に向かうUH-60か?」

 

「たぶんそれ」

 

「了解した、本艦に誘導して君を拾ってもらう」

 

「え、でも・・・」

 

艦長は足早に部屋を出た。

 

「良かったね、迎えが来てて」

 

「うん。治療してくれてありがと」

 

「いえいえ。私これでも回復魔法使えるからね!肩の傷口とあとお腹に残ってた傷も直しておいたよ。男の人にその傷見られたら大変だもんね」

 

「男の人って・・・」

 

「お、その反応はまだ彼氏とか出来たことないなー?」

 

「そんなの飛ぶのに必要ない」

 

「おー・・・こりゃまた・・・」

 

「なに?」

 

「べつにー?」

 

ベルは笑ってそう言った。

その時、艦長が入ってきた。

 

「はやっ!!10分も経ってないよ!?」

 

「連絡がついた。今こちらに向かっている」

 

「マヤがまさか信じるとは・・・」

 

「最初は大変だったがな。とにかく、ヘリ甲板に向かおう。もうあと10分もあれば到着する」

 

「だってさ、行こっか!短い間だったけどまた会おうね!」

 

「うん。本当にありがとう。トム艦長も・・・」

 

「久々に感謝される事が出来て良かった。ただ私達と関わったとことは言わない方がいいだろう」

 

「分かってる。でもこれであなた達が悪い人じゃないって分かった」

 

「それが分かってもらえただけでも満足だよ」

 

ヘリ甲板まで色々と話しながら歩いた。

その時に、さっきは何か悪い夢でも見たのかと聞かれた。

私は、特段隠す必要もないので夢の内容と自分に起きた事を話した。

 

「誤射で民間機の撃墜・・・か」

 

「しかもそれが自分の家の上に落ちてくるなんてね」

 

「もう、大丈夫なのか?」

 

「私がってこと?もう踏ん切りはついてる。でも、あの旅客機を落として逃げた奴だけは見つけたら私の手で撃墜してやる」

 

もうどこかで死んでいるかもしれないが、それならば死んだ場所か埋葬されている場所を見つけて空爆してやる。

何年経とうとその気持ちだけは変わらない。

・・・あの犯人だけは私の手で殺してやる。

例えベイルアウトしようと逃がすつもりは全くなかった。

 

「では、そいつを見つけたならばすぐにでも報告するよ」

 

「ありがとう。でも、先に落としたりしないでね」

 

「大丈夫だ。任せろ」

 

そうしてるうちに甲板へと到着した。

遠くからヘリの音が聞こえてくる。

 

「あれか?」

 

「んーと・・・」

 

青っぽいカラーに胴体見えるのは増槽のようだ。

間違いない、マヤのブラックホークだ。

 

「じゃあ、ありがとう艦長」

 

「あぁ、また何時か」

 

私は数分もしないうちに着陸したヘリに乗り込んだ。

乗り込んだ瞬間、トマホークとリリアに抱きつかれた。

 

「ハルぅぅぅ!!この大馬鹿野郎ー!!!」

 

「野郎じゃないよ」

 

「うるさいわよ!!毎度毎度無茶して!!もう・・・ほんとに会えないかと思ったのよ・・・」

 

「ごめん、もう無茶はしない」

 

「・・・それ何度目?」

 

そう言うマヤの声色は明らかに怒っているようだった。

 

「ねぇハル。下手したら死んでたんだよ」

 

「・・・分かってる」

 

「分かってない。分かってるなら金輪際こんな事しないで」

 

「・・・うん」

 

「はぁぁ・・・もうほんとにどんだけ心配したと思ってるんだよー!!今日の晩ご飯ハルのおごりだから!!高い物とか関係なしだからね!!」

 

「喜んで」

 

「この前見つけたお高い焼き肉屋行くから!!」

 

「もしかして異世界風の?」

 

「異世界風の!!あの高いヤツ!!」

 

その店は雰囲気から何から何まで全て異世界風だった。

前に行った居酒屋と同じで手軽に異世界を味わえる。

また焼き肉屋そのものはそこら辺で獣を狩って焼いて食べれば一緒という認識が強いため店数は少なかった。

そして目玉は扉の向こうから月に2匹程度送られてくる和牛というものが食べれる。

 

「分かった、そこでいい。和牛たくさん食べよ」

 

「よっしゃー!!さっさと帰るぞー!!」

 

「マヤが元気そうで良かった」

 

「今私のこの感じが無かったら出会って2秒でハルに右ストレートかましてたレベルだよ!というか!そのレベルで私は怒ってるんだからね!」

 

「ごめんって」

 

「心こもってない!!!」

 

結局、テキサスまでの帰り道ずっとマヤから説教をされながら帰った。

また落とされてしまったリリアのミグは私が弁償する事にした。

リリアはそんな事しなくていいと言ってくれたが、はいそうですか、なんて口が裂けても言えない。

何か仕事を帰って探そう。

そう思いながらマヤの説教を聞いていた。

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