「ハル・・・腕、大丈夫・・・?」
「止血したし消毒もしたから大丈夫だよ」
あの冒険者との交戦の後、銃声を聞いて駆けつけてきた山賊とも交戦になった。
その時に弾丸が腕を掠めた。
すこし大きめの切り傷と言ったところだが・・・。
跡が残る傷だ。
今度、どっかに居るハルゼーまで飛んでベルに治してもらおうかな・・・。
「ゴミ漁りのヒトデナシめ・・・」
「・・・隊長、外から『お友達だったら嬉しいヒトデナシ』が来てますよ」
「敵か」
「この距離ではなんとも・・・ん、そういう事か」
「どういうこと?」
騎士団の1人が納得したように呟いた。
「全員疑心暗鬼なんだよ。なんで気づかなかった」
「え?」
「もし、仲間である俺がいきなりお前らに銃を向けてきたらどうする?」
「それは・・・反撃を・・・」
「つまりはそういう事だよ。仲間だと思ったらいきなり撃たれた。それが何回か繰り返す。するとどうだ?」
「冒険者を見ても信じれない・・・」
「そういう事。仲間なのか仲間じゃないのか分からない。俺は味方だと叫びたいかも知れないが叫ぶとどこから撃たれるか分からない。じゃあ身を守るためには見つけたら撃つしかない・・・そういう事だよ」
「・・・・」
「クソッタレなところだぜ・・・」
言われてみればそうだ。
今の私達はまだ騎士団の人達が着いているから誰が味方で敵かなんて疑心暗鬼にまでは陥らない。
だが周りはどうだろうか。
冒険者カードの効力で敵味方識別は出来るだろう。
だがそれまでに何度も味方だと認識した相手に銃を向けられて撃たれる。
それを繰り返せば誰が敵か味方かなんて分からなくなる。
そして自分を守るために味方であるはずの同じ冒険者にまで銃を向ける。
そういった悪循環がこの街で起きていた。
「早く帰りたい・・・」
こんな街、1秒でも長く居たくない。
私はそうボヤいた。
「この建物さっさと探して帰ろう。もう嫌だよこんな所」
「私も・・・リリアは良いよね、空の上で」
《・・・そう思うでしょ。こっちはこっちでヤバいわよ》
「どうしたの?」
《どうも下に対空陣地があるっぽくてね・・・ずーっとレーダー照射を受けてるわ》
「対空陣地・・・」
《ミサイルが飛んでこないからハッタリかも知れないし、照射してるのが対空砲のレーダーで射程外なだけかも知れないし・・・どちらにせよ、街に近づけないわ》
「・・・リリア、街に帰るまで何分?」
《20分ってところ》
「分かった、今からテキサスに戻って対レーダーミサイルを装備、SEEDをお願い」
《了解、でも換装に20分、帰ってくるのに20分で1時間はかかるわよ》
「大丈夫、何とかする」
《分かった、全力で帰ってくるから》
そう言って通信を切った。
SEEDとは簡単に言うと対空砲や対空ミサイルが置いてある陣地を破壊して脅威を無くす事だ。
そしてリリアが積んでくるのは対レーダーミサイル。
敵のレーダーを逆探知してそのレーダーに向かって飛んでいくミサイルだ。
威力そのものは大したことないが、敵が対空ミサイルを配備していた場合、レーダーが破壊されるともうミサイルは使い物にならなくなる。
対空砲であっても目視で射撃されることはあるだろうがレーダーを使用した射撃に比べたら屁でもない。
それに対空砲であれば対空砲そのものにレーダーが搭載されているので運が良ければ砲そのものも破壊してくれる。
「リリアが帰ってくるまでに1時間、それまでに娘さんを探そう」
「そうだな。どうせ敵が対空装備を持ってるならヘリでも危ない。街に降りれたのは本当に運が良かったよ」
「全くだよ・・・」
私達を確認してからレーダーに火を入れた可能性もあるが・・・。
そんな事今は考えてる場合ではない。
私達は薄暗い建物の中を進む。
すると上の階から物音が聞こえてきた。
ドアを蹴る音だ。
「お嬢ちゃーん、ここ開けてくれよ」
「殺しはしないからいい事しようぜ」
山賊かそれとも外道冒険者か・・・。
しかしお嬢ちゃんと呼んでいた。
中に居るのは女性だ。
領主の娘の可能性もある。
「上の階だな・・・」
「どうする?」
「とにかく行くしかない。フラッシュバンはあるか?」
「2発、フラグもあるぞ」
「完璧だ。何人いるか分からんがこの際何振り構ってられん。銃を向けてきたら撃て」
「・・・了解」
私は本来であれば仲間のはずの冒険者を撃つことも覚悟した。
「トマホーク、絶対に撃ち合いが始まったら顔だしたらダメだよ」
「わふ・・・」
「いい子だね」
マヤも真剣な顔でトマホークにそう言った。
私達はゆっくりと階段を上る。
先に上った騎士団の1人が親指を立てた。
「行こう」
上った先の廊下からはまだドアを叩く音がする。
「もういい加減爆薬でドア吹っ飛ばしちまうか?」
「んな事行ったって手榴弾しかねぇ」
「それで開けりゃいいだろ」
「中まで吹っ飛んだらどうすんだよ」
「どうせ生きてようと生きていまいとやる事変わんねーよ。深手負ってたし」
「・・・だな」
上の連中はドアを吹き飛ばす気だ。
そんな事させる訳にはいかない。
中の人も負傷しているようだ。
「よしみんな・・・3.2.1でいくぞ」
私達は頷く。
「3・・・2・・・」
私は銃を握り直す。
「1、行け!!」
廊下に飛び出す。
居たのは2人の山賊。
冒険者でなくて良かったと少し安堵した。
だがその安堵故か簡単に引き金を引いていた。
・・・私は相手が冒険者ではないからと簡単に殺せる人間だったか・・・。
そう思ってしまった。
その時だった。
「手榴弾!!」
撃たれた1人の手から手榴弾がこぼれ落ちる。
私達から手榴弾までの距離は約3m。
加害範囲内だ。
「あ・・・」
安全ピンは抜け、レバーも外れていた。
私は変な考え事をしたせいで反応が遅れた。
だが防弾チョッキの取っ手部分を思いっきり引かれて後ろに転ぶ。
直後に爆発が起きた。
「はぁっはぁっはぁっ・・・」
私が見上げた先に息を切らしたマヤが居た。
「あ、危なかった・・・」
「あ・・・あり、がと・・・」
「当然でしょ、相棒なんだから」
ニコッと笑うマヤ。
一瞬私はドキッとした。
なんか変な趣味に目覚めるかと思った・・・。
「廊下クリア」
「ドア・・・破損してる。中に入れるぞ」
私達はゆっくりとドアに近づき中に入ろうとした時だった。
銃声が1発聞こえて騎士団のひとりが崩れ落ちる。
「ぐぉっ!!」
急いでストラップを握って引っ張る。
「はァッはァッはァッ・・・!!」
苦しそうに息をしている。
弾が当たったのは胸の防弾プレート。
貫通はしていないから命に別状はなさそうだが被弾した時に息がしずらくなったのだろう。
「げほっ!うぇ・・・あぁ畜生・・・!」
「王国騎士団だ!武器を捨てろ!」
中に向かって1人がそう叫ぶ。
「嘘言わないで!!騎士団がこんな所に来るわけない!!」
中からは女の子の声がした。
「本当だ!俺たちは味方だ!いいか!俺は銃を置いて入る!信じれないならそこで撃て!」
「ちょ、ちょっと危ないよ!!」
「大丈夫だ、人間頭撃たれなきゃ死にはしない」
「そういう問題じゃなくて・・・!」
だが騎士団の1人は銃を置いてゆっくりと入る。
「いいか、銃は置いた。入るぞ」
私達は銃を構えたまま待つ。
銃声が響けば突入しなくてはならないからだ。
「・・・・」
ほんの数十秒だったが何分にも感じた。
だが中からは銃声は響かなかった。
そして笑顔でこちらに手を振る。
「入っていいそうだ」
「良かった・・・」
私達は中に入る。
すると中には女性4人が居た。
1人は重傷を負っているようだ。
「ごめんなさい・・・撃ってしまって・・・」
「いや、大丈夫だ。死ぬこと以外はかすり傷ってのが俺の中の座右の銘でな」
「ところでテキサス領主の娘さんってのは君たちの中にいるか?」
「あ、え、えっと私・・・」
重傷者を介護していた1人が手を挙げた。
銀髪のツインテールでコンバットシャツと防弾リグを装備していたが銃ではなく大きな杖を持っていた。
そういえば娘さんは魔法使いだった。
名前はたしかミーリだった。
「その人の容態は?」
「胸を撃たれて・・・治癒魔法で何とか命を繋いでるけど早く病院に連れていかないと・・・」
「了解、一刻も早く運びだそう。ところで全員パーティか?」
「ううん、この人は別・・・」
聞くとミーリが介抱しているこの女性はたまたま見つけた負傷者だったらしい。
山賊に襲われて負傷していた所を助けたということだった。
「分かった。だが航空支援の戦闘機が着くまでここで待機だ」
「・・・分かった。もうちょっとで病院に連れていくから」
女性は力なく頷く。
「君の弾薬はどれくらいある」
発砲してきた女性にそう問いかけた。
「マガジン2に手榴弾1・・・拳銃は銃に刺さってるのだけ」
「AK・・・それは7.62か?」
「ううん、5.45」
「それなら外でミンチになってるヒトデナシが持ってるぞ」
「・・・ミンチを漁れっていうの?」
「ふっ、冗談だよ。取ってくる。待っててくれ」
「今でたら危ないよ!」
「大丈夫だ」
「それ死亡フラグだから!」
マヤは必死に止めるが廊下に出てしまった。
そしてこちらに向かって弾倉を2つほど投げた時だった。
「!!コンタクト!!」
銃を廊下の奥に向けて発砲した。
そして中に飛び込んでくると同時に多量の弾丸がドアの前に飛び抜ける。
部屋の中にも何発か入ってくる。
「あっぶね!!」
「だから言ったでしょ!!」
「あぁ、しっかり聞いとくべきだったよ!」
そう言いながら今度は手榴弾を持ってドアに近づく。
「危ないってば!!」
「アイツらの位置はさっき見えた、とりあえずこれをお届けしてくるよ!」
銃声が鳴り止む瞬間に手榴弾を投擲した。
廊下の奥から手榴弾という叫び声も聞こえた。
「ミーリ、ここにいて」
「わ、私も・・・」
「大丈夫」
私はミーリに怪我人の介抱をお願いして廊下の制圧に向かう。
《1-1、こちら1-2。これより建物に侵入する。撃たないでくれ》
「狙撃はどうした!」
《そちらを挟む形でお友達が進入した。裏とって援護する》
「了解!」
手榴弾の爆発後、銃声は再びひびき出した。
「畜生!見た目冒険者だったぞ!!」
「冒険者だと思うよ!そんな感じするから!」
「ド畜生が!!」
狭い建物内で銃撃戦となる。
「ミーリ!攻撃魔法とかないの!?」
「あ、あるにはあるけど・・・」
「じゃあそれ使ってよ!」
マヤは撃ちながらそう叫ぶ。
だがミーリから言われた一言は想像していた攻撃魔法とは違っていた。
「わ、私の空間制圧魔法なの・・た、対空用の・・・」
「はぁ!?」
空間制圧魔法とは文字通り一定の空間を制圧する魔法だ。
原理は使用者が示した場所に大爆発を発生させ周りにあるものを全て吹き飛ばす。
戦闘機くらい木の葉のように吹き飛んでしまう威力なので戦闘機乗りからは恐れられていた。
そしてこの魔法の欠点は威力が大きすぎて狭い室内で使うと建物事吹き飛んでしまう可能性があった。
レベルが上がれば威力を調整し手榴弾よりちょっと強いくらいの威力で限定的な範囲を吹き飛ばしたりも出来るが、レベルが低いと威力と範囲の制御が上手くいかず、狙った場所を攻撃出来るがその威力は大きなもので小さな街1つが無くなるほどだ。
「ち、ちなみに制御できるほどレベルも高くないの・・・」
「・・・ぼ、防御魔法とかは・・・」
「治癒と攻撃にステータス全振りしちゃって・・・」
なんでこの子は自信なさげなお淑やかな女の子なのに中身は脳筋なのだろうか。
しかも戦闘機乗りの天敵みたいな魔法を使うし・・・。
「おい!喋ってないで手伝ってくれ!!」
「ご、ごめん!今行く!」
マヤが援護に行こうとしたその時だった。
「RPG!!」
「伏せろー!!!」
一瞬ロケット弾が見えた。
そのロケットは壁にあたり爆発する。
爆風と破片が室内に吹き込んで私は後ろに吹き飛んだ。
爆発の近くにマヤと騎士団の1人が居た。
「げほっ!げほっ!!」
ホコリを吸い込み咳が出る。
「マヤ・・・?」
室内は爆発の煙で視界が悪い。
私は相棒の元に駆け寄る。
「マヤ!!」
「うぅ・・・」
マヤは力なく呻く。
お腹にはロケットの破片が突き刺さっていた。
隣にいた騎士団の1人は首に破片が突き刺さり死んでいた。
「だ、大丈夫!?」
「見たら分かるでしょ・・・」
口から血を流してそう言った。
「ミーリ!!」
「う、うん!!」
駆け寄ってマヤの容態を見る。
「大丈夫、これなら治せる・・・けど、病院に連れてかないと・・・」
「マヤをお願い」
「ま、任せて!」
私は相棒を負傷させられた怒りが込み上げてきた。
「ふざけないで・・・絶対に許さない・・・!!」
私が撃たれた時もマヤはきっとこんな気持ちだったかも知れない。
私は足音が近づいてくるのを確認して銃を構えた。
「・・・・・」
セレクターはフルオートにセットした。
この部屋の入口は1箇所。
そこを掃射してやる。
そして少し待つと足音は部屋の前に来た。
そして・・・2人が入ってこようとした瞬間に引き金を引く。
弾倉内の弾薬が無くなるまで私は引き金を引いた。
部屋の前で崩れ落ちる敵。
相手は見た瞬間分かっていた。
・・・冒険者だった。
そして相手を撃ち殺したというのに私は何も感じなかった。
これが怒りでなのか・・・慣れたからか。
・・・いや、きっとここが無法地帯だから。私は正当防衛だ。と心が自己防衛してるだけなのだろう。
そう思いながら銃をリロードした。