「トムキャットー!!!」
「ハ、ハルが見たことないくらい笑顔だ・・・」
「この可変翼とかもう可愛い!!好き!!」
「こんなテンションのハルは見たことない・・・」
空港の格納庫で私はテンションMAXになっていた。
それもそのはず、注文していたF-14B・・・実質F-14Dが組み上がったとの連絡があったからだ。
ガワの機体はF-14Bのものだが、中身はD型とほぼ同じになっている。
おかげで元値は250万ドルだった機体は1000万ドルまで跳ね上がっていた。
F-14シリーズの部品そのものが高価な事もありこのような値段になってしまった。
しかも聞くといつもお世話になってるドワーフのおじさんが勝手にサービスだと言って対潜水艦戦闘能力を付与していた。
前に要らないと言ったのだが・・・。
おまけにAIM-9Xの運用能力もいつの間にか搭載されていた。
だがこれはおじさんが勝手にやりたいからやったと言っていたので料金はいらないそうだ。
「ねぇマヤ!仕事いこ!」
「お、おう・・・あ、リリアにお金も返さないとね」
「それも込みで!」
私はきっと今までで1番笑顔だろう。
それくらい嬉しかった。
「まぁハルは嬉しそうだし・・・で、何行くの?」
「それは行ってみてから考える!」
「えぇ・・・ま、まぁいいか・・・」
「というわけでリリアもね!」
「わ、私もなのね・・・」
3人と1匹でギルドへ向かう。
その前にと私はおじさんの元に向かおうとした。
・・・それが間違ってた。
「・・・・・・・」
「ほら、お望みの仕事よ」
「・・・・・・・」
「ハルがフリーズしてる・・・」
そりゃフリーズもする。
機体を整備してくれてるおじさんは誰かを待ってる様子で手には何やら依頼書のような物を持っているではないか。
しかも冷静になって気づいたがトムキャットの真横には何故かマヤのUH-60が置いてある。
・・・嫌な予感しかしない。
しかもトムキャットはいいとしてUH-60の増槽は取り外されその下に何さら妙な筒のような装置も置いてある。
「・・・・・」
「行きなさいよ」
「・・・・うん」
観念しておじさんの元へ行く。
すると私を見つけたおじさんは笑顔で手を振った。
「まってたぞぃ!!」
「待ってないぞぃ」
そう言いながらおじさんのところへ行くと書類を渡された。
もちろんそれは依頼書で、内容はまさかの領主からの依頼だった。
もちろん報酬は高い。
しかし・・・内容がハードすぎる。
依頼はテキサスから東に300km程のところにある放棄された街、ブラボー03がある。
そこに冒険者でもある領主の娘が仲間と共に行き消息不明になったそうだ。
そしてすぐに救助に向かった別の冒険者グループからも連絡が途絶えたために私達に依頼が来た。
無駄にこの街で有名になってしまったからなのだろうが・・・。
そしてこれは騎士団との合同任務で私とマヤはヘリで騎士団と共に街に行き、リリアはガンポッドを満載したフランカーで航空支援の待機だそうだ。
領主が上空待機と近くで補給が可能なように空中給油機と放棄された飛行場に輸送機を飛ばし武装を再装填できるように手配してるそうだ。
・・・そこまでするなら国でやってくれ・・・。
と思ったが、国防軍にそんなひとつの街の問題を解決するような余裕もなく、騎士団だけでは勢力が足りない。
一応、騎士団は異世界でいうところの特殊部隊なのだが・・・。
「まぁ・・・やるしかないよね・・・」
観念したようにマヤが言う。
しかも今回の依頼には犬の鼻が必要だということでトマホークも連れていくことになった。
「トマホーク・・・大丈夫?」
「わん!」
トマホークは任せろと言わんばかりの返事をする。
「今回の依頼で使った弾薬と燃料は全部領主持ちじゃ!」
「太っ腹・・・なのかな・・・?」
「それとじゃな!ブラックホークにガンポッドも搭載するぞぃ!」
「もしかしてそれ?」
私はブラックホークの下にある筒を指さした。
「そうじゃ!M134を組み込んだポッドじゃよ。あとドアにもこいつじゃ!」
「・・・なんで」
「MG42!どうじゃ!」
「どうじゃって言われても・・・」
なんであえて古い機関銃を・・・確かにこの機関銃は連射速度も早く制圧力は高いが・・・。
なんてしてる間に騎士団の人達が集まり始めてしまった。
これ私が拒否したらどうなるんだろ・・・。
「どうも、初めまして。ファルコンチームだ」
「あ・・・どうも」
「準備はいいか?」
「もうちょいじゃよ。フランカーにガンポッド積まないとな!あ、そうじゃ!フランカーのガンポッドは25mm機関砲と40mm機関砲ポッドを二門ずつ混載してるから使い分けるんじゃぞ!」
「わ、私対地攻撃苦手なんだけど・・・」
「苦手なだけで出来ないわけじゃないでしょ。リリアは出来る子だから大丈夫」
「うぅ〜・・・」
嘆いてはいるがもうどうしようもない。
私も準備をしてヘリに乗り込む。
その間にガンポッドは搭載してくれていた。
「ガンポッドは下に40°左右に20°までしか動かんからな。注意してくれ。あと・・・こいつも持ってくんじゃ!」
「・・・なんで」
「なんでって、騎士団に着いて行動するんじゃよ」
「そんな話聞いてない!」
「言ってなかったかいの?」
「聞いてないよ!!」
おじさんは私達に騎士団と同じ銃、M4A1を渡してきた。
照準器はブースター付きのXPS-3ホロサイトだ。
タンゴダウン型のショートタイプのバーティカルグリップ、AN/PEQ-15というレーザーサイトとフラッシュライトが混載された装置が乗ったカスタマイズが施してあった。
ハンドガードはフリーフロートタイプではない普通のKACタイプのレールハンドガードが装着されてあった。
フロントサイトは邪魔にならないようにレール付きのガスブロックに交換されていた。
弾倉は30発入りの窓付きP-MAGだった。
「・・・マヤ、覚悟決めとこう」
「なんの!?」
「神のところにいくか行かないか」
「そんな覚悟決めたくないよ!」
「でももう行くしかないから・・・」
「・・・だよねぇ・・・」
今から行くブラボー03は一攫千金を狙う冒険者や山賊で溢れている上にアンデット系モンスターの巣窟だ。
しかも放棄された街あるあるなのか冒険者同士の争いだってある。
「大丈夫だ、俺達がついてる」
「大事なヘリも俺達が見ててやるよ」
「・・・むしろその仕事を私達にさせてください・・・」
そんなこんなしてるうちに出発となった。
今回は騎士団も乗っているということもあり、リリアのフランカーと私達のヘリは最優先で離陸となった。
「リリア、援護よろしくね」
《了解。危なくなったら言ってね》
「頼りにしてる」
《ふふっ、任せて!》
私達は順調にブラボー03へと向かう。
トマホークは大人しくキャビンで伏せをしていた。
騎士団の人達に撫で回されていたが。
「ねぇハル。ブラボー03ってどんな街だったの?」
「えーっと・・・昔聞いた話だと魔法関係で有名な街だったみたい。魔法学校もあったとか。で、街の中にある教会に異世界からの扉が開いちゃってそこから異世界の物が色々と送られてきて・・・それを聞きつけた山賊とかに襲われて街はめちゃくちゃになったみたい。しかも街の領主は魔法使いで山賊に殺される寸前にこの街にアンデットモンスターが沸くような魔法というか呪いみたいなのをかけて死んじゃったらしいよ。それの効果があと何年続くのか分からないけどそこで死んだ人はアンデットとしてもう一度殺されるまでさ迷い続けるとか」
「こわっ!!」
「この街も怖いところだよ・・・」
なんて話しているうちに街は近づいてくる。
街の真ん中には2500m程の滑走路があり飛行場もあるが、もう廃墟となっていた。
そして街全体がなんだか暗い感じになっている。
表現的には街の真上に暗い雲が広がっていて雨は降っていないがとにかく不気味な雰囲気を出していた。
そしてその街の空港のエプロンにはまだ燃えているUH-1があった。
領主の娘のだろうか・・・破壊されたようだ。
「・・・マヤ、戦闘用意」
「了解・・・。リリア、よろしく」
《了解。でもかなり降りないと・・・厳しいわね》
「だね。地上には気をつけて」
《了解》
そんな話をしている時だった。
コックピットに警報が鳴る。
・・・ミサイル警報だ。
「ミサイル!?」
「見えた!2時方向!下から!!」
「確認!フレア!!」
急旋回と同時にフレアを散布、急降下する。
「どこからか分かる?!」
「発射炎は・・・あそこ!」
煙を追って発射地点を確認した。
「ハル!機銃をお願い!高速でパスするから!」
「了解!」
ミニガンを起動して攻撃準備に入った。
ヘリは高速で目標に近づく。
その時再びミサイル警報が鳴った。
だが近すぎたのかミサイルはヘリの真下を通り抜ける。
「発射!!」
獣のような咆哮をあげて銃弾が発射地点に降り注いだ。
そして2秒としないうちに上空を通過した。
そこからはミサイル警報ない。
弾が無くなったか・・・死んだか。
発射地点は空港のターミナル近くからだった。
ということはすでに空港のターミナルには『お友達』が居るということだろう。
「マヤ、着陸しよう」
「はいよ。でも、こんなところにヘリを起きたくないね・・・」
「・・・仕方ないよ」
「・・・まぁね・・・」
燃えているヘリより少し離れた場所に着陸し騎士団はすぐにヘリを降りて警戒に入った。
燃えているUH-1は燃料タンク付近に破口があり、着陸後にロケット弾を食らったようだ。
運がいいのか悪いのかヘリから全員が降りた後のようだった。
そして・・・ターミナル近くには空のRPG7を持った冒険者が倒れていた。
「ほんとに冒険者が・・・」
「このヘリは山賊のかもしれないよ」
「だけど・・・」
「いいから行こう。こんな所2人で居たくないよ」
「そ、そうだね」
私達は騎士団に着いてターミナルに侵入する。
中にはまだ新しい死体が何体かあった。
冒険者のもの、山賊のもの・・・アンデッドのもの・・・。
酷い有様だ。
「本当に殺しあってるのか・・・」
「その真実も確かめに来たんだろ俺たちは」
「・・・そうだな。ファルコンよりフォートレス。応答せよ」
「・・・クソみたいな街だ」
「フォートレス、ファルコン。応答せよ。・・・・ちくしょう、電波が悪い」
「悪いどころじゃないぜ」
騎士団は司令部に連絡を取ろうとしているようだが通じていない。
それは私達も一緒でこの街に入る寸前から無線が通じなくなった。
呪いなのかただの電波障害なのか・・・。
とにかく不気味だ。
しかし先に進むしかない。
私達はさっきの発射炎が見えたところに近づいた。
鼻をつくような臭いがする。
「・・・この近くだ」
「俺達を撃ってきたのが冒険者じゃない事を祈るよ・・・考え方を改めないといけなくなる」
「それは私達も・・・誰が味方か分からなくなるよ」
だが・・・その思いは無情にも届かなかった。
倒れていたのはスティンガーを持った冒険者だった。
身分証が近くにあった。
これが山賊ならいきなり撃ってきたことも納得が行く。
だが冒険者は?
そもそもヘリを見たからといきなり撃ってる人なんて居ない。
特にそれが乱戦でも起きてない今などだ。
そして・・・この冒険者の近くに落ちていたリュックサックには仲間か他の冒険者か・・・身分証が10枚ほど入っていた。
この身分証、持って帰ってギルドに届けると報奨金が貰える。
遺体は回収出来なかったが、貴方の家族のせめてもの形見です。
そういった意味で回収後、家族に届けられる。
しかし、仲間の身分証の場合は報奨金はない。
仲間が持って帰るのが当たり前というルールだからだ。
だがほかの冒険者の場合だと報奨金が出る。
・・・つまりは殺してもバレなければいかにも善行を働いたかのように振る舞い金を得られるということだった。
「・・・コイツは・・・早いところ娘を探そう」
「トマホーク、匂いは覚えてるよね」
「わん!」
トマホークはあたりの匂いを嗅いでいた。
「ねぇ・・・どうする?」
マヤは私達を撃ってきた死体を指さした。
「どうするって?」
「・・・身分証回収して持って帰るか見なかったことにするか」
「・・・見なかったことにしよ。私達まで同じになる必要ないよ」
「そうだね・・・」
撃ってきた死体を前にそんな話をしているとトマホークは少し先にある三階建ての建物をじっと見ていた。
「なにかあそこにあるの?」
「わふ・・・」
匂いを嗅いでその方向を見ていた。
この方向に歩いていったようだ。
「あっちみたいだよ」
「お宅らのワンコはいい鼻してるな」
「自慢のワンコですから!」
「わん!」
トマホークも得意げな顔をした。
「マヤ、一応銃の・・・なにあれ」
「え?」
「あそこ・・・」
私が見た先にはフラフラと動く人のようなものが。
手には銃のような物を持っている。
「リック、そいつで確認しろ」
「了解」
騎士団の1人が前に出て銃を構える。
持っているのはMk.12。
AR-15系のマークスマンライフルだ。
「・・・確認、アンデッド」
「撃てるか」
「ここでタイムカードを押してもいいのなら。撃ったら沸いてきますよ」
「・・・了解、気づかれたら撃て」
「了解」
銃を構えたままそう答えた。
私達はなるべく気づかれないように建物へと近づく。
「リック、マウスはあの建物に登って俺達を援護しろ。コールサインは1-2」
「了解」
目標の建物の反対側に二階建てのマンションのようなものがある。
そこの屋上で待機しろと命令を出していた。
「なーんか・・・やな雰囲気」
「私も思う」
「でも・・・トマホーク、ここなんだよね?」
「わふ」
「・・・行くしかないのかぁ・・・」
覚悟を決めて騎士団と一緒に建物に入った。
入るといきなり数人の死体があった。
見た感じ、山賊と冒険者で相打ちになったようだ。
「お友達が居ないといいが」
「友好的なお友達ならいて欲しいけど」
「同感だ」
騎士団はさすが訓練を受けているだけあり、クリアリングをスムーズに行っていた。
私達はその後ろを警戒して続く。
すると階段を登り始めたところで1人が拳を上に上げた。
「・・・足音、2人」
「敵か?」
「不明、近づいてくる」
「了解」
ヘッドセット越しに足音が聞こえてきた。
全員銃を構えてじっと待つ。
すると足音は階段を降り始めた。
「・・・」
緊張する。
敵だったらどうしよう。
撃てるか・・・。
そういった考えが頭に浮かぶ。
すると・・・
「・・・冒険者・・・?」
降りてきたのは山賊の少し汚らしい格好ではなく、しっかりと整った装備をした2人。
若い男が2人降りてきた。
だが2人は驚いた顔をしたあといきなり銃を向けてきた。
そして発砲までしてきた。
「敵だ!!」
こちらも応戦をする。
だが一番前にいた騎士団の1人に敵の弾が当たってしまった。
「ぐ、おぉぉぉ!!!」
「キースが撃たれた!!」
「私が引っ張る!!」
マヤは階段から転がってきた騎士団の1人を助けようと前に出た。
「危ないマヤ!!」
どこから湧いてきたのか敵は2人から4人になっていた。
弾丸が近くを掠める。
「同じ冒険者なのに・・・!!」
私はそう呟くか撃たないとこっちがやられる。
負けじと相手に銃を向けて引き金を引く。
「うぉぉぁぁぁ!!!」
「頑張って!!助かるから!!」
「やりやがったな畜生どもがぁぁ!!ぬぁぁぁ!!!」
「キースの容態はどうだ!!」
銃声と怒鳴り声、叫び声が建物にこだまする。
《1-1、こちら1-2状況おくれ》
「こちら1-1!屋内で交戦中だ!!畜生!!」
「キースの容態はどうだって聞いてんだ!!」
「ものすごい血が出てるよ!!それに銃声で何言ってるか聞こえない!!」
「マヤ下がって!!」
「下がれるならそうしてる!!」
めちゃくちゃだ。
そうとしか表現できない。
おまけに敵は1人も倒れていない。
「同じ冒険者でしょ!!なんで撃つんだよ!!」
マヤは撃ってくる相手に向かってそう叫ぶ。
だが当たり前のように返事はない。
「手榴弾!!」
「投擲!!」
階段の奥に向かって手榴弾が投げられた。
向こうからも手榴弾という叫び声が聞こえて爆発が起きた。
そして銃声が止む。
「終わった・・・?」
「キースは?」
撃たれた1人は途中から叫ばなくなった。
よく見ると背中が真っ赤に染まっていた。
跳弾が当たっていたようだった。
「ね、ねぇ・・・起きてよ・・・」
マヤは撃たれた1人を震えた声で揺さぶる。
騎士団の1人が首に手を当て脈を確認した。
・・・そして首を振る。
「・・・1-2こちら1-1」
《1-2》
「KIA、1名」
《・・・了解》
KIAとは戦死という意味だ。
・・・1人、死んでしまった。
トマホークは鼻を近づけて悲しそうな声を出す。
「・・・」
確認のため階段を登るとそこには4人倒れていた。
全員、近くの街のギルド所属の冒険者だった。
冒険者が騎士団や同じ冒険者を見間違える事なんてほとんどない。
持っている身分証には敵味方識別が可能なような魔法がかけてあるからだ。
視覚的にわかる訳では無いが、その人を見るとこの人は冒険者だと感覚で分かるようになっている。
仕組みはよく分からないが。
だから相手は分かった上でいきなり撃ってきたのだ。
「・・・無法地帯」
この街に最適な言葉だった。